著者
阿部 眞理子 伊藤 裕之 尾本 貴志 篠﨑 正浩 西尾 真也 安徳 進一 三船 瑞夫 当金 美智子 新海 泰久
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.843-847, 2014-11-30 (Released:2014-12-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は71歳女性.40歳で糖尿病と診断され,近医で経口血糖降下薬による治療を受けていたが血糖コントロールは不良で,2014年4月よりイプラグリフロジン50 mgが追加された.以後,強い口渇を自覚し,投与後9日目に小脳・脳幹梗塞を発症して入院した.血糖値は219 mg/dl, HbA1c 9.8 %であり,ヘモグロビン13.4 g/dl(3月には,11.0 g/dl),ヘマトクリット40.6 %(同35.3 %)より,脱水が示唆された.心電図では虚血所見があり,ABIは0.85/0.76と低値で,超音波検査で両側の前脛骨~後脛骨動脈に狭窄・閉塞がみられた.同薬を中止し,エダラボンと濃グリセリンの投与,インスリン治療を行い,軽快退院した.本例は高齢,非肥満,利尿薬併用の糖尿病で,脱水により脳梗塞を発症したと推察された.同薬の投与前に,動脈硬化のスクリーニングを行うことが望ましい.
著者
高橋 輝 武村 次郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.9, pp.679-683, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
10

インスリン治療開始後に肝障害が生じることは一部の症例報告で指摘されているが,その頻度などの詳細は不明である.今回われわれはトランスアミナーゼ値が施設基準値を超えたものを肝障害と定義し,インスリン導入目的にて入院した119人の患者を調査した.導入前に既に肝障害のあった39人を除いた80人のうち,施設基準値をわずかでも超えたものは14人(17.5%), 基準値上限の1.5倍以上に達したものも5人(6.25%)となった.インスリン製剤の添付文書にはその頻度は0.1%未満と記載されており,日常臨床では肝障害の頻度が高いことがわかった.肝障害は一過性で,インスリン投与を継続してもトランスアミナーゼ値は正常化したが,以前の報告ではインスリンの中止や変更が必要とするものがあり,肝障害出現時の対応は確立していない.インスリン治療開始後の肝障害について若干の文献的考察とともに報告する.
著者
湧田 健一郎 前川 陽子 渡辺 蔵人 神谷 乗史 屋良 朝博 城間 勲
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.369-375, 2016-05-30 (Released:2016-06-01)
参考文献数
24

2型糖尿病で加療中の85歳女性.入院2か月前より水泡性天疱瘡に対してステロイド治療が開始された.3日前からの発熱を主訴に当院を受診し,肺炎を契機とした糖尿病性ケトアシドーシスの診断で入院した.入院後ステロイドを中止し,インスリン,抗菌薬を開始したが,翌日の喀痰鏡検にて糞線虫の幼虫を多数認めたため糞線虫過剰感染症と診断しイベルメクチンを開始した.また,意識障害,呼吸不全を認め,細菌性髄膜炎,非心原性肺水腫と診断し,抗菌薬の変更,非侵襲的陽圧換気も開始した.本例の抗HTLV-1抗体は陽性であり,イベルメクチン14日間連日投与で糞線虫は陰性化し,約60日間かけて意識状態,呼吸状態も改善を認めた.本例は抗HTLV-1抗体陽性2型糖尿病患者がステロイド投与を契機に糖尿病性ケトアシドーシス,細菌性髄膜炎,非心原性肺水腫を伴った重症糞線虫症を発症し,イベルメクチン連日投与により救命し得た希少な症例である.
著者
山田 祐也 迫田 寛人 井上 徹 久保 正治 伏見 尚子 南 武志 亀山 正邦
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.10, pp.933-936, 1998-10-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
8

鉛中毒を合併したインスリン非依存型糖尿病を短期間に2例経験した. 2例とも腹痛, 強度の便秘, 不眠などの自覚症状と貧血, ポルフィリン尿症を呈し, 血中尿中鉛濃度は高値を示した. 内服中の漢方薬 (珍芹降糖) に高濃度の鉛を検出した. 同薬の鉛含量にばらつきを認め長期内服で未発症例もあることから, 鉛の混入が推定された. Dimercaprol筋注により治療し症状, 検査所見ともに改善中である.
著者
藤崎 夏子 尾辻 真由美 簑部 町子 肥後 あかね 後藤 隆彦 赤尾 綾子 三反 陽子 中村 由美子 田上 さとみ 中重 敬子 小木曽 和磨 郡山 暢之
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.666-669, 2013-09-30 (Released:2013-10-30)
参考文献数
5

糖尿病治療において,簡易血糖測定器での自己測定による血糖値のモニタリングは有意義である.様々な要因で測定値が影響を受けることが知られているが,外用品を原因とする報告は認められない.我々は,高濃度のアスコルビン酸と各種還元物質を含有した輸入ハンドクリームによって,血糖値が偽低値を示した2型糖尿病の症例を経験し,健常成人10名での血糖値への影響と簡易血糖測定器における比色法と酵素電極法との間での差異について検討した.血糖値は,クリーム塗布前に比して塗布後に,比色法で有意な低値(p=0.005),酵素電極法で有意な高値(p=0.005)が確認された.流水洗浄で塗布前と有意差の無いレベルに回復したが,アルコール綿での拭き取りでは不充分であった.血糖自己測定においては,還元物質を含有する外用品使用の有無についての問診や,それらの影響に関する知識と流水での手洗いの重要性の啓蒙が必要である.
著者
深石 貴大 南 勲 松田 祐輔 原 義人 吉本 貴宣
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.323-329, 2018-05-30 (Released:2018-05-30)
参考文献数
19

症例は26歳男性.2002年に自閉症スペクトラムのため内服開始するも改善せず,2010年より清涼飲料水を毎日6-12 L摂取していた.精神疾患治療薬の調整で飲水量は減少傾向だったが,2016年7月,体重減少から高血糖が判明し当院紹介となった.随時血糖377 mg/dL,HbA1c 16.9 %,尿中ケトン体陽性であり清涼飲料水ケトーシスの診断で入院,インスリン療法を開始した.退院後は清涼飲料水の多飲なく血糖値は正常化し,糖尿病薬は早期に離脱できたものの1日3 L程度の多飲は遷延した.後に中枢性尿崩症の合併が判明し,デスモプレシンにより飲水量の更なる減少を認めた.長期の多飲により抗利尿ホルモン分泌低下を来す病態が報告されている.特に清涼飲料水を多飲している症例において,多飲の適切な診断・治療は糖尿病の発症予防および改善に寄与する可能性があり重要と考えられた.
著者
市川 瑠美子 小室 竜太郎 井端 剛 正田 英雄 飯田 さよみ
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.23-28, 2012 (Released:2012-02-09)
参考文献数
10
被引用文献数
2

症例は64歳男性.54歳時に2型糖尿病と診断されボグリボース開始となったが10年後に血糖コントロール不良のため糖尿病教育入院となりインスリン強化療法を施行した.抗GAD抗体陰性,尿中C-peptide(CPR)は保たれており2相性インスリンアナログ製剤朝夕2回注射にて退院し良好な血糖コントロールが維持できた.ところが退院後3ヶ月の定期診察日に受診し,帰宅後夕食前血糖が突然562 mg/dlに上昇した.血糖急上昇後1ヶ月の血中CPR 0.10 ng/ml以下,4ヶ月の1日尿中CPR 0.95 μg以下であった.抗GAD抗体陰性であったが,好酸球増多,インスリン抗体陽性を認めた.高血糖が続き再度インスリン強化療法に変更したが血糖コントロールは難渋した.本例は2型糖尿病でインスリン導入後良好な経過中,血糖値上昇の日をとらえられた程の突然のコントロール悪化を認め,インスリン分泌能枯渇をきたした症例と考えられたので病態を考察し報告する.
著者
杉藤 素子 岡田 洋右 鳥本 桂一 遠田 和彦 田中 良哉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.822-826, 2018-12-30 (Released:2018-12-30)
参考文献数
4

インスリン注射針などの医療廃棄物(以下,注射針等)の不適切廃棄は社会問題となっている.東海道新幹線においても車内清掃時に注射針等を発見するケースが散見され,清掃員の針刺し事故も発生している.今回,清掃会社A事業所に協力を依頼し実態調査を行った.注射針等の発見は,平成(Hと略す)25年度97件,H26年度153件,H27年度170件,針刺し事故はH25年度1件,H26年度0件,H27年度1件であった.H27年度は発見場所も調査したが,トイレ51 %,床面32 %,座席周辺8 %,洗面所7 %で,すべてむき出しであった.2日に1件の頻度で注射針等が発見されている一方,A事業所の針刺し事故の発生は他の報告より少ない頻度であった.教育や注射針回収の対策を講じた効果であると考える.しかし,不適切廃棄が続く限り,完全に清掃員の針刺し事故を防止することは難しい.本報告が療養指導に活用されれば幸いである.
著者
田口 敬太 石崎 直人 蘆原 恵子 伊藤 和憲 福田 文彦 下村 伊一郎 林 紀行 前田 和久 伊藤 壽記
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.489-497, 2017-07-30 (Released:2017-07-30)
参考文献数
23

糖尿病性神経障害を有する患者に対する鍼治療の効果について検討した.治療は,1週間に1回の頻度で合計7回の鍼治療を行った.初回は置鍼のみとし,2診目からは低周波鍼通電治療を15分間行った.治療部位は下腿に位置する経穴,陽陵泉(GB 34)―太衝(LV 3),陰陵泉(SP 9)―太渓(KI 3)の計4箇所とし,左右に行った.1診目のしびれの平均VASは46.4 mm(95 %CI;36.7-56.1 mm),8診目のしびれの平均VASは24.7 mm(95 %CI;14.5-34.9 mm)であった.鍼治療前後でしびれの自覚症状に有意な改善が認められた(-22.0,95 %CI;10.6-33.5,p=0.001).また,2診目と8診目のこむら返りの回数についても鍼治療を行ったことでこむら返りの回数に有意な改善が認められた(Wilcoxonの符号順位和検定 p=0.045).以上のことから,鍼治療は副作用も少なく,一定の効果が期待できる為,糖尿病性神経障害を有する患者の治療法の一つとして有用な手段となりうることが示された.
著者
櫻井 典之 本間 ふみか 和田 典男
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.403-407, 2007 (Released:2009-05-20)
参考文献数
36
被引用文献数
2

症例は78歳男性.64歳時に早期胃癌にて胃切除を施行した.術後3年頃より低血糖発作が出現し,当初ダンピング症候群と考えられていた.次第に頻度が多くなり,食後だけでなく空腹時にも低血糖が出現するようになった.当科受診時に38 mg/dlと低血糖を認め同時採血のIRI 15.5 μU/ml, CPR 5.66 ng/mlと高値を示した.75 gOGTTとグルカゴン負荷試験にてIRIの過剰反応を認めた.画像診断の結果から膵頭部のインスリノーマと診断した.外科にて膵頭十二指腸切除を施行したところ,病理組織所見は膵併存腫瘍でありリンパ節転移を認めた.手術後低血糖発作は完全に消失した.本症例は低血糖の診療に当たる際に示唆に富む症例であり,病理組織所見も膵併存腫瘍という特異な所見を呈していたので報告する.
著者
内海 さやか 菅野 武 大友 正隆
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.11, pp.826-829, 2014-11-30 (Released:2014-12-01)
参考文献数
7
被引用文献数
1

ジペプチジルペプチダーゼ(DPP-4)阻害薬は安全性,忍容性に加え,比較的良好な血糖改善効果があり,多剤との併用が可能であることなどから急速に処方が増加している.しかし,重大な副作用として,腸閉塞が報告され,開腹手術や腸閉塞の既往のある患者には慎重投与である.今回我々は,リナグリプチンが関与した可能性のある麻痺性腸閉塞を経験した.本症例では,腹部手術歴はなく,髄膜炎の診断で入院加療中であった.リナグリプチンの投与後,嘔吐,腹痛で発症し,同薬の中止と保存的加療にて腸閉塞は治癒した.既往の脳出血や髄膜炎などの神経疾患の存在や糖尿病性ガストロパレーシスが本症例の腸閉塞発症に関与していた可能性がある.中枢性,末梢性にかかわらず神経疾患が基礎にある症例では,DPP-4阻害薬を使用する際は,たとえ腹部手術歴がなくとも,腸閉塞が起こり得ると念頭に置く必要がある.
著者
山口 曜子 村内 千代 大倉 瑞代 横田 香世 任 和子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.229-236, 2017

<p>看護師の糖尿病予防的フットケアに対する臨床能力評価法の開発に向け,フットケア外来とそれに従事する看護師の状況を調査した.全国の日本糖尿病学会認定教育施設と糖尿病専門医が在職する施設において糖尿病看護に従事し,その実状を把握する看護師を対象にした.結果,414施設(37 %)から回答を得,84 %の施設が外来でフットケアを実施し,78 %が糖尿病合併症管理料報酬の算定を行い,76 %が糖尿病専門外来を設置していた.糖尿病重症予防研修修了看護師の在職率は60 %以上で,糖尿病療養指導士の資格を持つ看護師が全体の60 %以上を占めていた.また,フットケアマニュアルを持つ施設は43 %で,フットケア教育後の看護師に対する能力評価はほとんどの施設が行っていなかった.今回の調査から,フットケアマニュアルと教育プログラムの整備の必要性が明らかになり,予防的フットケアに対する臨床能力評価法の開発の必要性が示唆された.</p>
著者
石井 宏明 樋端 恵美子 村山 秀喜 小林 則善 小林 龍彦 床尾 万寿雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.185-190, 2021

<p>HbA1cの測定方法は,高速液体クロマトグラフィ(HPLC)法のほか,免疫法,酵素法など複数存在する.本邦では従来多くの施設でHPLC法が用いられてきたが,近年酵素法や免疫法による測定が増えている.今回,免疫法でHbA1c偽高値を示した異常ヘモグロビンHbCの1症例を経験した.HPLC法では異常低値を示し,酵素法では基準値内,グリコアルブミンは基準値内であった.遺伝子解析で,<i>β</i>グロビン鎖のミスセンス変異によるHbCと診断した.HbCはアフリカに多い異常ヘモグロビン症で,日本人の報告としては非常に稀であるが,国際化に伴って日本でも症例数が増えることが予想される.HbA1cと血糖値に乖離を疑った際には,複数の方法によるHbA1cの測定,グリコアルブミンによる評価等を含めた慎重な対応が必要である.</p>
著者
石橋 達也 形部 裕昭 早川 隆洋 太田 敬之 古川 安志 西 理宏 古田 浩人 赤水 尚史
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.675-680, 2015-09-30 (Released:2015-09-30)
参考文献数
14

症例は46歳,女性.32歳よりうつ病で近医に通院中であった.35歳より2型糖尿病で治療を開始された.メトホルミン500 mg/日およびインスリン(1日70単位)による治療でHbA1c5.4 %であった.来院当日,自殺目的でリスプロ2100単位,グラルギン900単位を注射し,1時間後に救急搬送となった.遷延性低血糖に対応するため入院とし,食事および経口と経静脈でブドウ糖の投与を行った.来院時の血清インスリン濃度(IRI)が31975 μU/ml,6時間で20903 μU/ml,9時間で9370 μU/mlと低下,注射後141時間でブドウ糖投与を要しなくなった.持続血糖モニタリングでは血糖値の変化はブドウ糖投与による上昇と低下を繰り返し,急峻な鋸歯状波形を呈していた.IRIの経過は低血糖からの回復時期を予測する目安となり,血糖降下作用が続く期間では頻回の血糖測定が必要であると考えられた.
著者
澤田 雅彦 丸山 太郎 北澤 吉明 前田 憲男 岩崎 良二 鈴木 裕也
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.431-437, 1996-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
14
被引用文献数
1

症例は18歳男性, 元々肥満ぎみだった, 1993年春より口渇出現し清涼飲料水を1日に3L以上摂取していた. 10月初めより呼吸困難出現さらに不穏状態となり14日緊急入院BMIは44.8kg/m2と著しい肥満. 血糖1040mg/dl, ケトン体も著しい高値で, 著明な代謝性アシドーシスを呈していた. ICA, IAA, 抗GAD65抗体はいずれも陰性でHLAタイプはIDDM疾患抵抗性であった. インスリン投与や補液施行するも呼吸状態悪化し死亡した. 剖検所見では両側肺動脈本幹より広範な肺動脈血栓症を認め, これが直接死因と考えられた. 膵は全体にランゲルハンス島数の減少と膵島の萎縮を認めたが膵島炎は認めなかった. アルデヒドーフクシン染色では膵島B細胞の著明な脱落を認めた. 腎には軽度の糖尿病性腎症を認めた. いわゆる “ペットボトル症候群” の膵病理所見に関する報告はなく, 貴重な症例と思われた.
著者
横山 顕 高木 俊和 石井 裕正 村松 太郎 樋田 哲夫 丸山 勝也 加藤 眞三 武井 泉 土屋 雅春
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.395-402, 1991-05-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
28

自律神経障害と末梢神経障害は糖尿病とアルコール依存症の両者にみられる.アルコール依存症を合併した糖尿病 (DM・AL: n=68) の神経障害を, 糖尿病 (DM: n=50) とアルコール依存症 (AL: n=22) の神経障害と比較した.DM・AL, DM, AL各群のR-R間隔変動係数 (CVRR) は2.37±1.22, 2.80±1.08, 3.36±1.03, CVRR<2.0の頻度は49%, 22%, 9%であり, DM・ALで自律神経障害が高頻度であった.アキレス腱反射の減弱は50%, 32%, 23%, 振動覚の低下は47%, 24%, 9%に認められ, 末梢神経障害の頻度もDM・ALで高かった.糖尿病罹病期間3年以下では, DM・ALはDMに比し, 網膜症の頻度には差がなく, CVRRの低下, 振動覚の低下の頻度は高率であった。DM・ALでは, 脳萎縮ないし痴呆症等の中枢神経障害のある群で自律神経障害が高頻度にみられた.糖尿病とアルコール依存症の合併では, 両者の神経障害が相乗的に作用し, 自律神経障害と末梢神経障害が早期から進行することが示唆された.
著者
泉 妃咲 冨永 晴郎 中島 チ鹿子 内田 淳一 渡辺 雄一 塚本 洋子 井上 岳 山田 洋子 山田 善史 山田 悟
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.380-385, 2012 (Released:2012-07-20)
参考文献数
14

糖尿病治療の根幹である食事療法は,一般的にカロリー制限で指導されることが多いが,患者にはストレスが強く,そのコンプライアンスが問題となる.そこで,血糖値の上昇を最小限に抑えながら食事のQOLを向上させるための甘味品として,低糖質ケーキに着目した.今回は糖尿病患者で検討する前段階として,健常者を対象として低糖質ケーキが糖脂質指標に与える影響を同等カロリーの通常ケーキと比較した.低糖質ケーキでは通常ケーキと比較して食後の血糖値上昇が抑制され,インスリンの分泌刺激は弱かった.また,低糖質ケーキは中性脂肪や遊離脂肪酸に悪影響を与えず,一方で食後の満足度は通常ケーキと同等であった.今後糖尿病患者を対象にした検討においても低糖質ケーキの有望な結果が期待される.