著者
野宮 義臣
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化機病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.171-183, 1942

横絞筋機能ト筋「ヒョリン・エステラーゼ」トノ關係ヲ明ラヵニスル目的ニテ、槍壓法ヲ用ヒテ大黒鼠横絞筋「ヒョリン・エステラーゼ」ヲ測定セルニ、大要次ノ如キ成績ヲ得タリ。<BR>(一) 運動神輕切除ニヨり切除側横絞筋「ヒヨリン・エステラーゼ」ハ著明ニ減少メ。<BR>(二)「ストリキニーネ」ニョル痙攣ハ筋「ヒヨリン・エステラーゼ」ノ増強ヲ來ス。<BR>(三)「ビタミソ」B<SUP>1</SUP>缺乏症ニ於テハ筋「ヒヨリン・エステラーゼ」ハ初期ニ滅少シ、末期ニハ培強ス。<BR>(四) 一側副腎別出ハ筋「ヒヨリン・エメテラーゼ」ニ影響ナグ、兩側副腎別出ニヨリ著明ナル酵素作用ノ増加ヲ來ス。<BR>(五) 副腎別出ニヨル筋「ヒヨリン・エステラーゼ」ノ増加ハ副腎皮質製劑投與ニヨり影響サレズ、「ビタミン」B<SUP>1</SUP>及ビ「ビタミン」C ノ投與ニヨリ抑制サル。
著者
平岡 佐規子 加藤 順 岡田 裕之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.115, no.3, pp.262-271, 2018-03-10 (Released:2018-03-12)
参考文献数
53

炎症性腸疾患は慢性疾患であり,生涯を通じ疾患活動性の評価が必要である.腸管炎症の評価の基準は内視鏡検査であるが,頻回の施行は避けたく,代替となるバイオマーカーが必須である.最近本邦でも便中カルプロテクチン(Fcal)が保険収載され,便中マーカーが注目されている.Fcalは欧米で広く利用されており,炎症性腸疾患の疾患活動性との関連,機能性疾患との鑑別に関しエビデンスも豊富である.一方,本邦から発信した免疫学的便潜血検査は,特に潰瘍性大腸炎の粘膜治癒予測においてはFcalより優れている.その他,血液マーカーでは,CRPなどの有用性が報告されているが,新規バイオマーカーの開発も期待される.
著者
鈴木 康夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.1897-1904, 2010-12-05
参考文献数
23
被引用文献数
2

抗生物質投与後に菌交代現象によって各種腸炎が引きおこされる.抗生物質起因性腸炎として,<i>Clostridium difficile</i>関連性腸炎,急性出血性大腸炎,そしてMRSA腸炎がある.急性出血性大腸炎は,比較的若年の女性に生じる特徴を有し,原因となる抗生物質を中止することにより比較的速やかに症状は改善し予後は良好である.偽膜性大腸炎を典型像とする<i>Clostridium difficile</i>関連性腸炎は,抗生物質投与後の菌交代現象によって感染した毒素産生株<i>Clostridium difficile</i>の増殖により発症する.MRSA腸炎は抗生物質投与後の菌交代現象により既感染MRSAが増殖し,腸管感染し発症する.ともに重篤な基礎疾患を有し長期入院中の高齢者に発生しやすい特徴を有し,発症後重篤な経過を辿る恐れがあり速やかな対応が必要である.<br>
著者
中尾 昭公 篠原 正彦
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.82, no.2, pp.296-300, 1985
被引用文献数
1

ドンリュウラットと雑種成犬の多血小板血漿にエンドトキシンを添加し, 過塩素酸による血液前処理法を用いた合成基質法でエンドトキシンを測定し, 比較的良好な検量線を作成した. 次に雑種成犬に0.5, 5, 50, 500&mu;g/kgのエンドトキシンを静脈内投与し, 投与後の血中エンドトキシンの変動を測定した. いずれの投与量の場合も投与後5分以内に投与エンドトキシンの99.8~99.9%が血中から除去され, 残りの0.1~0.2%のエンドトキシンが時間の経過とともに低下したが, 500&mu;g/kg投与時には投与後3時間以後は低下傾向がほとんど認められず, 12時間後にも50~500pg/mlのエンドトキシンが血中に検出された.
著者
今村 正之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病學會雜誌 = The Japanese journal of gastro-enterology (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.3, pp.365-373, 2010-03-05
参考文献数
27
被引用文献数
7

消化器神経内分泌腫瘍は比較的発生頻度が低く,各施設での経験数に限りがあるために診療の標準化が進まなかったが,近年の局在診断法の進歩にともない切除例が増加するに連れて,興味深い病態が解明されてきた.治療面の進歩も著しいものがあり,国際的な関心が高まりつつある.2003年にNETのWHO病理分類が改定され,またカルチノイドという消化管NETに与えられていた名称が消えた.新しい局在診断法として1987年に著者らが開発した選択的動脈内刺激薬注入法(SASI Test)とソマトスタチン受容体シンチグラフィー(SRS)が国際的に標準的診断法として普及しているが,SRSは本邦ではいまだに承認されず,診療上に支障が出ている.外科的&middot;内科的治療法の標準化に加えて,分子標的治療薬の治験が始まり,ソマトスタチン療法の進歩が患者に恩恵をもたらしつつある. <br>
著者
大木 篤 大槻 眞 岡林 克典 坂本 長逸 末広 逸夫 岡 徹 馬場 茂明
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.81, no.7, pp.1592-1597, 1984 (Released:2007-12-26)
参考文献数
20
被引用文献数
2

体重230~250gの Wistar 系雄性ラットに合成トリプシンインヒビター (TI:20, 50, 200mg/kg) を1日1回10日間経口投与し, TI投与量と膵肥大•増生との関係を検討した. ラットの体重増加量はTI投与群と対照群で差がなかつた. 膵重量および膵蛋白含量の増加はTI投与量0<20mg<50mg=200mgであつた. 膵DNA含量はTI投与量50mg以上でのみ有意に増加したがやはり50mgと200mgでは有意差がなかつた. 膵酵素含量増加の程度をみると, トリプシノーゲンは膵の肥大増生の程度より大きく, リパーゼは膵の肥大増生の程度とほぼ一致していたが, アミラーゼは膵の肥大増生の程度より小さかつた. TIの膵肥大増生使用には一定の限界があり各酵素含量に及ぼす作用も異なつていた.
著者
前田 清 吉川 和彦 寺尾 征史 山本 祐夫 梅山 馨
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.87, no.7, pp.1525-1531, 1990
被引用文献数
12

大阪社会医療センターにて過去5年間に経験した10例の赤痢アメーバ症の臨床的検討を行つた. 性別は全例男性で, 平均年齢は41歳であつた. 既往歴では海外渡航歴は全例認められず, 7例 (70%)に男性同性愛好者を認めた. 各種血清学的検査ではアメーバ抗体 (ゲル内沈降反応) 100% (6/6), 梅毒反応 (TPHA法) 60% (6/10) の陽性率を呈したが, AIDS抗体は0% (0/3) であつた. 赤痢アメーバの検出率は便中で70% (7/10), 肝膿瘍膿汁中で50% (2/4), 直腸生検粘膜で25% (1/4) であつた.<br>以上, 本症の診断には血清アメーバ抗体の測定が有用で, また, 感染経路としてホモ行為による感染が疑われた.
著者
福土 審
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.111, no.7, pp.1323-1333, 2014-07-05 (Released:2014-07-05)
参考文献数
49

過敏性腸症候群とは,腹痛と便通異常が関連し合いながら慢性に持続し,かつ,通常の臨床検査では愁訴の原因となる器質的疾患を認めないという概念の症候群である.その病因を,外因と内因,消化管と中枢神経系レベルの病態を惹起するものに分類する.消化管の外因として最近特に着目されているのが腸内細菌であり,次いで食物である.中枢神経系の外因として関与が確実なのは,患者に負荷される心理社会的ストレッサーである.消化管の内因として粘膜炎症が重要であり,最近,炎症に関連した現象として粘膜透過性亢進が着目されており,これらの背景にはゲノムがある.中枢神経系の内因として,ゲノム,エピゲノム,神経可塑性が存在する.
著者
青山 庄 樋上 義伸 高橋 洋一 吉光 裕 草島 義徳 広野 禎介 高柳 尹立 赤尾 信明 近藤 力王至
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.312-321, 1996-05-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
16
被引用文献数
2

1994年春,ホタルイカを内臓ごと生食後に旋尾線虫幼虫type Xによると思われる急性腹症を呈した10例を経験した.症状では,全例に腹痛,9例に嘔気・嘔吐,4例に下痢,6例に腹水を伴った腸閉塞と1例に皮膚爬行疹を認めた.検査所見では,経過中において,全例に末梢血の好酸球増多,9例に血清IgE値増加が認められた.ホタルイカ内臓の約3%に旋尾線虫幼虫type Xが寄生しているとの報告から,その抗体価を測定したところ,9例中7例で陽性を示した.1例では,腹膜炎の診断で回腸部分切除術が行われ,組織学的に,局所的なびらんと粘膜下層内に著明な好酸球とリンパ球浸潤を伴う炎症所見が認められたが,9例は保存的治療で軽快した.
著者
大島 忠之 三輪 洋人
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.327-334, 2009 (Released:2009-03-05)
参考文献数
36
被引用文献数
1

内視鏡的に食道粘膜に異常を認めないにもかかわらず逆流症状が出現する非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease; NERD)は逆流症状を訴える患者の60∼70%を占め,プロトンポンプ阻害薬(PPI)の奏効率は50%と逆流性食道炎患者に対する効果とくらべて低率である.近年NERDは逆流性食道炎の軽症型ではなく,異なる病態と考えられ,食道の酸や圧に対する知覚過敏やタイトジャンクションの破綻,侵害受容体の発現亢進,食道運動·収縮異常,心理的因子などの関与が指摘されている.治療は,個々の症例において他疾患の除外,あるいはオーバーラップを考慮しながら酸分泌抑制薬,消化管運動機能改善薬,抗不安薬,抗うつ薬などの薬剤を選択する必要がある.
著者
鈴木 貴久 鈴木 孝 木村 昌之 篠田 昌孝 藤田 友康 三宅 忍幸 山本 さゆり 田代 和弘
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.98, no.4, pp.421-425, 2001 (Released:2008-02-26)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は58歳,男性.高尿酸血症などで当院通院中1999年6月4日より全身倦怠感あり.6月12日黄疸のため当院を受診し入院.入院時検査で肝胆道系酵素上昇,CTにて肝萎縮あり.第18病日に薬剤性劇症肝炎亜急性型と診断され,血漿交換(PE)+血液濾過透析(HDF)を施行し,alprostadil alfadex(PGE1)を併用した.リンパ球刺激試験(LST)陰性だが,経過からbenzbromaroneによる薬剤性劇症肝炎と診断され,内科的治療により救命できたので報告する.
著者
木田 光広 長谷川 力也 松本 高明 三島 孝仁 金子 亨 徳永 周子 山内 浩史 奥脇 興介 宮澤 志朗 岩井 知久 竹澤 三代子 菊地 秀彦 渡辺 摩也 今泉 弘 小泉 和三郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.456-463, 2015-03-05 (Released:2015-03-05)
参考文献数
26
被引用文献数
1

胆嚢腺筋症は,1960年にJutrasによりRASの増殖とそれにともなう胆嚢壁の肥厚を引きおこす病態として報告され,武藤らにより胆嚢壁1 cm以内にRASが5個以上存在し,壁が3 mm以上に肥厚したものと定義された.病変の広がりにより胆嚢全体に瀰漫性に存在するびまん型(G型)diffuse type,胆嚢頸部や体部あるいは両方にまたがり輪状に存在し,胆嚢を2つに分節する分節型(S型)segmental type,胆嚢底部に限局的に存在する底部型(F型)fundal typeの3つに分類される.画像診断では胆嚢癌との鑑別が重要で,胆嚢腺筋症は胆嚢壁の肥厚と,拡張したRASが診断の決め手であり,簡便な腹部超音波検査でスクリーニングされ,診断能の高い検査は超音波内視鏡(EUS)とMRIである.胆嚢腺筋症は,40~60歳代の男性に多く診断される.胆嚢癌との関係は疑われているがコンセンサスは得られていない現状では,定期的な経過観察が必要と思われる.
著者
中村 光男 丹藤 雄介
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.97, no.11, pp.1347-1354, 2000-11-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
44
被引用文献数
1

非代償期慢性膵炎患者は膵性脂肪便や膵性糖尿病を合併することが多い.前者の診断には糞便の肉眼的観察とともに糞便中脂肪排泄量を簡便に定量できる近赤外分光法が最もすぐれている.また蓄便なしに膵機能不全を診断するためには13C-混合中性脂肪を用いた呼気13CO2脂肪消化吸収試験を行うことがよりよい.膵性脂肪便を確診したら大量の膵消化酵素による補充療法を行うべきである.しかし,膵性脂肪便患者は炭水化物吸収不良も合併していることが多いので,インスリン治療と膵消化酵素治療法を連動して考え,更に栄養状態改善を治療のゴールとすべきである.
著者
三島 義之 石原 俊治
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.560-569, 2019-07-10 (Released:2019-07-10)
参考文献数
86

過敏性腸症候群(IBS)患者の一部には,腸管粘膜局所に顕微鏡的な微弱炎症を有し,腸管免疫の持続的な賦活化を認める.その粘膜持続炎症がIBSの病態に密接に関与していると考えられるが,そこに存在する詳細なメカニズムに不明な点が多い.そこで今回,IBSで腸管粘膜の微弱炎症の持続がなぜおこるのか,粘膜炎症がどのようにして腸管知覚過敏/機能異常を生じるのか,粘膜炎症に対する抗炎症治療がPI-IBS治療となり得るのかに着目し,文献的考察を行った.今後は,新たな粘膜炎症に焦点を当てた検査法,治療法の確立を目指して,現行治療に難渋しているIBS患者へのbreakthroughとなることを期待したい.
著者
坂本 長逸
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.116, no.6, pp.455-467, 2019-06-10 (Released:2019-06-10)
参考文献数
93

非ステロイド性消炎鎮痛薬,アスピリンによる消化管障害発症機序は古くから検討され,その詳細が明らかにされている.病態生理の理解から選択的COX-2阻害薬の粘膜障害性が少ないことが示され,ガイドラインで推奨されている.アスピリンによる上部消化管傷害はプロトンポンプ阻害薬で管理できるが,長期服用者の下部消化管障害についてはさらに検討が必要である.直接経口抗凝固薬については消化管出血リスクに差があり,患者の背景を考慮した薬剤選択が必要である.最近注目されている免疫チェックポイント阻害薬の腸炎,下痢の病態は炎症性腸疾患と類似し,免疫関連有害事象としての理解と管理が必要と思われる.
著者
新井 由季 玉田 喜一 佐藤 幸浩 和田 伸一 田野 茂夫 花塚 和伸 大橋 明 菅野 健太郎
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.102, no.11, pp.1412-1416, 2005 (Released:2005-11-04)
参考文献数
17

胆嚢収縮能超音波検査において一般に用いられている卵黄に代わりカロリーメイト缶®を用い,その有用性について検討した.健常人ボランテイア27名を対象とし,腹部超音波検査にて空腹時胆嚢容積をellipsoid法にて求めた.カロリーメイト缶®飲用後,30分後と60分後に胆嚢容積を測定し,胆嚢収縮率(EF)を求めた.空腹時胆嚢容積は平均13.5 ml, EFは平均で30分後53%,60分後62%と充分な胆嚢収縮が見られ,カロリーメイト缶®は胆嚢収縮剤として有用と考えられた.また,空腹時胆嚢容積が4 mlに満たない例では前日の脂肪食の影響を除くために,禁食を厳重にして再検する必要があると考えられた.