- 著者
-
遠藤 一博
- 出版者
- 福島県立医科大学
- 雑誌
- 若手研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 2002
里吉病(全身こむら返り症)におけるタクロリムスとステロイド併用の治療経験13歳女性.進行性有痛性筋クランプ,脱毛,無月経の臨床症状から本症例を里吉病と診断した.平成12年8月以降免疫グロブリン大量静注療法(IVIg)を施行.筋症状は軽快したが脱毛,無月経は改善せず.2ヶ月後,筋症状の増悪及び脱毛の進行を認め,同年12月再入院.既往歴:十二指腸潰瘍,アトピー性皮膚炎,気管支喘息の既往あり.入院時現症:前頭部及び眉部の脱毛あり,腋毛,恥毛なし.筋力テスト時に有痛性筋クランプ症状が誘発される以外,神経所見正常.検査成績:CK正常.抗核抗体陽性.抗アセチルコリン受容体抗体強陽性.入院後経過:膠原病,重症筋無力症症状を認めないが自己抗体陽性から里吉病においても自己免疫説(里吉病(全身こむら返り症)における自己抗体の同定;第13回日本神経免疫学会(2001年2月),第42回日本神経学会総会(2001年5月):遠藤一博 発表)があり,ステロイドパルス療法施行後タクロリムス3mg/日,プレドニゾロン(PSL)30mg/隔日治療を導入した.直後から筋症状が増悪し,バクロフェン40mg/日内服を加えた.その後,有痛性筋クランプ症状は改善した.平成13年5月以降バクロフェンを中止しても無月経,筋症状,脱毛の改善をみた.里吉病の過去の報告例ではIVIg,ステロイドパルス療法は有効だが効果は一時的であり,またPSL100mg/日連日内服療法で無月経,脱毛の改善をみたとの報告があるがいずれも極少数例での検討であり本症に確立された治療法はない.連日PSL100mg内服は成長期女性にとって,低身長,満月様顔貌,またその他の副作用(本例では十二指腸潰瘍の既往もある)も無視できない.本症例にタクロリムスとステロイド併用療法を施行し全症状の改善をみた.同併用療法は里吉病治療の1選択肢となるのではないかと考えた.