著者
高木 信
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.41, no.12, pp.1-13, 1992-12-10 (Released:2017-08-01)

『平家物語』の「剣巻」は、『愚管抄』的な認識と似て、宝剣が海底に沈んでも王権は安泰であると主張するものとして位置付けられる。また構造的には、アマテラス・宝剣を<聖なるもの>として形象化する。ところが、スサノヲに退治されたヤマタノヲロチが復活し、宝剣を奪うことにより、王権の正統性は奪われてしまう。このことは覚一本の<カタリ>のなかで実現されるのであり、他の諸本は「王権の物語」としての自らを維持しようとするために様々な不整合を抱え込むことになる。
著者
高木 信二 倉田 岳人 郡山 知樹 塩田 さやか 鈴木 雅之 玉森 聡 俵 直弘 中鹿 亘 福田 隆 増村 亮 森勢 将雅 山岸 順一 山本 克彦
雑誌
研究報告音声言語情報処理(SLP) (ISSN:21888663)
巻号頁・発行日
vol.2018-SLP-120, no.14, pp.1-9, 2018-02-13

2017 年 8 月 20 日から 8 月 24 日にかけ,ストックホルム ・ スウェーデンで Interspeech 2017 が開催された.Interspeech は音声言語情報処理の分野におけるトップカンファレンスと位置付けられており,今後の本分野の動向に大きく影響を与えている.本稿では,本会議における研究動向,注目すべき発表について報告する.
著者
高木 信
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.11-24, 2006-06-10

『平家物語』研究において、あるいは学校教育において、知盛は運命の人として称揚され続けてきた。しかし中世から近世にかけての享受としては、諦念を抱いた知盛像よりも怨みを持ち怨霊化する知盛像が主流であった。そこで、知盛を運命の人とする近代的な読み方を検証し直す必要が生じる。延慶本以外のほとんどの諸本は、知盛が阿波の民部裏切りを知ると、女房たちの船に乗り移り、掃除をして、東国の武将たちに陵辱されるであろうと脅しをかける。このような知盛の作り出す文脈は、己の理想とする美的最期を達成しようとするものでしかない。しかし中等教育では、知盛を英雄とすることで、死を美学化してしまっている。このような死の美学化に抗するためにも、英雄・知盛像とは違う知盛像をテクストから還元しておく必要性がある。
著者
伊藤 俊方 高木 信彦 佐藤 健一 佐藤 寿則
出版者
地学団体研究会
雑誌
地球科學 (ISSN:03666611)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.363-369, 2007-09-25

能登半島地震の震源地に近い輪島市門前町において,自然ガンマ線探査を実施した.調査期間は,余震が続く4月19,20日である.探査はカーボーンによって行い,測線は国道249号に沿って実施した.探査期間中には震度1以上の有感地震は観測されていないが,M2.0以下の余震は数回発生しており,これらの発生時間におけるガンマ線強度の変化については,特定の傾向が得られなかった.三種類のガンマ線核種を用いた解析によると,ビスマスが急増する異常点がいくつかの地点で見出された.これらは地震断層に伴なう断裂の可能性がある.地震断層として発見された中野屋の県道では,すでに亀裂も修復されガンマ線強度の増加は認められなかった.今後は定点における長期連続測定を行い,余震前後のガンマ線強度変化を把握することによって,この手法が地震防災に活用できる可能性を検証する必要があると考えている.
著者
柴田 弘文 SAXONHOUSE G DENOON David INTLIGATOR M DRYSDALE Pet 韓 昇洙 PANAGARIYA A MCGUIRE Mart 井堀 利宏 猪木 武徳 福島 隆司 高木 信二 舛添 要一 八田 達夫 安場 保吉 佐藤 英夫 PANAGARIYA Arvind CHEW Soo Hong HON Sue Soo
出版者
大阪大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1988

安全保障問題の近年の急変転は目をみはるものがある。当国際学術研究の第1年目は東西冷戦下で資本主義と社会主義の二大陣営の対立から生まれる安全保障上の緊張とそれを突き崩そうとする潜在的な両陣間の貿易拡大の欲求が共存するもとでの安全と貿易の関係を探るべくスタ-トした。ところが第2年目には、ベルリンの壁の崩壊と共に東西の対立が氷解し、自由貿易の可能性が拡大して、もはや安全保障に対する考慮は必要なく、この研究課題も過去のものになったかとさえ見えた。しかし、東西の対立の氷解が直ちに全ての対立の霧散に向かうものではなかった。民族間の局地的対立はかえって激化し、更に貿易でなく直接支配によって原油資源を確保しようとする試みは湾岸戦争を引き起こした。世界の政治の経済の根本問題が貿易と安全保障の問題と深く関わっていることを最近の歴史は如実に物語っている。本研究課題が世界経済の平和的発展の為の中心的課題であることが再度認識された。しかし貿易と安全保障の相互関係の分析に正面から取り組んだ研究は少ない。分析のパラダイムがまた確立されていないことにその理由がある。従って当研究では基礎的分析手法の開発を主目的の一つとした。先づ第一に柴田弘文とマックガイヤ-の共同研究は安全保障支出によって平和が維持される効果が確率変数で与えられるとして、安全保障支出がもたらす一国の厚生の拡大を国民所得の平時と有事を通じての「期待値」の増大として捉えて経済モデルを開発した。このモデルは例えば国内産業保護策と、安全保障支出は代替関係にあることを示唆することによって、貿易と安全保障の相互依存関係の理論的分析の基礎を提供することになった。柴田は更に備蓄手段の大幅な進歩から有事に当たっての生活水準の維持のためには全ての国内産業を常時維持することよりも安価な外国商品を輸入し、有事に備えて備蓄することの方が、効率的である点に注目して、安全保障費支出、国内産業保護、備蓄の三者の相互関係を明らかにする理論を構築した。更に柴田はパナガリヤと共同研究を行い、貿易と安全保障支出及びそれらが二敵対国の国民厚生に及ぼす効果を説明する理論を構成した。井堀は米国の防衛支出のもたらす日本へのスピルオ-バ-効果の日米経済に及ぼす影響についてのマクロ経済学的分析を行った。安場は東南アジア諸国の経済発展がアジア地域の安全保障に与える効果を研究した。佐藤は貿易と安全保障が日米の政治関係に及ぼす効果を国際政治学的に分析した。オ-ストラリヤのドライスデ-ルは近年の日本の経済力の著しい増加が太平洋地区にもたらす効果を分析した。八田はチュ-の協力を得て安全保障のシャド-プライズについての数学的理論を構築した。第2年目に基本理論の深化を主に行った。パナガリアは1990年9月に再び渡日して柴田と論文「Defense Expendtures.International Trade and Welfare」を完成した。更にチュ-ス-ホングは8月に来日し、柴田と共同研究を行い「Demand for Security」と題する共同論文の執筆を開始した。本研究の研究協力者である岡村誠は農業問題と安全保障の関係の分析を行って論文を執筆した。第3年目には理論の応用面への拡張に努力した。猪木は国の有限な人的資源を民需から軍需活動に移転することから起こる経済成長への負の効果と、軍関係機関での教育がもたらす人的資源の高度化から生まれる正の効果を比較する研究を行なった。井堀利宏は貿易関係にある二国間の安全保障支出を如何に調整するかの問題について理論的分析を行い論文を完成した。この三ヶ年に亘る日米豪の研究者による共同研究の結果、今まで国際経済学者によって無視され勝ちであった安全保障と貿易の相互維持関係を分析する基礎となる重要な手法を幾つか確立すると云う成果が得られたと考える。世界経済の安定的な発展のためには貿易と安全保障の相互関係についての深い理解が不可欠である。この共同研究課題で得られた知見を基礎として、更に高度な研究を続行することが望まれる。
著者
井戸川 貴志 出口 博之 辻 幹男 繁沢 宏 高木 信雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. C, エレクトロニクス (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.89, no.5, pp.321-328, 2006-05-01
被引用文献数
17

単純なストリップ導体を二次元周期配列して構成されるオフセット給電のマイクロストリップリフレクトアレーにおいて,広帯域な特性の実現を目指して,長さの異なる線状素子を一方向に密に配列して構成し,その簡易設計法について述べている.本法の妥当性は,モーメント法をもとにした数値解析,及び試作した単層構造のマイクロストリップリフレクトアレーのX帯での放射パターンの測定評価によって検証している.
著者
高木 信一
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.74, no.9, pp.1158-1170, 2005-09-10 (Released:2019-09-27)
参考文献数
122
被引用文献数
4

微細化に伴う種々の物理限界要因により,従来のスケーリングのみでは難しくなっているSi MOSFETの性能向上を実現する技術として,近年注目が集まっている,高移動度・高速度チャネルを用いたCMOSデバイス技術について紹介する.微細チャネル下での駆動力向上手法について,反転層中の電子状態,特にサブバンド構造の最適設計の観点から,その物性的背景を総括するとともに,ひずみSi,Ge,超薄膜チャネルなどに関する最近の実験結果を述べることにより,今後のMOSデバイス技術を牽引していくと考えられる,高移動度チャネルMOSトランジスタ技術を展望する.
著者
小田 寿 高木 信嘉 常田 康夫 矢花 真知子 金子 好宏
出版者
社団法人 日本腎臓学会
雑誌
日本腎臓学会誌 (ISSN:03852385)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.221-225, 1988-02-25 (Released:2010-07-05)
参考文献数
20

It has been reported that rifampicin attenuates an effect of corticosteroid. We observed nonresponsiveness to prednisolone treatment during rifampicin administration in a case of adult nephrotic syndrome. A 21 years old man had the onset of facial edema and ascites in and was diagnosed as nephrotic syndrome (minimal change) at a certain hospital. He was treated with prednisolone and obtained complete remission. He had the complaint of chest pain in May 1984, and was transfered to our hospital. We diagnosed him as nephrotic syndrome and tuberculous pleuritis. We administered him isoniazid 300 mg/day, rifampicin 450 mg/ day, streptomycin 3 g/week and prednisolone 30 mg/day. His urinary protein was not decreased. Subsequently, we administered him predonisolone 60 mg/day. But his urinary protein was not changed. We thought that rifampicin might attenuate the effect of pre-dnisolone. After rifampicin was discontinued, urinary protein was decreased rapidly. He obtained complete remission and was discharged from our hospital. It was reported that a patient with Addison's disease required increased corticosteroid dosage whilst receiving rifampicin and had cortisol catabolism following hepatic microzomal enzyme induction by rifampicin. Our case of nephrotic syndrome showed the nonresponsi-veness to prednisolone treatment during rifampicin administration. The corticosteroid is essential to treatment of nephrotic syndrome and collagen disease, and rifampicin is an important drug in treatment of tuberculosis. We should pay attension to drug interac-tion between corticosteroid and rifampicin in the cases with combination of these drugs.