著者
加藤 文男
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.413-421, 1991-12-15 (Released:2010-03-09)
参考文献数
32

琵琶湖産ビワマスのスモルトと稚魚鱗の形成について, 形態と生態の面から明らかにした。1) 幼魚 (0+) は5, 6月頃, 体長約60mmで体色の銀白化が始まり, 湖へ降下する。湖中生活時に銀白化が一層強まり, 7月頃体長約80mmでスモルト期に移行する。2) 降湖後の6月頃, 生息環境の変化に伴ない, 体長70mm位で鱗に稚魚輪が形成される。その時の基部隆起線数は6~11本 (平均7.1本である) 。3) 幼魚の変態時に, 体色はかなり銀白化し, パーマークは消失するが, 背鰭先端の濃黒色斑はみられない。体高比はほとんど変らず, 銀毛化変態に伴なう形態的変化はやや弱い。4) スモルト期に鰓耙数と幽門垂数が定数に達し, 諸計数形質において成魚と同様になる。側線付近に赤点が少数散在するが, スモルト期を過ぎると消失する。5) スモルト期の平均体長は, 0+年魚の8月に約90mm, 12月に約130mm, 1+年魚の3月に約150mmに達する。6) 12月の平均体長約130mmの頃, 鱗に第一次冬帯が形成される。7) 夏季は沖合の水深10~20m (水温躍層) 以深の冷水域に生息する。8) 四季を通じて主にガンマルスを食べ, その他季節に応じてビワオオウズムシやエビ類, 稚魚なども食べる。9) スモルト (1+) の2, 3月における肥満度は13.3~20.5, 成熟度指数は雌が0.013, 雄が0.004~0.033ですべて未成熟状態であった。
著者
山元 憲一 半田 岳志 西岡 晃
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.319-323, 2006-09-20
被引用文献数
7

リシケタイラギを用いて、換水および鰓繊毛運動に及ぼす低酸素の影響について水温20℃で調べた。換水運動は、酸素飽和の状態では入水口と出水口を時々開いて換水を行う断続型を示し、酸素分圧が60mmHgより低下するとそれらを常時開いている連続型に変化した。換水量は、酸素分圧の低下に伴って435ml/min/kg から酸素分圧54.9~38.7mmHgで1,862~1,888ml/min/kgへ4.3倍増加し、1.9mmHg以下に低下すると著しく減少した。小片の移動速度は、酸素分圧を14.0mmHgに低下するまでは酸素飽和の状態と同じ値を示し、2.0mmHg以下に低下すると著しく減少した。結果から、リシケタイラギは、低酸素になると換水運動を変化させ、著しい低酸素になると鰓の繊毛運動の活動度が低下して酸素摂取に必要な水量の換水が出来ずに窒息死すると推測した。
著者
河野 敬史 猪狩 忠光 今吉 雄二 田中 敏博 徳永 成光 吉満 敏 寺田 竜太
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.359-369, 2012-09-20 (Released:2015-03-23)
参考文献数
32

薩南諸島と鹿児島県本土に見られる海草13種について,鹿児島大学と鹿児島県水産技術開発センターの標本と調査記録に基づいて分布を整理すると共に,熱帯・温帯性海草の推移帯に位置する奄美大島 2ヶ所で群落構造を調査した。日本本土に主に分布する温帯性種のコアマモとヤマトウミヒルモは奄美大島でも見られたが,アマモは薩南諸島で確認されなかった。熱帯性種の分布は種によって異なり,ベニアマモ,リュウキュウアマモ,ボウバアマモ,リュウキュウスガモ,ウミヒルモ,トゲウミヒルモの6種は奄美大島が北限だったが,ウミジグサ2種は種子島南部でも見られた。一方,オオウミヒルモは薩南諸島,鹿児島県本土の両方で見られた。沖縄以南の海草群落で主要構成種となるリュウキュウスガモは与論島,沖永良部島,徳之島で優占群落が見られたが,奄美大島では一部を除いて点生する程度であり,コアマモやウミジグサ類主体の群落が形成されていた。
著者
高木 修作 村田 寿 後藤 孝信 市來 敏章 ムナシンハ マデュラ 延東 真 松本 拓也 櫻井 亜紀子 幡手 英雄 吉田 照豊 境 正 山下 浩史 宇川 正治 倉本 戴寿
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.279-290, 2005-09-20
被引用文献数
8

ブリの無魚粉飼料給与による緑肝の発症原因を、タウリン補足量の異なる無魚粉飼料で41週間飼育したブリ稚魚における、飼料タウリン含量と体内のタウリン含量、胆汁色素含量および肝臓のタウリン合成酵素活性の関連から調べた。タウリン無補足区では、飼育成績は劣り、貧血と緑肝が高率にみられ、肝臓のタウリン含量が低く、胆汁色素含量が高かった。タウリン補足区では、これら劣悪な状況は著しく改善した。肝臓のタウリン合成酵素活性は、全区で著しく低かった。ブリのタウリン合成能は著しく低く、無魚粉飼料にはタウリン補足が必要であり、無魚粉飼料給与による緑肝はタウリン欠乏に伴う胆汁色素の排泄低下と、溶血による胆汁色素の過剰産生により発生することが分かった。
著者
長谷川 夏樹 日向野 純也
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.155-158, 2010-03-20 (Released:2012-09-29)
参考文献数
13

伊勢湾内の6地区で漁獲あるいは調査採集されたアサリを用いて殻長-重量のアロメトリー式を検討した。伊勢湾全域の測定値を用いた殻長(L, mm)-総湿重量(TWW, gWW)のアロメトリー式は,TWW = 2.4×10-4×L2.97(決定係数:0.99)となり,伊勢湾域のアサリに共通のアロメトリー式が適用可能であることが明らかとなった。伊勢湾全域の測定値を用いた殻長-軟体部乾燥重量(SDW, gDW)のアロメトリー式は,SDW = 3.6×10-6×L3.30(決定係数:0.88)であったが,95%予測区間は広範囲におよんだ。また,伊勢地区における殻長-軟体部乾燥重量の時期別アロメトリー式にもばらつきが見られた。したがって,殻長-軟体部重量の関係においては,地域別,季節別あるいはサイズ別にアロメトリー式を検討することが必要であろう。
著者
堀木 信男
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.117-124, 1981-09-25 (Released:2010-03-09)
参考文献数
15

1979年6月に紀伊水道およびその外域の18点で, MTDネットによる10~50m層までの多層曳によって採集された魚卵・稚仔魚を材料として, 垂直分布について検討した。1.15種類 (不明種が8種類以上) , 19, 808個の魚卵, 31種類 (不明種が数種類) , 24, 030尾の稚仔魚が採集された。2.各採集層における最優占種は, 魚卵が全層でトカゲエソ, 稚仔魚が50m層を除く各層でマルアジである。3.個々の魚卵・稚仔魚の垂直分布を次の4つのタイプに類型化した。A型: 中層に最も多く分布する型であり, ウルメイワシ, トカゲエソ, タチウオなどの卵, カタクチイワシ, エソ科, ハダカイワシ科, マルアジ, ネズッポ属などの稚仔魚が含まれる。A'型: 中層に集中して分布する型であり, コノシロ卵, ヒイラギ属, クモハゼ科などの稚仔魚が含まれる。B型: 中層から底層にかけて多く分布する型であり, カタクチイワシ卵, タチウオ, アカタチ, ワニギスなどの稚仔魚が含まれる。C型: 底層に多く分布する型であり, ワニギス卵, ウルメイワシ, サイウオなどの稚仔魚が含まれる。4.一般的に, 産出された魚卵は卵発生の中期に浮上し, そして, 後期 (ふ化直前) には沈降する傾向が認められる。5.稚仔魚はそれぞれ種独自の好適な環境を選択して移行 (浮上あるいは沈降) しているものと推察される。
著者
中坪 俊之 川地 将裕 間野 伸宏 廣瀬 一美
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.259-264, 2007

マンボウの成熟度の指標について調べるため, 合計328尾の飼育魚および天然魚を用い, 魚類の成熟度指数として利用されているGSIおよびKGについて比較検討した結果, GSIとKGの間には強い相関が認められた。屋外でのBW測定の難しさからみて, マンボウの成熟度の調査では, KGの方がGSIよりも有効であると考えられた。また, 飼育魚は天然魚に比べ, 成長に伴って成熟度が高くなる傾向が認められ, 飼育下では自然界よりも成熟が早い可能性が示唆された。
著者
桐山 隆哉 野田 幹雄 藤井 明彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.431-438, 2001-12-20
参考文献数
9
被引用文献数
22

藻食性魚類7種(メジナ,ブダイ,アイゴ,ニザダイ,ウマヅラハギ,カワハギ,イスズミ)にクロメを投与し,摂食状況を観察したところ,ブダイ,アイゴ,イスズミの3種がクロメをよく摂食した。<BR>これら3種の摂食痕は,口器の形状を示す弧状の痕跡の形や大きさ,中央葉部や茎部等の厚みのある部位の縁辺や摂食面に残る痕跡に相違があり,魚種による特徴が認められた。<BR>これらのことから,海中林において葉状部が消失する現象が発生した場合,残された痕跡が新しければその特徴を比較検討することで,魚類の摂食の有無や摂食した魚種の推定が可能であると考えられた。
著者
山田 徹生 明石 英幹 山本 義久
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.153-159, 2012-03-20

マダイ量産種苗の放流用外部標識として利用できる鼻孔隔皮欠損を高頻度で作出する温度条件を明らかにする目的で,種苗量産施設を用いて飼育実験を行った。3実験の飼育温度は,孵化日(0日齢)から全長約5 mm まで20°Cを維持した後,5 mm から8 mm まで昇温し,それぞれ21°C,23°Cおよび25°Cで40日齢を過ぎるまで飼育した。また,これとは別に野外の比較的粗放な種苗量産池を用いた飼育実験を自然水温下(23°C)で行った。その結果,0日齢から36日齢までの間,20°Cから21°Cで飼育することにより約80~90%の割合で鼻孔隔皮欠損個体を作ることができることを明らかにした。これに対して,他のより高い温度における鼻孔隔皮欠損割合は1~34%と低かった。今回の実験は相対的に高水温と考えられるので,鼻孔隔皮欠損以外の形態異常にも注意する必要がある。
著者
平野 克己 藤原 次男
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.183-189, 1987-12-01 (Released:2010-03-09)
参考文献数
9

宮崎県小林市郊外にある実験田 (100×200cm) で, 1975年5月から1983年8月までの8年2ケ月間, マシジミを飼育し, マシジミの成長と寿命について観察した。得られた結果を要約すると次のようになる。1) マシジミの殻長の成長には, 平均殻長13, 21及び25mm前後に変曲点がある。殻長と孵化後の経過日数との間に, 一次式で表される成長式が成立した。2) 飼育観察したマシジミの最大寿命は8年2ケ月, 最大殻長は33.3mmであった。3) 孵化後1年で平均殻長は15.6mmに達し, 全成長量の約半分を1年間で成長した。4) 一方, 小林市郊外の野外池で最大殻長54mのマシジミを採集した。この大きさに達するまでの日数は成長式から17年前後, 又は, それ以上と計算される。マシジミを含み他のシジミ貝の寿命についても再検討する必要がある。5) 満4歳未満のマシジミの成長は, 水温の影響を著しく受け, 高温期に約85%, 低温期に約14%の年間平均成長率であった。
著者
杉田 毅 山本 剛史 古板 博文
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.191-198, 2007-06

高糖質低タンパク質飼料がマダイ稚魚の成長、見かけの消化率および肝膵臓の酵素活性に及ぼす影響を検討するため、粗糖質(CS)12%、粗タンパク質(CP)52%の飼料を対照に、CSを20および28%に増大し、CPを44および38%に削減した3試験飼料を作製し、平均体重11.4gのマダイに12週間給与した( 2水槽/飼料)。20%糖質飼料区におけるタンパク質効率およびタンパク質蓄積率は対照区より高かったが、増重率は低く、28%糖質飼料区における増重率、飼料効率、日間成長率およびタンパク質蓄積率は他区に比べて最も低かった。また、肝膵臓の糖新生酵素およびアミノ基転位酵素の活性に区間差はなく、高糖質低タンパク質飼料給与時においてもアミノ酸が糖新生の基質として積極的に活用されていることが示唆された。以上の結果から、マダイ稚魚は高糖質低タンパク質飼料を効率的に利用できないことが示された。
著者
杉田 毅 山本 剛史 古板 博文
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.191-198, 2007

高糖質低タンパク質飼料がマダイ稚魚の成長, 見かけの消化率および肝膵臓の酵素活性に及ぼす影響を検討するため, 粗糖質 (CS) 12%, 粗タンパク質 (CP) 52%の飼料を対照に, CSを20および28%に増大し, CPを44および38%に削減した3試験飼料を作製し, 平均体重11.49のマダイに12週間給与した (2水槽/飼料) 。20%糖質飼料区におけるタンパク質効率およびタンパク質蓄積率は対照区より高かったが, 増重率は低く, 28%糖質飼料区における増重率, 飼料効率, 日間成長率およびタンパク質蓄積率は他区に比べて最も低かった。また, 肝膵臓の糖新生酵素およびアミノ基転位酵素の活性に区間差はなく, 高糖質低タンパク質飼料給与時においてもアミノ酸が糖新生の基質として積極的に活用されていることが示唆された。以上の結果から, マダイ稚魚は高糖質低タンパク質飼料を効率的に利用できないことが示された。
著者
長谷川 功 アダムス ロバート 前川 光司
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.651-652, 2007-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
18
被引用文献数
1

In June 2006, we found Predation on native lamprey species by a large, nonnative brown trout (600 mm in fork length) in a small stream in Hokkaido, Japan. The trout ate 15 adult lampreys and one unidenti-fied fish. Brown trout may cause decline of endangered native lamprey species.
著者
宮下 盛 田中 祐志 澤田 好史 村田 修 服部 亘宏 滝井 健二 向井 良夫 熊井 英水
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.199-207, 2000-06-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
33

クロマグロの卵発生を観察するとともに,発生速度,孵化所要時間および孵化率に及ぼす水温の影響を調べた。水温24℃における卵発生を観察した結果,卵は平均直径0.973±0.025mm(n=60)の分離浮性卵で,産卵直後から卵割期にいたる形状および各発生段階は一般硬骨魚と大差なく,産卵32時間後から孵化した。次に水温22℃から28℃の範囲に4区の水温区を設け,発生速度に及ぼす水温の影響を調べたところ,各発生段階への到達時間は水温が高いほど速く,高温区と低温区の各発生段階への到達の時間差は水温26.5℃以上で小さく,24℃以下で大きかった。16~33℃にわたる種,々の水温下で孵化所要時間と孵化率を調べた。孵化所要時間を対数として水温との関係を直線回帰して表したところ,25℃付近に直線の傾きの変曲点が認められた。桑実期から実験を開始して正常孵化仔魚が得られた水温範囲は19.9~31.5℃,50%以上の正常孵化率を示した水温範囲は21.2~29.8℃であった。また,最も正常孵化率が高く奇形率が低かった水温は25℃付近であった。これらの結果から,クロマグロの卵発生に最適な水温は25℃付近と考えられた。
著者
與世田 兼三 浅見 公雄 福本 麻衣子 高井良 幸 黒川 優子 川合 真一郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.101-108, 2003-03-20
参考文献数
22
被引用文献数
7

Sワムシ (平均背甲長169μm) とタイワムシ (145μm) がスジアラ仔魚の初期摂餌と初期生残に及ぼす影響について検討した。2回の試験で合計5事例の飼育を60<I>kl</I>コンクリート水槽で行った。開口前の日齢2~5まで各試験水槽へ2タイプのワムシを15個体/<I>ml</I>の基準で与えた。2回目試験ではタイワムシ給餌区のネガティブコントロール区を設け, 24時間の暗条件とした。日齢3~4の摂餌率と胃内容物を調べるために, 5~23時まで2時間間隔で試験水槽から試料を採取した。両試験でいずれもタイワムシ給餌区がSワムシ給餌区よりも50%摂餌率に達する時間が日齢3では2時間早かった。同日の仔魚1尾当たりの平均摂餌数は前者が後者よりも有意に高く, 一方, ネガティブコントロール区では摂餌率と摂餌数が最も劣った。摂餌開始期には3試験区でトリプシン活性が明らかに認められた。スジアラ仔魚の初期摂餌率と初期生残率の向上には日齢3~4にタイワムシを給餌することが有効である。
著者
與世田 兼三 浅見 公雄 福本 麻衣子 高井良 幸 黒川 優子 川合 真一郎
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.101-108, 2003-03-20
被引用文献数
7

Sワムシ (平均背甲長169μm) とタイワムシ (145μm) がスジアラ仔魚の初期摂餌と初期生残に及ぼす影響について検討した。2回の試験で合計5事例の飼育を60<I>kl</I>コンクリート水槽で行った。開口前の日齢2~5まで各試験水槽へ2タイプのワムシを15個体/<I>ml</I>の基準で与えた。2回目試験ではタイワムシ給餌区のネガティブコントロール区を設け, 24時間の暗条件とした。日齢3~4の摂餌率と胃内容物を調べるために, 5~23時まで2時間間隔で試験水槽から試料を採取した。両試験でいずれもタイワムシ給餌区がSワムシ給餌区よりも50%摂餌率に達する時間が日齢3では2時間早かった。同日の仔魚1尾当たりの平均摂餌数は前者が後者よりも有意に高く, 一方, ネガティブコントロール区では摂餌率と摂餌数が最も劣った。摂餌開始期には3試験区でトリプシン活性が明らかに認められた。スジアラ仔魚の初期摂餌率と初期生残率の向上には日齢3~4にタイワムシを給餌することが有効である。
著者
田子 泰彦
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 = The aquiculture (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.81-88, 2012-03-20

神通川と庄川で日中に行われているアユ漁の遊漁実態を2002~2004年に調べた。両河川では友釣りなどの2つの自由漁法と投網などの3つの許可漁法を行う遊漁者が観察された。遊漁者数が多かった神通川では友釣りの遊漁者がその大部分を占めるとともに,その出漁努力は投網などの許可漁法の遊漁者に比べ著しく高かった。友釣り,毛鉤釣り,テンカラ網およびコロコロ釣りでは,河川流量が多くなると出漁人数が減る傾向にあり,一定以上の出水時には遊漁者は認められなくなった。これに対して,投網では河川流量が多くなると出漁人数が増える傾向にあり,大きな出水時にも遊漁者が多く認められた。神通川に多くの遊漁者が訪れるのは,神通川の河川流量が日常的に多いこと,および良い河川形状が維持されているためと考えられた。庄川で遊漁者数を増やすには,平常時の河川流量を増加させるか,遊漁者数と出漁日数の多い友釣りの専用区を設定することが効果的と考えられた。
著者
松崎 浩二 山内 信弥 津崎 順
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.339-340, 2009-06-20 (Released:2012-09-26)
参考文献数
5

Ninety-seven individuals of Pacific saury Cololabis saira collected off Kumano in Mie Prefecture on February 6, 2008 were kept in a 30 m3 columnar tank at 15°C. They were reared under light levels adjusted to 1,400 lx between 08:00 to 17:00 and 20 lx between 17:00 to 08:00 using five halogen lamps. Ratio of the total number of eggs spawned between 08:00 to 13:00, 13:00 to 17:00 and 17:00 to 08:00 was 62%, 20% and 18% respectively from March 22 to April 20, 2008. Also as a result of counting spawning behavior per hour, spawning occurred actively between 08:00 to 13:00, while under 20 lx conditions 97% of spawning activity occurred between 06:00 to 08:00. This indicates that Pacific saury probably actively spawned from pre-dawn to noon.