著者
安保 雅博
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.3-9, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
12

リハビリテーション科医と作業療法士は似ているところがある.何をやっているのかわからず,世間的にほとんど認識されていないところである.だから,需要が十二分にもありながら,供給が著しく足りない,なんともアンバランスな不人気な職種でもある.だから,低迷する要因にもなっている.ブルー・オーシャン(競争相手のいない未開拓の市場)であることを自覚し,時代の流れを鋭利に感じ,患者さんのためにリハビリテーション医療を戦略的・革新的に行うべきである.
著者
佐野 裕和 籔脇 健司 佐野 伸之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.60-69, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
25

地域リハビリテーションでは高齢者の役割支援が課題とされるが,役割の促進要因や健康関連Quality of life(以下,HRQOL)への影響を明らかにした報告はきわめて少ない.本研究の目的は役割チェックリスト3の日本語暫定版を用い,要支援・要介護高齢者の役割遂行,環境要因,身体機能がHRQOLへ与える影響を包括的に明らかにすることである.作成した仮説モデルを構造方程式モデリングにて分析した結果,環境要因からHRQOLへの直接効果と役割遂行を介した間接効果があった.一方,身体機能からHRQOLへの影響はなかった.要支援・要介護高齢者においては環境を包括的に支援し,役割遂行を十分に促すことでHRQOLの向上につながることが示された.
著者
宮前 珠子 藤原 瑞穂
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.533-539, 2001-12-15

「これまで質的研究は,人類学,歴史学,政治学領域のみで使われてきたが,最近ではそれ以外の,伝統的には“量的研究”の領域であった心理学や,社会学,教育学,行政学,そして都市工学においても使われてきている」1)(Bailey,2001,p.40)と言われ,多くの学問領域は「現象学的アプローチに近づいてきており,実験的アプローチからは離れつつあり,厳密さには多少欠けるがより現実的になっている」8)(Yerxa,1991,p.201)とも言われる.保健医療分野での質的研究の先駆けは,米国人社会学者GlaserとStrauss(1965)による「死のアウェアネス理論と看護」2)であり,ここで初めて使われたのがグラウンデッドセオリーアプローチであった.これを機に,看護領域では急速に質的研究が注目され広く行われるようになる.作業療法領域ではこれから遅れること十数年,1980年代はじめよりごく一部の研究者によって質的研究が行われ始め,1990年代に広くその適切性,重要性が認識され多くの研究が発表されるようになってきた.但しこれは米国のことであり,我が国ではそれから遅れること約10年,1990代の終わり頃になってようやく質的研究が注目されるようになり,学会発表でも見られるようになったばかりである. この小論は,1966年から2000年まで35年間のThe American Journal of Occupational Therapy(以下,AJOTと略す)における質的研究に関する文献を,MEDLINEで検索しまとめたものである.質的研究に関連する論文としては,「質的研究について述べた文献」と「質的研究方法を使った研究」の2つに分けることができる.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 堀内 博志 村岡 尚 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-204, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
20

急性期脳卒中患者5名に対し,実生活での非麻痺手の抑制を行わず,補助的手段を併用した上肢集中練習を1日2時間,平均3週間実施した.本研究では,麻痺手の機能と生活における使用の改善での有用性と安全性を検討した結果,集中練習が麻痺側上肢機能と実生活における麻痺手の使用頻度および質を有意に改善させることを確認した.加えて,急性期における集中練習介入期間中に有害事象は認めなかった.これらの結果は,急性期における短時間の集中練習のプロトコルが,意味のある方法である可能性を示唆した.しかしながら,急性期の集中練習の効果を実証するためには,今後,対照群をおいたランダム化比較試験による検証を行わなければならない.
著者
田中 真 小山内 隆生 加藤 拓彦 小笠原 寿子 和田 一丸
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.363-374, 2012-08-15

要旨:統合失調症患者57名と健常者30名を対象として,ぬりえ課題を用いて線画の呼称と塗った色の分析を行った.線画の呼称を正答し,かつ線画に対応した色を塗ることができた者が共に8割以上であった線画は,健常者群では12項目全てであったが,統合失調症群ではバナナとミカンの2項目であった.四つ葉のクローバーとピアノは,統合失調症群で判別できた者は健常者群よりも有意に少なかった.残りの8項目は,線画を正しく呼称していたにも関わらず対応した色を塗ることができない者が多かった.統合失調症群のぬりえの特徴は,線画を認知できるが健常者が選んだ色とは異なる色を塗る者が多いことであった.
著者
片岡 聡子 畑田 早苗 宮本 謙三
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.285-293, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
14

育児中・非育児中および男女を4群に分けて比較することにより,育児中の作業療法士(以下,OT)の生涯学習の現状と課題を明らかにする目的で,高知県作業療法士会所属のOTを対象に,私生活や生涯学習についてアンケート調査を行った.結果,育児中の女性OTは他のOTと同程度に生涯学習への関心があるにもかかわらず,生涯学習の機会への参加と,それに対する満足度は有意に低い状況が明らかとなった.育児中のOTが生涯学習の機会への参加に必要な要素として,本人の意欲,家族の理解や協力,時間の工面など,自助努力に依存するものが挙げられた.自助努力だけでなく,育児中のOTを取り巻く環境的側面からの支援の必要性が示唆された.
著者
赤堀 将孝 亀山 一義
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.325-334, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
21

本研究は,日常生活圏域ケア会議に参加する他職種を対象に,作業療法士が果たせる役割を調査し,テキストマイニング手法により,個別ケア会議,日常生活圏域ケア会議,地域ケア推進会議に共通する役割と,それぞれに異なる役割を明らかにすることを目的とした.その結果,共通する役割は,生活のアドバイスをすることであった.また,個別ケア会議では身体機能や動作に対するアドバイス,日常生活圏域ケア会議では集団に対する関わり,地域ケア推進会議では施策の取り組みを考えることが,役割として明らかになった.そのため,これらの役割を把握した上で,それぞれの地域ケア会議へ参画していく必要性が示された.
著者
齋藤 佑樹 長山 洋史 友利 幸之介 菊池 恵美子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.299-308, 2017-06-15

要旨:本研究では,ADOCが作業療法面接に与える影響について検証した.ADOCは作業療法士とクライエントが協業的に面接評価を行い,作業療法目標を立案・共有するための面接ツールである.Webアンケート調査で,5名の予備調査インタビューから得た3つのカテゴリー(①セラピストの知識・技術,②セラピストの自信,③クライエントの状態)を基に,全34問の質問紙にて調査した.ADOCの使用経験者188名の回答を分析した結果,作業療法初心者には作業に焦点を当てた実践を追求したいと思う動機的側面にプラスに作用し,経験者では認知症や失語症など意思疎通が困難なクライエントと意味のある作業を共有する自信がついたとの回答が多いことが明らかとなった.