著者
澁木 太郎 川副 広明 水田 敏彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.11, pp.647-652, 2018-11-20 (Released:2018-11-28)
参考文献数
19

症例は32歳女性.30歳時(50 kg)から姑へのストレスにより体重減少が出現.32歳時には26 kgまで低下し体動困難となったため当院内科に紹介.常食1000 kcal/日で食事を開始しほぼ全量摂取できていたが,ASTは178 IU/l(第1病日),311 IU/l(第7病日)と上昇.Refeeding症候群による肝機能異常と考え摂取カロリーを500 kcal/日に制限したところ,その4日後に急激な肝機能増悪を認めた.少量の糖質を含む輸液を行ったところ肝逸脱酵素は急速に改善したが,血清K,P値の急速な低下があり適宜補充した.その後,肝逸脱酵素,PT%,電解質は全て正常化し他院精神科へ転院となった.近年,神経性食思不振症に伴う肝機能異常の原因としてautophagyが注目されている.本症例の経過をふまえて神経性食思不振症における肝逸脱酵素上昇の機序に関して考察した.
著者
春日 範樹 小川 祐二 本多 靖 谷口 礼央 酒井 英嗣 今城 健人 日比谷 孝志 米田 正人 桐越 博之 大橋 健一 中島 淳 斉藤 聡
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.504-512, 2020-10-01 (Released:2020-10-08)
参考文献数
16

症例は45歳女性.急性骨髄性白血病に対して同種骨髄移植が行われ,移植後はタクロリムス,ステロイドによる免疫抑制療法を18カ月継続した.移植前はHBV既往感染の状態であったが,移植から38カ月後に肝機能障害,HBs抗原陽転化,HBV-DNA量上昇を認め,HBV再活性化と診断した.同種骨髄移植前後に赤血球濃厚液の頻回の輸血によりヘモクロマトーシスを合併していた影響もあり,血清フェリチン値は著明高値であった.肝生検では過剰な鉄沈着と急性肝炎の所見を認めた.ラミブジンにより治療を開始し,その後テノホビルアラフェナミドへ切り替えた.HBV再活性化とヘモクロマトーシスの関連性は不明であったが,HBV治療と鉄キレート剤により血清フェリチン値も漸減した.HBV既往感染状態での同種骨髄移植では,長期間にわたりHBV再活性化への注意が必要である.
著者
世古口 悟 廣瀬 瞳 池田 佳奈美 山根 慧己 濱田 聖子 堀田 祐馬 山田 展久 磯崎 豊 長尾 泰孝 小山田 裕一 松林 宏実
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.184-190, 2020-04-01 (Released:2020-04-03)
参考文献数
19
被引用文献数
1

針刺し事故の現状およびワクチン接種の問題点を検証する目的で,2012年1月から2019年7月までに当院で報告のあった,針刺し切創・皮膚粘膜曝露138症例の検討を行った.職種は看護師52.9%,常勤医師23.9%の順で,事務職は1.4%(2例)であった.経験年数1年未満が23.2%で,汚染に伴う感染例はなかった.曝露時のHBs抗体価が10 mIU/ml未満の割合は23.7%で,HBs抗体の自然低下41.9%,ワクチン接種終了前の曝露35.5%,ワクチン不応9.7%,ワクチン接種非対象者6.5%であった.針刺し事故は,事務職にも発生しており,全ての医療従事者を対象としたワクチン接種が必要である.また就業開始前のワクチン接種による抗体獲得および抗体価の定期的な測定を検討する必要がある.
著者
恩地 森一 道堯 浩二郎 堀池 典生
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.11, pp.518-523, 2006 (Released:2007-02-21)
参考文献数
39
被引用文献数
1 1
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.Supplement.1, pp.A271-A308, 2018-04-20 (Released:2018-07-14)
著者
小野 隆裕 橋本 章 田中 隆光 福家 洋之 清水 敦哉 欠田 成人 中野 洋
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.62, no.11, pp.734-741, 2021-11-01 (Released:2021-11-08)
参考文献数
23
被引用文献数
1

症例は40歳代女性.風俗店勤務.外陰部腫瘤,潰瘍,体幹部丘疹,手掌足底に紅斑を認め梅毒を疑った.梅毒反応陽性,胆道系優位の肝胆道系酵素上昇を認めた.腹部超音波検査で門脈域に高エコー像を認めた.造影CTでは動脈相で肝内胆管の一部拡張と壁肥厚,肝実質に不均一な造影所見を認め,以上より胆管炎も疑われた.MRIではT1強調画像opposed-phaseで門脈域周囲低信号域を認め,MRCPで胆管の枯れ枝状変化を認めた.肝生検ではグリソン鞘と周囲組織にリンパ球浸潤と線維化を認め実質に脂肪変性を認めた.AMPC内服を開始し梅毒反応は陰性化し,肝胆道系酵素は約11カ月の経過で低下し画像所見も改善を認めた.早期梅毒肝炎の過去報告例では画像上胆道系異常を指摘した報告は少ない.この所見は胆道系優位の肝障害という早期梅毒性肝炎の特徴とも合致し,特徴的な画像所見を呈した1例として報告する.
著者
松崎 靖司 田中 直見 山口 高史 忠願寺 義通 西 雅明 千葉 俊也 大管 俊明 小松 義成
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.31, no.12, pp.1464-1469, 1990-12-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20
被引用文献数
3 8

筋痙攣を頻回に繰り返す非代償性肝硬変症にタウリンの経口投与を試みたところ,筋痙攣が消失した症例を経験したので報告する.症例は,64歳女性.両手,両下腿の筋痙攣,下腿浮腫を主訴にて入院.身体所見には異常を認めず.肝機能検査においては,GOT, GPTの軽度上昇,血清総蛋白,アルブミン,Ch-Eの低下を認めた.血中電解質,銅,カルシウム値,PTHは正常であった.腹部超音波,肝シンチにおいては肝硬変パターンであった.筋電図所見は,安静時において下肢,近位,遠位筋に多相性の神経筋単位を認めた.タウリン3.0g/日経口投与を試みた.投与7日目より筋痙攣は完全に消失した.さらに筋痙攣を伴う慢性肝障害患者10例にタウリンの経口投与を行った.その結果7例に痙攣の消失を認め,3例に症状の軽減を認めた.慢性肝障害における筋痙攣に対しタウリンは有効な治療法の一つに成り得ると考えられた.
著者
木村 友希 兵庫 秀幸 石飛 朋和 鍋島 由宝 有広 光司 茶山 一彰
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.51, no.10, pp.586-588, 2010 (Released:2010-11-05)
参考文献数
5

The glucose tolerance was evaluated in 136 nonalcoholic fatty liver disease (NAFLD) patients without overt diabetes mellitus. All patients underwent liver biopsies and 75-g oral glucose tolerance tests. Plasma glucose and insulin levels were analyzed periodically for 3 h after oral glucose loading. Irrespective of the hemoglobin A1c levels, impaired glucose tolerance, including diabetes mellitus, was detected in 61% of the NAFLD patients. While the secretion pattern of glucose after glucose loading was similar among the NAFLD patients, postprandial insulin levels increased in parallel with the aggravation of histological findings (fibrosis stages and NAFLD activity scores). In conclusion, the present data shows the importance of performing the glucose tolerance test in NAFLD patients without overt diabetes mellitus.
著者
高橋 宏樹 銭谷 幹男
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.49, no.5, pp.179-182, 2008 (Released:2008-06-05)
参考文献数
17
被引用文献数
2 2
著者
前田 淳 市岡 四象 井内 正彦
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.832-836, 1976-11-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
8

われわれは慢性日本住血吸虫症患者の血中エストロゲン値を測定し,脾腫の有無と共に検討を加えた.1) 脾腫の発生は肝硬変を呈する男性,肝線維症を呈する女性に多い傾向がみられた.2) 血中エストロゲン値は肝硬変および肝線維症を呈するものに高値を示し,慢性肝炎を呈するものは全例とも正常範囲内であった.3) 脾腫のみられるものの血中エストロゲン値は脾腫のみられないものより高値を示すものが多く,肝硬変群では脾腫のみられる男女に,肝線維症群では脾腫のみられる青壮年の女性に高値を示すものが多かった.4) 妊娠回数との関係では肝硬変群では関連はうすかったが,肝線維症群では妊娠回数の多いものほど脾腫のみられるものが多く,血中エストロゲン値も高いものが多かったが,今後,検討を要するものと思われる.
著者
山内 眞義 平川 淳一 木村 和夫 中島 尚登 中原 正雄 中山 一 北原 敏久 大畑 充 片山 辰郎 高原 仁 藤沢 洌 亀田 治男
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.643-648, 1989-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
15

雌と雄ラットに慢性アルコール投与を行い,アルコール性肝障害の発症と伸展に及ぼす性差の影響を検討した.雌アルコール群で最も肝ハイドロオキシプロリンの増加を認め,雌のほうが雄に比べてアルコール性肝障害になりやすいことを実験的に明らかにした.雌アルコール群では,雌コントロール群に対して,アルコール脱水素酵素(ADH),アルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性及びエタノール除去率はいずれも低下するのに対して,雄アルコール群では雄コントロール群に対してADH,ALDHは高活性を示し,エタノール除去率も速やかとなった.以上より女性のアルコール性肝障害に対する高感受性の原因として,男女間の常習飲酒に対するアルコール代謝の変動の差異が一因と考えられた.
著者
藤瀬 幸 孝田 雅彦 桑本 聡史 三好 謙一 木科 学 加藤 順 徳永 志保 岡野 淳一 北浦 剛 武田 洋正 村脇 義和
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.600-606, 2013-09-20
被引用文献数
1

症例は50歳代の女性.入院6年前(2004年3月)からトリクロルメチアジド,ロサルタン,入院3年前からロスバスタチン,入院1年前からはフルボキサミンを内服していた.2010年6月に肝酵素の上昇を認め,入院となった.AST 505 IU/L,ALT 1076 IU/Lと高度の上昇を認めたため,薬物性肝障害を疑いフルボキサミン,ロスバスタチンを中止した.しかし,入院3日目には,AST 545,ALT 1182とさらに上昇したため,トリクロルメチアジド,ロサルタンも中止したところ,肝機能障害の改善を認めた.肝生検では急性肝炎の回復期の像であり,DLSTでロサルタンが陽性を示し,中止後に肝障害の改善が見られたことより総合的にロサルタンによる薬物性肝障害と診断した.6年以上もの長期間ロサルタン内服後に薬物性肝障害を発症した例はまれであり,長期投与薬物も肝障害の原因であることが示唆された.
著者
松村 謙一郎 田島 平一郎 南野 毅 古賀 満明 前田 滋 矢野 右人
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.28, no.8, pp.1123-1127, 1987-08-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
17
被引用文献数
2

アマニタトキシン(キノコ毒)中毒による劇症肝炎の症例を報告する.45歳,男性,増強する黄疸を主訴として来院.入院時の血液生化学検査でGOT3,410IU/l, GPT 3,762IU/l,プロトロンビン時間150秒以上と著明な肝機能障害を認めた.経過中,肝性脳症II度発症したため,劇症肝炎の診断の下に治療を開始する.病歴,検査結果より典型的アマニタトキシンによる劇症肝炎と診断.血漿交換等を含む積極的治療をおこなった結果臨床症状は回復に向い,救命しえた.本邦においてアマニタトキシン中毒による劇症肝炎の報告はいまだなく,稀有な症例と考え報告する.
著者
須磨崎 亮 酒井 愛子 虫明 聡太郎 近藤 宏樹 乾 あやの 川田 潤一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-11, 2024-01-01 (Released:2024-01-10)
参考文献数
45

2022年に欧米で原因不明の小児急性肝炎が急増した.当初は流行中のアデノウイルス(AdV)陽性例が多いと注目されたが,メタゲノム解析により英米の流行期肝炎患者の80%以上で大量のアデノ随伴ウイルス2型(AAV2)が検出された.ヘルパーウイルスとなるAdVやHHV6の同時感染が多いこと,特定のHLA型が多いことも報告され,遺伝素因にAAV2感染が重なり発症する可能性がある.AAV9ベクターを用いる遺伝子治療により免疫介在性の急性肝障害を発症した例が多く,類似の病態と考えられる.また原因不明肝炎の一部にはSARS-CoV-2関連症例も含まれる.日本では1年弱で本症が162例届け出されたが,パンデミック以前と比べると減少傾向である.AAV2検出例も10%程度と少ないことから,欧米の流行とは異なる.従来から小児急性肝不全の約40%が原因不明であり,その一部にAAV2が関与していることが推測される.
著者
井上 学 道堯 浩二郎 高橋 和明 安倍 夏生 岡 清仁 布井 弘明 上田 晃久 島瀬 公一 日浅 陽一 堀池 典生 三代 俊治 恩地 森一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.47, no.10, pp.459-464, 2006 (Released:2007-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
12 11

症例は,54歳の女性.全身倦怠感と黄疸と肝機能異常(T.Bil 2.9mg/dl, AST 1143IU/l, ALT 1767IU/l, γ-GTP 158U/l)により急性肝炎と診断.入院後,安静のみで経過観察し,劇症化,遷延化することなく軽快退院した.海外渡航歴,薬剤服用歴はなく,A, B, C型肝炎ウイルスマーカー陰性,抗核抗体陰性.発症1カ月前にイノシシ肉を摂取していたため,E型肝炎ウイルス(HEV)マーカーを測定したところ,IgM型HEV抗体及びHEV-RNAが陽性であり,急性E型肝炎と診断した.HEV genotypeは3型であった.当初はイノシシ肉の摂食による感染が疑われたが,調理行為により感染した可能性も考えられた.海外渡航歴のない国内発症の急性E型肝炎としては,本例が四国からの初報告例となる.
著者
高橋 芳樹 鎌滝 哲也
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.288-296, 2001-06-25 (Released:2009-03-31)
参考文献数
22
被引用文献数
1
著者
道堯 浩二郎 平岡 淳 鶴田 美帆 相引 利彦 奥平 知成 山子 泰加 寺尾 美紗 岩﨑 竜一朗 壷内 栄治 渡辺 崇夫 吉田 理 阿部 雅則 二宮 朋之 日浅 陽一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.14-22, 2019-01-18 (Released:2019-01-23)
参考文献数
28

肝疾患におけるカルニチン,亜鉛低下例の頻度と他の肝代謝マーカーとの関連を明らかにすることを目的とした.慢性肝炎(CH)41例,肝硬変(LC)88例(肝細胞癌非合併群60例,合併群28例)を対象に,カルニチン,亜鉛,アンモニア,BTR(BCAA/Tyr),アルブミン(Alb)を測定し,低下例の頻度と互いの関連を検討した.カルニチン高度低下例はなく,軽度低下例はLCの23.9%にみられ,うち42.9%はアシルカルニチン/遊離カルニチン比>0.4での基準合致例であった.亜鉛高度低下例はCH 0%,LC 30.7%,軽度低下例はCH 31.7%,LC 40.9%にみられた.アシルカルニチンと亜鉛はアンモニア,BTR,BCAAと相関があったが,遊離カルニチンはこれらと相関はなかった.以上よりカルニチンと亜鉛は慢性肝疾患例の一部で低下し,両者の動態と肝代謝マーカーとの関連には差異がみられた.
著者
矢島 義昭 平沢 堯 佐伯 武頼
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.21, no.12, pp.1682-1689, 1980-12-25 (Released:2010-01-19)
参考文献数
22
被引用文献数
2 3

血中アンモニアが規則的な日内変動を示す48歳の男性が,血清アミノ酸分析及び尿素サイクル酵素定量より成人型シトルリン血症と診断された.1日蛋白量を50g以下に制限し,lactulose 30ml~40mlを1週間に及んで投与したが,アンモニアの改善はみられなかった.次に従来,肝性昏睡治療薬として用いられてきた4種のアミノ酸製剤の効果を比較検討した.glutamateとarginineの合剤とglutamateの単剤がほぼ同等のアンモニア下降作用を示したことより,glutamateが有効であることが分った.一方,citrateの経口投与もglutamateの静注とほぼ同等の効果を表わした.citrate投与2時間後の血清アミノ酸分析ではglutamateが増加し,citrullineが低下していた.以上の事実より,citrate→α-ketoglutarate→glutamate→glutamineの反応系が血中遊離アンモニアの処理に有効に関与していることが示唆された.
著者
原田 憲一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.59, no.9, pp.455-465, 2018-09-20 (Released:2018-09-27)
参考文献数
53
被引用文献数
4 7

急性肝炎様の臨床像を呈する自己免疫性肝炎(AIH)は,慢性肝炎AIHからの急性増悪の他,先行する肝障害を伴わない急性発症のAIH(急性肝炎期AIH)も存在する.特に急性肝炎期AIHは自己抗体,高γグロブリン血症等のAIHに特徴的な臨床像を欠いた症例も多く,未だ診断基準は策定されていない.急性肝炎期AIHの組織学的特徴として小葉中心性壊死(CN)がよく知られているが,同様な壊死は薬物性肝障害(DILI)でも見られる所見であり,両者の組織学的鑑別は通常困難である.本稿では,AIHに見られる種々の組織所見について概説し,急性肝炎期の組織所見,DILIとの組織学的異同について紹介する.