著者
雨宮 修二
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.179-184, 1993-10-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
3
被引用文献数
2 2

末期胃癌に伴い大量の腹水が貯留した患者に対し五苓散を用い, 大量利尿を通じて腹水が減少し退院させることができた。経過中西洋医学的利尿剤は一切使用せず, 電解質の乱れはまったくみられなかった。
著者
根津 雅彦 鈴木 達彦 平崎 能郎 並木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.420-451, 2021 (Released:2023-03-03)
参考文献数
80

スペイン風邪の際に漢方治療が多くの命を救ったことはよく知られる。古来よりインフルエンザを初めとした急性ウイルス性呼吸器感染症は傷寒などと呼ばれてきたが,本邦ではその治療にあたり,『傷寒論』『小品方』『太平恵民和剤局方』『万病回春』などから多くの処方が取り入れられてきた。江戸期には漢方治療は本邦独自の発展を遂げるものの,医療及び経済的な格差のため,その恩恵を受けた庶民は少数派であった。さらに傷寒治療のキードラッグである麻黄には,古来よりトクサ属植物と混同されるなど品質面に大きな問題を抱え,その薬効が過小評価されてきた可能性があることは,今後も留意すべきものと思われる。新型インフルエンザ・コロナウイルスパンデミックにも,漢方の有効性が期待されている。しかしその力を十分に引き出すには,十分なレベルの知識のもと方剤を適正に使用することの重要性が,今回歴史を振り返ったことにより再認識させられた。
著者
五野 由佳理 小田口 浩 早崎 知幸 鈴木 邦彦 及川 哲郎 村主 明彦 赤星 透 花輪 壽彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.6, pp.828-833, 2010 (Released:2010-12-24)
参考文献数
14
被引用文献数
12 9 3

2000年から2009年の9年間に当研究所にて,漢方薬による薬物性肝障害と診断した21症例について検討した。平均年齢55.2 ± 13.4歳で,男性5例,女性16例であった。服用3カ月以内には17例(81.0%)が発症していた。発症時,無症状が11例(52.4%)であり,肝細胞障害型と混合型が共に9例(42.9%)であった。起因漢方薬としては19例と9割以上が黄芩を含む処方であった。DLST施行例は5例のみであり,方剤陽性は1例のみであった。治療としては,原因薬の中止のみで肝障害の軽減および肝機能の正常化を認めたのが18例(85.7%)で他2例は同処方去黄芩にて正常化を認めた。今後,特に黄芩を含む処方の場合に無症状でも,薬物性肝障害の早期発見のために3カ月以内の採血が必要と考える。
著者
堀口 勇 大竹 哲也 岡田 貴禎 富田 行成 志賀 達哉
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.383-386, 2003-03-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
10
被引用文献数
4 3

三叉神経痛に対しては carbamazepine が特効薬として使用され, 根治的には Jannetta の手術が行われる。しかし手術を望まず carbamazepine も無効となって, 激痛に悩まされる例もある。今回, 漢方薬が有効であった症例について検討した。漢方薬により carbamazepine が不要となったものを著効例, 半減できたものを有効例としてまとめると, 著効例7例, 有効例7例であった。処方は呉茱萸湯が2例, 五苓散を含む処方が9例, 柴胡桂枝湯・当帰四逆加呉茱萸湯生姜湯・麻黄附子細辛湯が各1例となった。三叉神経痛は上小脳動脈やその周辺血管の三叉神経への癒着・圧迫があり, 三叉神経の浮腫が生じていると考えられている。限局した領域における浮腫であっても五苓散や呉茱萸湯などはその利水効果によって効果を発現できるのではないかと思われた。14例の検討から三叉神経痛は水毒・表寒証が多いと考えられた。
著者
萬谷 直樹 八巻 百合子 藤井 泰志 金子 明代 手塚 健太郎 喜多 敏明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.185-188, 2010 (Released:2010-07-01)
参考文献数
4

2004年10月から2008年9月までに,我々の漢方クリニックを訪れた患者を連続して登録し,牛乳飲用で腹部膨満感や腹痛,下痢が生じるかどうかを調査した。全登録数3175例のうち35例(1.1%)が牛乳不耐症の症状を訴えた。その35例中20例で乳糖コーティング製剤が試みられたが,試みられた20例中13例はとくに症状が出現せず,実際に乳糖コーティング製剤で乳糖不耐症の症状が引き起こされる頻度は1%を下回るものと推測された。
著者
角藤 裕 清水 元気 山岡 傳一郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.337-341, 2015 (Released:2016-02-09)
参考文献数
13

B 型肝炎に伴う非代償性肝硬変により生じた治療抵抗性の腹水に対し茵蔯蒿湯と五苓散料が奏効した一例を経験した。症例は58歳女性。B 型慢性肝炎と糖尿病を無治療で放置しており,外傷に伴う頸部痛で受診した際に黄疸と腹水を指摘され入院した。フロセミドやスピロノラクトンといった利尿薬の効果に乏しく,アルブミン補充でも腹水のコントロールが不良であったが,茵蔯蒿湯合五苓散料を煎薬にて投与したところ1ヵ月余りの間に速やかに改善した。茵蔯五苓散料(煎薬)あるいは五苓散エキスと比較し明らかに効果があったと思われ,特に山梔子や大黄の作用が重要であったと考えられた。
著者
松井 龍吉 小林 祥泰
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.339-344, 2006-05-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

再発した胸水貯留に対し, 五苓散を投与したところ胸水の著明な減少と再発が見られなくなった症例を経験した。症例は61歳男性。うっ血生心不全, 大動脈弁閉鎖不全症, アルコール性肝障害などにて外来治療中であった。●●●●●●うっ血性心不全の急性増悪にて胸水が貯留。胸腔ドレーン留置などにより胸水は消失するが, 再度貯留し当院入院。入院後よりそれまでの内服薬を変更することなく, 五苓散を追加投与したところ胸水が消失し全身の浮腫性変化も見られなくなった。さらにその後も胸水の再貯留も見られていない。五苓散はいわゆる「水滞」を基盤にした種々の疾患に対し, 口渇, 尿不利を目標に投与される方剤である。急性疾患において血管内脱水と消化管の余分の水分のアンバランスを是正する処方であり,本例においても単なる利尿のみでなく, 利水として何らかの水分調節作用を示したと考えられた。
著者
松崎 茂
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.67-72, 1999-07-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
14

採取直後のトリカブトの根をかじったため重篤なトリカブト中毒に陥った症例を経験した。治療においては, 心室性不整脈の治療に難渋した。「激しい嘔吐」と「煩躁」から,「尿自利」ではあるが五苓散エキスを投与した。すると, 尿流出状況が改善し, これに伴い不整脈が軽快した。五苓散が治療に有効であった可能性があった。また, 五苓散の投与目標として,「尿自利」も考えられると思われた。
著者
寺澤 捷年
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.354-363, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1

臍傍部,回盲部および S 状結腸部の筋肉の有痛性硬縮は瘀血病態と関連していることが知られている。しかし,これまでにその発現機序は不明であった。最近,筆者はこれらの徴候が経穴の痞根(ExB4),血海(SP10),あるいは硬縮部それ自体への鍼の施術で消失することを見いだした。さらに,これらの腹部の硬縮が上腹壁動脈あるいは下腹壁動脈の最も末梢の部位に位置することに気づいた。これらの事実は腹部の硬縮が上腹壁動脈あるいは下腹壁動脈の血流量の減少によりもたらされることを示唆しており,鍼による入力信号は単に胸髄11と12髄節のαとγ運動神経細胞の興奮を抑制するばかりでなく,興奮状態にあった交感神経活動をも抑制することを示唆するものである。硬縮を発現させる最初の有害信号は自然炎症をともなった骨盤腔内静脈の鬱血によって発生するものと推測した。
著者
木村 容子 佐藤 弘 伊藤 隆
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.394-398, 2016 (Released:2017-03-24)
参考文献数
20

呼吸器症状の漢方治療では五臓の「肺」だけでなく他の臓腑にも着目する。ストレスが関与した慢性咳嗽に八味地黄丸が有効であった2症例を経験した。症例1は25歳女性。会社のストレスによる胸の苦しさを伴い,腹診で心下痞鞕も認めたため半夏厚朴湯を処方したが効果不十分。腰の重だるさがあり八味丸に転方して咳が軽快した。症例2は42歳女性。数年間の不妊治療が背景となってゆううつ感,のどのイガイガ・つまり感が出現し,半夏厚朴湯や麦門冬湯を使用したが効果不十分。腰痛があり八味丸に転方したところ咳が改善した。両症例で小腹不仁はみられなかった。ストレスによる気うつが慢性化して気虚,特に腎虚に進行して出現する咳は,半夏厚朴湯の効果が乏しく,補腎薬である八味地黄丸が有効であると考えられた。罹患期間が短く,高齢者でない場合は,腹証で小腹不仁が必ずしも認められない。腎による咳では腰部の張りや痛みに着目することも大切である。
著者
堀口 勇 大竹 哲也 岡田 貴禎 富田 行成 志賀 達哉
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.383-386, 2003-03-20
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

三叉神経痛に対してはcarbamazepineが特効薬として使用され,根治的にはJannettaの手術が行われる。しかし手術を望まずcarbamazepineも無効となって,激痛に悩まされる例もある。今回,漢方薬が有効であった症例について検討した。漢方薬によりcarbamazepineが不要となったものを著効例,半減できたものを有効例としてまとめると,著効例7例,有効例7例であった。処方は呉茱〓湯が2例,五苓散を含む処方が9例、柴胡桂枝湯・当帰四逆加呉茱〓湯生姜湯,麻黄附子細辛湯が各1例となった。三叉神経痛は上小脳動脈やその周辺血管の三叉神経への癒着・圧迫があり,三叉神経の浮腫が生じていると考えられている。限局した領域における浮腫であっても五苓散や呉茱〓湯などはその利水効果によって効果を発現できるのではないかと思われた。14例の検討から三叉神経痛は水毒・表寒証が多いと考えられた。
著者
御影 雅幸 小野 直美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.419-428, 2009 (Released:2010-01-13)
参考文献数
40
被引用文献数
4 5

漢方生薬「芍薬」は,日本ではシャクヤクPaeonia lactiflora Pallas(ボタン科)の栽培根を乾燥したものを使用しているが,中国では「赤芍」と「白芍」に区別して用いている。中国では5世紀には芍薬に赤と白の別があることを認識し,原植物も複数種あった。芍薬の赤・白の区別点については古来,根の色,花の色や花弁の形態,野生品と栽培品の相違などの説があった。本研究で古文献の内容を検討した結果,野生品か栽培品かに関係なく,根の外皮をつけたまま乾燥したものを赤芍,外皮を去って蒸乾したものを白芍としていたと考証した。また明代の湖北,安徽,浙江周辺では,野生品で赤花のP. veitchiiやP. obovata Maxim. の根を赤芍とし,栽培品で白花のP. lactifloraの根を加工して白芍薬として使用していたと考察した。このことは芍薬の赤白がたまたま花色と一致したため,赤芍は赤花,白芍は白花とされ,同様に赤芍は野生品,白芍は栽培品として区別する習慣ができたものと考察した。
著者
沢井 かおり 渡辺 賢治
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.203-207, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
29

防風通聖散はメタボリック症候群の治療薬として広く知られている。精神科領域では合併症としての肥満治療に用いられるが,精神症状そのものに主方として奏効した報告はほとんどない。症例は63歳のうつ病男性で,主訴は抑うつ症状である。特にきっかけなく抑うつ症状が増悪し,本が読めず好きな読書を楽しめなくなった。男性更年期を疑い,漢方治療を希望して受診した。やや実証,やや熱証,気滞,血虚と診断し,排便困難感を重視して防風通聖散を開始した。8週後本が読めるようになり,3ヵ月後には読書やテレビに集中できるようになった。その後下痢傾向になったため内服を漸減し,10ヵ月後終診となった。防風通聖散は,肥満治療のみならず,証によっては精神症状そのものに応用できる可能性が示唆された。
著者
水嶋 丈雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.691-694, 2011 (Released:2012-03-21)
参考文献数
8
被引用文献数
2 4

パーキンソン病は神経難病である。我々はこの疾患を薬物治療群と薬物治療と鍼灸治療併用群に無作為に群別し,その進行度をホーンヤール度と UPDRS II・III について治療開始から5年間にわたり追跡調査をおこなった。薬物治療群は95例平均年齢64.7才,薬物治療と鍼灸治療併用群は103例平均年齢63.9才,両群において L-dopa 内服量や合併症において差はなかった。結果は,薬物治療群5年経過時にホーンヤール度平均2.1±0.8,薬物治療と鍼灸治療併用群はホーンヤール度平均1.3±0.4となった。また同様に UPDRS II は薬物治療群平均12.2±7.2に対し鍼灸治療併用群平均は7.6±5.0となった。次いで UPDRS III は薬物治療群は平均18.2±9.8に対し鍼灸治療併用群は平均11.9±6.8となり,いずれも反復測定分散分析で有意差を認めた。我々はパーキンソン治療において鍼灸治療を併用することは,その進行抑制に寄与できるものと考える。
著者
名取 通夫 土佐 寛順 田中 伸明 川俣 博嗣
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.419-424, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7

「朮」は大きく白朮と蒼朮に分類され, 白朮は利水・補剤として, 蒼朮は発汗・除湿剤として用いられてきた。しかし, 実際に白朮と蒼朮を入れ換えることにより, 自覚症状がいかに変化するかは検討されていない。今回我々は, 漢方方剤中の白朮と蒼朮を4週間ごとに入れ換えて処方検討することにより, 以下のことを明らかにした。1) 関節痛がある症例では蒼朮を用いた方が有効率が高い。2) 有効例では「飲みやすい」と答えた人が60%で,「飲みにくい」と答えた人はわずかに9%であり, 味覚が効果判定の一つの指標になり得る。
著者
中山 毅
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.83-88, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
18
被引用文献数
2

多嚢胞性卵巣症候群(polycystic ovary syndrome : PCOS)は生殖年齢女性の5-8%に発症し,月経異常や不妊症などの主要な原因の一つである。PCOS の治療は受診年齢や背景,特に挙児希望の有無により異なる。挙児希望のある女性のPCOS に対する治療の第一選択はクロミフェン療法である。ただし抗エストロゲン作用に伴う,子宮内膜の菲薄化や頸管粘液の減少も伴うことや,クロミフェン療法が無効な患者もいる。そこでクロミフェン療法が無効なPCOS 患者に柴苓湯を併用し,排卵周期が回復した6症例を経験した。柴苓湯が有効であった症例の多くは,東洋医学的に瘀血や水滞スコア値が高く,また投与後の血中LH 値,LH/FSH 比が無効群よりも低下した。さらに柴苓湯有効群はテストストロン値もより低下していた。ゴナドトロピン療法や腹腔鏡手術などの第2選択が行われる前に,証に応じて試みる価値があると推察した。
著者
寺林 進
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.67-77, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
31

生薬の基原は,生薬の品質確保において最も重要な項目の一つである。本稿では生薬の薬用部位,特にそのラテン語表記,基原植物の学名に関する課題について考察した。『日本薬局方』の生薬のラテン語表記には議論の余地を残すものがある。例えば,麦門冬は根なのでOphiopogo nis Tuber ではなくOphiopogonis Radix とすべきである。日本薬局方収載生薬の基原植物の学名表記は分類学で用いているものとは異なる場合がある。その違いがわかるように比較対照を示した。生薬の流通品の調査にもとづいて,『第十六改正日本薬局方』に基原植物を追加収載した生薬の例を示した。また,日中薬局方での基原に関して異なる例を示した。
著者
大平 征宏 齋木 厚人 山口 崇 今村 榛樹 佐藤 悠太 番 典子 川名 秀俊 南雲 彩子 龍野 一郎 小菅 孝明 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.191-196, 2015 (Released:2015-11-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

以前我々は減量手術後に易怒性から過食,リバウンドした症例を抑肝散が改善させたことを報告し,肥満症患者の精神面に対する漢方治療が有用である可能性を提唱した。今回,頻用されている減量治療薬および抑肝散の減量治療に対する効果を比較した。当院で減量治療目的にマジンドール,防風通聖散または易怒性を指標に抑肝散を投与された肥満症患者107例を後ろ向きに検討した。投与3ヵ月後,マジンドールおよび抑肝散で有意な体重減少を認めた。糖代謝への影響を糖尿病患者のみで検討した。HbA1c の改善はいずれの群においても有意差は認めなかった。肥満症の減量治療にはメンタルヘルスの問題が重要であり,患者の精神面を意識した漢方治療は有効であることが示唆された。
著者
中永 士師明
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.81-85, 2009 (Released:2009-06-17)
参考文献数
9
被引用文献数
4 6

[目的]トリカブトの塊根を湿熱処理したブシ末は四肢・体幹の冷えや痛みに用いられる。疼痛性疾患に対して漢方エキス剤に加えてブシ末を処方し,治療効果と安全性について検討した。[対象と方法]修治ブシ末を247例(男性94例,女性153例)に処方(1.5‐8.0g/日)し,4週間後の効果を判定した。効果判定にはVisual Analog Scale(VAS)を用いた。投与前に比べて4週間後のVASが50%以下であれば著効,51‐75%であれば有効,76%以上もしくは4週間以内に処方を変更した場合は無効と判定した。[結果]ブシ末に関して著効102例,有効84例,無効61例で,著効と有効を合わせると75.3%であった。副作用は3例(舌のしびれ,膀胱絞扼感,全身浮腫)に認められた(1.2%)。[結語]今回の検討では重篤な副作用は認められず,疼痛疾患に対して高齢者に対するブシ末の有効性と安全性を確認しえた。