著者
今井 弥生
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.292-297, 1965

東京家政学院短期大学・家政科学生を対象とし、1955~1963年にわたり、日本色彩社発行の97標準色を用いて、嗜好色と着用嗜好色とを経年的に調査し、これらの嗜好率と相関関係とを明確にするために決定係数を求め、同時に着用嗜好色率の嗜好色率平均弾力性を求めて検討を加えた。被験者は9年間計2,757名である。<BR>主な結果<BR>1. 嗜好色と着用嗜好色とにおいて、色彩の受容には周期的現象が認められる。<BR>1) 嗜好率1位を示したダーク・ブルー系の周期は、約4~6年と推察される。なお、レッド系とブルー系とを主調とする年度にはパープリッシュの傾向を好み、ブラウン系とグリーン系とを主調とする年度にはグリーニッシュを好む傾向が強い。<BR>2) 2位を示したスカイ系は、ダーク・ブルー系と交互に出現する傾向があり、次のピークに達するまでには、約4~6年の周期があると推察される。<BR>3) 3位を示したイエロー系は、徐々にピークに達し、その周期は、約8年以上と推察される。<BR>2. 決定係数の大小には、その信頼度とともに、年令層による特色がやや認められる。<BR>1) ターコイズ系、ライト・グリーン系、メディアム・グレー系は決定係数が大であり、嗜好色と着用嗜好色との相関関係が強度に存する。これはこの年令層にあう系統と思われる。<BR>2) オリーブ系、ラベンダー系、ワイン系、リーフ系においては決定係数が小であり、相関関係が殆んど存しない。これらは比較的年配層にあう系統と思われる。<BR>3. 決定係数・平均弾力性ともに大なる系統については、この年令層における需要予測が確定できると考えられる。<BR>1) ターコイズ系、メディアム・グレー系、ライト・グリーン系は決定係数・平均弾力性ともに大であり、着用嗜好色率の増加が確実に予想される。<BR>2) イエロー系、イエロー・グリーン系、レッド・パープル系、ブルー系、レッド系、ベージュ系、ブラウン系、オリーブ・グリーン系については、決定係数は中位であるが、平均弾力性は1より大であるので、着用嗜好色率の増加がやや予想される。<BR>3) ブラック系の決定係数は中位ではあるが、平均弾力性は最も大であり、ある時期には最大の着用嗜好色率の増加率が予想される。
著者
日比 喜子 小林 喜美枝 北村 進一 久下 喬
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.9, pp.743-749, 1986

うるち米飯 (米飯) およびもち米飯 (強飯) を5℃に放置したときの性状変化について, 澱粉の老化の面から検討を行い, 次の結果を得た.<BR>1) 水可溶性画分は, 強飯のほうが米飯より多かった.画分中の全糖量は, 米飯では, 冷蔵3時間後に最高値を示した後, 減少した.強飯では, 冷蔵3時間までほぼ一定で, その後, 減少した.<BR>これらの糖についてGPC分析を行い, 分子サイズ分布を調べ, その経時変化を追跡した.<BR>2) 冷蔵中における糊化度は, 強飯のほうが, 一般に, 米飯より高かった.米飯では, 冷蔵3時間後に糊化度が最高値を示した後, 低下した.強飯では, 冷蔵1時間後までほぼ一定で, その後, 徐々に低下した.<BR>3) 米飯, 強飯とも, 加熱前のA図形の結晶構造は, 加熱により消失し, 米飯では, 微量のらせん状複合体の形成を示すV図形, 強飯では, 非晶形のV図形を示した.冷蔵24時間後から結晶性の回復がみられ, 144時間後には, B図形へと変化した.
著者
大井 裕子 鶴淵 和子 小林 トミ 穂坂 直弘 寺元 芳子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.81-86, 1985

砂糖液の加熱時における火力と最終温度がカラメルソースの色や味とどのような関係にあるかを明らかにするため実験を行い, 次のような知見を得た.<BR>1) カラメルソースの濃度は, その仕上がり重量がもとの砂糖重量の1.10~1.15倍がよい.<BR>2) 官能検査の結果, 強火では 210~230℃ 加熱のものが色・味ともに評価が高かった.これに該当するのは, 中火では220℃, 弱火では210℃加熱のものであった.<BR>3) カラメルの色は弱火で210℃, 中火で220℃, 強火で230℃になると急変しやすく, ばらつきが大きくて再現性に欠ける.<BR>4) カラメルソースの色価は 600 前後が適当である.<BR>5) カラメルソースの pH は, 加熱温度の上昇とともに低下する.<BR>6) 火力は強火よりも弱火のほうが温度が緩慢に上昇し, 低温で着色する.<BR>7) カラメルの調製法としては160℃まで強火にし, その後弱火で加熱するのが, 所要時間や調理操作上よいと考えられる.
著者
新田 ゆき
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.173-176, 1975-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1) 加熱中断によるジャガイモ組織の硬化現象 (ゴリイモ化) について実験した結果, 55~70℃, 100分予加熱したのち, 100℃で再加熱したものは堅く, 破断力が増大した.しかし, EDTAを加えると予加熱しても柔らかく, 逆に, CaCl2 を加えたものは普通加熱でも破断力は著しく増大した.2) 予加熱したものでは, 水溶性ペクチンが普通加熱のものより明らかに少なく, 塩酸可溶性ペクチンは逆に多い傾向を示した.3) ジャガイモ以外の野菜, 果実の若干のものについても実験したが, 同様に60℃予加熱で顕著に破断力が増し, 水溶性ペクチンが減少した.4) 以上の現象の原因として, ペクチンメチルエステラーゼがペクチニン酸のメチル基を離し, フリーになったカルボキシル基が組織内の Ca++, Mg++ と架橋を作り堅くなるのではないかと想定している.
著者
荒川 志津代
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.354-363, 1984-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
8

多くの要因を含んだ子ども写真を視覚刺激として提示した場合のかわいさの要因について検討した.1) 被験者は子どもの身体以外のものにも関心をもっており, それをかわいくも感じているが, かわいさの基準を具体的に明示するように求める場合には, キンダーシェマとかわいさとの関連が生じることが推測された.2) 被験者の属性が子どものかわいさの要因の一つであることが明らかとなった.3) かわいさの因子として, 楽しさ, 無力さ, 活発さ, 緊張, 力動性, 従順さが見いだされた.4) 子ども観の三つの因子が見いだされた.伝統的・保守的子ども観, 客観的・理性的子ども観, 保護的・共感的子ども観である.5) 子ども観とかわいさイメージとの関連が示唆された.
著者
湯川 聰子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.557-561, 1969

A large proportion of the families with working wives have no children. Also in a large percentage of cases working women's families with children live with either wives' or husbands' mothers. This fact indicates that it is difficult for wives to work out without the cooperation of their families, especially of their mothers. On the other hand, many wives who hold jobs send their children to nursery schools. To send them to nursery schools has been made easier these days owing to the recent increase of nursery schools, but there are still many complaints about them especially insufficiency in number, lack of baby nurseries and shortage of available hours.<BR>The &ldquo;white collar&rdquo; married women's chief motive for resigning from their positions is their husbands' transference to remote places.
著者
赤羽 ひろ 大澤 はま子 中浜 信子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.472-478, 1976-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6

粘稠調理食品のうち, 白ソースをとりあげ, その基本となるルーの性状におよぼす加熱温度および材料配合による水分量の影響などについて実験検討した. さらに, それらのルーを用いた白ソースの性状についても検討を行った. ルーの調製には日常の調理法にもとづく条件をなるべく採用し, バターと小麦粉のほかに, バター脂, サラダ油, 乾燥小麦粉を用い検討した.1) ルーの乾麩量はルーの材料中の水分量と, 加熱温度によって変化した. ルーの加熱温度が80℃以下では乾麩量に変化はみられなかったが, ルーの加熱温度が100℃以上になると, ルーの水分率が0%の場合は乾麩量の変化はみられないが, 水分を増すに従って乾麩量は減少し, ルーの水分率が36%になると, ほとんど乾麩量は0に近づいた.2) 光学顕微鏡的には, ルーの加熱温度140℃までは澱粉の粒形, ならびに複屈析性に顕著な変化は認められなかった.3) バターと小麦粉を用いたルー (水分率36%) から調製した白ソースは, ルーの加熱温度が120℃のものでは粘度がやや高く, ルーの加熱温度140℃では急激に白ソースの粘度低下がみとめられた. しかし, 水分の少ないルーを用いた白ソースでは, ルーの加熱温度140℃になるまで, やや粘度の上昇がみられるが, 急激な変化はみとめられなかった.4) バター, バター脂, サラダ油を用いたルーから調製した白ソースについて, 嗜好特性, 総合評価を5点評点法で評価した結果, バターを用いたものが最も好まれた.5) これらの白ソースの総合評佃, 嗜好特性値の間の関係を絹関行列, 重相関係数, 重回帰式により求めた結果, 呈味, 色, 香りの順でその評価が影響していることが認められた.
著者
江澤 郁子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.36, no.11, pp.898-902, 1985-11-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
5
被引用文献数
1
著者
前田 清一 中尾 俊
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.149-154, 1963
被引用文献数
1

酸類の酸味としての閾値(Stimulus Threshold Value)と最低閾値(Minimum Threshold Value)、及び酸類間の酸味の強さについて、味覚試験を用いて測定をおこなった結果 : -<BR>(1) Panelの識別能力は非常に優秀なものであり、なかでも、女性Panelは男性のそれよりも全般によい様である。<BR>(2) 平均最低閾値は、塩酸、アスコルビン酸、グルコン酸では1×10<SUP>-4</SUP>M(各0.0004、0.0019、0.0020%)、ベタイン塩酸塩では2×10<SUP>-4</SUP>M (0.0027%) であり、クエン酸、酒石酸、乳酸等その他有機酸では5×10<SUP>-5</SUP>M(各0.0010、0.0008、0.0005……%)かそれ以下である。<BR>(3) 酸味として感じる閾値は、正確には極限法によっておこなわねばならないが、本実験資料から大略次の値であろうと推定される。<BR>クエン酸、酒石酸、フマール酸、グルタミン酸塩酸塩については1×10<SUP>-4</SUP>M(各0.0019、0.0015、0.0013%)、アスコルビン酸の4×10<SUP>-4</SUP>M(0.0076%)を除いて他の本実験試料酸類は、同一モル数すなわち、2×10<SUP>-3</SUP>M(塩酸の0.0008、乳酸の0.00018、酢酸の0.0012、コハク酸の0.0024、グルタミン酸の0.0030等の各%)である。<BR>(4) 閾値におけるpHは必ずしも同一ではなかった。
著者
浅見 雅子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.24, no.7, pp.567-570, 1973

In the Heian era, all kinds of implements were called &ldquo;chodo.&rdquo; This paper is for showing pilologically how the meaning of implements changed in the Edo era.<BR>According to the dictionaries or the documents published in the period, we can know that the word implements involves two different kinds of the meaning in it; that is, we can call one &ldquo;chodo&rdquo; and the other &ldquo;kizai&rdquo; or &ldquo;kiyo.&rdquo; <BR>In the Edo era, &ldquo;chodo&rdquo; means the industrial art objects ornamented by gold or silver lacquer. On the other hand, &ldquo;kizai&rdquo; or &ldquo;kiyo&rdquo; means what we call functional implements.<BR>The most typical &ldquo;chodo&rdquo; of the Edo era is <I>daimyo</I>'s &ldquo;choddo&rdquo; involving the wedding one for <I>daimyo</I>'s daughters, which exists even now as a cultural inheritance. &ldquo;Kizai&rdquo; or &ldquo;kiyo&rdquo; as functional implements, which was made use of mainly by the common people, little exists for it was dealt with as expendable one.<BR>We can clearly distinguish between the meaning of &ldquo;chodo&rdquo; and that of &ldquo;kizai&rdquo; or &ldquo;kiyo&rdquo; in the Edo era. Nowadays the word &ldquo;chodo&rdquo; is used as a kind of pronoun given to luxurious furniture.

1 0 0 0 OA 古代・中世

著者
市毛 弘子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.453-463, 1986-06-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

It was found by my investigation that the word “Muginawa” meaned “Sakubei” at first, and it changed into “Soumen” in the Edo era. So, I tried to research for its origin, as well as the way of use, and the process of change from Sakubei to Soumen.In China, Sakubei was eaten before 220 A.D. In Japan, some data can be found indicating that it was eaten at the Todaiji Temple in the early days of the Nara era. From these facts, it is supposed that Sakubei was imported from China along with Buddhism, and sold at East and West markets of Heijokyo.In the Heian. era “Sakubei” was very important food in the Imperial Court. It was given to the priests and high society people from the Emperor at the Imperial events.“Sakubei” was served at the first step of dinner table. After ear shell's soup was served to the Emperor it was taken off the table. It came into wide use at the end of the Heian era. High society people had a custom of eating Sakubei on the 7th July according to an old Chinese tradition.From the ancient times on to the 13th century it had been called “Muginawa, ” but in the Middle Age it was very often called “Sakubei.” The custom of eating Sakubei on the 7th July was continued from the end of Heian era to the Middle Ages.On the other hand Soumen became known as food of tea ceremony in the 14th century. It was called “Tenjin, ” which gradually spread wide among priests of temples as their between-meals. It soon became generalized, but Sakubei was not eaten by many people except high society people. It is clear, however, that Soumen and Sakubei were different at all from each other at that time.
著者
浜島 教子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.255-261, 1976-07-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

Present study was carried out in order to obtain the information of the relationship between the saltiness and sourness of food. The relationship was examined by organoleptic test using the solution mixture of sodium chloride and acetic acid at the concentrations corresponding to the ordinary food.The saltiness of sodium chloride was intensified by the addition of a small amount of acetic acid. That is, the saltiness of 1-2% sodium chloride solution was enhanced by the addition of 0.01% acetic acid, and that of 10-20% solution was enhanced by 0.1% acetic acid. However, the saltiness of 1-2% sodium chloride solution was reduced by the addition of 0.05% acetic acid, and also that of 10-20% solution was reduced by above 0.3% acetic acid.The sourness in all concentrations was enhanced by the addition of a small quantity of sodium chloride, while it was reduced by the addition of a large quantity.
著者
久武 綾子
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.281-286, 1961

1) 婚姻届出日より第一子出生日のへだたりの統計結果から、妻の妊娠又は出産を契機として入籍するという、事実婚より法律婚への転機の一原因が実証された。<BR>2) 1) の件数は戦前戦中は特に多く、戦後も25年位までは相当多い。<BR>3) 婚姻の届出が第一子出生後2週間以内でなされる件数は戦前戦中は特に多く14%位をしめ、戦後25年位までは13%であるがそれ以後は次第に減少する傾向がみられる。<BR>4) 2) の2週間以内というのは出生の届出の期限と一致し、これは内縁期間に出生した場合に非嫡出子として一旦、母の戸籍に入るのを未然に防ぐためと推察される。<BR>5) 婚姻成立後即ち、婚姻届出後9~10ヵ月で第一子の出生をみる傾向は最近になってようやくあらわれた。6) 古い時代には特に法制的には内縁期間中の懐胎が相当多い。これは挙式後婚姻の届出をすぐに行なわなかったためである。<BR>7) 挙式日と出生日のへだたりは時代の推移にかかわらず10ヵ月にピークがある。<BR>8) 子の出生日から逆算すると式以前の同棲期間中の懐胎件数は法制上の内縁期間中の懐胎にくらべると少ないことがわかった。<BR>9) 社会生活上、挙式そのものは重大な規範でありながら、その反面、制度としての婚姻の届出はおくれがちであることが判明した。<BR>10) 婚姻届出に関する社会的経済的背景としての職業は、俸給生活者はその届出が早く、その中、教員、公務員は届出は特に早い傾向がみられる。
著者
貝沼 やす子 関 千恵子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.11, pp.690-697, 1983-11-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
6
被引用文献数
3

1) 炊飯条件としての沸騰に至るまでの加熱速度の相違は, それぞれの炊飯過程や飯の性状に特微をもたらした.2) 加熱速度の速い場合 (S) は加熱に伴う米粒の吸水は遅れるが, 沸騰状態の継続時間は長くなり, この間におこる米粒の変化が著しい.しかし, 急激的に水分の吸収や糊化が行われるために, 均質的な変化は期待できず, かたくて粘りの少ない飯になる.3) 加熱速度が遅い場合 (L) は沸騰に至るまでの時間が長くかかり, 沸騰までにほとんどの水が吸収されてしまうのでいわゆる沸騰期を作る水はなくなる.またゆるやかな温度上昇にあわせて溶出した多量の固形分が米粒の表層に付着しながら徐々に糊化が進むため, 光沢がなく, やわらかい飯になる。4) 沸騰に至るまでの加熱時間が, 約10分の場合 (M) は, 1), 2) の中間的な状態を保ち, 加熱に伴う適量の吸水, 沸騰期の適度な存在により米粒の変化が好ましい状態に進む.5) その他, α化率, 飯の色は, S, M, Lにほとんど差がなく, また, 官能的にも大きな違いはないが, 使用ガス量が少なくてすむことなどを含め, 総合的には, 沸騰までに約10分を設定したMの加熱速度が最も好ましい.
著者
古川 英子 吉松 藤子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.246-251, 1980-05-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
4

糖類を吸湿したときの変化について示差熱分析と熱天秤による重量変化を測定した結果次のことがわかった.1) グラニュ糖は150℃付近から部分的な分解に伴う重量減少が始まり, 185℃付近でショ糖分子の分解と考えられる吸熱ピークがみられた.2) 無水ブドウ糖を吸湿させた試料では初め70℃に吸熱ピークがあり, この領域に重量減少もみられた. この段階で吸着水がはなれたと考えられる. さらに165℃に融解に伴うと思われるピークがみられた.3) 結晶ブドウ糖では, 50~80℃の間で急激な重量減少がみられた. この区間に, 含まれている水分のうち, 比較的離脱しやすい水分が蒸発するものと思われる. 次に80~145℃では重量の変化はなく, それ以後急激に重量が減少したのは, 145℃以後結晶水の離脱によると考えられる.
著者
菊沢 康子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.488-497, 1983-08-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
16

家庭用学習机・椅子の使用実態と児童の身体計測結果とをもとに, 児童の机・椅子高さの体位への適合状態について分析を試みた.調査対象は, 福山市立の小学校, 中学校, 高校から各1校と国立大学附属の小学校, 中学校, 高校各1校を選び, 全児童にアンケート調査を行うとともに身体計測を行った.ついでJIsの学校家具の高さ基準を適用して各対象児童ごとに求めた机・椅子の適正高さと, 実際に使用しているそれらの高さとの比較を行い, つぎのような知見を得た.1) 小・中学生および高校生を通じて, 机は小学校入学時またはそれ以前に購入したものを使用しているものが2/3以上を占め, さらにそれらは高さ調節装置をもつものがほとんどであった.一方, 椅子については, 小中学生では, その2/3以上が小校入学時またはそれ以前に購入したものを使用していたが, 高校生ではそれに該当するものは過半数を割り, 途中で買い換えをしているものが机の場合よりも多いことが明らかになった.以上の使用実態は, とくに机の場合は身体の発育段階に応じられる高さ調節機構が是非必要であることを示唆している.2) 机および椅子の高さ調節の実態については, 小・中学生および高校生を通じて約3割のものが過去にまったく高さ調節を行った経験をもっていない.また, 経験のあるものでも小・中学校期の体の発達の著しい時期に1年の間に高さ調節を1回も行ったことのないものが約3割認められた.なお, 調節方法については机と椅子の両方を用いて行っているものが最も多く認められた.3) 調査時に使用していた机および椅子の高さと, 各対象者の身体計測値をもとに算出した適正高さとを比較した結果, 小学生では机・椅子とも高さ過大になっているものが極端に多いことおよび中学生・高校生ではそれらの高さが過大・適正・不足にほぼ3分されていることが認められた.4) 差尺の, 適正値に対する過大・適正・不足に対して, 机・椅子の高さとの関連を調べた結果, 差尺が適正であるものは, 中学生・高校生では机・椅子とも適正高さとなっているものが最も多いが, 小学生では机・椅子とも高すぎるものが最も多くなっていることが認められた.つぎに, 差尺が過大のものは, 小学校高学年, 中学生, 高校生の場合は机が高すぎるため差尺が過大となっているものが最も多かったが, 小学校低学年では机だけでなく椅子も高すぎるものが最も多かった.なお差尺が小さすぎるものは全体的に少なかった.5) 以上の使用実態に対して, 市販の家庭用学習机および椅子の供給状況を見るためカタログ調査を行った結果, それらの調節可能最低高さは, 小学校1年生の身体計測値の平均を用いて算出した適正机高さおよび椅子高さにまで下げうるものは見当たらなかった.以上の結果を総合すると, 家庭用学習机・椅子を適正高さで使用することに対する保護者および児童の生徒の認識が十分でないことが明らかでありこの点の啓発の必要性が認められる.一方, 小学校低学年で机・椅子とも適正高さにくらべて高すぎるものを使用しているものが圧倒的に多い原因には, 市販の机・椅子が適正高さにまで下げて調節できないという机・椅子の高さ調節機構にも一因があることが明らかになった.
著者
守 康則 北 久美子 宮崎 節子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.1-5, 1964-02-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
10
被引用文献数
1

1. クロロフィルは熱に対しては比較的不安定にしてとくに70℃以上においてはほとんど分解槌色する。2. クロロフィルはアルカリ性側においては比較的安定性を示し、酸性下においては不安定にして、とくにpH5.0以下においては著しく分解裾色する。3. クロロフィルは光による光分解性がみられ、とくに紫外線による分解能が著しい。4. クロロフィル誘導体であるCu-クロロフィリン-Na、Fe-クロロフィリン-Na、Al-クロロフィリン-Naは温度、光に対して安定性を示し、とくにCu-クロロフィリン-Naは最もその安定性が高い。酸性下では三者とも不安定性を示す。5. クロロフィルに対するクロロフィラーゼの作用は、アセトン溶媒中では、温度25℃、pH8.3附近において最も著しい活性を示す。
著者
島田 淳子 渡部 繁子 新垣 公子 松元 文子
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.24, no.8, pp.704-709, 1973-12-20 (Released:2010-03-09)
参考文献数
4

The correlations of the ratio between materials and cooking temperature for making the “roux” which influences the qualities were examined by their viscosity, color, sedimentation volume, turbidity and taste.As the results, (1) when the taste was evaluated by trained panels, the roux cooked to the temperature up to 130°C was more palatable than that of the temperature 100°C. The roux turned to brown and arouse the roasted flavor by further heating.(2) The cooking temperature of roux showed inverse relations of viscosity, and of the sedimentation volume of pastes which was prepared from this roux, higher the temperature of the roux, lower the viscosity, and smaller in the sedimentation volume. On the other hand, the turbidity of filtrate of these pastes showed the increasing tendency for higher cooking temperature.(3) The changes of viscosity by the alpha amylase digestion was found to be smaller at its high temperature.(4) Acid and iodine values, and the viscosity of butter fat which was separated from roux were tested, and found no remarkable changes in the difference of cooking temperature.