著者
平賀 勇貴 久野 真矢 許山 勝弘 平川 善之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.178-186, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
21

本研究は,人工膝関節置換術(TKA)後患者における『活動日記』を併用した作業療法(OT)実践が,疼痛と疼痛の心理的要因および活動量に与える影響を,非ランダム化比較試験によって検討した.TKA後患者を対照群15名と日記群15名に分類した.測定指標はカナダ作業遂行測定(COPM),疼痛,破局的思考,不安と抑うつ,自己効力感,活動量を測定し,多重比較検定にて解析し,『活動日記』のコメントをKJ法にて分析した.結果,日記群はCOPM,不安,生活活動量に有意な改善を認め,KJ法ではOT開始時に「痛み」を中心としていたが,終了時は「達成感」へ変化した.TKA後患者に対する『活動日記』を併用したOT実践の有用性が示唆された.
著者
吉本 尚斗 仲村 淳 新城 治 砂川 長彦
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.365-370, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
9

外来心臓リハビリテーション(以下,外来心リハ)を実施するにあたり,目標設定のために作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)を使用した.症例は50歳代の女性で,本態性高血圧による心不全を呈したと診断された.その再発予防を目的に外来心リハと薬の内服を開始した.外来心リハに際しADOCを用いた面接で目標設定を行った.目標は「心不全再発予防のための食事療法および運動療法の継続」と「スィーツビュッフェでの友人との交流」であった.目標設定後,症例は週1回の外来心リハと自宅での食事療法および運動療法を行った.結果,友人との交流は可能になった.また血圧および体重は退院時に比較し大幅な改善を認め,薬は1剤が中止となった.
著者
佐々木 剛 谷村 厚子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.34-42, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
36

日本における入院精神障害者に対する早期作業療法の既存の研究結果を要約し,今後の研究や実践の示唆を得るためにスコーピングレビューを実施した.データベース検索とハンドサーチにて早期作業療法に関する事例研究,介入研究計14論文を抽出し分析した.早期作業療法では精神症状,作業遂行,認知機能の評価の利用が多く,認知心理機能,健康管理能力,日常生活活動,社会生活適応能力の改善を目的に介入が実施されていた.主な成果として精神症状や認知機能,機能的自立度および動機付けの改善が示された.一方で,集団プログラムの目的が不明確な報告が多いこと,作業に関する成果報告が乏しいことも明らかとなり,今後の課題と考えられた.
著者
丸山 祥 廣瀬 卓哉 宮本 礼子 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.718-725, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
19

本研究では,作業療法士の卒前・卒後教育におけるクリニカルリーズニング学習の現在の知見の整理および先行研究で解決されていない課題であるリサーチギャップの特定を目的とし,スコーピングレビューを実施した.結果,30編が抽出され,8編が実験的・介入研究,22編が記述的・観察研究だった.有効な学習方略としては,臨床実習とケース基盤型学習,サービス学習が検討されていた.学習成果としては量的成果に加えて質的成果も利用されていた.今後のクリニカルリーズニング学習の研究では,多面的な学習成果を捉えた実証研究,ケース基盤型学習の検証,指導者や環境要因に焦点を当てた国際的な比較研究が必要である.
著者
塩田 繁人 三上 直剛 田村 大 村井 千賀 宮口 英樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.817-820, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
10

本研究の目的は,生活歴の評価手法の確立に向けた予備的研究として,生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)事例を対象にテキストマイニングを用いて生活歴を分類することである.方法は,MTDLP事例報告登録データベースで公開されている直近100事例を対象に生活歴のテキストデータを抽出し,テキストマイニングを用いて共起ネットワークを作成し,カテゴリーをICFコードに分類した.事例の生活歴は活動と参加7項目および3つのライフイベントに分類された.今後は,ライフステージごとの社会参加に焦点を当てた生活歴の評価手法を作成する予定である.
著者
渡部 喬之 佐野 太基 牧野 亜由美 酒井 健 川崎 恵吉
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.788-793, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
17

今回,フォーカルジストニアに罹患したプロピアニストの女性を担当した.事例は40歳代右利きの女性で,国内でのコンサート活動を主に行うプロピアニストである.演奏時の手の様子は,徐々に右の中指と環指が屈曲傾向となり,代償指として示指,小指の過伸展を認め,演奏継続が困難であった.代償指の過伸展予防,ジストニア指の固定を目的としたスプリントを作成し,段階的にスプリント装着下での演奏練習を継続した結果,介入123日目にはほぼ正常な演奏が可能となった.スプリント療法を行うことで代償指の過度な収縮を抑制し,求心路への適切な感覚入力を繰り返したことが効果的であったと考える.
著者
川原 宇央 石橋 裕 石橋 仁美 石井 良和
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.294-304, 2022-06-15 (Released:2022-06-15)
参考文献数
16

本研究は,日本で行われている人間作業モデル(以下,MOHO)に基づく作業療法実践の特徴を検討することを目的とした.方法は日本で発表されたMOHOを用いた事例報告を対象に計量テキスト分析を行い,テキストデータからMOHO実践の特徴を捉えた.その結果,最も多く実践で用いられる治療戦略は“明らかにする”であった.また,日本のMOHO実践は7つのカテゴリに分類された.これらのカテゴリのなかでも,クライアントと作業の関係性を明らかにすることに重きを置いていた.実践家はMOHOにより明らかになった作業を基にクライアントの支援を組み立てていた.
著者
花田 恵介 竹林 崇 河野 正志 市村 幸盛 平山 和美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.550-558, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
29

脳卒中片麻痺患者を対象に加速度計(ActiGraph Link GT9X)を用いた上肢活動量計測を行い,本邦においてもこの評価が妥当であるか否か,および2点計測法と3点計測法のどちらが,より妥当な手法であるかを検証した.本研究は単一施設の横断研究で,37名を対象とした.3点計測法は,各手の測定値を体幹部の測定値で減じた上で,左右手の活動量比や活動時間比を算出した.その結果,2点計測法と3点計測法のどちらであっても,麻痺側上肢の活動量と上肢機能評価の間に中程度から強い相関関係が示された.3点計測法の優位性は示されなかった.脳卒中患者の上肢活動量評価において,どのような計測方法や分析方法がより適切であるかは,引き続き検討を重ねる必要がある.
著者
山元 直道 古賀 誠 野村 照幸
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.638-646, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)
参考文献数
19

医療観察法の対象者の中には,精神疾患以外に知的障害や認知機能障害の併存が認められ,家事や調理の基本的技能の低さから生活が安定せず病状悪化につながる事例も多い.本事例にも知的障害と認知機能障害が認められ,健康や生活に無関心で不健康な生活を続けていた.作業療法や外泊訓練を通して,健康管理と家事や調理の技能獲得に向け,本事例が遂行できた内容に対して肯定的なフィードバックを用いて効率的な見本の提示や助言を行った結果,健康管理や生活技能の改善が図れた.医療観察法下における本事例への健康管理や生活技能への介入は,社会生活への価値を高めると共に再他害行為防止に作用し,社会復帰につながると考える.
著者
野口 佑太 草川 裕也 島崎 博也 美和 千尋
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.236-241, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)
参考文献数
12

近年,作業療法士および理学療法士を養成する大学等において早期体験実習に関する取り組みが行われている.しかし,新型コロナウイルス感染症が国内で確認されて以降,早期体験実習が実施できない状況となった.そのため,早期体験実習の代替手段としてバーチャルリアリティを活用することの利点と課題を明らかにすることを目的に,バーチャルリアリティを活用した施設見学の教材を用いて授業を行ったあとアンケート調査を実施した.その結果,施設の雰囲気を感じることができ,学生の満足度が高く,時間的拘束の影響を受けづらい有効な方法である可能性が示された.一方で,一部の学生において目の疲れや酔いが認められたことは今後の課題である.
著者
野口 卓也 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.704-714, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
28

要旨:ポジティブ作業に根ざした実践(以下,POBP)は,精神障害者の幸福の促進に有用であることが確認されている.他方,その介入に影響を与える個体差の要因は未検討である.本研究の目的は,POBPの介入に影響を与える個体差の要因を検証することである.対象は精神障害者であり,POBPに参加経験のある19名とした.分析は,POBP参加中に収集した縦断データを使用し,潜在曲線モデルを用いた.分析の結果,POBPの介入に影響を与える要因は入院回数の可能性が高いことが示された.POBPは入院回数の要因を除き,診断名,年齢,性別,生活環境,治療期間による個体差を超え,クライエントの幸福に寄与できる可能性がある.
著者
衣笠 真理恵 吉川 ひろみ
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.5, pp.564-571, 2023-10-15 (Released:2023-10-15)
参考文献数
27

脳卒中発症後3週から1年の作業遂行の質の推移について明らかにするため追跡調査を行った.遂行の質は発症後3週→1年の期間で統計上有意に向上していたが,一般的な機能回復曲線とは異なり上がり下がりを繰り返していた.個々のデータを見ると,心身機能が改善しても遂行の質が低下した者もあり,その逆もあった.6ヵ月→1年の期間は統計上有意な変化が見られなかったが,16名中6名の遂行の質が臨床上有意に向上しており,心身機能の低下した者が3名含まれていた.発症半年以降も遂行の質は改善するケースがあることが示唆された.遂行の質に着目することで,今まで捉えられなかったクライエントの変化を捉えることができる可能性がある.
著者
高木 雅之 岡崎 ななみ 宮脇 佳奈 棟田 千比呂 ボンジェ ペイター
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.674-682, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
31
被引用文献数
3

地域在住高齢者の日々の満足度に影響を与える作業経験を探索した.地域在住高齢者20名を対象に,日記と半構造化面接を用いてデータを収集し,テーマ分析を行った.その結果,一日の満足度に影響を与える作業経験として,つながり─隔たり,承認─否定,貢献─迷惑,努力─怠惰,楽しさ─退屈,進展─後退,上出来─不出来,獲得─喪失,回復─減退という9つのテーマが明らかとなった.1つの作業経験の中には,ポジティブな経験とネガティブな経験が混在することがあり,作業経験の複雑性が示された.本結果は,高齢者が日々の作業経験を理解し,生活の中でポジティブな作業経験を増やしていく手がかりを与えてくれる.
著者
諸星 成美 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.273-280, 2021-06-15 (Released:2021-06-15)
参考文献数
21

本研究は,身体障害を有する地域在住高齢者の作業的挑戦の特性をクラス分類し,作業参加,抑うつ,人格特性との関連性を検証した.データ収集は,調査用紙を用いて対象者から回答を得た.分析は,記述統計量の算出,潜在クラス分析,多項ロジスティック回帰分析を実施した.結果,作業的挑戦には,肯定的な作業的挑戦,危うい作業的挑戦,否定的な作業的挑戦の3つの特性があることがわかった.そして,肯定的な作業的挑戦に影響を与える因子には,生産的活動やセルフ・ケアへの作業参加,抑うつの身体症状やポジティブ感情,協調性や勤勉性の人格特性があった.本研究により,作業的挑戦への介入のための解釈可能性が広がると考えられる.
著者
正垣 明 中田 潔樹 下之園 俊隆 楠本 耕平 菅 健敬
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.228-235, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)

先天性心疾患を有する新生児に対する心臓血管外科術後は,呼吸不全や心不全などの合併症を防ぎながら運動発達を促すことが重要とされる.近年,PICS(集中治療後症候群)により小児集中治療室(PICU)退室後のQOLの低下につながる可能性が指摘されている.今回,新生児重症エプスタイン症に対するStarnes術後,長期人工呼吸管理を要した症例を担当し,呼吸循環機能を考慮しながら座位練習や上肢運動を含んだ早期作業療法を経て抜管が可能となり,家族のリハビリテーションへの参加を経て退院に至った.周術期管理中からの作業療法介入により合併症を最小限にすることで,早期退院やQOLの改善に寄与できたと考えられた.