著者
柴田 克之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.7-12, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
7

本稿は,筆者が教育と臨床場面の経験から感じていることを踏まえて,以下の4つの事項についてまとめたものである.内容は,1)作業療法の独自性と専門性,2)作業療法の臨床力と技術力の向上,3)作業療法の学術発展,4)最後にこれまで培ってきた作業療法の強みと魅力を医療・福祉領域で発揮するための取り組みと可能性についてである.
著者
衣笠 真理恵 古山 千佳子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.232-238, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
15

心不全,脳梗塞後遺症などを呈したA氏に,『音楽を楽しむ』作業の可能化を目指して介入した.可能化の背景にあった基盤やOTが用いた技能を,クライエント中心の可能化のカナダモデル(以下,CMCE)で考察した.A氏にとって『音楽を楽しむ』ことは,時間を超えた人とのつながりを感じ,生活の習慣を作り,痛みを忘れさせ,アイデンティティを保ち,生きている実感を与えていた.可能化の背景には,特に【クライエントの参加】,【可能性の見通し】が影響していた.それらを強化し促進するため,《適応》,《調整》,《コーチ》などの技能を用いたことで可能化に至った.CMCEを意識して関わることで,より作業療法の専門性を活かした介入につながる.
著者
藤井 洋有 近藤 健
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.26-33, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
28

本研究の目的は終末期がん患者の在宅復帰の予測因子を検討し,リハの臨床で役立つ視点を提示することである.リハを実施した終末期がん患者102名を対象とし,基本属性,臨床データ,FIM,PPIを診療録より収集した.また,ロジスティック回帰分析で在宅復帰の因子を求め,カットオフ値を算出した.結果,PPIと主介護者以外の同居家族が因子として抽出され,PPIのカットオフ値は4であった.終末期がん患者の在宅復帰支援において,生命予後を踏まえてADLを予測し,リハ目標を設定する必要性を裏づける結果であった.また,PPIのカットオフ値と家族構成は,退院支援の方針を迅速に検討する際,有益な情報になり得ると考えた.
著者
吉政 豪也 鹿田 将隆 篠原 和也 野藤 弘幸
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.95-101, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本報告の目的は,認知症のクライアントに対し,意図的関係モデルと人間作業モデルを併用した介入の有用性を検討することである.介入当初,認知症の行動・心理症状が強く見られていたことから,良好な治療的関係の構築に困難が予測された.そこで意図的関係モデルにより,作業療法士はクライアントが好む関係性を考慮して関わり,その上で人間作業モデルを用いて,興味と価値を反映した生活習慣の構築を図った.その結果,良好な信頼関係が築けたことで,生活史を反映した作業への従事が促されて,行動・心理症状に改善が見られた.認知症のクライアントに対し,意図的関係モデルと人間作業モデルを用いた作業療法介入の有用性が示された.
著者
唐渡 弘起 徳田 和宏 竹林 崇 佐々木 庸
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.162-169, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
23

当院では脳卒中後の麻痺手に対し,課題指向型アプローチ(TOA)とTransfer packageおよび機能指向型アプローチ(IOA)とTransfer packageのプロトコルがある.今回,これらの差について報告する.対象はTOA+Transfer package群7名とIOA+Transfer package群6名でそれぞれの上肢機能(FMA)および麻痺手の使用行動(MAL/AOU,QOM)について比較検討した.結果,FMAは有意な変化を認めなかったが(p=0.18),MALはTOA群がIOA群に比べ有意な変化を認めた(MAL AOU:p=0.04,MAL QOM:p<0.01).よって,TOAは同じTransfer packageを実施したとしても,より効率的に練習で獲得した機能を生活に転移できる可能性が示された.
著者
齋藤 佑樹 丸山 祥 熊谷 竜太 髙橋 慧
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.393-401, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
18

本研究の目的は,作業科学の学びが,学生の作業療法に対する理解や私生活にどのような影響があるのかについて記述し,分析・考察を加えることである.作業科学を履修した1年生5名を対象にフォーカス・グループ・インタビューを実施し,SCAT(Steps for Coding and Theorization)を用いて分析を行った結果,作業科学の学習経験は,作業の知識の理解だけでなく,自身を作業的存在として省みる契機となっていた.この実感を伴う作業の知識の活用経験は,クライエント中心の重要性に対する気づきを与え,父権主義的に偏った考え方の修正につながるなど,作業療法を行ううえでの大切な気づきをもたらしていた.
著者
見須 裕香 加藤 雅子 種村 留美 岡村 仁 山本 大誠
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.380-384, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
14

作業療法では,対象者が行いたいことや必要としていることと実際に行っていることとの間に生じる作業ギャップを把握することが重要となる.本研究の目的は,作業ギャップを測定するOccupational Gaps Questionnaire日本語版(OGQ-J)を作成し,言語的妥当性を検討することである.方法は,標準化された手順に従いOGQ-Jを作成した.その結果,原版との内容的な整合性を保ちつつ,日本の文化において使用可能な30の活動項目で構成されるOGQ-Jの言語的妥当性が確認された.今後は,高齢者や心身機能の低下を伴う人々を対象に含め,信頼性および妥当性の検証を実施する必要がある.
著者
前田 正憲 前川 祐介 戸谷 祐美 片井 聡 務台 均
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.415-423, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
28

要旨:慢性期脳卒中患者に対する2週間の反復性経頭蓋磁気刺激と作業療法による変化を調査した.その結果,介入後1ヵ月の上肢麻痺と生活の中での麻痺側上肢の使用頻度に有意な変化がみられた.介入前から1ヵ月後の臨床的に意義のある最小の変化量に関連する因子は, Fugl-Meyer assessmentでは介入前の麻痺が中等度,左側麻痺,Motor Activity Log-Quality of Movementでは手指の筋緊張が低いことであった.今回の結果から,作業療法を行っていく上で上肢麻痺が中等度で非利き手麻痺の場合はより麻痺の改善に向けた介入方法の比重を増やすこと,また手指の筋緊張の程度に注意を向け,その軽減に向けた介入方法や退院後の指導を行うことが有効である可能性が示唆された.
著者
萬 貴裕 野口 卓也
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.254-260, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
13

本研究の目的は,長期入院中の統合失調症者を対象にポジティブ作業評価(Assessment of Positive Occupation 15:APO-15)を精神科作業療法の介入に用いた内容を後方視的に報告し,その有用性を検討することであった.方法はAPO-15で評価を行い,その結果から判断された対象者の強みを基に幸福を高める作業への参加が習慣化できるよう支援した.その結果,クライエントは作業療法への参加が積極的となり,病棟内生活でも他者交流が増えるなどの幸福の促進に寄与した.APO-15は長期入院統合失調症患者の幸福の促進に貢献できるスクリーニングツールとしての有用性が示唆された.
著者
庵本 直矢 竹林 崇 日比野 新
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.579-589, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
21

要旨:ロボット療法は,脳卒中後上肢麻痺の改善に有効だが,麻痺手の使用行動の改善が困難である.今回,亜急性期の脳卒中後中等度~重度上肢麻痺患者に対し,ReoGoⓇ-Jを用いた自主練習(Reo練習)と麻痺手の使用行動の改善に有効であるCI療法に準じたアプローチ(以下,修正CI療法)を6週間実施し,麻痺手の使用行動の改善が可能かを先行研究の結果と比較することで検討した.結果,先行研究よりも明らかな上肢機能の改善と実生活における麻痺手の使用行動の改善を認めた.これより,ロボット療法によって獲得された機能を実生活に活かし,さらなる上肢機能の改善といった相乗効果を得るには,修正CI療法の導入が有効であることが示唆された.
著者
田中 龍太郎 吉村 芳弘 嶋津 さゆり 北原 浩生
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.730-737, 2021-12-15 (Released:2021-12-15)
参考文献数
30

本研究は,回復期から自宅退院した脳卒中患者の退院後のIADLとサルコペニアとの関連性を検証した後ろ向きコホート研究である.対象は2015~2019年に当院を退院した脳卒中患者69名で,方法は退院1~1.5ヵ月後に自宅訪問による追跡調査を行った.IADLの評価はFAIを,サルコペニアの評価はAWGSを用いた.退院時のサルコペニア有群は無群と比較し退院後FAIが有意に低かった. 交絡因子を調整した多変量解析の結果,自宅退院した脳卒中患者のFAIにはサルコペニアが独立して関連していた.脳卒中患者のFAIの改善のために,サルコペニアの予防や改善を念頭に入れた作業療法が必要であると考えられた.
著者
岩田 祐美 田島 明子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.439-448, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
33

要旨:訪問作業療法(以下,訪問OT)での活動・参加の促進は,個々の作業療法士(以下,OTR)が経験から築きあげた実践知に基づいていることが多い.OTRの語りからその実践知を体系化することを目的とし,訪問OT経験5年以上のOTR 9名にそれぞれインタビューを行い,語りを質的に分析した.結果,テーマ1「訪問OTの介入指針を持つ」,テーマ2「介入指針を関係性の文脈に乗せる」,テーマ3「活動・参加に向けた作業を導入する」の3つのテーマが得られた.これらのテーマから訪問OTの実践においては特に,訪問OTの介入指針を持ち,事例とOTRの関係性の文脈を把握したうえで作業を導入する関わりが重要であると考えられた.
著者
マイク・D・ フェターズ
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.139-157, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
53

序論:混合研究法を用いる研究者が世界で増えている中,作業療法研究者も,この調査アプローチの本質と力を知る必要がある.本稿の目的は:1)質的,量的,および混合研究法アプローチの基本的特性を確認し,2)混合研究法デザインの3つの基本型について特徴を説明する作業療法分野の研究例を用いて各デザインを示し,3)それら混合研究法を用いた作業療法研究に共通する統合の特性をレビューすることである.結果:ここで取り上げた3つの作業療法の研究例では,統合の特性が多く見られる.まず,タイトルに,混合研究法のデザイン手続きを用いた研究であることが示されている.また,統合の目的を示し,両タイプのデータ収集を意図したことを明示あるいは暗示している.各研究には,それぞれ特定の混合研究法デザインの名称が使われている.これらの論文には,主にデータの連結,積み上げ,マッチング,比較といった,データ収集段階における統合の意図の好例が見られる.さらに,結合,データ変換,およびジョイント・ディスプレイの作成といった,分析作業における,統合の意図とデザイン手続きも取り上げられている.考察:ここで取り上げた研究例は,作業療法研究者が混合研究法における最新の統合戦略の数々をどのように用いているかを示している.本レビューは,作業療法研究者が,他の研究者による混合研究法を用いた作業療法研究を解釈する上で,また,自身の研究で混合研究法を活用する上での参考となるであろう.
著者
野口 貴弘 戸嶋 和也 中西 千江 今井 志保 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.114-119, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
21

要旨:麻痺手の実使用を増やすためにCI療法のTransfer package(以下,TP)を修正し,病棟と協業することを目的とした.修正TPは以下の手順で実施した(①TPの対象となる活動の映像を撮影,②看護師に動画を用いて伝達,③ADLで病棟看護師が動画を参考に実動作を指導).対象者は回復期病棟入院中の4名とした.4症例の変化量の結果を以下に示す.4症例ともにMotor Activity Log(以下,MAL)のQuality of Movement(以下,QOM)が向上した.本研究では,2症例が先行研究のMAL(QOM)の臨床上重要な最小変化量を超えた.病棟での看護師によるTPは,麻痺手の使用行動に良い影響を与える可能性がある.
著者
吉田 裕紀 向 文緒
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.532-540, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
21

本研究では,若年層作業療法士の職業的アイデンティティ(Occupational Identity;以下,OI)に影響を与える因子を検討した.愛知県,岐阜県,三重県で勤務する35歳未満の作業療法士に郵送調査をし,アンケートは,回答者の個人属性,環境属性,OI測定尺度で構成した.その結果,有効回答率は36%となった.統計解析の結果,年齢,臨床経験年数と,OI得点間に弱い相関が認められ,後輩指導経験の有無,取り扱い件数目標の有無,多職種カンファレンスへの参加の有無による,OI得点に有意差が認められた.また,重回帰分析では,臨床経験年数,取り扱い件数目標の有無,多職種カンファレンスへの参加の有無の3因子に対する影響が示唆された.
著者
青栁 翔太 篠原 和也 鹿田 将隆 野藤 弘幸
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.102-108, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
14

回復期リハビリテーション病棟に入院する重度認知症者に対し,人間作業モデルに基づく介入がもたらした変化と要因を提案する.Mini-Mental State Examination,認知症行動障害尺度短縮版,機能的自立度評価法,人間作業モデルスクリーニングツールを,入棟1週目,介入2ヵ月後,それ以降1ヵ月毎に測定した.自宅退院に必要な日常生活活動への介入と,興味や役割の情報と人間作業モデルスクリーニングツールの結果から計画したちぎり絵やキャッチボールといった介入を約4ヵ月間実施した結果,各評価法の評定は入棟1週目よりも全て改善した.従って,人間作業モデルに基づく介入は,対象者の認知機能と行動・心理症状の良好な変化を導いたと考えられた.