著者
松本 範裕 畠山 武 橋本 良一 中谷 治夫 田淵 志良 中田 俊彦 北野 弘
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.43-44, 1986

石川県の奨励品種の中で早生種は加賀ひかり, 越路早生, ホウネンワセ, ハツニシキがある。加賀ひかり, 越路早生は平坦部, ホウネンワセ, ハツニシキは山間部の主要早生種として作付されている。県内の山間部は標高500m以下にあるものの平坦部に比べて環境条件, 土壌条件が厳しく, もともと低収地帯であることに加えて冷害年の時には大きな被害を被る。山間部の主要早生品種であるハツニシキ・ホウネンワセとも倒伏し易く, 生産力が低く, 品質の年次変動が大きいなど生産・流通の両面で問題点が指摘されている。ここに紹介する新品種「能登ひかり」は大粒で腹白粒が出易いものの食味が良く, 強稈, 多収でいもち耐病性が強く, 搗精歩合が高いなど生産・流通両面にわたって長所が多く, 立地条件の悪い山間・山麓地帯向けの早生品種として今後の普及が期待されるものである。
著者
笠島 真也 井上 直人 藤田 かおり 加藤 昌和
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.77-79, 2006-03-31 (Released:2017-02-13)
参考文献数
9

コムギの発育に及ぼす光質の影響を明らかにするために,播性の異なるコムギ2品種を用いて出穂期の変異を検討した.実験は,白・紫赤・青・UVAの蛍光灯を組み合わせて8処理区を設け,連続照射・20℃恒温条件下で行った.その結果,全波長域(250〜1000nm)に対する500〜550nm(緑色)と600〜700nm(赤色)のエネルギー比と出穂まで日数の間に2品種とも有意な正の相関関係が認められ,光質がコムギの発育速度に重要な役割を果たすことが示された.
著者
中村 啓二 松本 範裕 黒田 晃 小牧 正子 野村 央文 大西 良祐 高瀬 裕章 松村 洋一 永畠 秀樹 橋本 良一 武田 康一 小林 大樹
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.7-10, 2010-03-31 (Released:2017-03-02)
参考文献数
1

「山田錦」並の酒造適性をもち,石川県で安定生産可能な早生品種「石川酒52号」を,「予236(五百万石/フクヒカリ)」を母本,「新潟酒28号(後の「一本〆」)」を父本とする交配組合せから育成した.出穂期および成熟期は,それぞれ「五百万石」とほぼ同じである.稈長は「山田錦」よりも20cm程度短く,収量性は「五百万石」並である.耐倒伏性は「五百万石」にやや優り,穂発芽性は「山田錦」の"やや易"に対して"中",脱粒性は「山田錦」の"易"に対して"難"である.玄米千粒重は「五百万石」並,心白発現率は「山田錦」より高い.試験醸造による酒造適性評価は「山田錦」並に高い.現在,「石川門」の愛称で流通している.
著者
笹原 英樹 重宗 明子 後藤 明俊 三浦 清之
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.52, pp.21-25, 2017

食味に関する新たな交配母本を選定する目的で日本在来イネ品種の食味および米のアルカリ崩壊性を2004~2005年度にのべ83品種調査した.供試品種の中には「コシヒカリ」以上の食味を持つ品種は存在しなかった.在来品種の中で最も食味が良かったものは,2004年は「かばしこ(JP 10698)」, 2005年は「日の丸」であった.次に,登熟気温,米のアルカリ崩壊性,食味総合評価値との関係を検討した.アルカリ崩壊性は登熟気温が低いほど高くなると考えられた.食味とアルカリ崩壊性には正の相関が認められ,アルカリ崩壊性が高いほど食味が高い傾向がみられた. これらのことから,登熟気温が低い晩生品種では,アルカリ崩壊性が高くなり,良食味となる傾向があると考えられた.したがって,在来品種から交配母本を選定する際には,同じ熟期の品種群内での比較により食味やアルカリ崩壊性が高いものを選ぶ必要があると思われた.「コシヒカリ」よりも食味評価は低いものの,食味評価が比較的良好な在来品種は,「コシヒカリ」の系譜とは異なる新たな食味に関する遺伝資源として期待される.
著者
上原 泰 細井 淳 細野 哲 松中 仁 中村 和弘 牛山 智彦
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.60-62, 2009-03-31 (Released:2017-02-26)
参考文献数
4

レオメーターの圧縮試験によるゆであげ直後およびゆで上げ7分後の中華麺の硬さ(ヤング率)は食味官能評価と高い正の相関関係にあり,中華麺用小麦の選抜手法として有効であると考えた.また,品種により年次変動が大きく,さらなる検討が必要である.
著者
松本 範裕 畠山 武 橋本 良一 中谷 治夫 田淵 志良 中田 俊彦 北野 弘
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.43-44, 1986-03-31 (Released:2016-10-03)
参考文献数
3

石川県の奨励品種の中で早生種は加賀ひかり, 越路早生, ホウネンワセ, ハツニシキがある。加賀ひかり, 越路早生は平坦部, ホウネンワセ, ハツニシキは山間部の主要早生種として作付されている。県内の山間部は標高500m以下にあるものの平坦部に比べて環境条件, 土壌条件が厳しく, もともと低収地帯であることに加えて冷害年の時には大きな被害を被る。山間部の主要早生品種であるハツニシキ・ホウネンワセとも倒伏し易く, 生産力が低く, 品質の年次変動が大きいなど生産・流通の両面で問題点が指摘されている。ここに紹介する新品種「能登ひかり」は大粒で腹白粒が出易いものの食味が良く, 強稈, 多収でいもち耐病性が強く, 搗精歩合が高いなど生産・流通両面にわたって長所が多く, 立地条件の悪い山間・山麓地帯向けの早生品種として今後の普及が期待されるものである。
著者
柳澤貴司 貴司
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.63-65, 2016 (Released:2016-07-08)
参考文献数
4

大麦は他の穀物と比べて非常に多くの水溶性食物繊維が含まれている.特に胚乳細胞壁多糖である(1,3)(1,4)β-グルカン(以下β-グルカンと略)は,血中コレステロール低下や血糖値上昇抑制などの優れた健康維持機能性が報告されている.2006年にFDA(米国食品医薬局)が「大麦のβ-グルカンにコレステロール低減作用があり,心疾患予防効果がある」として「1食あたり0.75g以上 (1日3g以上) を含む食品に冠状動脈疾患のリスクを下げる」表示を認可した.日本でも2015年4月より「食品の新たな機能性表示」が開始された.2015年11月10日現在で消費者庁のHP(http://www.caa.go.jp/foods/index23.html) に公開された機能性表示食品の中に複数の大麦β-グルカンに関する製品が受理されている. 農研機構などの研究機関では大麦に価値を付けて需要・生産拡大を目指す品種育成の取り組みを行っており,機能性がクローズアップされる以前から大麦β-グルカン含量の高い材料の作出を実施している.今回のシンポジウムではβ-グルカンを高含有する大麦品種の紹介とそれを用いた研究の状況について取り上げる.
著者
関谷 恒久 井上 直人
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.50-52, 2001-03-31 (Released:2016-12-29)
参考文献数
6

低コストで入手可能であって, アレロパシー物質を含む可能性があり, 雑草害を抑制できる可能性のある, コメヌカ, モミガラ, ソバガラ, ふすま, アカマツチップ, カラマツチップが, イネや水田雑草にどのような影響をもたらすかについて, モデル水田において検討した.pH, EC, Ehにはあまり差は見られなかったが, コメヌカ, ふすまといった易分解性の有機物やソバガラでは, 他の有機物に比べて雑草の発生量が少なかった.また, 易分解性の有機物は肥効が現れ易いが, その反面イネの生育にも障害を与えることがわかった.
著者
鯨 幸夫 前野 寿有 山口 順司 寺沢 なお子 木下 栄一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
no.47, pp.113-118, 2012-03-31

栽培環境を異にするヤブツルアズキを材料に用いて,土壌硬度や施肥量を変化させた栽培試験を行い栽培品種(大納言)と比較した.土壌硬度を高め3.5kg-NPK/10aの施肥を行うと成育量は増大した.成育地を異にするヤブツルアズキのITS領域およびrbcL領域のDNA解析を行った結果,葉身形状,茎の色等,地上部形態に明らかな差異が認められても遺伝子情報は全く同じであった.種子のポリフェノール含有量は栽培種よりヤブツルアズキの方が多い傾向が認められ,これは種皮比率が高い事が原因と考えられた.
著者
福田 善通 藤田 佳克 田村 克徳 八木 忠之
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.90-93, 1999

インド型品種密陽23号と日本型品種アキヒカリとの組合せのリコンビナント・インブレッドライン(RI系統群)について, いもち病抵抗性に対するRFLPマーカーを用いた量的形質遺伝子座(QTL)解析を行った.幼苗検定では第1染色体に2カ所, 第2染色体に1カ所, 第3染色体に1カ所, 計4カ所でQTLが検出された.それぞれのQTLについて, 第1染色体のものをqPYO-MA1aおよびqPYO-MA1bと仮称した.また第2染色体はqPYO-MA2a, 第3染色体はqPYO-MA3aとした.また畑晩播検定でも, qPYO-MA2aおよびqPYO-MA3aが検出された.いずれのQTLも密陽23型の遺伝子型をもったとき抵抗性を示したが, これらのうちqPYO-MA2aは, 他のQTLに比べ非常に高い作用力を示したことなどから, 主動遺伝子のPibに対応する遺伝子座であると推定した.
著者
春日 重光 今井 康平 大谷津 明子 樋口 奈保子 吉澤 遥平 岡部 繭子 清沢 敦志 後藤 和美
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.82-84, 2010

ソルガムの高糖性品種を開発するための素材として育成した2組合せのリコンビナントインブレッドライン(RIL系統)のF_4世代における特性評価を行った.その結果,2組合せのRIL系統は,出穂日や稈長および生茎重は2組合せの間で大きく異なるものの,ブリックス糖度の程度や変異については顕著な差は認められず,また,出穂日や稈長とブリックス糖度との関係についても2組合せの間で異なったことから,ブリックス糖度に関わる要因が供試した2組合せのRIL系統の間で異なっていることが推察された.
著者
山口 修 伊藤 誠治
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.45, pp.72-74, 2010

オオムギの半数体倍加系統の作出において,種々の添加物が胚の形成および胚の発芽に及ぼす効果について調査した.交配後の切り穂培養液に75ppmの2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)を添加した場合,無添加に比べ種子や胚の形成率が高まった.一方,胚培養培地への麦芽エキスの添加では,濃度0.25%,1%のいずれも胚から半数体植物体の形成に効果はなかった.
著者
湯川 智行 塩谷 哲夫 石田 良作 渡辺 好昭
出版者
北陸作物・育種学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.71-74, 1988

ライ麦の2品種を用い, 1985年10月1日から2日おきに11回播種し, 播種期と根雪前生育量及び雪害との関係を検討した。地上部乾物重は, 播種期が遅くなるにつれて急激に減少した。雪害は, 播種期が遅くなるにつれて急激に増加した。これは, 乾物重の急激な減少と乾物重の一定値以下への減少とがあいまっておこると考えられる。地上部乾物率は, 明瞭な品種間差が認められ, サムサシラズが春一番より全播種期を通して高かった。また, 雪害に関与する要因について重回帰分析を行ったところ, 品種間では乾物率が重要となり, 品種内では, 乾物率はほぼ固定的となるために, 生育の量である乾物重や茎数が重要な要因となることが示された。