著者
渡辺 正夫 鈴木 剛
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

アブラナ科植物B.campestris(syn.rapa)の自家不和合性は、1遺伝子座S複対立系によって制御されており、S遺伝子の表現型が雌雄で一致したとき、自己花粉が拒絶され、受精に至らない。この現象は、柱頭上での自己・非自己の認識反応である。しかしながら、従来の研究が、S遺伝子を中心とした研究であったことから、S遺伝子の下流、つまり、SP11のシグナルをSRKが受容した後に機能するシグナル分子は、M遺伝子を除けば、ほとんど明らかになっていない。これまでの研究過程で単離したB.rapa自家和合性変異系統を材料として、自家不和合性系統との分離世代に対して、様々な分子マーカーを用いて、原因遺伝子単離を試みた。予備的な実験から、この自家和合性は、単一の遺伝子変異によるものではないことを明らかにしているので、QTL解析を導入することで変異を規定する原因遺伝子の数と存在位置を特定し、寄与率の高い遺伝子から単離を開始した。B.rapaに使用できる分子マーカーについては、SSRマーカーが種を超えても保存されていることから、SSRマーカーをベースとして、マーカー探索を開始した。さらに、ファインマッピングに利用されることが多いAFLPマーカー、シロイヌナズナマーカーとの同祖性の利用、国際コンソーシアムのアブラナゲノム情報の利用の可能性の検討を開始した。分離世代の表現型と分子マーカーとを組み合わせて、GTL解析を行い、染色体上のどのよう力の寄与が大きいかを検討する。その領域について、シロイヌナズナ、アブラナゲノム情報とリンクさせることを開始した。以上の実験を開始して数週間後に、本研究が廃止決定なったことから、研究を中止した。
著者
島津 善美 藤原 正雄 渡辺 正澄 太田 雄一郎
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.327-333, 2009 (Released:2015-01-23)
参考文献数
35
被引用文献数
2

清酒に含まれる有機酸の主要3成分(乳酸,コハク酸,リンゴ酸)および少量成分(クエン酸,酢酸)に着目して,飲用温度を変えて酸味の強さ(強度)および呈味質について,専門パネリストによる官能評価を行った。有機酸単独の評価は,20℃に比較して乳酸が37℃でコハク酸が50℃で,極めて有意に酸味を強く感ずることが認められた。さらに乳酸,コハク酸の呈味は,37℃,43℃において,ソフトでまろやかに感じられた。リンゴ酸は,10℃で爽快ですっきりしている呈味質が確認された。有機酸主要3成分混合の評価は,43℃での酸味が,極めて有意に強く感じられ,かつ呈味がしっかりとして調和が良いことが明らかになった。有機酸主要3成分+ブドウ糖+アルコール系の評価は,43℃での酸味が極めて有意に強く感じられ,さらに呈味がまろやかとなり,バランスが良かった。
著者
渡辺 正樹 林 京子 田谷 有紀 林 利光 河原 敏男
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

要旨 目的:単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)は、皮膚や口唇、眼などに感染症を反復的に起こす病原体であり、初感染後に神経節に潜伏感染して終生存続し、免疫機能低下時に回帰発症を起こす。アシクロビル(ACV)等の治療薬が開発されているが、長期連用による副作用や耐性ウイルスの出現は回避できない。我々はこれまでに、納豆・納豆菌がインフルエンザなどのウイルス感染症に対して治療・予防効果を発揮することを報告してきた。今回、HSV-1感染によって生じる皮膚ヘルペスに対するこれらの有効性を評価した。 方法:BALB/cマウス(n=10)の側腹部にHSV-1を皮下注射した。滅菌水、ACV、納豆、TTCC903納豆菌(生菌・死菌)または煮豆を、ウイルス接種7日前から14日後まで、1日2回経口投与した。出現したヘルペス症状を6段階の発症スコアで評価した。感染14日後に採血して、血清の中和抗体価をプラークアッセイによって測定した。 結果:ウイルス接種の4日後から接種部位近傍にヘルペス症状が帯状に出現した。対照(滅菌水投与)群では、全例発症し、死亡率は40%であった。納豆・納豆菌投与群では発症率及び死亡率が、対照群に比べて抑制された。煮豆投与群でも、ヘルペス症状の進展を抑制する効果がみられた。感染2週間後のウイルス特異的抗体量は、納豆及び納豆菌投与時に増加した。納豆菌の生菌と死菌との間にはヘルペス治療効果に差異がみられなかった。 考察:納豆と納豆菌には、HSV-1による皮膚ヘルペス抑制効果が認められた。抗体上昇を伴っていたことから、免疫機能刺激作用が少なくとも部分的に治療効果に寄与していたと推察される。煮豆投与時にも一定の効果がみられたため、その作用発現の背景を現在検討中である。
著者
渡辺 正雄
出版者
日本科学史学会
雑誌
科学史研究 (ISSN:21887535)
巻号頁・発行日
vol.28, no.171, pp.173-177, 1989 (Released:2021-09-01)
被引用文献数
1
著者
桑山 浩然 渡辺 正男 井上 洋一 渡辺 融
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

1.研究の目的:平安時代から江戸時代に至る蹴鞠技術の変遷を総合的に考察するため、(1)文献の研究および翻刻、(2)現在まで蹴鞠の技法を伝承している団体である蹴鞠保存会の会員を対象にした、技法の調査や練習法の聞き取り調査、(3)鞠の復元製作とこれを利用した実技再現、を行なう。2.研究成果の概要:(1)蹴鞠関係の文献は、宮内庁書陵部・国立公文書館内閣文庫・国立国会図書館など各所に所蔵されるが、ここでは天理大学付属天理図書館・滋賀県大津市平野神社の2箇所に所蔵されるものに重点を絞って調査した。天理図書館は、かつて蹴鞠保存会にあった文献200余点を一括収蔵する。その中から今年は27点の調査を行なった。平野神社は、江戸時代に飛鳥井家と並ぶ蹴鞠道家(家元)であった難波家の史料を一括収蔵する。江戸時代中期の難波家当主がまとめた『蹴鞠部類抄』など他所にはない文献も多く、写真によって逐次解読作業を進めている。以上の調査を踏まえて、鎌倉時代初期に成立したと考えられる『蹴鞠口伝集』と、鎌倉時代末頃にまとめられた『内外三時抄』の2点を翻刻した。(2)実技の調査は、蹴鞠保存会の練習日に合わせて2度京都まで出張したが、いずれも豪雨となり、実現しなかった。やむなく聞き取り調査のみを行なった。(3)鞠の復元は、各所に問い合わせてみたが研究費の範囲では実現不可能との返事で、断念せざるをえなかった。ただ蹴鞠保存会が行なった鞠の「突直し」(補修)は見学することができた。3.研究発表:スポ-ツ史・日本史・日本文学などの研究者に呼び掛け、東京および京都で研究会を行なった。特に京都では蹴鞠保存会会員の参加があり、鞠・装束・沓などを実見出来た。報告書は、研究報告(3編)・文献研究(2編)・文献の翻刻・参考文献・平野神社所蔵史料目録など、計388ペ-ジとなっている。

1 0 0 0 OA ブレイク詩集

著者
渡辺正知 訳
出版者
聚英閣
巻号頁・発行日
1923
著者
齋藤 健治 渡辺 正和 佐藤 菜穂子 井上 伸一
出版者
名古屋学院大学総合研究所
雑誌
名古屋学院大学論集 医学・健康科学・スポーツ科学篇 = THE NAGOYA GAKUIN DAIGAKU RONSHU; Journal of Nagoya Gakuin University; MEDICAL, HEALTH, and SPORTS SCIENCES (ISSN:21875162)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.1-16, 2021-03-31

投球速度が異なる2名の大学野球投手を対象に,投球動作とパワー系体力を測定分析し,その差の原因を探ることを目的とした。対象とした2名の選手間には体格の差はないものの,投球スピードの差が10~20km/hあった。投球動作の量的分析には三次元動作解析法を用い,ハイスピード動画撮影による質的な分析も行った。動作解析では,指先から肘,肩,体幹,腰などの速度や,肩,肘,腰などの関節運動の角速度等を求めた。これらの動作解析結果と体力測定結果から,2名の選手間には体幹部の動きの方向,近位部の減速による遠位部の加速という相互作用,上肢関節の使い方,立ち五段跳びやメディシンボール投げなどのパワー系体力と背筋力などに違いがあることが明らかとなった。
著者
河野 真紀 立川 敬子 三井 妹美 渡辺 正敏 上田 晶義 榎本 昭二
出版者
Japanese Society of Oral and Maxillofacial Surgeons
雑誌
日本口腔外科学会雑誌 (ISSN:00215163)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.336-338, 1995-04-20 (Released:2011-07-25)
参考文献数
5

Sialadenosis, characterized by uniform hypertrophy of the acinar parenchyma of the salivary glands, is associated with a variety of systemic diseases of functional disorders.This paper describes two cases of sialadenosis, a 20-year-old woman with submandibular gland swelling and a 31-year-old woman with parotid gland swelling. Both of them had endocrine disorders that may be associated with anorexia nervosa.
著者
津長 雄太 阪田 忠 藤岡 智明 増子 潤実 諏訪部 圭太 永野 邦明 川岸 万紀子 渡辺 正夫 東谷 篤志
出版者
日本植物生理学会
雑誌
日本植物生理学会年会およびシンポジウム 講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.667, 2010

イネ冷害は、穂ばらみ期の低温により、葯壁タペート細胞が本来委縮し崩壊に向かう過程で逆に肥大化し、花粉形成が阻害されることにより生じる。一方で、その分子機序について不明な点が多い。そこで本研究では、耐冷性極強のヒトメボレならびに耐冷性やや弱のササニシキを用いて、低温障害と各種植物ホルモンの生合成・応答にかかわる遺伝子群の発現変動との関連を明らかにすることとした。今回解析した遺伝子群は、Hirano et al.,PCP 49:1429によるマイクロダイセクション解析で、花粉小胞子またはタペート細胞での発現が明らかにされたものを選抜した。その結果、低温はGA生合成遺伝子群ならびにその応答性転写因子の発現量を上昇させ、この傾向は、ヒトメボレにおいてより顕著であることがわかった。また、これらは高温障害時に、逆に発現が低下し、GA関連遺伝子群の葯における発現は温度により調節される可能性が示唆された。オーキシン応答性遺伝子については、3細胞期の葯で低温により発現が増加すること、JAの応答の転写抑制因子JAZは発現低下が、その下流にあるMYC遺伝子は発現上昇が、それぞれ両系統でみとめられた。エチレン応答性遺伝子も低温により発現上昇がみられ、その傾向はササニシキにおいてより顕著であった。その他の植物ホルモンにかかわるデータとともに、ファイトトロンを用いた実験系に関する進捗状況も報告したい。<br>.
著者
渡辺 正澄
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本釀造協會雜誌 (ISSN:0369416X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.534-539, 1968-05-15 (Released:2011-11-04)
参考文献数
8

かってドイツのガイセンハイム研究所でブドウ酒の研究をした経験のある著者が, 最近のドイツのブドウ酒醸造の技術的進歩を紹介したものである。日本の場合にあてはめても参考になる点が多いと思われる。
著者
渡辺 正巳 石賀 裕明
出版者
日本植生史学会
雑誌
植生史研究 (ISSN:0915003X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.3-10, 2008

島根県西部益田平野において,ジオスライサーを用いて得た6400 yr BPころ以降に堆積した試料を対象に,花粉分析と,イオウ濃度分析,AMS 14C年代測定を行った。花粉分析結果を基に 局地花粉帯(MGS -I,II帯)と5花粉亜帯(MGS -IIa,IIb,IIc,IId,IIe亜帯)を設定し,AMS 14C年代測定結果から堆積速度を求め,各花粉帯と花粉亜帯の境界年代を推定した。花粉分析の結果,6400 yr BPころの益田平野周辺にスギ林が分布していたことが明らかになった。このことは,スギ林が益田平野から中国山地西部へ拡大したことを示唆する。6400~5300 yr BPには,アカガシ亜属花粉とイオウ濃度の増加傾向が一致した。これは海進を伴う気候の温暖化を示す。4660 ~3570 yr BPには「縄文中期の小海退」に対応する冷涼・湿潤な気候が認められた。1500 yr BP以降に認められるアカマツ林の拡大を,人間活動に伴う自然破壊によると考えた。同時に認められるスギ林の縮小は,人間活動に伴う現象と考えられるほか,「奈良・平安・鎌倉温暖期」に伴う現象である可能性を指摘した。花粉帯の境界年代を基に,益田平野と山陰地方中央部の古植生と古気候を比較した。
著者
渡辺 正
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.44, no.9, pp.593-596, 1996-09-20 (Released:2017-07-11)
参考文献数
2

身近な現象にどれほどよく当てはまるか-そこに重きを置くならば, なぜか16個の元素をずらずら並べた例の「イオン化列」はまっさきに「不合格」の印を押すべき素材だろう。いかにも根拠はございますという顔つきながら, じつはあの「右へならえ」は, 理想化をとことん進めた極限, 仮想世界の中でしか成り立たないからだ。現実世界に合わせたければ, 元素の数はぐっと間引いて10個以内, できれば8個くらいにするのがまともな神経だといえる。そのへんを一緒に考えてみたい。
著者
高瀬 香奈 三島 弘之 綾部 純一 渡辺 正英 土屋 雄介 丸山 拓実 益子 悠 立石 健祐 田中 良英
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.305-311, 2021 (Released:2021-04-25)
参考文献数
24

放射線治療の晩期障害として放射線誘発性腫瘍があるが, 組織型の異なる放射線誘発性脳腫瘍が併発した症例の報告は稀少である. 症例は49歳男性. 8歳時に右前頭葉腫瘍の摘出術を受け, 当初星芽腫の診断で51Gy/37frの拡大局所照射を施行された. 照射後41年, 初発のてんかん発作で救急搬送され, 右前頭葉脳実質の不整形腫瘍と周辺の円蓋部に硬膜付着腫瘤を認めた. 両病変に対して摘出術を施行し, それぞれ膠芽腫, 髄膜腫と診断された. 再検討の結果, 初発腫瘍は退形成上衣腫と診断された. 小児期に放射線治療を受けた患者では長期間経過しても放射線誘発性腫瘍のリスクが存在するため, 長期にわたる慎重な経過観察が重要である.