- 著者
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細馬 宏通
- 出版者
- 情報処理学会 ; 1960-
- 雑誌
- 情報処理 (ISSN:04478053)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.1, pp.4-7, 2017-12-15
いまやSNSは多くの人にとって身近なネットワークになっている.その中で,Twitterは,タイムラインに短い文章を埋め込むことができ,不特定多数に開かれており,各参加者が自他の発言を独自のタイムライン上に表示し,書いたり読んだりすることができる点で独自の読み書き環境である.そこで起こる「攻撃的な発言」や「嫌がらせ」に対して運営側は近年,対処を迫られている.多様な発言を分類する明快な倫理的基準を作るのは難しい.重要なことはTwitter Japanの措置がどのように行われ,どのような倫理的判断がそこで行われたかを明快にすること,また,基本的にアカウントの凍結は永久凍結ではなく,一時凍結を原則とし,倫理的基準に関する議論の推移によってアカウントを再び復活できるようにしておくことである.SNSという特定の会社が運営する発言環境や執筆環境が,驚くほど多くの人々によって利用されている現在,そこで行使される倫理的基準は,単なる一会社の判断基準であるにとどまらず,多くのユーザの記憶のあり方に関わっている.