著者
鈴木 恵子 岡本 牧人 鈴木 牧彦 佐野 肇 原 由紀 井上 理絵 大沼 幸恵 上條 貴裕 猪 健志
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.588-595, 2009 (Released:2010-01-20)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

『きこえについての質問紙2002』のうち “聞こえにくさ” に関わる10項目を, 補聴器適合のための主観評価法として応用することを目指し, 補聴器装用者232例 (軽~高度難聴), および補聴器適合を行った軽中等度難聴82例 (補聴器装用前・装用後ともに資料あり) の回答を解析した。解析結果をもとに, 軽中等度, 高度の群別に得た各項目の回答スコアの中央値, および装用前からの1以上のスコア軽減を評価基準とする補聴器適合のための評価表を試作した。中央値以下のスコアを得た項目数が, 補聴器に対する全体としての満足度, および装用時の語音明瞭度と有意な正の相関を示し, スコアの中央値を評価基準とすることの妥当性が示唆された。以上から, “聞こえにくさ” 10項目と評価表を, 適合評価のために応用できると結論した。
著者
別府 玲子 服部 琢 喜多村 真弓 柳田 則之
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.38-43, 1995-02-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
15

5歳女児が耳鳴を主訴に来院し, 詳細な問診と検査の結果, 玩具のラッパから発生した強大音による急性音響外傷と診断された。初診時の標準純音聴力検査では中高音域に60-70dBHLの聴力レベルの低下を認め, 直ちにATP, ビタミン剤, ステロイド剤の点滴加療を開始した。聴力レベルは一部回復したものの2kHz, 4kHzに難聴が残り, 耳鳴も不変であった。幼児急性音響外傷は患者が幼児であるが故にその診断や発生の経緯の推定が困難と思われる。今回の症例での主訴は幼児としては珍しい耳鳴であった。幼児の耳鳴と難聴の関係について検討を加えた。また音源の音圧はプローブマイクより5cmの距離で130dB (A) 以上と高く, 急性音響外傷の原因音と充分なりうるものであった。強大音を発生する玩具や音響機器の幼少児に対する危険性についての啓蒙が必要である。
著者
神田 幸彦
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.121-128, 2017-04-28 (Released:2017-09-07)
参考文献数
11
被引用文献数
3

要旨: 難聴者にとってこれまでの大きな問題だったのは, 何だったのか? それはどう解決されていったのか? 補聴器の歴史と変遷は正に難聴患者に寄り添いながら発展, 進歩を重ねてきた。最近では雑音抑制, 音声強調に加え音楽も聴きやすく, 10kHz~12kHz まで増幅可能な補聴器も出現してきた。補聴器の歴史と進歩, 問題点の解決, これまでの筆者の補聴器外来 2,468名で扱ってきた主要なメーカーの歴史的変遷, 補聴器外来の年代別外来統計ヒストグラムの変遷なども踏まえ, 補聴器の進歩により生ずる新たな問題についても考察を加えた。
著者
村本 多恵子 山根 仁一 田中 美郷 阿波野 安幸
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.244-249, 1991

泣いている新生児に胎内音をきかせると体動を停止して泣き止むことが知られている。 この反応を新生児の聴覚スクリーニングとして用いるため, 自動的に記録できる装置を開発し, 正常成熟新生児47例と, 周産期に異常の認められた新生児11例について反応を記録した。 反応の有無の判定は極めて容易であつた。 正常成熟新生児47例の胎内音をきかせた場合 (on記録) の反応出現率は46.3%, 胎内音をきかせない状態 (off記録) で偶然に体動を停止する率は24.2%で, 胎内音をきかせたほうが新生児が泣き止む確率が明らかに高かった。 個々の新生児についてみると, on記録の反応出現率がoff記録の見かけ上の反応出現率を下回ったのは, 47例中1例のみであった。 一方, 周産期に異常の認められた新生児では, 泣き続ける力が乏しいなため, off記録での体動停止の確率が高く, そのため, これらの新生児の聴覚のスクリーニングとしては十分に有効とはいえなかった。
著者
河口 幸江 萩原 晃 西山 信宏 小林 賀子 鈴木 衞
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.95-101, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
14

2002年4月から2009年3月の7年間に当科に入院した突発性難聴で, 初診時Grade3以上の症例168例168耳を検討した。年齢は8歳から86歳 (平均52.7歳) で, 重症度はGrade3が95例, Grade4が73例であった。治療法は次の3群に分けた。プレドニゾロン60mg (PSL60群), プレドニゾロン120mg (PSL120mg群), 又はベタメタゾン8~12mg (BT群) のいずれかの漸減投与 (約1週間) を行った。いずれの群もプロスタグランジンE1製剤を併用した。全体の成績は治癒19.4%, 著明回復47.9%で, 重症度別の成績ではGrade3はGrade4に比べてよかった (p<0.05)。ステロイド薬別治療成績ではPSL120群の治癒率は26.1%で, PSL60群の8.7%に比べて高かったが, 多重ロジスティック回帰分析ではステロイド投与量の違いでは有意差はなかった。
著者
熊谷 一郎 平原 政太郎 岡田 諄 武藤 暢夫 清水 淑郎 高津 忠夫 関 和夫
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.104-109, 1970 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22

Audiometric examination was performed on 120 subjects who engaged in speaker research or in administrative works in speaker production, 10 subjects who used in their work insert-type receivers, and 30 recording engineers.The results were analized in reference to the number of years in works.Present study revealed that:1) there was no tendency that hearing was impaired in speaker engineers or in other people exposed to sound from speakers.2) the mechanism of hearing loss at 4000Hz found in recording engineers was appeared either different from the ones seen among sheet-metal workers or in speaker engineers.3) the reproduced sound through speakers seemed not to cause hearing loss in human.4) the direct sound produced by instruments may cause hearing loss as in the case with noise, however, further observation is to be done to prove definite effect of the sound from the instruments.
著者
岡野 由実 廣田 栄子
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.156-166, 2014-04-28 (Released:2014-11-06)
参考文献数
23
被引用文献数
1

要旨: 首都圏A県全域の公立小学校通常学級で一側性難聴児が在籍する学級の担任教員を対象として調査を行い, 学級担任の評価によると一側性難聴児の教科学習, 言語コミュニケーション, 社会参加, 活動的行動について, 著しい問題はみられず, 一側性難聴が言語発達や学業には直接的な影響を及ぼすわけではないことが示唆された。学級適応に特に問題を呈した一側性難聴児では, 他障害を併せ持つ傾向が指摘された。また, 幼児期早期からの難聴が言語発達に及ぼす影響に関しては, 軽度難聴児よりも一側性難聴児の方が影響は少ない一方で, 感情抑制等情緒発達については一側性難聴児の方が低く, 周囲に難聴を開示しない傾向にあり, 一側性難聴児と軽度難聴児では質的に異なる問題点があると考えられた。一側性難聴児童への支援には, 本人や家族, 教育関係者に対して十分な理解を促し, 児の状況に応じた支援・指導の必要性が示唆された。
著者
八木 昌人 尾関 英徳 井上 亜希 中西 重夫 室伏 利久
出版者
一般社団法人 日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.56-62, 2011 (Released:2011-04-16)
参考文献数
9
被引用文献数
1

250Hzから4000Hzまでの5周波数聴力閾値の平均が40dB未満 (grade1) の突発性難聴症例について検討した。高度の感音難聴ではないことから, 突発性難聴以外にオージオグラムの型により急性低音障害型感音難聴, 急性感音難聴といった診断がなされており, 担当医の違いにより診断が影響されていた。予後については, 治癒率は66%であったが, 著明回復は1例も見られなかった。これは, 著明回復が30dB以上の改善と定義されているためで, grade1ではこれは治癒と重なってしまうためと考えられた。突発性難聴にgrade1症例を含めるかどうかの是非を含め, 難聴の程度に応じた診断基準, 聴力回復の判定基準の作成が望まれた。
著者
Masaya Takumida Kohji Yajin Mamoru Suzuki Shigeharu Takeuchi Yasuo Harada
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.152-156, 1983 (Released:2010-04-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1

Tinnitus matching was performed in 24 patients with various types of etiology using a commercially available music synthesizer. Pure tone tinnitus was synthesized either by sine or pulse wave. In some cases, tinnitus was matched by band noise, but its band width varied considerably among individuals. In 17 out of 24 cases, tinnitus disappeared or decreased after masking by the synthesizer. Masking was the most effective when the tinnitus was high-pitched pure tone, and had small loudness and low masking level. In contrast, tinnitus of pulsating nature showed no effect of synthesizer masking.
著者
Yasuko Mori Yoshifumi Takahashi Ayako Sawada Yasuo Mishiro Takeshi Kubo
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.209-213, 2001-08-31 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10

大阪大学耳鼻咽喉科幼児難聴外来にて補聴器装用指導を行い経過を観察している難聴児の中で, 耳FM補聴器を装用している19名の保護者, 学校担任に対して, その使用状況および問題点を検討するために, 質問紙法による調査を行った。 以下のことが明らかとなった。 小学校入学直後からFM補聴器を利用開始している場合が多い。 様々な授業, 学校行事で利用されているが, 体育や音楽の授業, 屋外での学校行事の際は利用率が低い。 利用効果について, 保護者, 教師とも認識している場合が多いが, 効果を測りかねている場合も見受けられる。 耳鼻咽喉科医としては, さらに積極的にその有用性を啓蒙する必要がある。
著者
竹内 義夫
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.177-186, 1991
被引用文献数
2

語音聴力検査用語表の検査語のレベルはVUメータによって測定および統制されている現行の方法の歴史的経緯を述べ, 現在までに公開された語音聴取域値検査用数字語表の録音について数字音声のレベルの比較計測を行った。 57および57-S語表に関しては語音聴取域値の正常値を測定し, 57-S語表の語音のレベルの基準値が14dB SPLである根拠を明らかにした。 最近CD化された語表が瞬時値指示器によってレベルの計測と統制を行ったことに由来する問題点を指摘し, CDの数字音声のレベルをVUメータおよびピークメータで測定した結果から約5dBの補正が必要なことを示した。 今後語音のレベルに関する曖昧さを排除するため, オージオメータのJIS規格の中に規定を新たに設けるべきであることを提言した。
著者
前田 知佳子 小寺 一興 長井 今日子 三浦 雅美 矢部 進
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.276-282, 1992
被引用文献数
1

CD (TY-89) の57語表と, 57Sテープについて, 校正用純音と検査語音との関係を求めた。 検査語音のVUメータ相当レベルは, 校正用純音に対して, TY-89では10.2dB小さく, 57Sテープでは2.1dB大きかった。 検査語音のVUメータ相当レベルに比べたTY-89の語音の最大振幅は13.1dB高く, 57Sテープでは5.0dB高かった。<br>ついで, 正常者8例の雑音下の明瞭度をTY-89と57Sテープで, SN比を一致させて検討した。 全体明瞭度および無声子音, 有声子音, 半母音の明瞭度は, TY-89の結果は57Sテープより良好な傾向があった。 鼻音については, TY-89の結果は57Sテープより悪い傾向があった。<br>CD (TY-89) の57語表を雑音下の明瞭度検査に用いる際には, 本研究結果を考慮すべきである。
著者
伊藤 彰紀
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.142-147, 1983 (Released:2010-04-30)
参考文献数
10

Tinnitus is an otological symptom which is often encountered and is yet difficult to treat.Transtympanic anesthesia with 1ml of 4% Lidocaine was performed in 86 patients (119 ears) suffering from cochlear tinninus.The results are summarized as follows:1) Tinnitus was completely abolished or considerably ameliorated in 37 ears (31%)2) Tinnitus was moderately ameliorated in 52 ears (44%)3) Tinnitus was slightly ameliorated in 30 ears (25%)Consequently, we found the therapeutic effectiveness of the transtympanic anesthesia in 75% of our cases.It is not elucidated whether the therapeutic effect of the transtympanic anesthesia was attributed to anesthetic blockade of the tympanic plexus or the inhibition of cochlear cell activity.However, it is undeniable that the transtympanic anesthesia has a remarkable therapeutic effect to tinnitus without any significant side effects.It is hoped that this therapeutic method would be used more often for the patients suffering from tinnitus.
著者
中島 務 植田 広海 三澤 逸人 伊藤 彰英 冨永 光雄
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.98-103, 2000-04-28 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8
被引用文献数
4 3

厚生省特定疾患急性高度難聴調査研究班は, 平成10年度に突発性難聴の重症度基準を作成した。 今回, 我々は, この重症度基準を用いて今まで行われた3回の突発性難聴の全国疫学調査結果の解析を行った。 この重症度基準を用いた分類は, 突発性難聴の治療経過の解析に有用な指標であると考えられた。
著者
阿部 隆 立木 孝 村上 裕 遠藤 芳彦 伊藤 俊也
出版者
Japan Audiological Society
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.110-117, 1990

Kemp & Bray製作のILO88を用いて内耳性難聴者90名154耳のclickに対するeOAEを測定し, 内耳性難聴の程度との関連を検討した。 (1), eOAE波形が認められかつ再現性が40%以上の場合をeOAE (+) とすると, 0.5k-4kHzの4周波数平均聴力が35dB未満の81耳では, 94%の確実性でeOAE記録が可能, 35dB以上の73耳及び40dB以上の63耳では, 89%及び92%の確実性でeOAE記録が不能であった。 1kHzと2kHzの2周波数平均聴力が40dB以上の64耳では, 94%の確実性でeOAE記録が不能であった。 (2), eOAE記録可能の84耳では, 内耳性難聴の程度とeOAEパワー (total echo power及びFFT解析図のhighest peak power) の間に負の相関 (r=-0.44) が認められた。 以上の結果から, ILO88を用いて, 4周波数平均聴力レベル35-40dB以上の内耳性難聴のスクリーニングが可能と思われた。

1 0 0 0 OA 蝸電図検査

著者
原 晃 和田 哲郎
出版者
日本聴覚医学会
雑誌
AUDIOLOGY JAPAN (ISSN:03038106)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.45-53, 2008-02-28 (Released:2010-08-05)
被引用文献数
1

音刺激により生じた内耳及び蝸牛神経由来の電気的反応を, 鼓室内あるいは外耳道深部に電極をおいて検出する方法が蝸電図検査 (Electrocochleogram, ECochG) である。誘発される電気現象の構成成分として蝸牛マイクロホン電位 (CM), 加重電位 (SP), 蝸牛神経複合活動電位 (CAPまたはAP) があり, 音刺激からおおよそ3msec以内に認められる。聴性脳幹反応 (ABR) に比べ, 電極留置にやや煩雑な面はあるものの, より蝸牛近傍の情報が得られ, 病態の理解・診断に有用である。本稿では蝸電図検査の意義, 検査法, 適応について概説した。