著者
小峯 秀雄 緒方 信英
出版者
土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.701, pp.373-385, 2002-03-21
参考文献数
18
被引用文献数
5 8

高レベル放射性廃棄物の地層処分において, 処分孔や坑道を充填する緩衝材や埋戻し材には膨潤性や低透水性が要求されており, ベントナイトを用いた材料が有望である. 本論文では, 緩衝材や埋戻し材の設計に資するため, 砂とベントナイトの配合割合が5~100%の砂・ベントナイト混合材料および海外産を含む4種類のベントナイトの膨潤圧および膨潤変形について実験的に調査した. その結果, 膨潤特性に及ぼす砂・ベントナイトの配合割合, 乾燥密度, モンモリロナイト含有率および交換性陽イオンの種類と組成の影響を明らかにした. また, 著者らの提案するパラメータ「モンモリロナイトの膨潤体積ひずみ」により, ベントナイトの種類に応じて膨潤圧・膨潤変形特性を統一的に評価できることを示した.
著者
田中 邦煕 新谷 洋二 山田 清臣
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.631, pp.383-396, 1999-09-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
1

近世城郭石垣には反りなどの三次元的な独特の形態が認められ, 視覚的に安定感を与えかつ工学的観点からも合理的な形態と考えられる. しかしこの形態の発生起源などは不明な点が多い. 筆者らは現存石垣の観察計測結果から, 石垣普請時に基礎や背面地盤等でかなり大きな沈下や変位が生じこれが石垣面に現れて, 石垣師たちがこの自然発生的な形態に対してより安定化し美的にも高度化する努力を続けるうちに, 高度な三次元形態へと進歩したと考えた. そして石垣断面解析にFEMなどを適用する手法を検討した後これを応用して, 石垣構築時に反りなどの形態と類似した形態が得られることなどを示し, 「石垣の三次元形態の起源は石垣普請時の変位変形であろう」とする一つの考え方を説明した.
著者
酒井 與喜夫 湯沢 昭
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.551, pp.1-10, 1996-11-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
9

一般住宅の冬季の降雪対策や, 道路行政における除雪・排雪計画を策定する上で, 降雪・積雪予測は不可欠である. しかし, 気象予測の観点から見た場合, 1週間以内の短期や中期予測に関しては実用的な状況にあるが, 1カ月以上の長期予測はその予測の地域的な広がりや予測精度の観点から見た場合, 必ずしも満足のいく結果とはなっていない. 雪国には, 古来より気象にまつわる諺が多くある. その中の1つに「カマキリが高い/低い位置に産卵すると大雪/少雪」と言うのがある. 本研究は, カマキリの卵ノウ高さからその年の最大積雪深を予測しようとするものであり, その予測結果についての時系列的な検証と, 実際の予測方法の提案を行うものである.
著者
森川 高行 田中 小百合 荻野 成康
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.569, pp.53-63, 1997-07-20
参考文献数
6
被引用文献数
7 12

非集計行動モデルに代表される合理的選択モデルは, 社会の中における他者の影響を無視した狭義の合理性に基づいたものであるが, 今後の公共計画や政策の評価には社会的相互作用下の行動や評価の分析が不可欠と考えられる. 本研究は, 社会的相互作用のもとでの人間の合理性に着目した個人選択理論の再構築を試み, 他者の効用レベルを考慮した離散型選択モデルの一手法を提案することを目的とする. また, 提案したモデルを都市における自動車利用自粛行動の意識分析に適用している.
著者
杉山 均 秋山 光庸 亀澤 正之
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.572, pp.11-21, 1997-08-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
17

曲がり開水路流れには遠心力が作用し, かつ自由水面の存在よりその流動挙動, 乱流構造は複雑である. 本研究では直線開水路を出入口に有する曲がり開水路を対象に代数応力モデル, 境界適合座標系を用い解析を行った. 解析結果は実験と比較し本解析手法の有用性を検討するとともに, 直線開水路を含めた三次元開水路として計算を行い曲がり入口, 出口近傍における第一種から第二種へのあるいは逆の場合の二次流れの遷移挙動に関しても検討を加えた. その結果, 本解析手法は曲がり開水路流れ場の特徴的現象を比較的良好に予測するとともに, 曲がり開水路入口上流, 出口下流の直線開水路では曲がりの影響が二次流れに顕著に現れることを定量的に明らかにした.
著者
草野 郁
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1989, no.406, pp.213-222, 1989-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
16
被引用文献数
4

Information about liquefied and not-liquefied sites during past earthquakes is useful for liquefaction potential mapping of wide area. Therefore, inquiry of liquefaction-induced ground failures during the Kanto earthquake was performed for preparing a liquefaction potential map in Tokyo lowland. Interviews with above 300 persons who had experienced the hazard in Tokyo lowland were carried out. Historic liquefaction-induced ground failures are determined from these narratives and the reports concerning the earthquake. Liquefied sites distribute along the rivers and old river beds, and in reclaimed lands. Not-liquefied sites distribute away from the coast or rivers. Liquefied grounds along the rivers consist of sandy deposits containing only a small amount of fines, and the grounds containing considerably fines hardly liquefied. However, the sandy deposits containing fines were prone to liquefaction in reclaimed lands.
著者
高橋 和雄 藤井 真
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1997, no.567, pp.53-67, 1997-06-20 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10

地震, 風水害などの一過性の災害と異なって, 火山災害は長期化する特性をもつ. 火砕流に対して人命を守るために, 市街地で初めて警戒区域が設定された. わが国の災害対策は主として一過性の災害応急対策および被災者対策を対象としているために雲仙普賢岳の火山災害では被災者対策, 住宅対策, 生活再建計画などに多くの教訓と課題が生じた. 行政は, 現行法の拡大解釈および弾力的運用による21分野100項目の自立支援対策, (財) 雲仙岳災害対策基金および市町の義援金基金等によるきめ細かい被災者対策を行った. しかし, 災害対策システムの見直しなどの根本的な課題の解決はまだこれからである, 本報告では, 雲仙普賢岳の火山災害における被災者対策をまとめている.
著者
松岡 昌志 若松 加寿江 藤本 一雄 翠川 三郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.794, pp.794_239-794_251, 2005 (Released:2006-05-19)
参考文献数
29
被引用文献数
28 9

日本全国の任意の地点での地盤特性を評価するために, 全国的にS波速度に関する調査資料が得られている約2000地点について, 深さ30mまでの地盤の平均S波速度 (AVS30) と微地形区分との関係を検討した. 微地形の判読は, 全国の微地形を統一基準で分類した「日本全国地形・地盤分類メッシュマップ」の分類に従い, 大縮尺の地形分類図を用いて目視判読により正確に行った. その結果, 微地形ごとのAVS30には地盤の形成過程や堆積環境に起因する違いが認められ, 標高, 傾斜, 古い時代に形成された山地・丘陵からの距離を説明変量とした回帰式によって, AVS30が比較的精度よく推定できることを示した. さらに, 日本全国地形・地盤分類メッシュマップを利用して, 広域でのAVS30分布図を作成した.
著者
鶴来 雅人 澤田 純男 入倉 孝次郎 土岐 憲三
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.612, pp.165-179, 1999-01-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
29

本研究では, 大阪府全域を対象としてアンケート震度調査を実施し, 1995年兵庫県南部地震の詳細な震度分布を求めた. 得られた震度分布の信頼性を確認するため, 地震観測記録から算出される計測震度との比較および他機関が実施したアンケート震度調査結果との比較を行なった. その結果, 太田方式によるアンケート震度は計測震度で補正する必要があることが明らかとなった. そこで, 本調査結果に対しても補正を行い, 信頼性の高い震度分布を得た. さらに, 震度分布から見かけの震源, 伝播経路およびサイト特性を分離し, 断層破壊伝播による指向性の影響, 震度の距離減衰特性, サイト特性による高震度あるいは低震度域を明らかにした.
著者
及川 康 児玉 真 片田 敏孝
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.786, pp.89-101, 2005-04-20
被引用文献数
2 2

本研究では, 水害の進展過程に応じて住民が周辺状況の変化を察知し, 種々の災害情報を入手する中で, それをどのように受け止めて危機意識の形成に結びつけるのか, さらには, 如何にして対応行動に移すのか, という一連の心理的過程と対応行動の関係に着目し, その特性を時系列的かつ定量的に把握した. これらの検討では, 水害時における避難勧告・指示の発令は直接的に住民の避難行動の意思決定に影響を与え, 避難準備情報は家財保全行動を促す効果を持つこと, また, それら避難情報が発令される以前に提供される災害情報は, 早期の危機意識の醸成を促すことなどを定量的に示した. また, 洪水ハザードマップの公表等による事前の災害教育の実施により, 住民が自宅の潜在的浸水可能性を正しく認識し, 対応行動に反映させる効果を示した.
著者
片田 敏孝 児玉 真 桑沢 敬行 越村 俊一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
no.789, pp.93-104, 2005-05-21
被引用文献数
3 17

2003年5月の宮城県沖の地震では, 三陸沿岸各地で震度4~6弱が観測され, 津波襲来が直ちに懸念された. しかし, 地震後に著者らが宮城県気仙沼市の住民を対象に実施した調査によると, 津波を意識して避難した住民は, 全体のわずか1.7%であった. このように避難率が低調となった要因を把握するため, 住民の避難行動とその意識的背景を分析した結果, 避難の意思決定を避難情報や津波警報に過度に依存する姿勢や, 正常化の偏見による危険性の楽観視, 過去の津波経験による津波イメージの固定化といった住民意識の問題点が明らかとなった. 本稿では, これらの問題点を解決するための津波防災教育として, 固定化された津波災害のイメージを打破すること, また, 情報に対する過度な依存心を改善することの必要性など, 今後の津波防災のあり方を提言した.
著者
山本 泰彦 武田 厚 長合 友造
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.704, pp.187-199, 2002-05-20
被引用文献数
1

十分な空気を混入したコンクリートが約半日から14日までの各材齢に保有している耐凍害性能を通常の急速水中凍結融解試験によって実験的に調べた. 実験結果の解析には, 試験中にセメントの水和が継続する影響を排除する手法として著者等が過去の研究で提示したデータ解析手法を適用した.<br>本研究では, 若材齢コンクリートの耐凍害性も, 強度および含水量に大きく左右され, 水セメント比の直接的な影響は小さいこと, 飽水状態にあるコンクリートに満足すべき耐凍害性を付与するためには24N/mm<sup>2</sup>以上の圧縮強度が必要であること等を示した. また, 寒中コンクリートの養生方法に関し, わが国で標準となっている湿潤養生よりも封かん養生に近い養生方法を採ることが望ましいことを示した.
著者
宮川 房夫 川口 廣 水谷 進 吉村 和彦 粥川 幸司
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.528, pp.17-30, 1995-12-20
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

シールド工法による近接施工では, 施工中の周辺の地盤挙動のみならず既設の構造物への影響も把握することが必要である. そこで本研究では, シールド施工による地盤挙動の予測手法の一つとして3次元FEM解析を用いることを検討している. 解析では, シールド工事における施工過程のモデル化を行い, 更に施工中の地盤変状の主要因と考えられる切羽圧, 裏込め注入圧に着目してこれを荷重条件として用いている. ここでは, トンネル離間0.40~0.80mの単線並列泥水式シールド工法で施工された京葉線西八丁堀トンネルについて, 本解析手法を適用した3次元FEM解析を行い, その地盤変状にっいて計測結果との比較検討を行った.
著者
松田 泰治 大塚 久哲 池田 征司 宇野 州彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2005, no.801, pp.801_51-801_68, 2005 (Released:2006-05-19)
参考文献数
15

1999年に発生した台湾集集地震により, 我国では例の無い送電鉄塔の地震被害が発生した. 本研究では, まず超高圧送電鉄塔に関する最新の被害調査結果をまとめた. 次に, 架渉線-連成系の影響を簡易に考慮した鉄塔の単体モデルを提案した. 更に, 台湾で最大の345kV鉄塔で唯一完全倒壊した#203鉄塔が片継脚鉄塔であることに着目し, 地震時の振動により倒壊した可能性を解析的に検討した. その結果, 付近で観測された地震波を入力した場合, #203鉄塔は脚部に全体座屈が発生する可能性が高いとの知見が得られた. 最後に, #203鉄塔の復旧時において基礎形式がつなぎばり基礎に変更されたことを受けて, 基礎の不同沈下時の鉄塔の耐震性向上策として, つなぎばり基礎の有効性を示した.
著者
西田 一彦 西形 達明 玉野 富雄 森本 浩行
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.750, pp.89-98, 2003-12-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
14
被引用文献数
2 2

城郭石垣の多くは構築から400年前後経過しており, 崩壊の危機にさらされている箇所が数多く存在している. 城郭石垣の保存のために, 現在の形状を計測し把握するとともに, 城郭石垣構築当時における状態を推定するために石垣構築技術についての記述がある「後藤家文書」,「石垣秘伝之書」および「石墻書」の三つの構築手法を明らかにすることで反り曲線勾配部分について数式化することを試みた. この両者の比較により, 構築当時からの変形状況が把握でき, 現在多くの城郭石垣で問題となっている孕み出しの大きさを算出することが可能となった. さらに, 崩壊の危険性の判断や修復の必要性および修復形状などへの活用が可能となる.
著者
勝地 弘 多田 和夫 北川 信
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.543, pp.163-173, 1996-07-21
被引用文献数
3 1

長大橋の耐風設計においては, 自然風特性をモデル化したうえで, 対象構造物に作用させた場合に予想される応答現象を風洞試験, あるいは数値解析によって評価するが, 完成後の実橋においてこれらの結果を確認した例は少ない. 本研究では, 長大橋の耐風設計法を取り上げ, 本州四国連絡橋の大鳴門橋, 南備讃瀬戸大橋での強風時の動態観測データを基に, その妥当性について考察を加えた. その結果, 自然風の空間相関特性を指数関数によって定式化する現行の設計法に改良の余地が認められるとともに, 構造系に対する風荷重低減の可能性が示唆される結果などを得た.
著者
中川 大 波床 正敏 伊藤 雅 西澤 洋行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 = Proceedings of JSCE (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.590, pp.43-50, 1998-04-20
被引用文献数
2

交通需要予測や空港選択など国際間交通について分析する際に, 空間的抵抗を表す指標としてこれまで用いられてきた「所要時間」は, 定義が不明確である上, 必ずしも適切に利便性を反映したものとはなっていないという問題点があった. そこで本研究では, 国際交通の分析のための指標として, 地点間の期待所要時間を意味する「積み上げ所要時間」の考え方に着目し, まず空港選択モデルと海外出国者発生量モデルを構築することによって, この指標の有効性を示す. そのうえで, これを用いて国内各都市の国際交通の利便性についての分析を行う.