著者
五十嵐 幹二 河崎 孝弘 小片 展之 酒井 忠司 一柳 薫 藤森 新 山内 俊一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.417-421, 2006 (Released:2009-01-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は17歳男性.主訴は口渇,体重減少.受診時,意識清明であったが,血糖値は1,107 mg/dl, HbA1C 13.5%と著明に高値.動脈血pH 7.36と正常域内だが,血中総ケトン体は8,460 μmol/lと上昇.抗GAD抗体陰性,清涼飲料水多飲歴,肥満(BMI 29.9)より清涼飲料水ケトーシスと診断した.入院後,インスリン療法と補液により高血糖は速やかに是正された.血清フルクトース値は入院時517.3 μmol/l(基準値:10 μmol/l以下,1 μmol/l=0.018 mg/dl)と異常高値を示し,翌日には67.9 μmol/lまで低下(血糖値330 mg/dl),第11病日では18.9 μmol/l(血糖値218mg/dl)となった.同程度の高血糖病態である糖尿病性ケトアシドーシス(n=10)に比べ,清涼飲料水ケトーシス(n=3)の入院時血清フルクトース値は明らかに高値であり,この著明な高フルクトース血症が清涼飲料水ケトーシス発症に関与していることが強く示唆された.
著者
大家 他喜雄
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.134-143, 1966-05-31 (Released:2011-08-10)
参考文献数
33

The effect of lipid metabolism, especially catabolism of triglyceride on carbohydrate metabolism, has been studied in rabbits.The results were as follows;1) A high fat diet did not increase the fasting blood sugar but this level was significantly elevated by the addition of orally adminitered Δ' 17α-methyltestosterone.2) The oral administration of lipid or Δ' 17α-methyltesterone increased the urinary excretion of the ketone bodies. The urinary excretion of ketone bodies was higher than when either alone was given. The serum ketone bodies increased after the treatment with Δ' 17α-methyltestosterone but was not affected by high-fat diet.3) Administration of propionic acid resulted in an elevation of the fasting blood glucose and impaired the glucose tolerance. These effects were found more evident in the former than the latter. Lactic acid did not have these effects. Addition of beef tallow made these effects more prominent.4) Oral administration of 17 a-methyltestosterone or short-chain fatty acids (propionate, butyrate and lactate) caused a reduction in liver glycogen.5) Adminirtration of beef tallow increased the lipid deposition of hepatic cells. This finding was also found in the group where Δ' 17α-methyltestosterone was added to the standard diet.6) Fasting for 5 days caused an elevation of blood sugar and an impairment of glucose tolerance. An injection of purified human depot fat made these changes more remarkable.7) On the basis of these observations, a discussion was made whether the acceleration of lipid metabolism might play an important role in diabetogenesis or not.
著者
永井 成美 坂根 直樹 森谷 敏夫
出版者
THE JAPAN DIABETES SOCIETY
雑誌
糖尿病 = Journal of the Japan Diabetes Society (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.11, pp.761-770, 2005-11-30
被引用文献数
12

本研究は, 朝食欠食や食事中の三大栄養素の比率が食後の血糖値, 満腹感, エネルギー消費量, および自律神経活動に及ぼす影響を肥満関連遺伝子多型とともに比較検討したものである. 若年健常者8名に, 各被験者の体重1kgあたり22kcalに調整した総摂取エネルギーが等しい4試行の朝食と昼食の組み合わせ (CC : ご飯を主食とする高糖質食+高糖質食, SC : 欠食+高糖質食2食, FF : パンを主食とする高脂肪食+高脂肪食, SF : 欠食+高脂肪食2食) を4日間でランダムな順序で負荷し, 朝食前および朝食後6時間まで30分間隔で, 血糖値, Visual analog scaleによる満腹感, 呼気ガス, 心拍変動解析による自律神経活動を測定した. CC試行ではFF試行よりも朝食後3時間の血糖値, 満腹感, エネルギー消費量が有意に高く, 6時間の熱産生も4試行中最も高値であった. 高い満腹感や熱産生には有意差はなかったが自律神経系の関与が推察された. 朝食欠食 (SC, SF) 試行では熱産生が低く, 昼食後に心拍数の著増を認めた. また, UCP 1遺伝子のhomo変異 (GG) を有する者では熱産生が低い傾向が認められた. 以上の結果は, 耐糖能正常者において糖質を主体とする朝食の摂取が肥満予防に寄与する可能性とともに, 遺伝的背景へ配慮した予防の必要性を示唆するものである.
著者
糖尿病性腎症合同委員会・糖尿病性腎症病期分類改訂ワーキンググループ 馬場園 哲也 金崎 啓造 宇都宮 一典 古家 大祐 綿田 裕孝 繪本 正憲 川浪 大治 深水 圭 久米 真司 鈴木 芳樹 和田 淳 和田 隆志 岡田 浩一 成田 一衛 小岩 文彦 阿部 雅紀 土谷 健 加藤 明彦 市川 和子 北谷 直美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.797-805, 2023-11-30 (Released:2023-11-30)
参考文献数
20

わが国では2014年に改訂された糖尿病性腎症病期分類が広く用いられてきた.最近では,高齢化や肥満者の増加,糖尿病や高血圧症に対する新規治療薬の開発などを背景に,糖尿病患者に合併した腎臓病が多様化していることが指摘されている.そこで糖尿病性腎症合同委員会では,腎症病期分類を再度改訂する必要性を検討した.現時点では,アルブミン尿や推算糸球体濾過量に基づく2014年分類を変更する必要性を示唆する新たなエビデンスが発出されていないことから,今回の改訂では2014年分類の基本的な枠組みは変更しないこととした.ただし,日本腎臓学会のCKD重症度分類や国際的な表記との整合性を重視し,病期名を「正常アルブミン尿期(第1期)」,「微量アルブミン尿期(第2期)」,「顕性アルブミン尿期(第3期)」,「GFR高度低下・末期腎不全期(第4期)」,「腎代替療法期(第5期)」へ変更した.
著者
朝倉 俊成 神田 循吉 影山 美穂 影向 範昭 若林 広行 清野 弘明
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.12, pp.977-981, 2009-12-30 (Released:2010-03-01)
参考文献数
10
被引用文献数
2

インスリン製剤(以下,製剤)中のインスリン結晶の存在,ならびに懸濁製剤におけるインスリン結晶の濁度変化を測定し,高温環境下でのインスリン製剤の性状変化について検討を行った.方法は,2種の非懸濁製剤と2種の懸濁製剤を,38, 50, 70°Cの恒温恒湿度器内に3, 6, 12時間放置したときの濁度を吸光度計にて測定し,その変化を求めた.また,生物顕微鏡を用いて,70°C·12時間環境下のインスリン結晶を観察した.結果は,非懸濁製剤はいずれも変化がなかったが,懸濁製剤ではいずれも,38°C以上の保管で濁度が有意に変化した.また,顕微鏡観察では,懸濁製剤で70°C·12時間保管結晶の形状に明らかな変化がみられた.結果から,懸濁製剤は室温以上の環境下に長時間放置しないことが求められ,患者の日常生活におけるインスリン製剤保管時の温度管理について,十分注意する必要があると思われる.
著者
神谷 英紀 姫野 龍仁 渡会 敦子 馬場 正之 西村 理明 田嶼 尚子 中村 二郎
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.645-654, 2023-08-20 (Released:2023-08-30)
参考文献数
29

JDCP studyベースライン時の2型糖尿病患者5,451人の糖尿病性対称性多発神経障害(DSPN)の有病率と特徴を調査した.DSPNは糖尿病性神経障害を考える会の簡易診断基準を用いて診断し,有病率は35.8 %であった.DSPNの有意なリスク因子は,年齢(OR 1.57;95 %CI 1.42-1.73),糖尿病罹病期間(1.32;1.21-1.43),BMI(1.19;1.09-1.30),収縮期血圧(1.06;1.01-1.10),HbA1c(1.15;1.09-1.22),ビグアナイド薬の使用(1.22;1.06-1.39),インスリン療法(1.59,1.36-1.84),TC(0.98;0.96-1.00),運動療法(0.85;0.73-0.98)であった.本調査により日本人2型糖尿病患者におけるDSPNの有病率と特徴およびリスク因子が明らかとなった.
著者
平野 勉
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.348-352, 2023-05-30 (Released:2023-05-30)
参考文献数
15

Prader-Willi症候群(PWS)は視床下部に先天異常があり過食から高度肥満をきたし高率に2型糖尿病を発症する.本症例は高度肥満(BMI 43.8 kg/m2)による拡張不全型心不全で入院を繰り返す血糖コントロール不良のPWSであった.今回セマグルチド0.25 mgの週1回皮下注射を開始したところ,早期から著明な体重減少とHbA1c低下を示した.投与前,投与後4か月では体重が108 kgから89 kgへ19 kg減少,HbA1cは8.2 %から5.7 %に2.5 %低下した.心不全の再発も認められなくなった.Glucagon-like peptide(GLP)-1receptor agonist(RA)は体重減少作用を有することからPWSに使用した報告は存在するが,少量のセマグルチドで著効を示した報告はなく,GLP-1RAによる心不全改善効果に関しても示唆を与える.
著者
細川 悠紀 福本 まりこ 吉田 陽子 岡田 めぐみ 藥師寺 洋介 上野 宏樹 川崎 勲 依藤 亨 三田 育子 中本 収 林下 浩士 細井 雅之
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.113-117, 2014-02-28 (Released:2014-03-11)
参考文献数
7

症例は20歳女性.非妊時BMI 32.0.妊娠28週に腹痛を発症,血清アミラーゼ上昇,高中性脂肪(TG)血症,高血糖,腹部超音波検査で膵腫大を認め,急性膵炎と診断された.治療を開始したが糖尿病性ケトアシドーシス(DKA),DICを併発,第3病日子宮内胎児死亡が確認された.帝王切開にて死児の娩出後,高TG血症,DKAに対しヘパリン,インスリン持続投与に加え血漿交換を施行,急性膵炎に対する治療を行い臨床所見の改善を得た.妊娠中はリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性が低下するため,正常妊娠においてもTGは高値となるが,特に糖代謝異常合併妊娠においてはTGの上昇が顕著である.本症例は膵炎発症時,すでにHbA1cが高値(NGSP値 9.8 %)であり,未診断の糖代謝異常を基礎として高TG血症となり,急性膵炎に至ったと考えられた.妊娠初期に糖代謝異常を早期診断し適切な管理を行うことで胎児死亡を防ぐことができた可能性がある.
著者
笠置 智道 高見 和久 山田 明子 坂井 聡美 原 高志 酒井 勝央 安田 圭吾 今井 裕一
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.336-341, 2015-05-30 (Released:2015-06-01)
参考文献数
11

症例はうつ病の36歳女性.糖尿病は未診断.入院1週間前より食事をせず飲酒のみの生活が続き,反復する嘔吐と共に意識状態が悪化し救急搬送された.糖尿病性ケトアシドーシスと診断しインスリン持続投与を開始.それに伴い血清K値は入院時の2.7 mEq/lから1.3 mEq/lまで低下したため,インスリン投与を一時中断しその間72時間で計660 mEqのKを補充した.その後血中ケトン体は減少するもアシデミアがさらに進行し,低Alb血症,低P血症を伴い複雑な酸塩基平衡異常を呈した.Stewartのphysicochemical approachにより酸塩基平衡を解析すると,強イオン性代謝性アシドーシスが主体で,原因として希釈,大量食塩水負荷,急性尿細管障害,ケトン体尿排泄の関与が示唆された.種々の電解質の欠乏を伴った酸塩基,水電解質平衡を総合的に理解するためにStewart法が有用であった.
著者
葛谷 健 中川 昌一 佐藤 譲 金澤 康徳 岩本 安彦 小林 正 南條 輝志男 佐々木 陽 清野 裕 伊藤 千賀子 島 健二 野中 共平 門脇 孝
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.385-404, 1999-05-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
47
被引用文献数
86

糖尿病は, インスリン作用の不足による慢性高血糖を主徴とし, 種々の特徴的な代謝異常を伴う疾患群である. その発症には遺伝因子と環境因子がともに関与する. 代謝異常の長期間にわたる持続は特有の合併症を来たしやすく, 動脈硬化症をも促進する. 代謝異常の程度によって, 無症状からケトアシドーシスや昏睡に至る幅広い病態を示
著者
江尻 一成 谷口 洋 村上 啓治 石原 健造 玉川 正博 傳 秋光 吉岡 正子 馬場 茂明
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.9, pp.1007-1010, 1982-09-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
9

Tris (hydroxymethyl) aminomethane (Tris) has been shown to inhibit selectively the Golgi apparatus and Golgi-endoplasmic reticulum-lysosomal system (GERL system) of several kinds of cells including pancreatic B cells. The present study was undertaken to assess the effect of Tris on insulin release and synthesis in pancreatic B cells.Islets isolated from male Wistar rats by the collagenase method were incubated for 60 min at 37°C under 95% O2-5% CO2. In the presence of 8.3 mM glucose, the insulin secretion was 3.45±0.19 neislet·60 min. However, addition of 1 and 10 mM Tris reduced the insulin release to 2.33±0.31 and 1.27±0.19 neislet·60 min, respectively. Furthermore, the incorporation of 3H-leucine into the immunoreactive proinsulin and insulin fraction was lowered in the presence of 10 mM Tris compared to that in its absence in 2-hr incubation studies. The ratio of the radioactivity of the immunoreactive insulin fraction to the sum of that of the immunoreactive proinsulin and insulin fraction was reduced by 10 mM Tris.Thus, Tris inhibited not only insulin secretion but also the conversion from proinsulin to insulin. The present study suggests that the Golgi apparatus and GERL system may play a role in insulin secretion and biosynthesis in pancreatic B cells, and that Tris may represent a useful agent for investigating the mechanism of conversion from proinsulin to insulin.
著者
石井 俊史 若杉 正清 長沼 司 温井 郁夫 井口 楓 井上 正晴 神宮寺 禎巳
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.461-465, 2017-06-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
10

症例は89歳男性.54歳頃に2型糖尿病と診断され,レパグリニド1.5 mg/日,テネリグリプチン20 mg/日,ボグリボース0.6 mg/日の内服を行っていた.閉塞性動脈硬化症に対しクロピドグレル75 mg/日の内服開始翌日の夕食後に低血糖昏睡で入院となった.経口血糖降下薬はすべて中止したが,第3病日まで低血糖が遷延した.退院後,再度併用を開始した2日後の夕食後に再び同様の重症低血糖で入院し,第2病日まで低血糖が遷延した.レパグリニドは短時間作用型のインスリン分泌促進薬であり,単独では遷延性低血糖を来しにくい.Tornioらは,クロピドグレルによるCYP2C8の阻害がレパグリニド血中濃度を上げると報告したが,本症例はこの機序による低血糖と推測された.両薬剤は大血管障害を有する糖尿病患者において併用されることも多く,併用の際には相互作用による低血糖に十分注意する必要がある.
著者
阿久 津寿江 森 豊 村川 祐一 染谷 泰寿 中島 秀嗣 岡田 和久 上野 博嗣
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.471-476, 1999-06-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
12

症例は36歳, 男性. 平成9年8月, 肥満の治療目的にて入院となる. 入院時, 身長168cm, 体重162kg, BMI57.0, 体脂肪率59.3%, 腹部腰高GT像によるV/S比0.32, 合併症として糖尿病, 高血圧, 睡眠時無呼吸症候群 (SAS), 低酸素血症に伴う二次性多血症を認めた. 超低力ロリー食療法 (420~968kal/日) による45kg余りの減量により, 腹部臍高CT像における内臓脂肪面積, 皮下脂肪面積は減少し, レプチン, PAl-1, TNF-α等のアディポサイトカインはいすれも低下した. さらに, 75g糖負荷試験における耐糖能は糖尿病型から正常型となり, 顕著なインスリン過剰反応も是正された. また, 血液ガス分析におけるPO2の増加, O2飽和度の改善や多血症の改善も認めたが, SASは改善しなかった.
著者
溝上 哲也
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.481-483, 2008 (Released:2009-05-20)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
島 健二 川原 和彦 小松 まち子 川島 周
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.423-427, 2006 (Released:2009-01-19)
参考文献数
33
被引用文献数
5

末期慢性腎不全による維持透析治療中の患者で,2~3日間の絶食後に,血糖値が低血糖域(血糖値50 mg/dl以下)に低下した5症例を経験した.1例を除き血糖降下薬は低血糖発症前2~3日間摂取しておらず,これが原因とは考えられない.また,低血糖発症後4日以内測定の早朝空腹時血中インスリン濃度は異常高値でなく,また,インスリン拮抗ホルモン濃度も低値でなかった.1例のアルコール性肝障害例を除き,本症例の低血糖の要因として,腎での糖新生障害の可能性が推定される.
著者
内潟 安子
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.877-879, 2011 (Released:2012-01-27)
参考文献数
5
被引用文献数
3