著者
高野 明
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.75-91, 2019
被引用文献数
2

<p> 本論考は,日本における臨床心理学の最新の研究動向と課題を概観するものである。まず,日本教育心理学会第60回総会において発表された研究(ポスター発表39件)とシンポジウム(16件)を概観し,次に,2017年7月から2018年6月の間に,『教育心理学研究』や関連する学術雑誌に掲載された77本の論文を対象に,臨床心理学分野における最新の研究動向について概観し,研究テーマ,研究対象,研究方法の観点から整理した。最後に,臨床心理学研究における課題と今後の可能性について議論した。</p>
著者
豊田 秀樹
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.119-127, 1997-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
42
被引用文献数
4 2
著者
やまだ ようこ
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.146-161, 2000-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
90
被引用文献数
9 8

この論文では, 最近のライフストーリー研究を展望し, 特に生涯発達心理学の観点から, 理論的・方法的問題を論じる。第1に, 「物語」は「2つ以上の出来事をむすびつけて筋立てる行為」と定義される。人生の物語とは, 意味づける行為であり, 人生経験の組織化である。第2に, 人生の物語は, 静態的構造ではなく, 物語の語り手と聴き手によって共同生成されるダイナミックなプロセスとしてとらえられる。特に, 物語の「語り直し」は, 人生に新しい意味を生成する行為として重要だと考えられる。私たちは, 過去の出来事を変えることはできないが, 物語を語り直すことによって, 過去の出来事を再構成することが可能になるからである。第3に, 「物語としての自己」の概念は, アイデンティティやジェネラティヴィティ (生成世代性) の概念と関連づけられる。人生の物語を語ることは, 現世代から, 次の世代や未来世代へのコミュニケーションの重要な道具となる。
著者
速水 敏彦
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
no.50, pp.176-186, 2011
被引用文献数
1

ここでは現代の若者の心性を表現する概念として我々が創出した「仮想的有能感」に関する約 10 年間の研究を概観した。まず, この概念に関わる重要な3つの問題について触れた。第1に仮想的有能感に自尊感情を組みあわせ, 4つの有能感タイプをつくることで, 本来の概念規定により近似した個人の選択を可能にした。第2に本来無意識的な仮想的有能感は他者軽視の傾向を測るACS-2 によっているが, その尺度に潜在的自尊感情が反映されていることを潜在連合テストを使った研究で実証した。第3に仮想的有能感が若者だけのものなのかについても横断的研究により明らかにしようとした。<br> 他に様々な領域で展開した研究をまとめた。仮想的有能感の高い人の特徴として, (1)日常的に負の感情を持ちやすいこと, (2)負の対人感情を形成しやすいこと, (3)受容的な養育を受けず, 勤勉性も発達していないこと, (4)競争的ではあるが, 努力志向でなく, 学習を嫌うこと, (5)問題行動を生じやすいこと, (6)就労への意欲が希薄なこと, (7)外国と比較すればアメリカや韓国では仮想的有能感も自尊感情も我が国より高いこと, などが示された。最後に問題点や今後の研究の必要性について討論された。
著者
内田 照久
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.51, pp.63-72, 2012 (Released:2013-01-16)
参考文献数
47
被引用文献数
4 4

教育心理学領域の測定・評価に係わる研究について, 2010~2011年の動向を概括した。従前から続く傾向として, 心理尺度の作成に係わる研究が数多く進められた。しかし本年は, 心理学的な構成概念や測定尺度の過度の氾濫や過剰供給に対する危機感から, 尺度の妥当性の検証の必要性を訴えると共に, 具体的な検証方法を提案するセミナーや発表が多くなされたのが特徴的であった。また近年, 心理測定や教育評価, テスト理論の研究領域は, その発展に伴って細分化が進んでいる。試験やテストに関連した教育評価の研究は, 教育心理学会からテスト学会などに発表の場が移動しつつあるように見受けられた。そこではテスト理論や統計手法の開発, IT技術の活用などのテスト技術に関する研究が精力的に進められる一方, 社会で実際に運用され, 受験者の処遇を左右するテストや試験の場面で発生している具体的な問題に向き合い, その解決を目的とした研究も行なわれている。これらの研究は, 教育心理学の従来からの課題でもある研究と教育実践の社会的な繋がりを考える上で, 大切な方向性の1つを示すものと考えられる。
著者
東 清和
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.156-164, 1997-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
72
被引用文献数
3 1

本論文は, かつては性差が認められるとされた視空間能力, 数学的能力, 言語能力および攻撃性に関するメタ分析, および性差が認められないとされた原因帰属, 被影響性, 非言語的コミュニケーション, 援助行動, 自尊感情, 不安, 主張性などのメタ分析の概観を試みたものである。加えて, 1970年代以降の日本における性差・性役割に関する学会誌論文での研究動向を紹介した。
著者
宮崎 清孝
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.112-124, 1980-03-30 (Released:2012-12-11)
参考文献数
81
被引用文献数
2 2
著者
登藤 直弥
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.119-130, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
70
被引用文献数
2

本稿ではまず,この1年間に『教育心理学研究』で発表された29編の論文を対象に,利用された研究法について概観して,『教育心理学研究』に掲載された研究の典型を導き出した。次に,これを踏まえたうえで,これらの研究で実施された測定・評価についても概観し,『教育心理学年報』の「測定・評価・研究法」部門の論文においてなされた提言がそれらに活かされているとは必ずしもいえないことを明らかにした。加えて,日本教育心理学会第60回総会において「測定・評価・研究法」部門の研究として発表されたものに関しても,測定・評価・研究法という観点から現状を概観し,その特徴について,『教育心理学研究』に掲載された論文との違いを明らかにした。最後に,これらの検証結果をふまえて,日本の教育心理学の研究実践に,今後,測定・評価・研究法に関する提言を取り入れていくための方策について,筆者なりの提言を行った。
著者
酒井 恵子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.63-74, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
45

パーソナリティ特性を,単純な「数直線」ではなく「多面体」として捉え,多面性・多様性を含んだものと考える立場から,2017年7月から2018年6月までの1年間に『教育心理学研究』に掲載された論文,および,日本教育心理学会第60回総会における発表やシンポジウムを中心に,いくつかのパーソナリティ研究を取り上げ,(a)特性の多面性を意識した研究,(b)尺度項目の多様性を意識した研究,(c)個人内の構造を意識した研究,に大別して論評した。さらに,「パーソナリティ特性にマイナス極が存在するか」という問題についても論じた。
著者
杉村智子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-14, 2018-03-30 (Released:2018-09-14)
参考文献数
47
被引用文献数
1 5

本稿では,2016年7月から2017年6月末までに,『教育心理学研究』『発達心理学研究』『心理学研究』,Japanese Psychological Researchに掲載された論文及び,日本教育心理学会第59回総会の発表のうち,乳幼児期から児童期を対象とした発達研究について概観した。これらの研究は,認知,社会性,自己,養育者と保育者,その他,の5領域に分類された。そのうち,雑誌掲載論文について,認知発達,社会性と自己の発達,養育者・保育者,の3領域に分けて解説したうえでコメントを加え,最後に,最近の教育界における動向をふまえた発達研究への示唆を述べた。
著者
野澤 祥子
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.1-15, 2019-03-30 (Released:2019-09-09)
参考文献数
60
被引用文献数
4

本稿では,2017年7月から2018年6月末までの1年間に『教育心理学研究』,『発達心理学研究』,『心理学研究』,Japanese Psychological Researchに掲載された論文,ならびに『日本教育心理学会第60回総会発表論文集』に掲載された論文のうち,乳幼児期と児童期を対象とした発達研究について整理・概観を行った。これらの研究を,研究の対象とする社会的文脈に着目し,「家庭の文脈に関わる研究」,「園・学校の文脈に関わる研究」,「『非定型』的文脈に関わる研究」,「子どもの発達に焦点化した研究」に分類した上で,そのそれぞれについて,研究の整理を行った。最後に,以上の整理に基づき,今後,取り組むべき研究の課題を提示した。
著者
湯澤 正通
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学年報 (ISSN:04529650)
巻号頁・発行日
vol.53, pp.166-179, 2014 (Released:2014-12-24)
参考文献数
76

1970年代以降,ピアジェの領域普遍的な発達理論が批判され,認知心理学研究の発展に伴い,問題解決における領域固有な知識の重要性が認識されるようになった。そのような中,概念変化は,領域固有な理論の発達に依存すると考えられるようになった。さらに,社会文化的理論の進展により,概念変化は,その概念が使用される文脈に参加できるようになったり,その文脈や対話の仕方が変化したりすることであるという見方も提案されている。そのような中,概念変化を目指した実験研究の多くは,個別の領域での発達や問題解決を丁寧に記述するというアプローチをとっている。他方で,近年,メタ認知,アーギュメントスキル,ワーキングメモリといった領域普遍的なスキルが,新しい概念を学び,生成するソースとして注目されている。中でもワーキングメモリは,発達障がいや学習遅滞と密接にかかわることが明らかになっており,膨大な実験的研究や脳科学的研究の蓄積のうえに立った教育への応用が期待されている。発達障がいを抱える子どもの発達特性を踏まえた学習への参加の支援が成功しつつある現在,ワーキングメモリ理論は,その次のステップである理解や習得への糸口としてその研究の進展が期待される。