著者
中井 勇
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.335-338, 1990-07-01
著者
谷口 真吾 橋詰 隼人 山本 福壽
出版者
日本林學會
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.340-345, 2003 (Released:2011-03-05)

鳥取大学蒜山演習林のトチノキ林において、果実の成熟過程における落果時期と内部形態の解剖学的な観察をもとに、発育途中における未熟果実の落下原因を調べた。未熟果実は6月中旬から7月下旬までの間に全体の80-90%が落下した。未熟落果の形態として、「虫害」タイプ、「胚珠の発育不全」タイプ、「種子内組織の崩壊」タイプ、「胚の発育不全」タイプの四つが挙げられた。虫害による未熟落果は6月と7月下旬以降に多く発生した。6月の虫害は果肉摂食型幼虫によるもの、7月下旬以降の虫害は子葉摂食型幼虫によるものであった。「胚珠の発育不全」タイプの落果は主に6月にみられ、受粉・受精の失敗によって胚珠が種子に成長しなかったことが原因と考えられた。「種子内組織崩壊」タイプの落果は7月上旬以降にみられ、種子内の組織が死滅して内部が空洞化していた。「胚の発育不全」タイプの落果は7月下旬以降にみられ、胚の発育が途中で止まったものであった。トチノキの未熟落果の大部分を占める「胚珠の発育不全」と「種子内組織の崩壊」は、落下果実の内部形態から判断して、「胚珠の発育不全」タイプは受粉・受精の失敗が主要因であり、「種子内組織の崩壊」タイプは資源制限による発育中断が主要因である可能性が高いと考えられた。
著者
谷口 真吾 橋詰 隼人 山本 福壽
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.305-311, 2003-11-16
参考文献数
25

鳥取大学林山演習林のトチノキで花芽の分化と発育を調査した。トチノキの花芽は毛状鱗片の内側の成長点が円形に肥厚して花芽原基になった。花芽原基は急速に成長して花軸の周りに次々に小花を形成し,その中に葯と子房が分化した。8月中旬〜下旬には葯内に胞子形成細胞が,子房内に胚珠の原基が形成された。9月中旬には花粉母細胞と卵状の胚珠が観察された。花粉は翌年の5月上旬に形成された。5月中旬には子房の先端部に花柱が分化し,花糸と花柱が伸長して両性花が完成した。胚珠の退化した花では花柱が伸長せずに,花糸のみ伸長し,雄ずいが完成して雄花になった。花芽は9月中旬に冬芽の形状により外観で葉芽と区別できた。
著者
谷口 真吾 本間 環 山本 福壽
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.4, pp.350-354, 2003-11-16
参考文献数
18

樹木の開芽の生理機構を明らかにすることを目的として,トチノキ(Aesculus lurbinata)休眠芽(頂芽および側芽)の伸長,開芽ならびに新条件発達に及ぼす10種類の植物成長調節物質処理の影響を調べた。頂芽の伸長はジベレリン(Gas)処理で著しく促進された。一方,2種のジベレリン生合成阻害剤(AMO1618,ウニコナゾール.P : UCZ-P)の処理区では抑制された。また側芽の伸長はGas処理で促進されるとともに,エスレル(ET),ジャスモン酸(JA-Me),AMO1618およびUCZ-P処理でも促進された。さらに頂芽と側芽の開芽はGasおよびJA-Me処理によって促進された。これらの結果,既定芽タイプであるトチノキの芽の伸長にはジベレリンが重要な役割を果たしているものと考えられる。また,開芽にはジベレリンとジャスモン酸が関与している可能性が高い。
著者
三浦 覚
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.132-140, 2000-05-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
36
被引用文献数
12

林地表層における雨滴侵食保護に関わる林床の被覆状態を明らかにするために,林床植生および堆積リターの両者による総合的な被覆指標として林床被覆率を新たに定義し,急傾斜地にあるヒノキ,スギ,アカマツ,落葉広葉樹林の林床の被覆状態を評価した。その結果,スギ,アカマツ,落葉広葉樹林の林床被覆率は,林齢によらず常に90%以上で高かった。一方,ヒノキ林の林床被覆率は,10~20年生の幼~若齢期に著しく低下し,40年生前後の壮齢期に林床植生が回復し始めるまで低い状態が続いた。林床被覆率を支配する因子は,スギ,アカマツ,落葉広葉樹林では堆積リターであったが,ヒノキ林では林床植生であった。林床被覆率とこれに対する林床植生および堆積リターの寄与の強さは,樹種や林齢によって大きく変化する。したがって,林床の被覆状態を評価するためには,林床植生と堆積リターの消長の特質を明らかにし,林床被覆率のように両者による被覆を一体として捉えうる指標を用いる必要がある。
著者
富樫 一巳
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.11, pp.442-448, 1989
被引用文献数
3

材線虫病に自然感染したクロマツの衰弱時期と枯死過程の関係を明らかにするために, 1林分の全クロマツに対して樹脂滲出能の調査を5月から10月まで毎月行った。また,マツの葉色の調査を6月から10月までは毎週, 11月から5月までは毎月1~3回行った。 6月から9月までの間に衰弱しはじめたマツの場合,その大部分は衰弱した年に全葉が茶色~赤茶色になって枯れた(パターンA)。 枯死過程の完了までの平均時間は8, 9月に衰弱しはじめたマツより6, 7月に衰弱しはじめたマツのほうが長かった。 9月または10月に衰弱しはじめたマツの場合,衰弱した年にほとんどすべての葉が変色し,翌年全葉が茶色~赤茶色に変色するものがあった(パターンB)。 8月から10月の間に衰弱しはじめたマツには,衰弱した年に一部の葉が変色し,翌年になってほとんどの葉が変色し,その後すぐに全葉が茶色~赤茶色になる場合が見られた(パターンC)。 10月に衰弱しはじめたマツのうち少数のものは,衰弱の翌年の4月に一部の葉が変色し,遅くとも6月中旬までに全葉が茶色~赤茶色に変色した(パターンD)。
著者
安藤 貴 宮本 知子
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.47-55, 1972
被引用文献数
2

スギ苗の生長に及ぼす光の強さと密度の影響を知るために,光の強さと密度をかえて24通りに組み合わせた実験を行なった。1年生の苗を十分な陽光量の100, 76, 59, 47, 37および30%に庇陰したところに, 25, 59.2 123.5, 277.8本/m<sup>2</sup>の植栽密度で植栽した。 1生長期を経たあと,幹,根,葉の量を測定した。結果は次のとおりである。<br> 1) それぞれの光の強さにおいて,植栽密度の増加に伴い,平均個体重は減少したが,単位面積当たり現存量は増加した。また,それぞれの植栽密度において,光の強さと平均個体重または現存量の関係は量適曲線を描くのが認められた。<br> 2) 純生産量に及ぼす光の強さと植栽密度の効果は現存量と同じであった。弱度に庇陰処理された場合の純生産量の最大値は14.5t/ha・yrで,この値は,光の強さが100%の場合の最大値10.5t/ha・yrより大きい。葉の年間生産量は光の強さが100%の場合は3.1~6.Ot/ha・yrで,ギの幼~壮齢林とほぼ同じであったが,弱度に庇陰した高植栽密度の場合には7.5~9.5t/ha・yrで,幼~壮齢林のそれより大きい。<br> 3) 密度はロジスチック理論でいう逆数要因,光の強さは両性要因であることが認められたので,穂積の示した逆数式<br> 〓<br> ただし<i>w</i>: 平均個体重, &rho;: 密度, <i>L</i>: 光の強さ, <i>A</i><sub>1</sub>, <i>A</i><sub>2</sub>, <i>A</i><sub>12</sub>, <i>A</i><sub>2</sub>', <i>A</i><sub>1</sub>', <i>B</i>: 定数を適用した。計算健と実測値との誤差率は約20%程度であった。また,最適照度 (<i>L</i><sub>opt</sub>) は密度によって変わることが認められたので,<br> 〓<br> を求めたところ, &rho;&rarr;0の場合約60%, &rho;&rarr;&infin;の場合約83%という値が得られた。
著者
井上 昭夫 黒川 泰亨
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.130-134, 2001-05-16
参考文献数
19
被引用文献数
3

針葉樹における二変数材積式を理論的に誘導した。相対幹曲線式としてKunze式を採用した。既存の研究成果に基づいて, 相対高0.7と0.5における正形数&lambda;<SUB>0.7</SUB>と&lambda;<SUB>0.5</SUB>は, それぞれ0.7と1.0で安定していると仮定した。これらの仮定より, 相対幹曲線式の係数を推定する二つの方法を誘導した。これらの方法によって推定される係数は, 互いに等しいと仮定した。その結果, 次の二変数材積式が得られた;v=&pi;d<SUB>b</SUB><SUP>2</SUP>h/4{2(1-h<SUB>b</SUB>/h)}<SUP>1.060</SUP>。ここで, vは幹材積, d<SUB>b</SUB>は胸高直径, hは樹高, h<SUB>b</SUB>は胸高 (=1.2m) である。この材積式をスギとヒノキの資料に適用した。推定された幹材積の標準誤差はスギで0.028m<SUP>3</SUP>, ヒノキで0.025m<SUP>3</SUP>であった。誘導した材積式の仮定と関数形に基づいて, この材積式の特徴について考察した。
著者
南雲 秀次郎 田中 万里子
出版者
日本林學會
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.8, pp.278-286, 1981
被引用文献数
3

地位の異なるスギ林分から採取した樹幹解析木の資料によってスギ林木の相薄幹形を分析し,その結果にもとついて材積表を調製した。中央相対直径&eta;<sub>0.5</sub>の値は,地位が高いほど大ぎくなる。また,林齢に関しては, 40年生までは林齢に応じて高くなりその後は変化を示さないことがわかった。このことは,同一胸高直径,同一樹高の林木でも地位の高いもののほうが,また, 40年生ごろまでは林齢が高まるにつれて,樹幹がより完満になることを意味している。以上の結論と&eta;<sub>0.5</sub>の変化の大きさを考慮して, 40年生以上と以下の2群に分けて吉田式によって相対幹曲線式を決定し村積表の調製をおこなった。また,同一資料に対して山本一シューマッカー式を適用してその精度を比較した。その結果,相対幹曲線武にもとつく方法のほうが精度が若干よいことがわかった。
著者
〓田 孝 小竹 利明 竹内 真一 MAXIMOV Trofim C. 吉川 賢
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.246-254, 2002-11-16
参考文献数
43
被引用文献数
2

東シベリアの永久凍土地帯に成立する<I>Larix gmelinii</I>林の水分動態と土壌水分, 飽差との関係について考察するために, 林分の水利用量 (<I>SF</I>) と環境要因の季節変化を測定した。<I>SF</I>は開葉直後から急激に増加し, 6月上中旬の展葉の終了する時期に最大 (2.7mmd<SUP>-1</SUP>) となった。<I>SF</I>はその後, ピーク値の75%の値まで低下したが, その値は7月終わりまで維持されていた。<I>SF</I>には飽差の増大による頭打ちが認められた。土壌体積含水率が気孔コンダクタンスに及ぼす影響を調べた結果, 飽差が20hPa未満の領域では気孔コンダクタンスが土壌体積含水率の減少に対して直線的に低下する傾向が認められた。ただし, 飽差が20hPa以上の領域では, 飽差の影響による蒸散の頭打ちが顕著となるため, 土壌体積含水率と気孔コンダクタンスの関係は不明瞭になった。<I>L. gmelinii</I>は, 当地のような寡雨地帯で生育していくために, 土壌の水分状態に応じて気孔コンダクタンスを調節することで体内水分の損失を防ぎ, 水ストレスを回避していると考えられた。
著者
吉田 洋 林 進 堀内 みどり 羽澄 俊裕
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.83, no.2, pp.101-106, 2001-05-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
25
被引用文献数
1

本研究では, クマハギ被害発生の要因を探るために, クマハギ被害の発生率と林床植生との関係を, スギとヒノキの造林地において調査した。剥皮率と低木層の植被率の間には, 正の相関が認められた。また低木層の種数と剥皮率の間には負の相関が認められた。一方, 分散分析の結果, 陽性種である液果類が生育している造林地は, そうでない造林地に比べ, 剥皮率が低かった。多数の陽性低木種を生育させている明るい造林地ほど, クマハギ被害は少ないといえる。このことから, 低木の全刈りがクマハギ被害の防除に有効であると考えられる。また, 林内に林縁効果を発揮しうる空間を形成し, ツキノワグマの食物となり得る陽性種を導入していくことが, クマハギ被害防除に有効であると考えた。これに適した施業法として, 孔状皆伐法がある。
著者
南 享二 河村 喜美恵
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.136-140, 1954

アカメガシワとスギについてその木材と木材の室温こよる1%NaOH抽出残渣の乾溜を行つた。<br> アカメガシワの場合,アラカシの場合と同様に20&deg;C毎の溜出液量の変化を見ると260&deg;Cにおける極大値が1% NaOH処理により消失すること力現出された。酸の生成の少いスギにおいてはこの現象は見られない。<br> 溜出する酷酸量についてみると次のことがわかつた。溜出全量において1% NaOH抽田残渣の場含無処理木材に比し著しく酸量を誠じ,しかもその減量は1% NaOH抽出液中に定最された酷酸にほぼ等しい。また注目すべきはアカメガシワ・スギ・アラカシの3種の樹種間において, 1% NaOH抽出残1査の場合ほぼ等しい酸量が得られており,溜出曲線もほぼ相等しい。<br> 単位溜分中の溜出酸の濃度については,アメガシワおよびスギは共に,木材の場合はそれぞれ240&deg;C, 260&deg;Cに最大値をもつが、1% NaOH抽出残渣の場合はこれが失われている。また1% NaOH抽出残渣については上述の2樹種およびアラカシの間においてほぼ似た変化の曲線をえがき.最大値は280~300&deg;Cの溜分にあり,全酸として約10%, 揮発酸として約5%のほぼ一致した値を示した。なお酸の生成の少いスギにおいては無処理木材の場合において同じ溜分に極大が存在し,その極大値が上記のものとほぼ等しい。ペントーザンの母は木材の場合と1%NaOH抽出残淺:の場含との間に署しい差はなく,かつ樹種の聞では甚しく異るので,もしペントーザンが溜出する醋酸の有力な根源であるとすれば, 1% NaOH抽出残澄の乾溜において一定の酸の溜出量を得る事実を説明し得ない。<br> 以土の事実にもとずいて考えると, 著量の醋酸を溜出する本材の場合には大部のものが室温で1% NaOHにより除去ぜられる原木材中のアセチル基に由来するものであり、したがつて溜出酸量の樹腫による差異はこのアセチル基の量の差によるものであると考えられる。
著者
丸山 エミリオ 石井 克明 斎藤 明 大庭 喜八郎
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.346-349, 1993

<i>Jacaranda mimosaefolia</i> D. DON was regenerated by shoot-tips subcultured on GAMBORG'S basal medium with the largest concentration of kinetin [6-furfurylaminopurine] (KIN) (100 &mu;M). After six weeks of culture, a six-fold multiplication rate was achieved. Rhizogenesis frequency was 100% on half-strength amounts of the same initial medium containing indole-3-butyric acid (IBA) (0.49, 4.9 &mu;M) alone, or in combination with naphthaleneacetic acid (NAA) (0.27 &mu;M). Rooted shoots were transferred to vermiculite substratum and acclimated successfully in a growth cabinet.
著者
太田 猛彦 塚本 良則 城戸 毅
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.67, no.10, pp.383-390, 1985

<br>丘陵性自然斜面における雨水移動機構を解明するため,多摩丘陵に試験斜面を設け,土層中の水分変化を観測した。これより斜面全体にわたる等サクション線図と等水理水頭線図を作製し,その時問的変化を追跡 して,斜面内の雨水移動の実態を,降雨の開始からそのピーグ,終了,乾繰過程に至るまでに生起する各種の水文事象について詳細に説朗した。なかでも,不飽和浸透流の実態飽和側方流の諸相,復帰流の役割等が明らかになった。また,これらの解析を通して,斜面に生起する大帯の現象が基盤地質の影響をうけていることを示し,とくに,斜面頂部に存在する厚いローム層の役割について以下の点を指摘した。 1) 大きな土湿不足をもつた め,降雨流出に対していわば負のソースエリアとして働く。 2) 大量の雨水を一時貯留し,おそい直接流出に貢獣する。 3) 急傾斜部以下に生起する諸水文現象の支配要因となる。
著者
倉永 善太郎
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.6, pp.176-183, 1975

九州地方のマツカレハ個体数変動について,金峰山と大浦の2試験地で, 1956年より8世代にわたる調査結果に基づぎ,その要因の解析をおこなった。1)金峰山では1957年と1963年,大浦では1958年と1963年に突発的に大発生が起こり,いずれも1世代で終息して,大発生の前に漸進的な密度の高まりはなかった。2)全期間を通じて生命表を作り,VARLEYとGRADWELLのグラフ法により個体数変動要因の解析をおこなった。金峰山では全ステージについて調査がでぎた1957年から1962年まで6世代のうち,はじめの4世代までは卵期から越冬前幼虫期の死亡が,また,あとの2世代では雌成虫の中で繁殖雌数が占める割合が総死亡の変動主要因となった。大浦では世代ごとに異なった要因で変動がおこり,変動主要因は明らかでなかった。3)金峰山のデータから,回帰法によって越冬前幼虫密度から次世代の卵粒数を推定する式を導き出した。この式からの推定値ば,第3世代から第5世代までの適合はきわめてよかったが,第8世代(大発生)の予測はできなかった。このモデルを大浦にあてはめると適合はきわめて悪く,両試験地間では個体数変動要因にかなりの違いがあると推定された。4)この調査は8世代の長期におよび,その期間の初期と終期では林相や林内生物相などの環境変化も大きく,このような林分での少数要因による個体数変動の説明はむずかしいと思われる。