著者
若林 諒三 浅井 友詞 佐藤 大志 森本 浩之 小田 恭史 水谷 武彦 水谷 陽子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101957, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】立位安定性は、外界に対する身体の位置関係を視覚、前庭感覚、足底感覚、固有感覚情報により検出し、それらの求心性情報が中枢神経系で統合され、適切な運動出力が起こることで保たれている。立位安定性を保つ上で特に重要となるのが、自由度の高い頭部の運動を制御することである。頭部の制御は、前庭感覚、頚部からの求心性情報をもとに頚部周囲筋が協調的に活動することで、姿勢変化に応じて頭部の垂直固定、意図した肢位での保持、外乱刺激に対する応答が可能となる。そのため、前庭機能障害や頚部障害の患者では前庭、頚部からの求心性情報の異常により立位安定性が低下することが報告されている。また、健常成人においても静止立位と比較して頭部回旋運動時の立位重心動揺は有意に増加することが報告されている。一方、頚部関節位置覚は前庭感覚とともに頭部の位置・運動情報を中枢神経系に提供していることから、頭部運動時の立位安定性に関与する可能性が考えられるが、その関連性は明らかでない。したがって今回、頭部回旋運動時の立位安定性と頚部関節位置覚の関連性についての検討を目的に研究を行ったので報告する。【方法】健常成人25 人(28.6 ± 6.1 歳)を対象とした。被験者に対して頚部関節位置覚の測定および頭部正中位での重心動揺、頭部回旋運動時の立位重心動揺の測定を行った。頚部関節位置覚の測定は、Revelらが先行研究で用いているRelocation Testを使用した。椅子座位にて被験者の頭部にレーザーポインタを装着させ、200cm前方の壁に投射させた。安静時の投射点に対する、閉眼で頚部最大回旋後に自覚的出発点に戻した時の投射点の距離を測定し、頚部の角度の誤差を算出した。測定時に被験者の後方にビデオカメラを設置し、我々が開発した解析ソフトを使用して解析を行った。頚部関節位置覚の測定は、左右回旋それぞれ10 回行い平均値を代表値として算出した。頭部正中位での重心動揺の測定は、Neurocom社製Balance Master®を使用して、modified Clinical Test of Sensory Interaction on Balanceにて行った(以下Normal mCTSIB)。Normal mCTSIB の条件1 は開眼・固い床面、条件2 は閉眼・固い床面、条件3 は開眼・不安定な床面、条件4 は閉眼・不安定な床面である。頭部回旋運動時の立位重心動揺の測定はNormal mCTSIBと同様の条件下で行い(以下 Shaking mCTSIB)、測定中の頭部回旋運動をメトロノームで0.3Hzに合わせて約60°の範囲で行うよう被験者に指示した。重心動揺の指標には重心動揺速度(deg/sec)を使用した。また、測定中に転倒したものは解析から除外した。統計処理はSPSSを使用し、Relocation TestとNormal mCTSIBおよびShaking mCTSIBの相関関係をピアソンの相関係数を用いて検討し、有意水準を5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】日本福祉大学ヒトを対象とした倫理委員会の承諾を得た後、対象者に本研究の主旨を説明し書面にて同意を得た。【結果】Relocation Testの平均値は5.36 ± 2.06°であった。Normal mCTSIBのすべての条件においてRelocation Testとの相関関係は認められなかった。Shaking mCTSIBの条件1 においてRelocation Testとの間に中等度の相関(r = 0.42)が認められた。【考察】本研究の結果より、健常成人において、Shaking mCTSIBの条件1 とRelocation Testとの間に中等度の相関関係が認められた。Honakerらの先行研究によると頭部回旋運動は立位安定性を低下させることが報告されている。また立位安定性保つ上で頭部の運動を制御することが必要であり、頭部の位置・運動に関する求心性情報を伝える頚部関節位置覚の正確性が重要であると考えられる。したがって、本研究では頚部関節位置覚と頭部回旋運動時の立位安定性との間に中等度の関連性が認められたと考えられる。また今回、Relocation TestとNormal mCTSIBやShaking mCTSIBの条件2、3、4 との間には相関関係が認められなかった。姿勢制御においては頚部関節位置覚以外にも、前庭感覚、視覚、足底感覚などの感覚系を含め様々な因子が関与する。本研究では健常成人を対象としており、閉眼や不安定な床面などで一部の感覚系が抑制された条件下では前庭感覚などの感覚系の個人差が反映されるため、頚部関節位置覚との相関関係が認められなかったと推察される。【理学療法学研究としての意義】日常生活活動において頭部を動かす機会は多く、姿勢安定性を保つために頭部の運動を制御することは重要であると考えられる。本研究において頚部関節位置覚が頭部回旋運動時の姿勢安定性に関連することが示されたことから、高齢者やバランス機能低下を有する患者において頚部関節位置覚の評価を行い、それを考慮した治療プログラムを立案することの必要性が示唆された。
著者
若林秀渓 著
出版者
金港堂
巻号頁・発行日
1890
著者
若尾 勝 福光 英彦 田中 勇治 徳村 拓哉 星 虎男 関根 義夫
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.509-513, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
12

〔目的〕Diagnosis Procedure Combination (DPC)導入前後での入院期間,理学療法開始時および終了時のBarthel Index (BI)への効果を分析すること.〔対象〕入院中に理学療法を実施した患者171名とした.〔方法〕DPC導入前後の,理学療法開始までの日数,理学療法実施日数,理学療法開始時および終了時のBIを比較した.さらにDPC導入と理学療法,それぞれの前後におけるBIの変化を,退院先別に分析した.〔結果〕DPC導入により,理学療法開始までの日数と理学療法実施日数の短縮,高いBIでの退院がみられた.また退院先四群間とそれぞれのBIで有意差を認めた.〔結語〕DPCが早期理学療法開始,入院期間短縮,高いBIでの退院につながり,さらに高いBIで理学療法を開始できれば,早い在宅復帰を見込むことができる.
著者
若森 参 マライヴィジットノン スチンダ 濱田 穣
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement 第31回日本霊長類学会大会
巻号頁・発行日
pp.52, 2015-06-20 (Released:2016-02-02)

マカク属のサルでは尾長に変異性が高いことが知られている。種群内に見られるバリエーションは、それぞれの種の分布域緯度に相関し寒冷適応と考えられるほか、位置的行動と支持基体、あるいは社会的行動(専制的-平等的社会)などの要因が推測される。相対尾長が35~45%の同程度の中長尾を持つカニクイザル種群のアカゲザル(Macaca mulatta)、シシオザル種群のブタオザル(M. nemestrina/leonina)、トクマカク種群のアッサムモンキー(M. assamensis)の間で尾の比較を行った。我々は、尾長は尾椎数と最長尾椎長に依存し、ブタオザルとアッサムモンキーは、アカゲザルよりも短い尾椎を数多く持つことを明かにした。この違いが行動面でどのように見られるか、自由遊動群で尾の運動観察を行った。今回は、アッサムモンキーの観察結果について発表を行う。アッサムモンキーは、大陸部アジアの中緯度域の常緑広葉樹林に分布し、キタブタオザルとの共存域では、急傾斜山林や岩崖地に生息する、比較的、平等主義的社会を持つ。フォーカルアニマルサンプリング法で、尾の保持姿勢(脊柱に対して水平、垂直、背方屈曲、下方)と運動の位置的行動(座る、立つ、歩く、走る、寝そべる、跳躍、登る、降る)と社会的行動の組み合わせで記録した。また、ビデオによる尾の運動観察も行った。アッサムモンキーは、尾の最大拳上時の角度が垂直と背方屈曲の中間で、これは近位尾椎の形状から予想された。アカゲザルとキタブタオザルで見られた社会的上位の個体が尾を上げて優位性を示すという行動は、見られなかった。逆にアッサムモンキーの劣位の個体が餌場への接近などで上位個体に近接する等の社会的場面において尾を垂直に上げる様子が見られた。またアカゲザルとキタブタオザルではほとんど観察されない尾を左右に振る行動が見られた。これは単独で枝に座り振り子のように尾を振る場面と、劣位の個体が上位の個体に接近する際に尾を脊柱に対して垂直に挙げ振る場面が見られた。
著者
井上 正之 田中 昭二 石若 通利 井上 誠喜
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. HIP, ヒューマン情報処理
巻号頁・発行日
vol.96, no.306, pp.25-30, 1996-10-17
被引用文献数
7

従来から, ファッションやカラーデザイン等の分野では, 色から受ける印象について様々な調査が行われてきている. しかしながら, 色単独にではなく, 画像内容と込みでということになると比較的検討例は少なく, 自然画像となるとほとんど見当たらない. そこで本稿では, 自然画に色フィルタを用いて着色した画像を用い, 色と画像内容との交互作用について検討した. その結果, 両者はお互いの印象に密接に関わりあっていることがわかった.
著者
若吉 浩二 高橋 豪仁 今枝 和与 岸田 珸 長谷川 芳彦 石川 元美 田辺 正友
出版者
奈良教育大学
雑誌
奈良教育大学紀要. 自然科学 (ISSN:05472407)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.39-47, 2005-10-31

The purpose of this study was to investigate the changes in physical fitness and exercise habits of elementary school children over two years, and to compare the physical fitness and exercise habits of children who had not participated in the sports class with those of children who had. In addition, this study aimed to obtain basic data to make a physical fitness program to be held over the long term. A total of 622 children, from the 1st to the 6th grade, participated in the physical fitness test. 102 children had participated in a sports class held twelve times and for approximately 18 hours in total over twelve weeks. The physical fitness of the children in this study was lower than the average for Japanese children. However, the improvement rate of the scores in the physical fitness test over two years was higher than that of the average for Japanese children. In the comparison of the children who had not participated in the sports class with the children who had, there was no significant difference in the results of the physical fitness tests. When the results about the child's physical fitness were fed back to parents to investigate the parents' attitude, approximately 95% of parents answered, "I am interested in my child's physical fitness and exercise habits". However, there was a tendency for parents of children in the upper grades not to be interested in their child's physical fitness and exercise habits in comparison with parents of children in the lower grades, even though the physical fitness of the children in the upper grades in this study was remarkably lower than the average for Japanese children. Therefore, it is thought that it is necessary for the physical fitness test and the sports class to continue to be held over a long period of time so that daily exercise and sports may influence the improvement of physical fitness.
著者
松野 文俊 笠井 正三郎 田中 美和子 若城 邦子
出版者
The Society of Instrument and Control Engineers
雑誌
計測自動制御学会論文集 (ISSN:04534654)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.1011-1019, 1996-07-31
被引用文献数
4 1

In this paper we consider robust force control of a one-link flexible arm. Since the tip of the flexible arm contacts with a given constraint surface, a constraint condition should be satisfied. By using Lagrange multiplier method and Hamilton's principle, we derive dynamic equations of the joint angle (an ordinary differential equation), the vibration of the flexible arm (a partial differential equation), and the constraint force. The boundary condition of the derived distributed parameter system is nonhomogeneous. We introduce a new variable and derive a homogeneous boundary condition. By solving an eigenvalue problem, eigenvalues and corresponding eigenfunctions are derived. On the basis of the eigenfunction expansion we derive a finite dimensional modal model. To compensate the spillover instability an optimal controller with low-pass property and a robust <i>H</i><sub>∞</sub> controller are constructed. The stability of the direct force feedback and the compliance control considering uncertainty of the arm flexibility is analyzed. To demonstrate the validity of the derived model and the effectiveness of the proposed controllers, a set of experiments has been carried out. Experimental results confirm that the robust controllers perform well.
著者
小田口 浩 若杉 安希乃 伊東 秀憲 正田 久和 蒲生 裕司 渡辺 浩二 星野 卓之 及川 哲郎 花輪 壽彦
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.53-61, 2008-01-20
参考文献数
29

柴胡加竜骨牡蛎湯を服用することにより,自律神経機能の変化とともに降圧効果が得られた高血圧症の1例を経験したので報告する。<br>患者は46歳,男性で,軽症高血圧の他,交感神経緊張状態を疑わせる症状も呈していた。柴胡加竜骨牡蛎湯エキス顆粒(ツムラ)を約3カ月間服用することで,外来血圧は収縮期,拡張期ともに著明に低下した。24時間自由行動下血圧測定(ABPM)では,24時間平均血圧の低下が認められたほか,脳血管障害の危険因子とされる早朝血圧上昇が改善した。起立検査では,服用前は立位負荷により交感神経優位に傾いた自律神経バランスが,服用後は逆に副交感神経優位に傾くという結果が認められた。脂質プロファイルの改善も認められた。<br>本症例の経過は,柴胡加竜骨牡蛎湯が自律神経機能に効果を及ぼすことで降圧効果を示す可能性を示唆しており,ストレス過多により交感神経緊張をきたした高血圧患者に対する有用性が期待される。
著者
若林 啓
出版者
筑波大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

構文解析は,言語などの系列データから「自然なまとまり」を抽出し構造化する系列解析技術である.従来の構文解析モデルは,対象の系列が長くなると極端に計算時間が増加する問題があり,ビッグデータへの適用は困難であった.本研究では,従来の構文解析モデルを階層的確率オートマトンと呼ばれる,系列長に対して線形な計算時間で解析可能なモデルに等価変換する手法を確立した.この変換によって長い系列の近似構文解析を高速に実行できることを示し,文章の名詞句抽出やフレーズ抽出の応用において高速かつ効果的な解析を実現する手法を確立した.
著者
若林 宗平 ジャベル ニザル 野口 伸
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.268-275, 2010-05-01

トラクタ機関として二燃料機関を用いる場合,軽油消費量を削減しつつ燃焼効率を向上させるには,バイオガスの供給を機関負荷に応じて制御する必要がある。本研究では,二燃料機関へのバイオガス供給の最適化を行い,目的関数に応じたバイオガスの供給マップを作成した。自作した電子制御ユニット(Electric Control Unit ; ECU)を用いてバイオガス供給の制御を行い,最適化したトラクタ用ディーゼル機関の出力性能,排気性能の評価を行った。<BR>出力性能試験の結果,機関の最大出力,最大トルクに変化は見られず,軽油単味運転時と同程度であった。ISO計測基準8178-4に基づいて負荷条件を平均化した排出ガス特性を検討した結果,最適化後の二燃料機関の排気性能は所期の目的関数に見合った結果となり,CO排出量の改善がみられた。また,軽油の消費減少量,正味熱消費率についてもバイオガス最適化の効果が認められ,低負荷時の燃焼効率は改善された。最適化した機関を用いてほ場作業のシミュレーションを行った結果,バイオガス供給マップにより想定される機関性能が得られた。
著者
若林 宗平 ジャベル ニザル 野口 伸
出版者
農業食料工学会
雑誌
農業機械學會誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.268-275, 2010-05-01
参考文献数
9

トラクタ機関として二燃料機関を用いる場合,軽油消費量を削減しつつ燃焼効率を向上させるには,バイオガスの供給を機関負荷に応じて制御する必要がある。本研究では,二燃料機関へのバイオガス供給の最適化を行い,目的関数に応じたバイオガスの供給マップを作成した。自作した電子制御ユニット(Electric Control Unit ; ECU)を用いてバイオガス供給の制御を行い,最適化したトラクタ用ディーゼル機関の出力性能,排気性能の評価を行った。<BR>出力性能試験の結果,機関の最大出力,最大トルクに変化は見られず,軽油単味運転時と同程度であった。ISO計測基準8178-4に基づいて負荷条件を平均化した排出ガス特性を検討した結果,最適化後の二燃料機関の排気性能は所期の目的関数に見合った結果となり,CO排出量の改善がみられた。また,軽油の消費減少量,正味熱消費率についてもバイオガス最適化の効果が認められ,低負荷時の燃焼効率は改善された。最適化した機関を用いてほ場作業のシミュレーションを行った結果,バイオガス供給マップにより想定される機関性能が得られた。