著者
安田 浩 小暮 拓世
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.91, no.3, pp.225-236, 2008-03-01
被引用文献数
1

コンテンツ流通に必須とされる技術にDRM(Digital Rights Management)がある.コンテンツクリエータの創作意欲,プロバイダの事業意欲,コンテンツ消費者の消費意欲,等を共に満足するコンテンツ流通環境の確立には,DRM技術は不可欠である.一方,コンテンツの不正コピー事例は後を絶たず,プロバイダ事業者はその都度対策を迫られDRM技術を強化してきた.本稿は,比較的初期にDRMを立ち上げたDVDを例に,実用DRM技術を解説し,次いで,急速に普及した携帯電話の標準DRMであるOMA DRMについて言及し,更に蓄積メディアのDRMをSDカードを例にCPRM技術内容を記述した.最近のDRM標準化活動の状況については,国際標準化活動の例としてMPEG-21を中心にIPMP技術を解説し,デファクト標準化活動の例では業界主導DRMとしてコーラルを取り上げ,そのポイントどなる技術を解説した.DRMは,いまだ発展途上の技術であり,またその特殊性(秘匿性)から,公開情報が少ない.本稿ではできるだけ重点技術内容を取り上げ,公開情報の範囲で平易に解説し,最後にDRMの現状課題と将来展望について触れる.
著者
山下 将嗣 中島 佐知子 大谷 知行 川瀬 晃道
出版者
社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.481-487, 2006-06-01 (Released:2011-06-27)

我々はテラヘルツ波の物質に対する透過特性を利用したテラヘルツ分光イメージングシステム,及びフェムト秒レーザ走査による物質からのテラヘルツ波放射を用いたレーザテラヘルツエミッション顕微鏡の開発を進めている.本稿では,これらのイメージングシステムの応用例として,薬物のテラヘルツ帯分光情報を用いた郵便物内の違法薬物識別技術,及びレーザテラヘルツエミッション顕微鏡によるLSI内部の故障箇所絞り込み技術への応用について紹介する.
著者
野田 進
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.11, pp.839-846, 2002-11-01
被引用文献数
3

新しい光ナノ構造として注目されているフォトニック結晶の開発とそれによる光制御の現状について紹介する.まず,光通信波長域で動作可能な三次元結晶が既に実現できており,光チップ実現に向け,その内部に様々な欠陥や発光体を導入する段階まできていることを示す.続いて,二次元結晶においても,スラブ構造を採用することにより,三次元的な光閉込めが可能となり,線状欠陥及び点欠陥の導入により,面出力型の超小型光アッド・ドロップデバイス等が実現可能なことを示す.最後に,フォトニック結晶のバンド端における光の定在波状態を半導体レーザの二次元共振器として用いることで,どのような大面積であっても,単一縦・横・偏光モードを持つ新しい面発光レーザの実現も可能であることを示す.
著者
伊藤 徳政
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.9, pp.732-736, 2009-09-01

地球環境変動観測ミッションGCOM(Global Change Observation Mission)は,宇宙から地球の環境変動を長期間にわたって,グローバルに観測することを目的としたプロジェクトである.GCOMは水循環変動観測衛星GCOM-W及び気候変動観測衛星GCOM-Cという二つの衛星を複数世代打ち上げて運用することで,太陽活動周期をカバーする10〜15年規模の長期継続観測を目指している.GCOM第1期の衛星GCOM-W1及びGCOM-C1は,それぞれ,高性能マイクロ波放射計2(AMSR2:Advanced Microwave Scanning Radiometer 2),多波長光学放射計(SGLI:Second-generation Global Imager)を搭載し,両者の併用により水循環変動・気候変動の解明に必要な幅広い地球物理量データを取得する.
著者
西野 有
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.87, no.11, pp.934-938, 2004-11-01

MEMS (Micro ElectroMechanical Systemの略)技術による高性能,高機能な高周波デバイスは,数年内の実用化を目指し,様々な障壁を乗り越えようとしている.今後は,可動部分の長寿命化や,可変機能回路の新構成などメリットが目に見える研究だけでなく,集積技術や実装技術など,実用化のための技術にも注目が集まる.特に,集積技術は回路の小型化を通じて低価格化へつながる重要な技術である.本稿では集積化の必要性と,解決のために必要な技術の例を紹介する.
著者
廣田 啓一 曽根原 登
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.88, no.10, pp.823-828, 2005-10-01
被引用文献数
8

近年, 個人によるコンテンツの不正利用として, 音楽や映画などのネット上での交換, 雑誌やコミック, アイドルの写真集などのインターネット上への無断公開など, 著作権を侵害する行為がカジュアル化し, 大きな問題となっている.本稿では, コンテンツ流通における不正利用防止技術の現状, 技術的な課題, 将来展望について解説する.
著者
名野 隆夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.10, pp.1042-1049, 1998-10-25

MOSデバイスのディープサブミクロン化が急速に進行する近年, 回路シミュレーション用デバイスモデルの精度への要求が高まっている.本稿では, 過去に世界公開されたデバイスモデルと特にBSIM3に焦点を当てた特徴を解説する.BSIM3はデバイスモデルとして高精度であるのみでなく, そのパラメータを用いてデバイスの物理現象の再現把握, デバイス構造の物理値を変更した場合の物理現象変化の予測が可能であり, これらに対して事例をもって解説する.更に三洋電機では全社的にBSIM3を活用しており, その取組み事例を紹介する.
著者
清原 聖子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.354-358, 2011-05-01

2009年,政権交代によって原口総務大臣が就任すると「日本版FCC」の設立がアジェンダ化された.そこで,本稿の目的は,これからの日本の情報通信政策の展開においてアメリカの連邦通信委員会(FCC:Federal Communications Commission)のような独立規制機関が必要なのかどうか検討する際の材料を提示することにある.本稿ではFCCとはどのような組織なのかその特徴を説明し,独立規制機関の政治的中立性の問題について考察し,通信・放送の規制機関を様々なアクター(政治的主体)が監視することができる体制の確保が重要である点を指摘している.
著者
鈴木 陽一 西村 竜一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 = The journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.392-396, 2010-05-01
参考文献数
13
被引用文献数
2

立体映像や高精細映像などの技術が実用的な段階へと進むに伴い,空間的な情報を正しく再現できる音響技術の必要性も高まっている.頭の中に音の広がりを感じるのではなく,実空間中の確かな位置や方向に音源を知覚させる技術,すなわち高精度聴覚ディスプレイは,立体音響や空間音響などと呼ばれ,古くから研究が行われてきた.そこで,人がどのようにして,左右たった二つの耳で受信した2チャネルの一次元信号から空間を知覚しているのかを解説するとともに,立体音響から始まるこれまでの臨場感音響研究のアプローチと,それに基づく聴覚ディスプレイ技術の発展について概観し,将来の動向を展望する.
著者
原田 康徳
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.87, no.8, pp.674-677, 2004-08-01
被引用文献数
3

コンピュータはプログラムで動いています.これまでの文字で作られたプログラムは難しかったですが,絵でプログラムを作ると格段に分かりやすくなります.ここで紹介するビスケットはプログラムを絵で表現して,実行した結果をアニメーションにします.動作は簡単な原理ですが,きちんとしたコンピュータらしさも残っています.子供だけでなく,コンピュータが怖いとか難しいと思っている大人の方も,どうぞ楽しんで下さい.
著者
榎並 和雅 岸野 文郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.93, no.5, pp.363-367, 2010-05-01
被引用文献数
4

超高精細大画面映像や立体画像をはじめ,サラウンド音声,五感通信など超臨場感に関する技術によって実現される超臨場感システムは,映画,放送などのエンターテイメントへの応用だけでなく,遠く離れた場所からでも同じ空間を共有し,互いにその場にいるような自然でリアルな対話や作業が可能になるため,遠隔会議,遠隔医療,テレビショッピングなど様々なところに適用できる可能性がある.本稿では,こうした超臨場感システムへの期待と応用分野,実現に必要な技術,普及促進のためのフォーラムの活動について紹介する.
著者
田中 圭介
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.90-96, 2009-02-01

特定領域研究「新世代の計算限界-その解明と打破-」(領域代表者:岩間一雄)の主な対象である計算理論における重要な応用分野として暗号理論がある.この暗号理論において,公開鍵暗号や署名などに対して,個人のプライバシーを対象とした匿名性と呼ばれる性質が考察されている.公開鍵暗号が匿名性を満たすとは,暗号文を見ても,それがどの受信者へのものであるか(だれの公開鍵で暗号化されたか)見分けがつかないときをいう.また,署名方式が匿名性を満たすとは,メッセージと署名のペアを見ても,それがどの署名者が作成したペアであるか見分けがつかないときをいう.ここでは,RSAベースの方式に対して,このような匿名性を得るために用いられる主要なアルゴリズムテクニックについて紹介する.
著者
榎本 忠儀
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.296-306, 1996-03-25
参考文献数
17
被引用文献数
14

マルチメディア機器の構築に必須なLSIで重要な性能指標に"信号処理性能"と"動作時消費電力"および"待機時消費電力"がある. 本稿では, まず, CMOSおよびGaAs集積回路の消費電力について解説し, 次に低消費電力化技術を詳しく述べる. 動作時消費電力を低減するにはこれを構成する各ファクタ(電源電圧, ゲート稼働率, 回路規模, クロックおよび動作周波数, 負荷容量, 貫通電流, 等)を削減すればよい. そのための方策, すなわち, アーキテクチャ, アルゴリズム, 回路, 等に関する技術の具体例を詳述する. また, 動作時特性を劣化せずに, 漏れ電流, 貫通電流を遮断して, 待機時消費電力を削減する方法についても検討する. なお, 低消費電力化の基本条件は信号処理性能を維持し, チップ面積を増やさないことである.
著者
今井 浩
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.79, no.9, pp.920-926, 1996-09-25
被引用文献数
5

アルゴリズム・計算量分野の成果として,多くの問題が本質的に解くことが難しいことが示されている.一方,本質的に解くのが難しいからこそ,実際に現れるそのような難しい問題をなんとか現実的時間内で良い精度で解くことが要求される.難しい問題を解く近似アルゴリズムの開発の世界では,最近種々の新しいアルゴリズム設計パラダイムの登場があった.本稿では,そのような近似アルゴリズム設計手法の代表的なものとして,線形計画法の主双対アプローチを近似アルゴリズム設計に拡張したもの,線形計画・半定値計画とランダム化を組み合わせたものの二つについて,集合と論理に関する難問を例題に解説する.
著者
村田 嘉利
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.80, no.8, pp.844-849, 1997-08-25
被引用文献数
6

電車の中でPCと携帯電話を使ってデータを送っている人を見かけるようになった. その背景には, PC等の小型・軽量化と相よって, 携帯電話等を使って安定にデータ伝送可能になったことが大きい. モバイルコンピューティングMC市場は, 今後大きく成長すると期待されており, 無線パケット等の新たな通信システムやスマートホン等が次々と提供されている. MCの利用により, いつでも・どこでも端末相互間/端末〜センター間でデータ通信が可能となり, 人々を時間的・場所的制約から解放する新たな利用形態が模索されている.
著者
藤尾 孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.728-734, 2006-08-01

画像メディアの感性化を目標としたハイビジョン(HDTV)開拓における創世期の裏話.苦労話の中の三つの話題を採り上げた.第1話:ハイビジョン(当時は高品位テレビ,世界へはHDTV)スタート初期.第2話:HDTV用ワイドCRT(30インチサイズ,メーカの協力)の開発.第3話:米国映画界の支援.この開拓には米国やヨーロッパ諸国の反対に遭ったと世間にけん伝されている.しかしハイビジョンの開発には,世界の多くの国々や組織のサポート・支援があったのである.1999年日本提案の方式が世界の統一標準規格に選ばれた.これは日本の官(郵政省),公(NHK),産(産業界)の協力のもと,放送をはじめ,広い画像産業への導入など,我が国の一貫した取組み,執念が勝ち取った成果にほかならない.
著者
古井 貞熙
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.422-426, 2012-05-01

1950年代以降,半世紀以上にわたって進歩を遂げてきた音声認識技術は,第1,第2,第3,第3.5世代に分けることができる.近年,種々の音声認識応用システムが実際に用いられるようになってきたが,その性能は人の能力に比べるとはるかに劣っており,人の能力に近づくには,第4世代といえるような大きなパラダイムシフトが必要である.そのためには,現在の音声認識技術で扱うことができない複数のレベルでの動的音声特徴の利用と,人が経験する多様かつ膨大な変化をカバーする音声コーパスに基づく,大規模かつ多様な音声言語知識の体系化を行う必要があると思われる.