著者
横山 友里 吉﨑 貴大 小手森 綾香 野藤 悠 清野 諭 西 真理子 天野 秀紀 成田 美紀 阿部 巧 新開 省二 北村 明彦 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.665-675, 2022-09-15 (Released:2022-09-10)
参考文献数
36

目的 食品摂取の多様性得点(DVS)は,日本人高齢者の食品摂取の多様性を評価する指標として,疫学研究や公衆衛生の現場において幅広く活用されている。一方,本指標は1990年代の開発以降,見直しが行われておらず,現在の日本人高齢者の食生活の実態を必ずしも十分に反映できていない可能性がある。本研究では,構成食品群の改訂による改訂版DVS(MDVS)の試作および妥当性の評価を行うことを目的とした。方法 鳩山コホート研究の2016年調査に参加した357人(年齢:76.2±4.6歳,男性:61.1%)を対象とした。DVSおよびMDVSは,各食品群の1週間の食品摂取頻度をもとに,ほぼ毎日食べる食品群の数を評価した。DVSの構成食品群は肉類,魚介類,卵類,牛乳,大豆製品,緑黄色野菜類,果物,海藻類,いも類,油脂類とし,MDVSの構成食品群は平成29年国民健康・栄養調査における65歳以上の食品群別摂取量のデータをもとに,主菜・副菜・汁物を構成する食品群の摂取重量および各栄養素の摂取量に対する各食品群の寄与率をもとに,その他の野菜,乳製品を追加することとした。栄養素等摂取量は,簡易型自記式食事歴法質問票を用いて調べた。「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で推定平均必要量が定められている14の栄養素について,必要量を満たす確率およびそれらの平均を算出した。DVS,MDVSと各指標との相関分析および相関係数の差の検定を行った。結果 MDVSとたんぱく質エネルギー比率,脂質エネルギー比率,食物繊維,カリウム摂取量,改良版食事バランスガイド遵守得点との有意な正の関連がみられ(偏相関係数の範囲(r)=0.21-0.45),炭水化物エネルギー比率との有意な負の関連がみられた(r=−0.32)。また,MDVSと14の栄養素の必要量を満たす確率の平均との有意な正の関連がみられた(r=0.41)。これらの関連の程度はDVSとMDVSで同程度であり,相関係数の差は有意ではなかった。結論 栄養素摂取量や食事の質との関連からみた妥当性はDVSとMDVSで同程度であった。DVSの改訂にあたっては全国の大規模集団を対象に精度の高い食事調査を用いたさらなる研究が必要である。
著者
小林 江里香 植田 拓也 高橋 淳太 清野 諭 野藤 悠 根本 裕太 倉岡 正高 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.544-553, 2022-07-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
10

目的 介護保険施策では,近年,介護予防に資する住民活動として,体操など機能訓練中心の「通いの場」だけではなく,多様な「通いの場」の推進が期待されている。本研究では高齢者が参加する自主グループを通いの場として,その類型別の特徴を「参加者の多様性」と「住民の主体性」の点から比較検討した。方法 東京都内の38自治体の介護予防事業関連担当課より,1)3人以上の住民が月に1回以上集まって活動,2)高齢者の参加が多い,または高齢者を含む多世代の住民が参加,3)活動の運営に住民が参加の3条件を満たす175の自主グループの推薦を受け,うち165グループの代表者等よりアンケートの回答を得た。グループの類型化は,活動目的と活動内容により潜在クラス分析を用いて行った。参加者の多様性は,年齢,性別,健康状態等,住民の主体性は,グループの運営や活動実施の支援を行う住民の人数と,活動において住民が果たしている役割から評価した。結果 グループは,体操・運動を中心とした「体操・運動型」,活動目的や実施する活動内容が多い「多目的型」,参加者との交流を目的とし,体操・運動は行わない「交流重視型」,参加者との交流を目的としない「非交流型」の4類型に分かれた。多目的型は,体操・運動型や交流重視型に比べ,幅広い年齢層の参加があり,「移動に介助が必要」「認知症」「虚弱・病弱」など健康に問題を抱える人も参加する傾向があった。また,運営・支援者数も多く,住民が担う役割も多様であった。結論 参加者の多様性,住民の主体性とも多目的型が最も高かった。しかしながら,通いの場の類型は固定的なものではなく,住民のニーズや状況に応じて新たな活動を追加するなどの柔軟な変化を支援する体制も必要と考えられる。
著者
植田 拓也 倉岡 正高 清野 諭 小林 江里香 服部 真治 澤岡 詩野 野藤 悠 本川 佳子 野中 久美子 村山 洋史 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.497-504, 2022-07-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
13

抄録 一般介護予防施策としての「地域づくりによる介護予防」において「通いの場」への支援は自治体にとって主要事業の一つである。「通いの場」の多様性が求められる一方で,行政が把握し,支援・連携すべき「通いの場」の概念や類型は明確ではない。そこで,東京都健康長寿医療センター研究所(東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター)と東京都は「通いの場」の概念整理検討委員会を設置し,東京都内62自治体が,一般介護予防施策のPDCAサイクルに沿って「通いの場」を把握し展開する際の目安として概念および主目的による類型を提示した。 「通いの場」の類型は,3つのタイプ(タイプⅠ:趣味活動,他者と一緒に取り組む就労的活動,ボランティア活動の場等の「共通の生きがい・楽しみを主目的」,タイプⅡ:住民組織が運営するサロン,老人クラブ等の「交流(孤立予防)を主目的」,タイプⅢ:住民組織が運営する体操グループ活動等の「心身機能の維持・向上等を主目的」)に分類した。この類型に基づき,地域資源としての「通いの場」を把握することにより,市区町村・生活圏域単位での地域のニーズと照らし合わせた戦略的かつ系統的な「通いの場」づくりの一助となると考えられる。
著者
新開 省二 藤田 幸司 藤原 佳典 熊谷 修 天野 秀紀 吉田 裕人 竇 貴旺 渡辺 修一郎
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.443-455, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
30
被引用文献数
18

背景 地域高齢者における“タイプ別”閉じこもりの実態についてはほとんどわかっていない。目的 地域高齢者における“タイプ別”閉じこもりの出現頻度とその特徴を明らかにする。方法 地域特性の異なる二地域[新潟県与板町および埼玉県鳩山町鳩山ニュータウン(以下鳩山 NT と略す)]に住む65歳以上の地域高齢者全員(それぞれ1,673人,1,213人)を対象に横断調査を実施した。ふだんの外出頻度が「週 1 回程度以下」にあるものを「閉じこもり」と定義し,そのうち総合的移動能力尺度でレベル 3~5 にあるものを“タイプ 1”,同レベル 1 または 2 にあるものを“タイプ 2”,と二つに分類した。地域,性,年齢階級別にタイプ別閉じこもりの出現頻度を比較するとともに,総合的移動能力が同レベルにあり,ふだんの外出頻度が「2, 3 日に 1 回程度以上」に該当する「非閉じこもり」との間で,身体的,心理・精神的,社会的特徴を比較した。成績 調査時点で死亡,入院・入所中,長期不在のものを除くと,与板町では97.2%(1,544/1,588),鳩山 NT では88.3%(1,002/1,135)という高い応答率が得られた。両地域とも地域高齢者のうち「閉じこもり」は約10%にみられ,そのタイプ別内訳は,与板町ではタイプ 1 が4.1%(男4.0%,女4.2%),タイプ 2 が5.4%(男5.2%,女5.6%),鳩山 NT ではそれぞれ3.3%(男1.5%,女4.9%)と6.8%(男5.7%,女7.8%)であった。潜在的交絡要因である性,年齢,総合的移動能力(レベル 1, 2 あるいはレベル 3-5)を調整すると,タイプ 2 の出現率に地域差がみられた[鳩山 NT/与板町のオッズ比=1.44(1.02-2.03)]。一方,タイプ 1 の出現率における地域差や両タイプの出現率における性差は認められなかった。両地域,男女において,年齢階級が上がるにしたがって両タイプの出現率は上昇し,タイプ 2 は80歳以降で,タイプ 1 は85歳以降で10%を越えていた。タイプ 2 はレベル 1 または 2 にある「非閉じこもり」に比べると,潜在的交絡要因を調整しても,歩行障害や失禁の保有率が高く,健康度自己評価や抑うつ度などの心理的側面,さらには高次生活機能や人・社会との交流といった社会的側面での水準が低かった。一方,タイプ 1 は,レベル 3~5 にある「非閉じこもり」に比べると,基本的 ADL 障害や「知的能動性」の低下を示す割合が低いにもかかわらず,家の中での役割がなく,転倒不安による外出制限があり,散歩・体操の習慣をもたないと答えた割合が高かった。結論 タイプ別閉じこもりの出現率には,地域差,年齢差を認めた。タイプ 2 には“要介護状態”のハイリスク者が多く含まれており,タイプ 1 を含めタイプ 2 も介護予防のターゲットとして位置づけるべきである。
著者
渡邉 彩 村山 洋史 高瀬 麻以 杉浦 圭子 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.215-224, 2022-03-15 (Released:2022-03-23)
参考文献数
23

目的 少子高齢化の進行による労働力不足が課題となる中,高齢者による就労を促進するための諸制度や職場環境の整備が急速に進められている。高齢者が積極的に労働市場に参入することへの期待が高まる中,高齢期における就労と高齢者の心身の健康との関連や課題を明らかにする必要がある。中でも,主観的健康感は,生活機能の低下や健康寿命の延伸にも強く関連し,高齢者の全体的な健康状態を捉えるための重要な健康指標である。そこで本研究は,高齢期における就労と主観的健康感との縦断的関連について,システマティックレビューの手法を用いて整理することを目的とした。方法 文献検索のデータベースは,PubMed, PsycINFO, CINAHL,医学中央雑誌を用いた。「高齢者」「就労」および「主観的健康感」をキーワードとして検索を行い,ⅰ)60歳以上の者を研究対象としていること,ⅱ)就労を独立変数,主観的健康感を従属変数として設定していること,ⅲ)縦断研究であること,を採択基準とした。採択された文献の質評価は,観察研究の質の評価法であるNewcastle-Ottawa Scaleを用いた。結果 最終的に,5件が採択され,4件が日本の研究,1件はアメリカの研究であった。5件のうち3件は,高齢期に就労している者は,非就労の者に比べて主観的健康感が高いことを報告していた。質評価の結果,5件とも6点あるいは7点(9点満点)であり,いずれも一定の水準を満たしていた。5件のうち2件は,高齢期の就労と主観的健康感の間に有意な関連は認められなかった。結論 本研究により,高齢期における就労と主観的健康感との間に一定の関連があることが示唆された。しかし,その効果を縦断的に検討した文献はいまだ少ないことも明らかになった。今後,高齢期における就労がより一般的になることが見込まれる中,高齢者が積極的かつ安心して就労するためにも,就労が高齢者の健康に及ぼす影響やその機序について,さらなるエビデンスを伴った知見の集積が望まれる。
著者
杉浦 圭子 村山 洋史 野中 久美子 長谷部 雅美 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.37-47, 2022-01-15 (Released:2022-01-28)
参考文献数
27

目的 最長職は高齢期の健康状態や生活の質に関連すると報告されている。本研究では,主として就労支援の観点から,最長職の就労形態および業種と,現在の就労状況および就労理由との関連を明らかにすることを目的とした。方法 東京都大田区入新井地区に居住する65歳以上の者のうち,要介護度4以上,施設入所中の者等を除いた8,075人全数に対し,2015年8月に郵送による無記名自記式質問紙調査を実施した。調査票では基本属性,生活状況,現在の就労状況および最長職の就労形態と業種を尋ねた。また,現在就労している者については就労理由を尋ねた。分析は現在の就労状況(「常勤」「非常勤」「就労なし」)を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を,就労理由については個々の理由の該当有無を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。結果 5,184件の調査票を回収し(回収率64.2%),5,050件を分析対象とした。最長職の就労形態は,正規の職員・従業員が最も多く42.7%で,業種は販売・サービス職が最も多かった(24.2%)。常勤,非常勤を含め現在の就労者は約3割だった。常勤・非常勤を含めた就労者のうち,その就労理由を尋ねると「生活のための収入を得るため」が最も多く約3割を占め,次いで「健康のため」「生きがいを得るため」「社会貢献・つながりを得るため」であった。現在就労している者の最長職の業種は,常勤では自営業主・自由業,会社・団体などの役員が多く,非常勤では専門職が多かった。就労していない者は正規の職員・従業員および無職(専業主婦含)が多かった。現在就労している理由を「生活のための収入を得るため」とした者は,最長職の就労形態については自営業主・自由業が,業種については労務系職種が多く,「健康のため」「生きがいを得るため」「社会貢献・人とのつながりを得るため」を理由としていた者は,最長職が正規の職員・従業員が,会社・団体などの役員,業種については事務系・技術系職種が多かった。結論 最長職の就労形態や業種によって現在の就労状況や就労理由が異なることが明らかとなった。高齢者の就労や社会参加が円滑に推進されるためには,高齢期の健康状態や生活の質に関連が深い最長職を含め,生活背景などの個別性を加味する必要性があると考える。
著者
根本 裕太 桜井 良太 松永 博子 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.12, pp.888-898, 2021-12-15 (Released:2021-12-24)
参考文献数
23

目的 自然災害時において,情報通信技術(ICT)機器を用いることで,迅速に多様な情報を収集できる。本研究では性別・年齢階級別のICT機器利用状況を示し,ICT機器利用者における自然災害時に想定される情報収集の特徴を明らかにすること,インターネットを介した情報収集手段に関連する人口統計学的要因を解明することを目的とした。方法 東京都府中市の18歳以上の住民21,300人を対象に郵送調査を実施した。ICT機器は,パソコン,スマートフォン,タブレット端末,携帯電話の利用状況を調査し,いずれかの機器を利用する者をICT機器利用者とした。自然災害時に想定される情報収集手段として,テレビ,ラジオ,インターネット検索,緊急速報メール,防災行政無線,行政機関のホームページ,近隣住民,家族,友人から該当するものをすべて選択してもらった。このうち,インターネット検索,緊急速報メール,行政ホームページを,インターネットを介した情報収集手段とした。ICT機器利用割合の性差と年齢階級差ならびにインターネットを介した情報収集手段に関連する人口統計学的要因を検討するため,ロバスト分散を用いたポアソン回帰分析を実施した。結果 9,201人(回答率43.2%)から有効回答を得た。ICT機器利用者は,70歳未満では95%程度以上,80歳以上では女性66.7%,男性70.6%であった。ICT機器利用者の災害時に想定される情報収集手段は,インターネット検索を選択した者は,女性では60歳未満,男性では70歳未満の70%以上であったが,80歳以上の女性では7.8%と低かった。インターネットを介した情報収集手段に関連する人口統計学的要因は,インターネット検索では,女性,世帯収入が高い者,教育年数が長い者,配偶者がいない者で選択する者が多く,同居者がいる者や高年層,とくに高齢女性では少なかった。緊急速報メールを選択した者は,女性,教育年数が長い者で多く,高年層,配偶者がいない者では少なかった。行政ホームページを選択した者は,女性,教育年数が長い者で多く,同居者がいない者,配偶者がいない者や高年層,とくに高齢女性で少なかった。結論 ICT機器利用者における災害時に想定される情報収集手段は性や年齢階級により異なることが示され,インターネットを介した情報収集手段に関連する要因は情報収集手段によって異なることが示唆された。
著者
原田 謙 小林 江里香 深谷 太郎 村山 陽 高橋 知也 藤原 佳典
出版者
日本老年社会科学会
雑誌
老年社会科学 (ISSN:03882446)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.28-37, 2019-04-20 (Released:2020-04-20)
参考文献数
31

高齢者に対するエイジズム研究は,国内外において蓄積されてきた.しかし「もうひとつのエイジズム」とよぶべき,若年者に対する否定的態度に関する研究は乏しい.本研究は,地域と職場における世代間関係に着目して,高齢者の若年者に対する否定的態度に関連する要因を検討することを目的とした.データは,無作為抽出された首都圏の60〜69歳の男女813人から得た.分析の結果,以下の知見が得られた. ①若年者との接触頻度が低い者ほど,若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ②高齢者の生活満足度は若年者に対する否定的態度と関連していなかった.ただし職場満足度が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた. ③世代性の得点が低い者ほど若年者を嫌悪・回避する傾向がみられた.一方,世代性の得点が高い者ほど若年者を誹謗するという,アンビバレントな態度が示された. ④職場でエイジズムを経験している者ほど,若年者を誹謗していた.
著者
川﨑 采香 佐久間 尚子 大神 優子 鈴木 宏幸 藤原 佳典
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集
巻号頁・発行日
vol.2019, 2019

<p>日常記憶の加齢変化を調べるため、ボランティア研究に参加した高齢者を対象に日本版リバーミード行動記憶検査(RBMT)の「物語」再生による10年間の縦断的変化を検討した。初回(BL)の年齢分布に基づき、3群(age1:55名(56〜64歳)、age2:56名(65〜69歳)、age3:46名(70〜81歳))に分けた。BLと10年目(F10)の再生内容を25項目別に1点(正再生)・0.5点(類似再生)・0点(誤再生/言及なし)に採点し、3群別の25項目別正答率を求めた。この正答率を従属変数とする3群×2検査回の反復分散分析の結果、群の主効果(p&lt;.01)、群×検査回の交互作用(p&lt;.001)が有意であり、F10でage3の正答率が減少した。また、25項目別の正答率を10%ランク別に区切り、BLとF10のランク変化を見たところ、age1では上昇9項目/下降2項目に対し、age3では上昇2項目/下降6項目であったが、age3の下降は正答率80%以上で2項目、50%未満で3項目だった。以上より、日常記憶の加齢変化は緩やかに生じ、記憶容量が減少することが示唆された。</p>
著者
新開 省二 藤田 幸司 藤原 佳典 熊谷 修 天野 秀紀 吉田 裕人 竇 貴旺
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.10, pp.874-885, 2005

<b>目的</b>&emsp;地域高齢者における閉じこもり発生の予測因子をタイプ別に明らかにする。<br/><b>方法</b>&emsp;新潟県与板町の65歳以上の全住民1,673人を対象として 2 年間の前向き疫学研究を行った。ふだんの外出頻度が「週 1 回程度以下」にあるものを閉じこもりと定義し,そのうち総合的移動能力尺度でレベル 1(独力で遠出可能)あるいは 2(独力で近隣外出可能)にあるものをタイプ 2,同レベル 3 以下(独力では近隣外出不可能)にあるものをタイプ 1 と二つに分類した。初回調査時にレベル 1, 2 かつ非閉じこもりにあった1,322人(応答者1,544人の85.6%)について 2 年後の状況を調べ,レベル 1,2 非閉じこもりを維持,タイプ 1 に移行,タイプ 2 に移行,レベル 3 以下非閉じこもりに移行の 4 群に分類した。分析においては,まず,追跡調査時もレベル 1, 2 非閉じこもりを維持していた群を基準として,タイプ 1 あるいはタイプ 2 に移行した群との間で,初回調査時の身体,心理,社会的特性の分布を比較した。次に,多重ロジスティックモデル(ステップワイズ法)を用いて,性,年齢を調整しても有意な関連性を示した変数全てをモデルに投入し,レベル 1, 2 非閉じこもりからタイプ 1 あるいはタイプ 2 に移行することの予測因子を抽出した。<br/><b>成績</b>&emsp;初回調査時にレベル 1, 2 非閉じこもりであったものの 2 年後の状況は,レベル 1, 2 非閉じこもりが1,026人(77.6%),タイプ 1 が22人(1.7%),タイプ 2 が63人(4.8%),レベル 3 以下非閉じこもりが29人(2.2%)であった[追跡不可(死亡等含む)は182人(13.8%)]。タイプ 1 への移行を予測するモデルに採択された変数(予測因子)は,年齢(高い,5 歳上がるごとのオッズ比[95%信頼区間]は2.10[1.36-3.24]),就労状況(なし,4.42[1.21-16.2]),歩行障害(あり,4.24[1.37-13.1]),認知機能(低い,5.22[1.98-13.8])であり,タイプ 2 のそれは,年齢(高い,5 歳上がるごと1.65[1.32-2.06]),抑うつ傾向(あり,2.18[1.23-3.88]),認知機能(低い,2.72[1.47-5.05]),親しい友人(なし,2.30[1.08-4.87]),散歩・体操の習慣(なし,2.21[1.26-3.86])であった。<br/><b>結論</b>&emsp;地域高齢者におけるタイプ 1 閉じこもりの発生には身体・心理的要因が,タイプ 2 閉じこもりのそれには心理・社会的要因が,それぞれ主に関与していることが示唆された。閉じこもりの一次予防に向けた戦略はタイプ別に組み立てる必要がある。
著者
桝本 妙子 山田 陽介 山田 実 中谷 友樹 三宅 基子 渡邊 裕也 吉田 司 横山 慶一 山縣 恵美 伊達 平和 南里 妃名子 小松 光代 吉中 康子 藤原 佳典 岡山 寧子 木村 みさか
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.8, pp.390-401, 2015 (Released:2015-10-27)
参考文献数
43
被引用文献数
6

目的 地域在住自立高齢者の転倒リスクとその関連要因および性差を検討した。方法 京都府亀岡市の65歳以上の全高齢者の中で要介護 3 以上を除く18,231人に対して2011年 7~8 月に行った自記式留め置き式質問紙調査への回答者13,159人のうち(回収率72.2%),要支援・要介護認定者を除く「自立高齢者」12,054人について分析した。調査票は個別に配布し郵送で回収した。調査内容には,基本属性,鳥羽らによる転倒リスク簡易評価指標 5 項目,日常生活圏域ニーズ調査基本チェックリスト25項目,老研式活動能力指標13項目を用い,高齢者の諸機能や生活機能の低下の有無を示す 9 つの指標(①運動機能,②低栄養,③口腔機能,④閉じこもり,⑤物忘れ,⑥うつ傾向,⑦ IADL,⑧知的能動性,⑨社会的役割)で調査した。分析は,性,年齢別の転倒リスクとその関連要因および性差をカイ二乗検定とロジスティック回帰分析により把握し,9 つの評価指標を独立変数,年齢と教育年数を共変量,転倒リスクを従属変数とするロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を行って各要因による転倒リスクへの独立した影響を性別ごとに分析した。結果 本調査回答者の過去 1 年間の転倒率は20.8%で,転倒リスク高群は26.6%であった。転倒リスクは,男女とも加齢とともに高くなり,女性はすべての年齢層において男性よりも高かった。また,男女とも,すべての評価指標と転倒リスクとの関連がみられ,それぞれの要因を調整した結果では,男性は運動機能,低栄養,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に,女性は運動機能,口腔機能,物忘れ,うつ傾向,IADL に有意な関連がみられ,運動機能低下は男女とも最も強い要因であった。性差では,低栄養,口腔機能は男性の方に,IADL,知的能動性は女性の方に転倒リスクとの関連が強かった。結論 地域在住自立高齢者の 5 人に 1 人は過去 1 年間に転倒を経験し,4 人に 1 人は転倒リスクを有していた。転倒リスクと 9 つすべての評価指標との間に有意な関連がみられ,とくに男女とも運動機能低下が最も大きかった。また,転倒リスクに影響する要因に性差がみられ,性別を考慮した支援策が必要と示唆された。
著者
谷口 力夫 星 旦二 藤原 佳典 高林 幸司
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.5-18, 1998

都道府県別にみた平均寿命の30年間の経年変化の実態を分析し、特に東京都平均寿命の特性を明らかにすることを目的とし、1965年から1995年までの5年毎30年間の男女別都道府県別平均寿命を分析対象として調査を実施した。都道府県別平均寿命の経年変化をみると、男女共に急速に延びていった。しかしながら性別にみた増加傾向は同一ではなかった。女性の平均寿命は、1985年頃まで直線的に延長していったが、1990年以降はその延びが鈍化し上に凸な二次曲線の延びとなっていった。男性の増加傾向は、女性よりも5年早く二次曲線の延びに変化していた。都道府県別平均寿命の地域間格差を経年的にみると、1965年では男性で最大4.52歳、女性では同様に3.46歳であったものが、30年後の1995年では、男性で3.67歳、女性では3.25歳へと縮小していった。1965年の時点で、最も短い平均寿命は、男性では青森県の65.32歳、秋田県の65.39歳で、女性では秋田県の71.24歳、岩手県の71.58歳であった。一方、最も長い平均寿命の地域は、男性で東京都の69.84歳、京都府の69.18歳、女性では東京都の74.70歳、神奈川県の74.08歳であった。1965年の時点において、東京都の男女の平均寿命は突出して高い値を示していたが、年次経過とともにその延びは鈍る傾向を示し、30年後の1995年における順位は大きく変化していった。30年後の1995年の東京都平均寿命の男性順位は20位で、女性平均寿命の順位は35位となり、他の道府県の平均寿命の延びに比べて、延び率が少ないことが明らかになった。
著者
清野 諭 北村 明彦 遠峰 結衣 田中 泉澄 西 真理子 野藤 悠 横山 友里 野中 久美子 倉岡 正高 天野 秀紀 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.399-412, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
39

目的 本研究の目的は,大都市在住高齢者を対象としてフレイルの認知度とその関連要因を明らかにすることである。方法 東京都大田区で実施したフレイル予防のための地域介入研究のベースラインと2年後調査データを用いた。2016年7月に,郵送法によって65-84歳の男女15,500人の健康度や生活実態を調査した。2018年 7 月に同一集団のフレイル認知度を調査し,この有効回答者10,228人をフレイル認知度の解析対象とした。さらに,これに2016年の調査データを結合できた9,069人を対象として,フレイル認知度の関連要因を検討した。フレイルについて「意味を知っている」または「聞いたことはあるが意味は知らない」と回答した者の割合を認知度とした。これを目的変数とし,年齢,婚姻状況,家族構成,教育歴,等価所得,BMI,既往歴の数,食品摂取多様性得点,腰痛,膝痛,飲酒,喫煙,抑うつ,運動習慣,社会活動,社会的孤立,フレイルの有無を説明変数とした決定木分析とマルチレベルポアソン回帰分析を適用した。結果 フレイルの認知度は20.1%(男性15.5%,女性24.3%)と推定された。決定木分析による認知度の最も高い集団は,社会活動と運動の習慣があり,かつ食品摂取多様性得点が 4 点以上の女性であった(認知度36.3%)。フレイル認知の独立した有意な関連要因は,年齢(1 歳ごと:多変量調整済み prevalence ratio[PR]=1.03,[95%信頼区間=1.02-1.04]),性(女性:1.35[1.21-1.51]),教育歴(高等学校:1.27[1.11-1.45],短大・専門学校以上:1.47[1.28-1.70]),等価所得(250万円以上/年:1.12[1.01-1.25]),運動習慣(あり:1.26[1.11-1.43]),食品摂取多様性得点(6 点以上:1.37[1.21-1.55]),社会活動(あり:1.33[1.20-1.49]),社会的孤立(あり:0.75[0.67-0.85]),フレイル(あり:0.72[0.62-0.84])であった。結論 フレイルの認知度は低水準であった。高年齢で社会経済状態や社会活動・運動・食習慣が良好な女性ではフレイルという用語が比較的よく認知されていた。一方,フレイル対策が必要な者ではフレイル認知度が低いという実態が明示された。ハイリスク者のフレイル予防・改善を促す具体策の検討が急務である。
著者
北村 明彦 清野 諭 谷口 優 横山 友里 天野 秀紀 西 真理子 野藤 悠 成田 美紀 池内 朋子 阿部 巧 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.134-145, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

目的 高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施が進められる中,生活習慣病やフレイル関連の各因子が地域在住高齢者の自立喪失に及ぼす影響の強さ(ハザード比)と大きさ(寄与危険度割合)を明らかにする。方法 群馬県草津町において,2002~11年の高齢者健診を受診した65歳以上の男女計1,214人(男性520人,女性694人)を対象とし,平均8.1年(最大13.4年)追跡した。自立喪失は,介護保険情報による要介護発生または要介護発生前の死亡と定義した。生活習慣病因子として,高血圧,糖尿病,肥満,腎機能低下,喫煙,脳卒中・心臓病・がんの既往等を,機能的健康の関連因子として,フレイル区分,低体重,貧血,低アルブミン血症,認知機能低下を採り上げた。フレイル区分は,phenotypeモデルの5つの構成要素(体重減少,疲弊,活動量低下,歩行速度低値,握力低値)のうち3項目以上該当をフレイル,1~2項目該当をプレフレイルと定義した。Cox比例ハザードモデルを用いた回帰分析により,各要因保有群における自立喪失発生の多変量調整ハザード比(HR),集団寄与危険度割合(PAF)を算出した。結果 自立喪失発生者数は475人(要介護発生372人,要介護発生前死亡103人)であった。対象者全体でみると,自立喪失の多変量調整HRはフレイル,プレフレイル,認知機能低下,脳卒中既往,喫煙において1.3~2.2倍と有意に高値を示した。自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%,フレイルが12%と他の要因に比し高率であった。男性では自立喪失のPAFは,プレフレイルが19%と最も大きく,次いで喫煙が11%であり,女性では,フレイル,プレフレイルがともに18%,腎機能低下が11%であった。前期高齢者では,フレイル,プレフレイルの他に脳卒中既往,貧血,低アルブミン,認知機能低下,喫煙,糖尿病における自立喪失の多変量調整HRが有意に高く,自立喪失のPAFは,プレフレイルが18%,フレイルが13%,喫煙が11%であった。結論 高齢者健診の受診者を対象とした検討の結果,自立喪失に寄与する割合が最も大きい要因はフレイル,プレフレイルであった。前期高齢期からフレイル予防,ならびに生活習慣病の予防・改善を図ることが集団全体の自立喪失の低減に寄与すると考えられた。
著者
村山 洋史 小宮山 恵美 平原 佐斗司 野中 久美子 飯島 勝矢 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.317-326, 2019-06-15 (Released:2019-06-21)
参考文献数
26

目的 ソーシャルキャピタルは多職種連携を促進する重要な要因であることが示されている。本研究では,在宅医療の推進を目的に作成された「在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会」(以下,研修会)の参加者を対象に,在宅医療・介護従事者に対するソーシャルキャピタルの醸成効果を検討した。方法 東京都北区で2014年7月~2015年1月に実施された研修会参加者への自記式質問紙調査のデータを用いた。質問紙調査は研修会の前後で実施した。研修会の参加者は,区内で在宅医療・介護に従事している,あるいは関心を持っている専門職であった。開業医・病院医師には延べ5.0日,開業医・病院医師以外には延べ4.5日のプログラムが提供された。在宅医療の動機付け項目として,在宅医療に対するイメージ形成と効力感を測定した。ソーシャルキャピタルに関しては,同職種への信頼感と互酬性の規範(結束型×認知的ソーシャルキャピタル),他職種への信頼感と互酬性の規範(橋渡し型×認知的ソーシャルキャピタル)を測定した。加えて,開業医以外の職種に対しては,開業医との関係に特化し,開業医への信頼感と互酬性の規範(橋渡し型×認知的ソーシャルキャピタル)と開業医との連携活動状況(業務協力と交流の2因子を含む;橋渡し型×構造的ソーシャルキャピタル)を把握した。解析には一般化推定方程式を用い,効果量を求めた。活動内容 研修会参加者54人中,研修会前後の両方の回答が得られた52人(うち2人が開業医)を対象とした。まず,在宅医療の動機付け項目では,効力感は変化がなかったものの,在宅医療に対するイメージ形成の得点は研修会前後で向上していた。ソーシャルキャピタルでは,同職種への信頼感と互酬性の規範の両者とも研修会前後で得点が向上していた。一方,他職種への信頼感と互酬性の規範は,両項目とも得点の向上は見られなかった。開業医以外の職種のみに限定した開業医との関係では,信頼感と互酬性の規範,および連携活動状況の業務協力において得点の向上が見られた。さらに,研修会参加者内での信頼感と互酬性の規範も向上していた。結論 研修会に参加することで,在宅医療・介護従事者に対するソーシャルキャピタルが醸成されていた。在宅医療・介護領域におけるソーシャルキャピタルの醸成に向け,本研修会のような機会の提供は一つの方策と考えられた。
著者
藤原 佳典 柴田 博 原田 謙 新開 省二 吉田 裕人 星 旦二
出版者
東京都立大学都市研究センター
雑誌
総合都市研究 (ISSN:03863506)
巻号頁・発行日
vol.81, pp.39-48, 2003

先進三カ国の主要都市、東京とニューヨーク、パリの健康水準の実態を都心部、周辺部、全体に分けて検討した。同一主要都市内では中心部で平均寿命が短く、AIDS・結核発症者の割合が多かった。高齢期の総死亡率や主要な疾患別死亡率については主要都市内での格差よりも主要都市聞での年齢階級別の相違のほうが顕著であった。とりわけマンハッタン地区は年齢階級の上昇とともにパリ中心部地区及び東京都23特別区に比べて相対的に死亡率の低下を認めた。乳児死亡率・新生児死亡率については主要都市間及び同一主要都市内でもニューヨーク全体つまり、マンハッタン地区の外側が高かった。次に、高齢期の総死亡率と乳児死亡率について三主要都市ごとに中心部地区の分布及び相関を見た。各死亡率に対するマンハッタン20区のばらつきが目立った。また、65才以上総死亡率と乳児死亡率の相関関係についてはパリ中心部地区のみ両者に有意な負の相関がみられた。三主要都市間あるいは内部の健康水準の格差をもたらす規定要因を明確にするには、今後、三主要都市における衛生行政に関する指標、人口学的指標及び社会・経済学的指標を含めて国際比較の視点から学際的・総合的に相関関係を検討する必要性が示唆された。We reported healthy standard of the three international megalopolises, Tokyo, New York, and Paris, in advanced countries, comparing with central area and around it respectively. Central areas had shorter life expectancy, and had more incidence of AIDS and tuberculosis in every three city. In terms of age-specific total death rate in older persons and main diseases, there was more remarkable difference among inter-cities than among inner-cities. Whole New York City, around Manhattan area showed highest infant mortality rate (IMR) and neonatal mortality rate in every area in the three cities. Total death rate for older persons showed significantly inverse correlation with IMR only in 20 central wards in Paris.
著者
倉岡 正高 藤原 佳典 鈴木 宏幸 飯塚 あい 内山 愛子 長畑 萌 村上 深 南 潮
出版者
地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所)
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2015-04-01

本研究では、こどもの教育・文化的環境づくりと高齢者の健康増進を目的とした囲碁を活用した世代間交流プログラム「iGOこち」を開発し、こどもの対人関係能力や高齢者へのイメージに与える影響、高齢者の認知機能と心理社会的側面に与える影響について検討した。プログラムの内容は、プロ棋士による講義、個人戦、高齢者とこどもが協力し合う練習問題、チーム戦(ペア碁)などである。調査の結果、こどもは高齢者への尊敬と思いやりの心を養い、知的活動に消極的な傾向にある高齢者において注意・実行機能が向上する可能性が示唆された。