著者
阿比留 睦美 酒井 浩 澤田 泰洋 山根 寛
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.593-601, 2011-10-15

要旨:音楽刺激は,視覚刺激と比較し,より効率的に注意機能を促進するとされているが,その効果は十分明らかになっていない.そこで健常者を対象に,近赤外線分光法を用い音楽活動時の前頭葉の賦活状況を分析し,注意障害の訓練における音楽の効果を検証した.活動は,「注意課題」と「二重課題」を想定した活動を用いた.その結果,「注意課題」では有意な傾向はみられなかったが,「二重課題」で実行機能に関与するとされている左側前頭葉背外側の賦活が有意に確認できた(p<0.05).単独で用いるには課題の提示方法などに工夫が必要であるが,前頭葉背外側を用いるとされる注意機能の訓練に,音楽利用の可能性が示唆された.
著者
松岡 耕史 三沢 幸史 横山 雄一 島田 真太郎 伊藤 富英
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.377-384, 2021-06-15 (Released:2021-06-15)
参考文献数
21

アームサポートであるMOMOは,主に神経難病患者に対して利用されているが,回復期リハビリテーション病棟での利用報告はほとんどない.そこで,MOMOを回復期リハビリテーション病棟入院中の脳血管障害患者や脊髄損傷患者4例に対して,日常生活における生活支援機器と,訓練におけるリハビリテーション機器として利用し,MOMOの活用方法について検討した.その結果,スプーンやパーソナルコンピュータの操作など,生活動作で利用できた他,上肢訓練の補助機器として利用することができた.これらより,MOMOは,回復期リハビリテーション病棟の対象者に対して,生活支援機器やリハビリテーション機器として活用できる可能性が考えられた.
著者
清家 庸佑 野口 卓也
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.548-556, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
32

要旨:本研究の目的は,ポジティブ作業に根ざした実践(以下,POBP)が高齢者サロン利用者のWell-Being(以下,幸福)に与える効果を予備的に検討することであった.方法は,高齢者サロンの利用者21名を対象に,介入期間は5週間,介入デザインは前後比較試験でPOBPの効果を検討した.効果指標は,改訂版PGCモラールスケール,ポジティブ作業評価などを使用した.解析は,介入効果に影響を与える変量効果を考慮した結果が推定できるよう一般化線形混合モデルで検討した.その結果,POBPはPGCモラールスケール(合計得点)で介入効果を認めた.POBPは,高齢者サロン利用者の幸福の促進に貢献できる可能性を示唆した.
著者
野口 卓也 京極 真
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.230-238, 2018-04-15

要旨:本論の目的は,精神科デイケアを利用するクライエントを対象に,Well-being(以下,幸福)を促進する作業への関わりの状態を測定できるポジティブ作業の等化評価(以下,EAPO)を活用し,臨床有用性を検討することだった.方法は,クライエントにEAPOを用いて評価を行い,介入は評価結果を参考にしながら幸福を促進する作業の学習機会を提供して支援した.その結果,クライエントは幸福を促進する作業への関わりが徐々に良好な状態となり,社会参加への制約が軽減された.EAPOは,幸福を促進する作業に根ざした実践で,作業療法士のリーズニングを補助し,多職種連携を円滑にする有用なツールであった.
著者
堀 翔平 齋藤 潤也 花田 恵介 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.535-542, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
12

要旨:右上肢麻痺を呈した脳卒中者に対して,エビデンスの高い手法を組み合わせた多角的なアプローチに加えて,装具装着下で実生活における麻痺手の使用を促す介入を実施したので報告する.介入は,装具・電気刺激・ロボット療法を併用したCI療法を1日1~2時間実施した.さらに,筋緊張の抑制・実生活での麻痺手の使用といった異なる目的の装具を作成し,実生活での装着を促した.結果は複数の上肢機能評価において,臨床上意味のある最小変化量を超える改善が見られ,麻痺手使用の機会が増大した.手指の伸展が十分でない脳卒中者に対しても,装具着用下での実生活の麻痺手の使用は麻痺手の使用場面の拡大の一助となる可能性が考えられた.
著者
今岡 泰憲 廣瀬 桃子 山口 みさき 天白 陽介 塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.442-449, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
27

要旨:本研究の目的は,急性期病院において作業療法士が肺炎患者の病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断する下肢機能評価のカットオフ値を算出することである.研究デザインは横断研究とした.対象は肺炎患者56名,調査項目は,SPPB,TUG,膝伸展筋力とした.結果,病棟トイレ使用可能・不可能に関連する因子としてTUGが抽出され,カットオフ値:11.8秒,AUC:0.807,感度:69.4%,特異度:89.5%であった.作業療法士は,算出されたTUGのカットオフ値:11.8秒を用いることで,観察による主観的な評価だけでなく,客観的な評価基準に基づいて,病棟トイレ自立使用可能・不可能を判断することが可能となる.
著者
勝山 美海 花田 恵介 河野 正志 市村 幸盛 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.733-741, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
19

要旨:右上肢麻痺を呈した亜急性期脳梗塞患者1例に対して,リストバンド型活動量計を用いた行動心理学的介入(Transfer Package)を行った.作業療法介入は,第17病日から1回2時間,週3回,計10回行った.また上肢活動量計測は1週ごとに実施し,対象者に示した.その結果,麻痺側上肢機能と日常生活における麻痺手の使用頻度は改善し,外来終了2ヵ月後にも維持された.上肢活動量の客観的計測は,対象者と作業療法士の双方が麻痺手の使用状況を客観的に振り返ることができ,Transfer Packageをより効率化できると思われた.今後はケースシリーズ研究や比較研究を行い,その有効性を確認する必要がある.
著者
田中 啓規 立山 清美 原田 瞬 日垣 一男
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.645-653, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
21

本研究は,自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder;以下,ASD)のある児の箸操作の特徴を明らかにすることを目的とした.ASDのある児18名と定型発達児16名を対象とし,「箸の持ち方」,「箸の操作パターン」,「箸操作時の指の動き」を比較検討した.その結果,ASDのある児の箸操作の特徴として,「箸を開く時の一定しない母指の動き」,「橈側と尺側の分離運動の未熟さ」,「動きが一定しない不安定な指の動きによる箸操作」があることが明らかになった.また,これらの要因としては,手指の分離運動の未熟さ,視覚優位な情報の捉え方,行為機能の障害が影響していることが考えられた.
著者
竹林 崇 花田 恵介 内山 侑紀 道免 和久
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.662-671, 2016-12-15

要旨:脳卒中後に非流暢性失語と右片麻痺を呈した慢性期の一症例に対して,両側の一次運動野への経頭蓋直流電気刺激と総指伸筋に対する末梢電気刺激を用いたニューロモデュレーション(Neuro-Modulation;以下,NM)後にCI療法を実施した.その結果,麻痺側上肢のFugl-Meyer Assessmentは,臨床上意味のある向上を示した.さらに,標準失語症検査における呼称を含む言語機能に改善を認めた.本症例報告は,NMとCI療法による手段的・応用的作業における麻痺手の使用が,言語機能を改善する可能性を示した.この報告により,作業療法の一部が言語練習を補完する可能性が示唆された.
著者
村田 雄一 大橋 秀行 添田 啓子 久保田 富夫
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.459-467, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
23

要旨:本研究は,医療観察法の入院医療における作業療法実践から,介入の焦点や技術と作業療法士の役割について明らかにすることを目的とした.この医療に従事するエキスパートの作業療法士を対象に半構造化面接を行い,質的分析を実施した結果,本人の“守りたい暮らしの安定”を目指す作業療法実践の概念的構造が得られた.この医療における多職種チームの中で作業療法士は,対象者の守りたい暮らしを主眼におき,当たり前の日々の生活の中にある作業(occupation)を安定してできるようにともに取り組むことにより,間接的に再他害行為を防止することを担っている.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.103-109, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
15

今回,筆者は疾病理解と服薬の必要性に関する理解の乏しさから病状が悪化し,精神科急性期病棟に入院となった統合失調症の事例に関わる機会を得た.介入経過の中で,事例が健康であった時に経験した「陶芸」が意味のある作業であることが発見され,陶芸を続けることで疾患と服薬に対する意識が変化し,自分らしい生活を送るためには服薬を継続し,健康維持を図ることが重要との認識を持つに至った.本論から,対象者の意味のある作業を中心とした「健康的な部分」に着目してアプローチすることは,「リカバリーモデル」や「ストレングスモデル」と共通性を持つと考えられ,統合失調症の急性期作業療法においても重要な視点となると考えられた.
著者
今岡 泰憲 廣瀬 桃子 山口 みさき 武村 裕之 塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.239-246, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
14

呼吸器疾患のクライエントに対して,酸素デバイスの取り扱いや,トイレ使用時の呼吸困難を軽減させるセルフマネジメントスキルを習得するために,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を使用した(5日,40分/日).結果,Canadian Occupational Performance Measure,Performance Quality Rating Scaleは向上した.今回の報告でCO-OPは,呼吸器疾患のクライエントのセルフマネジメントスキルの習得に有用である可能性が示唆された.
著者
徳竹 いづみ 小林 正義 杉村 直哉 冨岡 詔子
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.38-46, 2008-02-15

要旨:本研究の目的は,長期入院患者と合意される作業療法目標の特徴を明らかにすることである.合意面接に同意した72名の入院患者を対象に「合意内容調査票」を用いて調査した結果,「身体・健康管理」,「楽しみ・趣味」,「気分転換」に関することが対象者と合意されやすい目標であり,面接を2回行った37名の結果からは,合意内容が作業療法経過に沿って発展していくことが確認された.これらの結果は,長期入院患者と理解しやすいことばで目標を合意することの重要性を示しており,対象者と作業療法目標を分かち合う過程は日常生活に意味や価値をもたらし,長期入院による二次的な機能低下を防ぐための基本的な援助過程と思われた.
著者
川邉 千津子 石井 洋平 藤木 僚 小路 純央 森田 喜一郎
出版者
日本作業療法士協会
巻号頁・発行日
pp.451-461, 2013-10-15

要旨:「神経衰弱」実施による脳機能の精神生理学的評価および治療効果の検証へと繋げるため,高次脳機能障害(患者)群と健常群を対象に,前頭極部,前頭葉背外側部,頭頂葉前中部の酸素化ヘモグロビン変動量を近赤外分光法を用い検討した.結果は,患者群は健常群と比較し有意な低下(前頭極部,前頭葉背外側部,頭頂葉前中部いずれもp<0.001)を認めた.また酸素化ヘモグロビンは,健常群では時間経過に伴う増加や左前頭葉背外側部と右頭頂葉前中部で対側と比較し増加を認めたが,患者群では時間経過に伴う増加や左右差を認めなかった.患者群は「神経衰弱」の遂行に関与するワーキングメモリーを司る部位が十分に賦活されていないことが確認された.
著者
髙橋 香代子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.131, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)

「臨床・教育・研究は,作業療法士としての責務である」と恩師である故 淺井憲義先生に幾度となく諭され,私もこれまで研究活動に従事してきた.読者の中にも「作業療法士たる者,きちんと研究もしなければ」という責務を感じている人も多いだろう.しかし,「どこから始めたら良いのかわからない」という人も多いのではないだろうか.
著者
真下 いずみ 四本 かやの 角谷 慶子 橋本 健志
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.87-95, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

併存障害を有する成人期ADHD患者に訪問作業療法を実施した.症例は40歳代の女性で,家事や育児を遂行できず入退院を繰り返していた.訪問作業療法では,注意の持続困難を考慮した片づけの工程の簡素化,視覚優位の特性を活かした視覚的手掛かりの設置などを行い,症例の遂行能力に適合するように環境を調整した.同時に,同居家族に心理教育を行い,多職種連携を行った.結果,症例は家事と育児を遂行できるようになり,介入後2年間入院しなかった.以上から,成人期ADHD患者の訪問作業療法の意義は,作業療法士が障害特性に関する医学的知識と作業の専門的知識を活用して,患者の生活を再建することであると考えられた.
著者
中村 眞理子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.383, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)

格言,諺の類には,一般的に認識されている意味合いが真意と正反対であったりすることが,しばしばある.「弘法筆を選ばず」という言葉.「弘法」とは,平安時代初期の書の名人である弘法大師のことで,今から1,200年以上前の平安時代初期に,真言宗を開いた空海を指している.
著者
村仲 隼一郎 島田 浩輝 植田 友貴 水野 健 大石 實
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.239-247, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
47

本研究は,高齢者の摂食・嚥下障害事例報告の作業療法実践を分析し,今後の作業療法のあり方について考察するとともに,当該分野における作業療法の専門性確立の一助とすることを目的とした.文献検索の結果,25件が分析対象となりアブストラクトテーブルを作成した.また,介入内容は出現頻度順で示しICFで分類した.その結果,心身機能・構造では17種類,活動と参加では8種類,環境因子は5種類の介入内容に分類された.一方で,個人因子に対しての明らかな作業療法実践はなかった.したがって,今後の摂食・嚥下領域における作業療法のあり方は,心身機能・構造に偏重しすぎず,個人因子に十分に配慮した作業療法実践の必要性が示唆された.