著者
三宅 謙太郎 高川 亮 諏訪 雄亮 茂垣 雅俊 舛井 秀宣 長堀 薫
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.827-832, 2014 (Released:2015-10-30)
参考文献数
10

はじめに:術後の段階食は慣習として行われてきたものであり,味の満足度も高くないため必ずしも必要ではないとされているが,胃切除後の症例を検討した報告は少ない.目的:食事内容の満足度向上と,在院日数短縮のために導入した幽門側胃切除後に全粥で開始するパスの有用性を明らかにする.対象と方法:幽門側胃切除術を行った204症例を段階食群(A群)104例と全粥開始群(B群)100例に分け,A群は術後5日目に3分粥,B群は術後5日目に全粥で開始し,2群間の術後在院日数,合併症などを比較検討した.結果:術後合併症発生率に有意差は認めず(A群vsB群:19%vs20%,p=0.889),短期の予後栄養指数では有意差を認めなかったが,アンケート調査の満足度も高く術後在院日数はB群で2日短縮した(12日vs10日,p<0.01).結語:幽門側胃切除術後に全粥で経口摂取を開始することは,安全であり,患者満足度の向上,在院日数短縮に寄与すると考えられた.
著者
沖 一匡 笹原 孝太郎 岸本 浩史 吉福 清二郎 高橋 裕輔
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.135-139, 2012
被引用文献数
1

84歳,女性.近医にてS状結腸軸捻転の疑いにて当院へ救急搬送となった.大腸内視鏡にて軸捻転解除を試みたが,解除困難で,緊急手術となった.手術所見ではS状結腸軸捻転は存在せず.大網が横行結腸に癒着し,横行結腸の狭窄と穿孔を認めた.悪性疾患による結腸狭窄,穿孔と判断.結腸切除施行し,盲腸と下行結腸に人工肛門を造設した.免疫染色の結果,Calretinin(+),HBME-1(+),EMA(+),CEA(-)であり,悪性中皮腫と診断された.病歴聴取でアスベストの暴露歴はなく,術後の胸部CTにて明らかな胸膜壁肥厚は認めなかった.悪性中皮腫の頻度は全悪性腫瘍の約0.2%程度で,約20%が腹膜に生じる.特異的症状に乏しく,多くの症例で腹水貯留を来すが細胞診による正診率は低く,最終的には組織生検を施行し,診断する.今回われわれは,腹部膨満,急性腹症に対する緊急手術で発見された腹膜悪性中皮腫を経験したので若干の文献的考察を加えここに報告する.
著者
小林 照忠 中川 国利 月館 久勝 遠藤 公人 鈴木 幸正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.197-202, 2013-04-30
参考文献数
11

目的:腹腔鏡下虫垂切除術(Laparoscopic appen-dectomy:以下,LA)の有用性について検証した.方法:当科で手術を施行したLA 154例,開腹虫垂切除術(Open appendectomy:以下,OA)86例を,病理組織学的所見による炎症程度に基づいてカタル性,蜂窩織炎性,壊疽性に分類し,臨床的事項について比較検討した.結果:LAとOAでは手術時間に差はなかったが,術後合併症,特に創感染はLAがOAに比べて有意に低率であった.特に壊疽性では,その傾向が顕著であり,術後の絶食期間や在院期間もLAで有意に短縮していた.結語:LAはOAに対して,壊疽性のような高度炎症例においても術後合併症が有意に少なく,急性虫垂炎に対するLAの有用性が示唆された.
著者
中田 博 大澤 智徳 横山 勝 石田 秀行
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.198-203, 2006-04-30
参考文献数
16
被引用文献数
3

クローン病に肝膿瘍・下大静脈血栓を合併した稀な1例を経験したので報告する。症例は20歳, 男性。5年前より小腸大腸型クローン病と診断されていた。今回, 小腸-小腸間の瘻孔に対する手術目的で入院した。術前CTで右下腹部に腹腔内膿瘍と, 肝S6-7に大きさ5.3cm×6.0cmの肝膿瘍が疑われた。また, 腎下極の下大静脈に造影されない部位を認めた。クローン病に伴う肝膿瘍・下大静脈血栓と診断した。手術を延期し, 抗菌薬投与とヘパリンによる抗凝固療法を行ったところ, 4週間後のCTで肝膿瘍・腹腔内膿瘍は著明に縮小し, 下大静脈血栓も消失した。開腹所見では, 回腸末端と口側回腸との間に瘻孔形成を認めるのみで, 肝膿瘍や腹腔内膿瘍は確認できなかった。回盲部切除を施行した。術後6カ月経過した現在, 腹痛・発熱の症状を認めていない。
著者
北濱 圭一郎 吉川 貴久 田島 佑樹 竹ノ谷 隆 尾戸 一平 矢部 信成 村井 信二
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.43, no.6, pp.1065-1070, 2018 (Released:2019-12-27)
参考文献数
34

症例は82歳女性,下腹部痛を主訴に受診した.下腹部に著明な圧痛と反跳痛があり,CT所見と併せて小腸絞扼性イレウスを疑い緊急手術の方針とした.腹腔鏡で骨盤内の血性腹水と子宮を穿通した子宮内避妊具(IUD:intrauterine device,以下IUD)に嵌頓した回腸を確認した.直視下で絞扼の原因となったIUDの環状部分を切離し回腸の絞扼を解除した.絞扼された回腸は完全に壊死しており,回腸部分切除を行った.術後経過良好で術後第8病日に退院した.本症例のIUD子宮穿孔の原因は,子宮萎縮とその後の子宮収縮が最も考えられた.小腸がIUDに嵌頓して生じた絞扼性イレウスは非常に稀である.高齢女性が避妊していた時代は輪状閉鎖型IUDを用いる例が多かったが,現在では使用頻度が減ったため医療者側も想起しにくくなっている.IUD挿入や抜去歴の聴取が重要になる.
著者
田代 良彦 宗像 慎也 杉本 起一 栁沼 行宏 小島 豊 五藤 倫敏 今西 俊介 北出 真理 八尾 隆史 坂本 一博
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.122-127, 2015 (Released:2016-02-29)
参考文献数
25
被引用文献数
2

症例は34歳,女性.開腹歴はなく,30歳時に子宮内膜症の診断を受けたことがあった.腹痛を主訴に前医を受診し,腸閉塞の診断で入院となり,イレウス管による保存的治療が施行された.小腸造影検査で回腸末端に狭窄像を認め,骨盤MRI検査では腸管子宮内膜症による小腸狭窄が強く疑われた.腸閉塞症状が軽快した後,精査加療目的で当院に紹介となった.回腸子宮内膜症に対してホルモン療法後に,腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内を観察すると後膣円蓋と直腸前壁に子宮内膜症による軽度の癒着を認めた.また,回腸末端部より約20cmの回腸に漿膜の引きつれと硬化を認め,小腸部分切除術を施行した.病理組織検査では,狭窄を認めた回腸の粘膜下層から漿膜下層に子宮内膜腺および間質細胞が分布しており,回腸子宮内膜症と診断した.術後経過は良好で第9病日に退院となった.
著者
佐藤 豪 池永 雅一 俊山 聖史 太田 勝也 上田 正射 板倉 弘明 津田 雄二郎 中島 慎介 遠藤 俊治 山田 晃正
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.38-42, 2019 (Released:2020-02-29)
参考文献数
20

症例は51歳,男性.開腹歴はなし.腹痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.来院時,腹部は膨満し,臍下に間欠的自発痛と圧痛を認めた.前日の夕食にしゃぶしゃぶを食べていた.腹部単純X線検査では小腸ガスの貯留と鏡面像を認めた.腹部造影CTで絞扼所見を認めなかったため,胃管減圧チューブを留置して緊急入院した.翌朝,腸管拡張の改善がなかったためイレウス管を留置した.その後2日間経過観察したが,腹部症状の改善が乏しかったために緊急手術を施行した.拡張した腸管の先端で軟らかい腫瘤を触知し,腸を切開して摘出した.術後に再度問診を行い,入院前夜に大量に摂取した木耳(きくらげ)による食餌性イレウスと診断した.木耳による食餌性イレウスは本邦でこれまで報告がなく,若干の文献的考察を加えて報告する.
著者
近谷 賢一 石橋 敬一郎 近 範泰 幡野 哲 天野 邦彦 石畝 亨 福地 稔 熊谷 洋一 持木 彫人 石田 秀行
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.167-175, 2019 (Released:2020-04-30)
参考文献数
11

【目的】実地医療における切除不能進行再発大腸癌に対するlate lineの治療成績を明らかにする.【対象・方法】2013年7月~2016年12月の間にlate lineとしてregorafenib,trifluridine / tipiracil(TFTD)の少なくとも1剤を使用した切除不能進行再発大腸癌41例を対象に,診療録からデータを抽出し,後方視的に解析した.【結果】Regorafenib先行群25例,TFTD先行群16例の間で無増悪生存期間,全生存期間ともに有意差を認めなかった.RegorafenibまたはTFTDのみが使用された22例より,2剤が使用された19例の方が全生存期間が延長していた(中央値20.8カ月vs.6.4カ月,p=0.02).【結語】大腸癌化学療法のlate lineにおいて,regorafenibとTFTDを使い切ることが,生存期間の延長に繋がる可能性が示唆された.
著者
北川 雄一
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.28-35, 2013 (Released:2014-02-28)
参考文献数
40
被引用文献数
1 2

せん妄は,意識,認知機能,知覚,注意が障害される病態である.術後比較的早期に錯乱状態に陥った患者が,錯覚や幻覚を訴えたり,医療従事者や介護者の指示を理解できなかったりそれに従うことができないなどの症状があれば,せん妄と診断できる.しかし,傾眠や抑うつ状態と類似の症状を呈することもあるため,診断に注意が必要な場合がある.術前からの精神神経疾患の既往などがある場合には,より診断が困難となる可能性もある.客観的な診断を行い,せん妄の程度を評価するために各種のスケールなどが用いられる.発症頻度は4~87%と報告により様々である.発症には,疼痛や麻酔,各種薬物などが危険因子として挙げられている. 国立長寿医療研究センターでの調査では,80歳以上の待機手術患者での発症率は73.9%で,高齢,術前MMSE低値,術前JNCS低値,興奮・多動の既往が術後せん妄発症の危険因子であった.
著者
柏倉 さゆり 本間 重紀 柴崎 晋 吉田 雅 川村 秀樹 武冨 紹信
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.89-93, 2016 (Released:2017-02-28)
参考文献数
16

背景:今回われわれは全周性狭窄をきたした直腸癌に梅種子が嵌頓したことによりイレウスを発症した1例を経験したので報告する.症例:63歳男性.便秘を主訴に前医受診.下部消化管内視鏡検査にて直腸Rsに全周性の2型病変(tub1)を認め,直腸癌の診断で手術目的に当科紹介となった.入院後3日目より嘔吐が出現し,CT検査にて病変部に種子様構造物を認め口側腸管の拡張も認めたため,植物種子による嵌頓イレウスと診断した.経肛門的イレウス管を挿入し減圧を図り,挿入7日目に待機的腹腔鏡下低位前方切除術,D3郭清を施行した.切除標本では腫瘍狭窄部位に直径2cm大の梅種子が嵌頓していた.術後は合併症なく経過し,術後10日目に退院した.なお,本人は梅種子を丸呑みする習慣や,近日中に飲み込んだ記憶はなかった.結語:狭窄高度な直腸癌の場合には植物種子がイレウスの誘因となることがあり,注意が必要と考えられた.
著者
矢野 佳子 近藤 三隆 甲村 稔 武鹿 良規 加藤 俊男
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.990-997, 2013 (Released:2014-10-31)
参考文献数
38
被引用文献数
1

症例は57歳女性.腹痛,背部痛を主訴に近医受診し,超音波検査で巨大腹部腫瘤を指摘され,当院に紹介された.腹部CTでは肝,膵,胃を圧排する23cm大の巨大な囊胞性腫瘤で,3D-CT angiographyでは左胃動脈,右胃大網動脈が腫瘍の栄養血管で,胃GISTを疑い開腹した.腫瘍は局所切除困難にて,胃全摘術を選択した.腫瘍径は23×20×12cm,重量は2,800g,内部は壊死物質と血液で満たされていた.免疫染色でc-kitとCD34が陽性で,胃GISTと診断した.術後補助化学療法を施行せず3年2カ月無再発生存中である.遺伝子解析にてエクソン11の遠位領域の挿入型変異で,比較的予後良好な稀な変異の型と考えられた.遺伝子解析は,囊胞化し巨大化した胃GISTの予後を決定する独立した危険因子になりえ,治療方針や予後の予測に重要と考えられた.本邦報告17例を集計し,文献的考察を加えて報告する.
著者
野村 聡 塩谷 猛 渋谷 哲男 内間 久隆 鈴木 英之 内田 英二
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.50-54, 2011 (Released:2012-02-25)
参考文献数
10
被引用文献数
1

症例は56歳,男性.主訴は気尿,糞尿.腹部CT検査で膀胱内にガス像と膀胱に癒着するS状結腸を認めた.注腸造影検査では上行結腸とS状結腸に多発する憩室,更にS状結腸狭窄と同部位から膀胱内へ造影剤の流出を認めた.S状結腸憩室炎による結腸膀胱瘻と診断し,手術療法をすすめたが,仕事上の都合により保存的治療を希望し,内視鏡的バルーン拡張術を施行した.一時的に症状は改善したが,糞尿が増悪したため,S状結腸切除,膀胱部分切除術を施行した.病理組織学的にもS状結腸憩室炎に伴う結腸膀胱瘻と診断された.結腸膀胱瘻の根治には手術が必要と考えられた症例を経験した.
著者
Koji MATSUMOTO Minoru FUJISAWA Hiroyuki SUGO Kunimi SUZUKI Kuniaki KOJIMA Masaki FUKASAWA Tomoe BEPPU
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.27, no.6, pp.874-879, 2002-12-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
14

The surgical technique for idiopathic thrombocytopenic purpura (ITP) and hereditary spherocytosis (HS) has been changing from conventional open splenectomy (OS) to laparoscopic splenectomy (LS).In this study, we evaluated the usefulness of LS in comparison with OS. The subjects were 15 patients (14 with ITP and 1 with HS) who underwent surgery at our department. OS was performed in 5 patients (OS group), and LS was performed in 10 patients (LS group), of whom 2 underwent hand-assisted surgery. The perioperative parameters evaluated were : operative time, blood loss during operation, splenic weight, accessory spleens identified during operation, and conversion to open splenectomy.The postoperative parameters evaluated were : frequency of pain medication, duration until oral dietintake (days), interval of drainage (days), postoperative stay (days), residual accessory spleens, and complications. Conversion to open splenectomy was not observed in any patient. Blood loss was similar between the OS and LS groups.The operative time was significantly longer (p<0.05) in the LS group (mean, 232 ± 57 minutes) than in the OS group (mean, 155 ± 55 minutes), and the splenic weight was significantly lower (p<0.05) in the LS group (114 ± 86 g) than in the OS group (221 ± 76g). Accessory spleens were identified during operation in only 1 patient in the OS group. The frequency of pain medication was significantly lower (p<0.05) in the LS group (mean, 2.3 ± 1.3 vials) than in the OS group (7.4 ±1.1 vials), and the postoperative stay was significantly shorter (p<0.05) in the LS group (13.0 ± 5.4 days) than in the OS group (22.0 ± 7.1 days).Evaluation of long-term results 1 year or more after operation showed no change in 3 patients, but no significant differences were observed between LS and OS. LS may be more useful than OS because of better aesthetic results, less invasion, and shorter hospital stay despite some problems such as differences in surgical skills among surgeons and a longer operative time.
著者
今村 幹雄 三上 幸夫 山内 英生
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.856-860, 1998-10-25
参考文献数
16

当科で扱ったクローン病症例27例中3例 (11%) で高アミラーゼ血症がみられたので, これらの症例につき検討した。症例1は23歳・男性, 小腸大腸型で胃・十二指腸病変も有し, 十二指腸狭窄に対し胃空腸吻合術がなされた。術前, S-Amy 281IU/lと高値を示したが, 上部消化管造影ではバリウムの膵管への逆流は認めなかった。症例2は34歳・女性, 大腸型で, 手術は難治性痔瘻に対しseton法によるドレナージ術を施行した。術後, 外来通院中, 妊娠時にS-Amy 264~273IU/lと高値を呈した。症例3は28歳・女性, 小腸大腸型で, 8年前, 狭窄に対し回腸部分切除と右半結腸切除を受け, 今回, 再燃による吻合部狭窄に対し吻合部切除がなされた。術前, S-Amy 293IU/l, リパーゼ131IU/l, トリプシン2830IU/l, 膵ホスホリパーゼA2 1230ng/dlといずれも高値を呈し, Caは8.1mg/dlと低値を示したが, CTおよびERCPでは異常所見はなかった。全例で腹痛など膵炎の臨床症状はみられなかった。
著者
川崎 篤史 三松 謙司 大井田 尚継 久保井 洋一 加納 久雄 天野 定雄
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.249-252, 2006-04-30 (Released:2009-08-13)
参考文献数
5
被引用文献数
1

鼠径部に発生したガングリオンの1例を経験したので報告する。症例は16歳の女性。左下腹部から左大腿部前面の痛みを主訴に来院した。触診上, 左鼠径部に圧痛を伴う膨隆を認め, 画像診断で大腿ヘルニアの疑いで緊急手術となった。手術は恥骨筋内に径5cm大の嚢胞性病変を認め切除摘出した。病理組織学的所見は嚢胞壁の線維性肥厚を認め, 内容物は無色透明の粘液様物質でガングリオンの診断であった。経過は良好で再発は認めていない。鼠径部腫瘤の鑑別診断として, 発生頻度は低いものの, ガングリオンも念頭に置き適切な診断・治療をする必要があると考えられた。
著者
本山 覚望 望月 愼介 竹内 聡 赤山 由起 山辺 晋吾 丸尾 猛
出版者
Japanese College of Surgeons
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.61-65, 2000-02-29 (Released:2009-08-13)
参考文献数
20

目的 : 人工造腟術として, 酸化セルロース製の組織代用人工繊維布 (TC7) を新腟腔へ添付し, 腟本来の扁平上皮粘膜の新生誘導を検討した。方法 : 6例の先天性腟欠損症に対し, 腟前庭粘膜の十字切開により解剖学的腟経に沿い子宮下部に達する新腟腔を形成した。切開で生じた4点の腟前庭粘膜縁を新腟腔内壁へ縫合後, TC7で包まれた膣型を新腟腔へ充填し手術を終了した。成績 : 平均手術時間は25.8分, 平均出血量は14.2ml, 入院期間は2日, 合併症発生率は0%であった。全例において, 術後2~5カ月で添付TC7膜下で腟前庭粘膜縁より新生した重層扁平上皮で新腟腔全域は被覆された。また, 新生腟扁平上皮粘膜は正常腟粘膜と同様に卵巣周期に呼応した分泌能と形態の変化を示した。結論 : 本法は現行造腟法と比較して低侵襲性でDay Surgeryも可能であり, また, 本法の腟粘膜は腟本来の自然性を示すため, 患者QOLの向上に役立つものと思われる。
著者
木田 和利 三松 謙司 吹野 信忠 川崎 篤史 久保井 洋一 加納 久雄 大井田 尚継
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.229-233, 2010 (Released:2011-04-25)
参考文献数
15
被引用文献数
2 2

症例は73歳,男性.6カ月前より糖尿病性腎症による慢性腎不全のために血液透析が導入されていた.入院7日前より腹痛,発熱を認めていた.症状が改善しないために救急搬送された.初診時,38°Cの高熱を認め,腹部所見では腹部全体に圧痛と筋性防御を認めた.腹部CT検査では,肝表面に腹水とfree airを認めた.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断で,同日緊急手術を施行した.術中所見では,腹腔内は膿性腹水と腸内容を認め,上行結腸が約20cmにわたり完全壊死し,穿孔していた.また,Treitz靭帯から肛門側約90cmの回腸の漿膜が約10cm分節的に黒変し,血流障害が認められた.上腸間膜動脈,右結腸動脈,回腸動脈の拍動は触知されたため,非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI)と診断し,右半結腸切除,回腸部分切除術を施行した.血液透析患者では,腸管虚血性疾患の発症リスクが高いため,腹痛を主訴とする患者の診断と対応には十分注意する必要がある.
著者
浦松 雅史 斉田 芳久 長尾 二郎 渡邉 学 岡本 康 中村 陽一 榎本 俊行 浅井 浩司 桐林 孝治 草地 信也
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.29-33, 2012 (Released:2013-02-25)
参考文献数
2

【緒言】同意書は私文書であるので,署名があれば押印がなくても文書の真正を推認する点で差はない.押印欄廃止に向けて,押印の必要性についての意識を調査した.【方法】医師,看護師,患者に,同意書に関する意識等を尋ね,押印の法的意義を説明した後,意識の変化を調査した.【結果】外科医24名,看護師35名,患者20名から回答を得た.同意書押印欄の不備を経験した外科医は8名33%,看護師は18名51%であった.対処方法は,両群とも患者拇印が最多で,患者押印,家族押印が続いた.法的説明後は,同意書には署名のみ必要と考える者が増加した.医療従事者では,押印を廃止すべきとの意見が増加したが,患者では病院次第であるとの考えが多かった.【結語】同意書での押印要求は,法的に不要なだけでなく,拇印の半強制などの不適切な事項の原因になる.廃止について患者の不安の増強もなく,同意書の押印欄廃止を早急に図るべきである.