著者
北原 曜
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.8, pp.317-322, 1989-08-01
被引用文献数
9

植物根系によって発生したと推定されるパイプの水理特性を, 透水試験などによって明らかにした。試験方法は以下のとおりである。1)山腹斜面土層中より, パイプを含めた断面9.5×9.5cm, 長さ30cmの土壌サンプルを採取する, 2)サンプルに種々の水頭差をかけて透水試験を行う, 3)パイプ内の土を耳かき状のさじで採取し分析する, 4)サンプルのパイプ部分に石膏を流し込み固める, 5)もう一度, 透水試験を行い非パイプ部分の透水係数を求め, 2)との差からパイプフローの流量を算出する, 6)サンプルを分解し, 石膏で固められたパイプ部分を取り出す, 7)このパイプ部分の体積, 直径など形状を測定する。以上の試験を10サンプルについて行った結果, パイプの形状は断面が離心率0.39〜0.84の楕円形であること, パイプ内の団粒化した土の占める体積は10%以下であること, パイプ内の水の動きにはDARCY-WEISBACHの式が適用でき, MANNINGの粗度係数は0.036〜1.364という大きな値を示すことなどが判明した。
著者
高橋 康夫 後藤 晋 笠原 久臣 犬飼 雅子 高田 功一 井口 和信 芝野 伸策
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.6, no.4, 2001
参考文献数
29

東京大学北海道演習林 (富良野市) において, 北海道の渓畔林の主要構成種で雌雄異株性の高木であるヤチダモ (<I>Fraxinus mandshurica</I> var. <I>japonica</I>) の性表現とサイズ構造を調査した。天然林に設定された岩魚沢大型試験地 (18.75ha) に存在する胸高直径5cm以上のヤチダモの場合, 個体数は未開花個体135 (19.6%),雌性個体293 (42.6%), 雄性個体260 (37.8%) であり, 開花個体の性比に1:1からの有意な偏りは認められなかった。未開花個体のサイズは開花個体よりも小さく, 開花個体のサイズ構造に雌雄差は認められなかった。27年生と50年生のヤチダモ人工林では, それぞれ525個体中4個体 (0.8%), 558個体中272個体 (48.7%) が開花していた。50年生人工林における未開花と開花個体あるいは雌雄ごとのサイズ構造は, 天然林と同様の傾向を示した。成長および形質が優れた優良木98個体の性比では, 雄性個体が有意に多いことが明らかとなった。ヤチダモは材質や通直性に優れた有用広葉樹であり,林業において性の取り扱いを検討する必要が示唆された。
著者
池田 茂
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.5, pp.192-195, 1955

鳥取県岩美郡,鳥取市,及び気高郡内の海岸砂丘地における被覆植物並びに海岸砂防造林木(幼令木)の寄生菌について調査研究したが,要約すればつぎの通りである。<br> (1) 被害被覆植物<br> コウボウムギ,ハマゴウ,ハマボウフウ,イヌムギ,<br> スナビキソウ,ケカモノハシ,ハマニガナ,ナデシコ,<br> ハマヒルガオ,ウンラン,オオ分マツヨイグサ,アキノキリンソウ,<br> トメムカシヨモギ。<br> 被害造林木(幼令)<br> ニセアカシャ,ポプラ。<br> (2) 見出された病原菌<br> <i>Alternaria, Macrosporium, Diplodia, Phyllosticla, Botrytis, Bacterium</i>.<br> (3)病原菌で最も多いのはAlternaia で Macroporium や Diplodia, 細菌類がこれに次いでいる。また原因不明(生理病)の病害もかなり多い。
著者
Toda R.
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.9, pp.370-371, 1959-09-25
著者
水本 晋
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.7, pp.284-287, 1955

本研究はコデイワカイガラタケ,ヒロバノキカイガラタケ,キチリメンタケ及びキカイガラタケの4種に対する,シラカシ,オニグルミ,カツラ,クリ,シラカンパ,スズカケノキ,ヤナギ等7種の広葉樹材の耐朽力を28&deg;Cの定混器内において比較したものであつて,実験結果の概要は下記の如くである。<br> 1. 供試材片上における菌糸の発育は,キチリメンタケが最も良好で,キカイガラタケは不良,コゲイロカイガラタケ及びヒロバノキカイガラタケは発育中位であつた。<br> 2. 心材は一般に配朽力が強く,なかんずくクリ心材は最も強大であつた。これに反し,各辺材は一般に耐朽力が弱く,なかんずくシラカンバ及びヤナギの辺材は全供試材片中最も激しく腐朽した。<br> 3. 自然界に於て,一般に針葉樹材を侵害するものとされているコゲイロカイガラタケ及びキチリメンタケは実験室内の条件下では広葉樹材にも強い腐朽力を示し,亀裂性褐色朽を基因した。而してヒロハノキカイガラタケの腐朽力は梢々弱く,キカイガラタケは最も弱かつた。
著者
丸山 温 松本 陽介 森川 靖
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.4, pp.427-432, 1996-11-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
21

樹冠上部の葉は,重カポテンシャル差によって常に下部と比べて乾燥状態におかれている。'この乾燥に対する適応を明らかにするため,スギ成木の梢端部と最下部の葉について,水分特性と形態的特徴の季節変化を調べた。梢端部の葉では,圧ポテンシャル(Ψp)を失うときの水ポテンシャル(ψWtip),飽水時の浸透ポテンシャル(ψSsat)が最下部と比べて低く,Ψpを維持しやすい特徴を持っていた。また,梢端部の葉では空隙の発達が抑制され,葉の単位体積当りの水分量も最下部と比べて多かった。すなわち,水分特性だけでなく,形態的にも梢端部の葉は乾燥に適応しており,このことがスギが高い樹高まで育つ重要な要因になっていると考えられる。
著者
沢田 満喜
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.195-197, 1958-05-25

チヤハリタケ属(Calodon)のジヨウゴハリタケとクロハリタケ, シシタケ属(Sacodon)のニガシシタケ及び新しい分布としてシワウロコタケ属(Phlebia)のケシワウロコタケにもテレフォール酸が発見された。
著者
藤森 隆郎
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.59, no.12, pp.435-441, 1977-12-25 (Released:2008-12-18)
参考文献数
20

米国カリフォルニア州北部の太平洋沿岸のセソペルセコイア(Sequoiasempervirens)の成熱した天然林を調査し,幹の現存量と林分構造を解析したoその構造は複層をなし,センペルセコイアがすべてめ階層で優占していた。他の木本種は常緑広葉樹が主で,中層の下部と下層に出現した。上層木の平均樹高は87.6mで,幹の総材積と乾重:量はそれぞれ1e, 817m3/haと3,461ton/haであった。地上1.7mにおける幹の断面積合計は338m2/ha,幹の現存量密度.(林分の幹の乾重/上溜木の平均樹高と林分面積の積)は3.95kg/m3であった。上記の成熟林のそばにある47年生のセソペルセコイアの2次林を測定し,その上層木の平均樹高ほ45.8m,地上1.3mの幹の断面積合計は152m2/haという値を得た。
著者
中根 周歩 坪田 博行 山本 真
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.69, no.11, pp.417-426, 1987-11-25
被引用文献数
3

広島県・府中町の花崗岩土壤を立地とするアカマツ林における, 伐採前後の土壤炭素の循環調査で得られたデータおよび伐採後のアカマツ林再生に関するデータに基づき, 伐採から森林再生に至る土壤炭素の循環動態を日平均気温および日降水量からシミュレートする数理モデルを構成した。このモデルによれぱ, A_0層量は伐採後10年で最小となりその後回復し, 約30〜40年で伐採以前の値にもどる。一方, 鉱質土層の腐植量は伐採直後の数年間, 枯死根からの腐植の供給によってやや増大するがその後30〜40年間減少を続ける。そのため, 伐採以前の値にほぽ回復するのに伐採後80年近く要すると思われた。土壤炭素のフローについては, A_0層の呼吸速度はA_0層量の, 鉱質土層中の腐植の分解速度はその腐植の蓄積量の変動バターンにそれぞれ類似した。一方, 全土壤呼吸は伐採後, 根の枯死による呼吸停止によって激減するが, その後の土壤有機物量の減少から増大, また根の呼吸の再生に伴って回復した。
著者
原田 盛重
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.390-392, 1940

1) ランシンボク.テレピンノキの乳液は中性にして,全く毒性を有せず。<br> 2) タイトウルシ,アンナンウルシ,マンゴウは酸性反應を呈し,その中タイトウルシ,アンナンウルシは毒性強く,マンゴウは僅かなり。<br> 3) ランシンボク,テレピンノキの乳液中の蛋白質の結晶は五角形,六角形をなし結晶が僅かなり。<br> 4) タイトウルシ,アンナンウルシ,マンゴウは蛋白質の結晶が槍状,圓錐状,角柱状をなし,結晶の數が比較的多く,タイトウルシに特に特微ある結晶を有す。
著者
近野 英吉
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.337-351, 1940

竹材の形状及び材積を竹林の施業と竹材の利用とに關聯して論究せんとする。<br> <b>1.</b> 竹材の太さと長さの關係節間の大小配列等が竹の種類により異り,マダケはマダケの形状を具ふる。而して母體内榮養素の多少と温度濕度の適否とが筍の發育を左右し,竹材の形状に多少の變異を生ずる。從つて竹林の完全なる構成を圖つて筍の發育を良好ならしむることは或る程度迄可能である。<br> <b>2.</b> マダケの全長は筍が適當に發育すれば目通周圍の約60倍(7寸竹上)65倍(6寸竹)70倍(5寸竹)あつて,枝下はその中央より2~3節上位にある。全長短く枝下低い竹林に於ては立竹の疎密配置その他手入に注意を要する。<br> <b>3.</b> 竹の節數は大竹に多いが竹材の中部に於ける節間の長さに關係少く,節數の多い竹は主として梢部に於て節間が短縮する。<br> <b>4.</b> 竹材は部分的に大小形状を異にして用途に適不適がある。節間の太さ厚さ配列は順次増減し,太さは最太部位,厚さは初め急に減じ長さの最大部位附近に於てその差甚だ少く,長さの配列は往々不規則で,長さの最大部位附近にその變化が多い。5~6寸以上のマダケ竹材各部の位置及び大さは大體次の如し。<br> <b>イ.</b> 目通高は普通地上第7節間で,その節間の長さ9~10寸・肉の厚さ2分内外。<br> <b>ロ.</b> 中央高は第20節間の上下2~3節間の部位で,目通高に比し1.5~2.5割細く,2.5~4.0割長くして肉の厚さは1.2~1.3分。<br> <b>ハ.</b> 第1枝節直下の節間は疎生と密生とによりその位置異り,中竹は中央高と略一致し大竹は中央高より2~3節上位する。從つてその大さは中央高と略同じか僅に小さい。<br> <b>ニ.</b> 竹材の最太部位は根元を別として普通第10節間附近が上部で以下數節間同大の事がある。5~6寸の中竹はI/4高にも上下し大竹は目通高とI/4高との間にあつてその太さは目通高と同じかそれより1~3分周り太い。<br> <b>ホ.</b> 節間の最長部位はI/4高とI/2高との間I/2高に近く,その長さは目通高節間長の約中竹2倍餘大竹2倍近く大。<br> <b>5.</b> 竹材の材積は大小竹共にマダケ1束の幹材容積は12立方尺締の3/10空洞を除いた實積はそのI/3即ち1/10尺締に近接し,適度に密生して發育の良い竹は容積も實積も多い。普通の施業竹林は年々1町歩實績約50石の竹材を生産することになる。
著者
図子 光太郎 生原 喜久雄 相場 芳憲
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.185-193, 1992-05-01
被引用文献数
11

森林の土壌溶液の溶存イオンの組成および動態を明らかにするため, スギ幼齢林にNH_4Clを施用した。調査地は群馬県の渡良瀬川上流に位置する東京農工大学演習林の24年生スギ林分である。母材は秩父古生層の砂岩および粘板岩で, 表層土壌のpH(H_20)は4.5前後である。ポーラスカップをとりつけた簡易採水器を用いて土壌水を採取した。採水した土壌の深さは10,20,30,50cmである。施用されたNH_4+-Nは硝化を受け短期間にN0^-_3-Nに変化し, 結果的にCl^-とともにN0^-_3-Nの2種のイオンが付加された。土壌交換基からの溶液への陽イオンの溶出に影響するのは特定の陰イオンではなく, 土壌溶液の主要な陰イオンの和であった。主要な陰イオン濃度の和の増加にともなって増加が著しいのはCa^<2+>で, ついでAl^<3+>, Mg^<2+>, K^+, H^+の順であった。土壌溶液のH^+とAl^<3+>濃度との間には指数関数的な関係がみられ, 土壌溶液のH^+濃度が0.1mel^<-1>以上, pHで4以下になると, Al^<3+>濃度の増加が著しい。pHの低い土壌での陰イオン合計の増加するような施業は地力維持のため十分注意する必要がある。
著者
佐藤 創
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.279-282, 1998-11-16
参考文献数
13
被引用文献数
1

通常ではハリギリ種子は結実翌々年の春に発芽する。ハリギリ種子の発芽を1年早めることを目的に, 11の湿層処理を行った。精選種子に対して25℃の高温湿層処理を1,2,3,4カ月間加えた後, 5℃の低温湿層処理を3カ月間加える4処理, 5℃の低温湿層処理を4,5,6,7カ月間加える4処理, 40℃または55℃の超高温湿層処理を1カ月間加えた後, 低温湿層処理を3カ月間加える2処理, さらにコントロールとして野外に放置する処理を行った。発芽率は高温湿層1,2,3,4カ月間処理で, 順に0.26%, 1.78%, 11.73%, 44.9%で, それ以外の処理では発芽が見られなかった。上記の処理は果実を1カ月5℃で保存した後で行った。したがって, 果実を同様に保存した後, 高温湿層4カ月+低温湿層3カ月の処理を加えれば, 実用的に十分な数の種子を通常より1年早く発芽させることが可能であると結論づけられる。
著者
庄子 康 栗山 浩一
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.51-56, 1999-02-16
参考文献数
8
被引用文献数
2

自然公園における過剰利用は, 利用者の快適な利用を妨げるだけでなく, 景観や生態系に対しても悪影響を及ぼしている。本研究では利用料金の導入を取り上げ, その中でも利用者を抑制する効果について議論する。任意の協力金200円を導入している雨竜沼湿原を対象地として, CVM(仮想的市場評価法)を用いて協力金に対する支払意志額を推定し, これをもとに利用料金について考察を行う。支払意志額の質問方法には支払カード方式, 二項選択方式の二つの方式を用い, 比較を行った。推定結果は支払カード方式では中央値500円, 平均値453円, 二項選択方式では中央値2,186円, 平均値3,322円となり, 質問方法によって推定結果が大きく異なった。この原因には, 手掛りバイアスをはじめとするバイアスの存在が考えられた。さらに結果として, 利用料金の額と抑制効果の関係, 道外の訪問者・花の知識が多い人・協力金の存在を知っていた人の支払意志額が高いことが示され, この点から利用料金には過剰利用を抑制する効果がある一方, 問題点も存在し, 導入においては双方の事実を踏まえる必要があると考えられた。