著者
君塚 宏
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.90, no.12, pp.1031-1036, 2007-12-01

国境を越える人の出入管理のあり方は「国のセキュリティ」に直結するものであり,同一人性の確認(1:1対比照合)及び要注意人物の該当チェック(1:n逐次照合)という,出入国管理の肝ともいえるプロセスにおいて,バイオメトリクスという最新技術を投入することにより,精ちかつ迅速な処理が期待される.今後,我が国社会の安全・安心を確保しつつ適正な外国人の受入れを図るという重大な使命を果たすためにも,個人識別情報やIC旅券による厳格な審査,自動化ゲートによる円滑な審査など,バイオメトリクスの積極的な利活用が望まれる.
著者
阪田 史郎 山田 曉 飯塚 宏之 伊藤 哲也
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.10, pp.841-846, 2009-10-01
参考文献数
28
被引用文献数
7

アクセスポイント同士をメッシュ状に接続した無線マルチホップネットワークの一形態である,無線LANメッシュネットワークについては,多くの製品の出現とともに,IEEE802.11sにおける標準化が終了し,実用化が進展しつつある.通常のシングルホップの無線LANに比べて広い範囲で利用できるだけでなく,ネットワークの負荷分散,う回路の設定による信頼性向上などが可能となり,今後の普及が期待されている.本稿では,無線LANメッシュネットワークの最新技術について,標準仕様の概要,特徴的な製品の紹介とそれらの位置付けに関する動向を述べ,今後の進展を展望する.
著者
別所 正博 小林 真輔 越塚 登 坂村 健
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.249-255, 2009-04-01
被引用文献数
10

コンピュータと通信,特にその複合システムの進展に伴い,位置情報を利用したサービス,例えば観光ガイドや歩行者ナビゲーションといったサービスに,いつでもだれでもどこでもリアルタイムにアクセスできるようになってきた.このような位置情報を取得するための技術,すなわち位置認識技術は,ユビキタスコンピューティング環境実現の鍵として特に注目されている.位置認識技術として,屋外では主にGPSがかなり普及してきた.一方で屋内や地下街といった環境ではGPSの利用が難しいため,ユビキタスインフラを活用した方式が注目を集めている.本稿では,このようなユビキタスコンピューティングと位置認識技術の関係を概説する.ここでは,位置認識の要素技術,例えば赤外線や超音波を使った方式や,無線通信技術を活用した幾つかの方式を概説し,更にこれらを組み合わせて用いる複合的位置認識技術についても触れたい.そして,このような技術が可能にする応用を,幾つかの先進的な実例とともに紹介する.
著者
松井 伸之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.87, no.6, pp.471-475, 2004-06-01
参考文献数
18
被引用文献数
1

複素数の複素数ともいうべき四元数(quaternion)は一つの実数と三つの虚数部分を持つ多元数体系の一つである.三次元空間でのその回転演算記述性の良さによりコンピュータグラフィックスやロボティクスなどへの応用が近年では試みられ,その実際的応用が様々な分野に広まりつつある.本稿では,四元数を導入したニューラルネットワークを概説し,三次元アフィン変換やカラー画像の圧縮復元を例にその幾何学変換処理能力を実数値ニューラルネットワークと比較して,複素数も'びっくり'の性能威力を紹介する.
著者
武川 直樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.12, pp.1027-1033, 2010-12-01
被引用文献数
1

コミュニケーションを目的とするロボットや擬人化エージェントの表出・認識の機能は極めて限定され,人とのコミュニケーションは満足できるレベルになっていない.この問題を解決するためには,人同士のやり取りに学び,人とロボットが相互に共時的に振舞いができなければならない.この解決のため,認知心理学,社会心理学,言語心理学,工学を融合した新しいアプローチ,またそれに基づく研究事例が多く見られるようになってきた.本稿では,人のコミュニケーションを観察,分析してその仕組みを明らかにして,得られた知見をロボット・擬人化エージェントのデザインに適用する,という挑戦的な研究の背景にある理論,また分析のアプローチを紹介し,最後に,今後の研究の方向性について議論する.
著者
津田 宏治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.83, no.6, pp.460-466, 2000-06-25
参考文献数
13
被引用文献数
57

サポートベクターマシンとは, 近年注目を集めているパーセプトロン型のパターン認識手法の名前である.この手法は, PAC学習に基づく理論的背景を持ち, 同時に, 実験的に非常に優れた成績を挙げている.また, 学習は, 二次計画問題を解くことによって行うことができ, 局所解の問題も存在しない.サポートベクターマシンは, 本来線形識別器であるが, カーネル関数と組み合わせることによって, 学習の簡便さを失うことなく, 非線形に容易に拡張できる.本稿では, パターン認識研究における久しぶりの大型新人であるサポートベクターマシンについて, 応用の研究者を意識して, 計算機上での実現法を中心に述べる.また, 理論的背景についても, 簡潔に解説する.
著者
飛龍 志津子 力丸 裕 渡辺 好章
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.12, pp.1079-1084, 2006-12-01
被引用文献数
4

近年,生物が有する様々な生体アルゴリズムをテクノロジーヘ応用するバイオミメティックス(生態模擬技術)が提案されている.本研究は,次世代の音響センシング技術などへのブレークスルーを指向し,コウモリが超音波を利用して行う効率的な周囲環境情報収集システムを工学的に明らかにしていくことを目的としている.本稿では,生物ソナーと呼ばれる彼らのエコーロケーション能力を,実際の行動観測から得た結果を基に紹介する.
著者
高橋 努
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.27-32, 2012-01-01

近年, 電子ジャーナルのアクセス環境は急速に向上した. しかし, 大学の厳しい財政状況のなかで, 学術雑誌の価格高騰やビッグディールのもたらす問題が深刻化している. これらに立ち向かうため大学図書館はコンソーシアムの活動を積極的に進めてきた. 平成23(2011)年4月には大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)が設立され, 取組みの一層の強化が図られている. 電子ジャーナルの保存と恒久アクセスの保証に関わる問題のほか, オープンアクセスに関わる動向についても言及する.
著者
藤芳 衛
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.12, pp.1022-1026, 2009-12-01
被引用文献数
2

テストのユニバーサルデザインは,試験の開発当初から障害を有する受験者をはじめ,すべての受験者に公平に配慮して試験を設計する手法である.試験の設計者は,開発当初から国連の「障害者の権利に関する条約」に規定されている合理的な配慮を実現するため,障害を有する受験者に対してその障害の種類と程度とに応じて種々の受験特別措置を講じる必要がある.このため,大学入試センター試験と司法試験を例として,受験特別措置の概要とテストのユニバーサルデザインに関する最近の研究について紹介する.
著者
江田 英雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 : The Journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.96, no.9, pp.694-698, 2013-09

近赤外分光法Near Infrared Spectroscopy (NIRS)は,波長800nm付近の近赤外光を生体に照射して数cm離れた場所で光を計測し,生体のヘモグロビンに関連した値を計算するシステムである.脳研究ではイメージングの装置が広く用いられているが,NIRS開発は日本が世界をリードしてきた.今回NIRS装置をIEC国際規格に申請し,日本人がプロジェクトリーダーとなった.現在コミッテイドラフト(CD)の投票待ちである.NIRS装置の概要と,IEC申請の経緯と現状を報告する.
著者
菅原 一秀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.84, no.5, pp.337-340, 2001-05-01
参考文献数
5

視覚障害者が独力で印刷文書を読むことができるシステムを紹介する.従来のこのようなシステムは印刷された文章の音声への置換え機能を提供するだけなので,先頭から順に音声を聞くことしかできず,ユーザが読みたいところに素早くアクセスすることができなかった.この問題は見出しや段落など文書の論理的な構造を利用することにより解決できる.ユーザインタフェースとしては論理構造-この場合はツリー構造-を渡り歩くためのコマンドが必要となる.我々はこの方式を雑誌を読む課題に適用した.表紙による雑誌の判別や,目次構造の利用,ページ番号の取得,構造化された文書の管理などの機能も含め,雑誌からの総合的な情報取得のためのシステムを作り上げた.
著者
斎藤 正男 多氣 昌生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.82, no.6, pp.572-579, 1999-06-25
参考文献数
20
被引用文献数
3

電波の健康影響に対する関心が高まり, それにこたえるために多くの研究が行われている. 近年, 電波と生体がどのように結合するかを調べるドシメトリーという技術が進歩し, 精度の高い定量的な研究が行われるようになったが, 新しい研究成果を踏まえても, 熱と刺激の影響を考えればよいという30年前の結論に大幅な修正は必要ない. それでも健康影響への不安という社会問題の面での解決は難しい. 科学の問題としての取組みだけでなく, 生活環境の他のリスクとの比較評価を含めた取組みが必要になってきている.
著者
片山 友幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.276-280, 2009-04-01
被引用文献数
6

安心安全のための位置情報取得及び車や歩行者の経路案内など,GPS(Global Positioning System)を利用した携帯電話サービスが急速に普及している.このGPS信号は,複数の地球周回衛星から送信されており,地下街などの遮へい空間では利用できない.GPSの高度有効利用には受信可能エリアのシームレス化が不可欠であり,これを可能にする方法の一つとして提案されているリピータ方式による実用化検証実験を行ったので紹介する.
著者
三浦 麻子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.2, pp.137-141, 2008-02-01

インターネットというコミュニケーションメディアが誕生して30有余年が経過し,様々な点で対面コミュニケーションと比べた劣位性を指摘されながらも,多くの人々がネットを介したコミュニケーションを積極的に受け入れ,活用し,多くのメディア形態を進化させてきた.特に最近注目されているプログ,SNSなどでは,ネットコミュニティでの自己表現と他者との交流が盛んである.こうしたコミュニティで生じるポジティブ・ネガティブ両方の事象を採り上げ,対人コミュニケーション行動と心理との関係について,社会心理学の実証的研究を紹介しながら解説する.
著者
長谷 良裕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.83, no.9, pp.699-706, 2000-09-25
被引用文献数
12

高度約20kmの定点に滞空する大型の飛行船を無線基地局に使おうとする夢のアイデアが成層圏プラットホームである.最近の技術の進展により, その夢が現実に近づこうとしている.本稿では, その夢の成層圏プラットホームがどのように現実に近づいてきたかの経緯を述べ, 無線通信や放送に使った場合の具体的なアプリケーション, 日本の研究開発計画とその進ちょく状況, 世界の研究開発動向, 実用段階での周波数分配の動向, 開発に関する問題点等について解説する.
著者
西 師毅 小柳 理正 杉藤 芳雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.82, no.11, pp.1116-1120, 1999-11-25
参考文献数
8
被引用文献数
2

電気試験所の組織の変遷を概観し,その中で最大の変化というべき1948年の試,験所分割以後の電気試験所(1970年に電子技術総合研究所と改称)において開発され,実用化された技術の中から,磁電デバイス,電子ビーム露光装置,DSA技術,チャネルホットエレクトロン注入型不揮発性半導体メモリ,トランジスタ式電子計算機,文字認識における複合類似度法,画像処理用ソフトウェアパッケージSPIDERの7件を紹介する.
著者
相澤 学
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.154-158, 1993-02-25

東京都は,東京臨海部に情報化・国際化に対応する未来型の理想的な都市「東京テレポートタウン」を開発する計画を進めており,21世紀初頭には就業人口約11万人,居住人口約6万人のウォーターフロントの魅力あふれる都市を完成させる予定である.東京テレポートタウンにおいては,最先端の情報通信基盤が都市基盤の一環として先行的に整備されると共に,情報通信多様型の業務集積が形成され,未来型情報都市「東京テレポート」が建設される.情報通信基盤の整備が待ちづくりの重要な要素として一体化している典型的例である.
著者
比戸 将平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.98, no.1, pp.54-58, 2015-01

機械学習の応用とビッグデータ利活用が広まった結果として,大規模データ向けの機械学習を支える技術への注目が高まっている.そこでは単一計算機のメモリ上ではなく,並列分散環境での効率な学習が重要となる.本稿では分散環境における機械学習について,アルゴリズムだけでなくソフトウェアに焦点を当てて紹介する.特に後半では大規模リアルタイム機械学習の最新動向について詳しく述べる.