著者
伊波 寛 石垣 敬子 小笠原 隆行 奥田 佳朗
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.9, no.4, pp.158-162, 1998-04-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

CPR was performed on a cardiac arrest victim who had received a kick to the side. We succeeded in reviving the victim after more than two-and-a-half hours of closed-chest cardiac massage (CCCM). One factor in success of CPR is initiation of CPR immediately after cardiac arrest. Other factors are early administration of oxygen and a young patient. It is thought that the reason the CPR took so long to succeed despite having been initiated immediately after arrest was because CCCM inside the ambulance proved to be ineffective. A CCCM machine (thumper) is essential for performance of in-ambulance CCCM. It is difficult to decide when to stop CPR in emergency situations where there is a lack of diagnostic equipment for vital signs.
著者
高橋 洋子 須崎 紳一郎 勝見 敦 原田 尚重 諸江 雄太 蕪木 友則 中澤 佳穂子
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.208-215, 2007-05-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
25
被引用文献数
1

消火器に含まれる消火薬剤による高カリウム血症が原因と思われる心停止の事例を経験した。症例は68歳の男性。統合失調症で他院入院中, 消火器を自ら口にくわえて噴射した。その直後より, 全身の発汗, 四肢の冷感が出現。ショック状態のため, 当院救命センターへ転院搬送となった。来院時, GCS E3V5M6で不穏状態で, 収縮期血圧60mmHg, 心拍数99/min, SpO2 99%であった。生化学検査で血清K濃度が10.3mEq/l, 心電図上でテント状T波を認めた。入室より38分後, 心肺停止状態となったが, 2時間以上にわたる心肺蘇生の後, CHDF等の集中治療を行い, 救命することができた。本症例で使用された消火器は, 主成分が炭酸カリウムであり, 内容物中のカリウムが体内に吸収され高カリウム血症となり, 心停止に至ったものと考えられた。一般に, 消火薬剤は低毒性と考えられているが, 致死的中毒を引き起こす危険性があることは広く認知されるべきである。
著者
橋本 亘 谷口 真一郎 柴田 隆一郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.363-366, 2013-06-15 (Released:2013-10-16)
参考文献数
8

急性大動脈解離(acute aortic dissection: AAD)に類似した症状を呈し,診断に苦慮した急性特発性脊髄硬膜外血腫(acute spontaneous spinal epidural hematoma: ASSEH)の1例を経験した。症例は49歳の男性。ゴルフプレー中に背部痛が出現し救急搬送された。搬入時は苦悶表情で心窩部痛と背部痛を認め,血圧は192/100mmHgと高値であった。搬入後,一過性に両下肢脱力を認めたが改善した。発症様式や症状から急性大動脈解離などの循環器疾患を疑い精査を進めた。しかし諸検査を行ったが確定診断は得られなかった。入院後も背部痛は続いており,一過性に両下肢脱力を認めていたことより磁気共鳴画像検査(magnetic resonance imaging: MRI)を行ったところ頸椎~胸椎レベルに脊髄硬膜外血腫を認め,ASSEHと診断した。神経症状が安定しており保存的加療を行い後遺症なく自宅退院となった。ASSEHの発生は稀であるが,急性期の診断や治療の遅れが後遺症を残す可能性がある疾患であり,救急鑑別疾患のひとつとして認識することが重要である。
著者
Anthony T. Tu
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.91-102, 1997-03-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
36
被引用文献数
1

化学兵器は第一次世界大戦中に誕生し盛んに使われたが,その後大規模にはあまり使われなかった。しかし最近その有用性が再認識され,この古い兵器が再び脚光を浴びるようになった。化学兵器は原料もたやすく手に入り,製造も簡単なため,貧乏国の核爆弾といわれる。オウム真理教のサリンテロ行為で,化学兵器は戦場のみならず,これからは公衆に対してテロリズムに使われる可能性がますます強くなった。本文は化学兵器の生体に対する毒作用と治療が目的であるが,限られた誌面ですべての化学兵器について述べることは不可能なので,神経ガスに重点を置き,他のガスの作用は比較的簡略に述べた。多くの種類の化学兵器があるが,実際に兵器として採用されている数は比較的少ない。アメリカ軍を例にとっても実際に化学兵器として採用され,貯蔵されているのはサリン,タブン,VX,マスタードガス,ルイサイトの5種類のみである。神経ガスは神経伝達に必要なアセチルコリンエステラーゼの作用を阻害する。それに対する薬はいろいろあるが,どの薬もすべての神経ガスに一様に効くわけではない。薬の効果は神経ガスによって異なる。オキシム系の薬(例えばPAM)とアトロピンとの併用は,単独で使うより治療効果が大とみなされている。ジアゼパムは痙攣を防ぐのに効果があり,三者併用はさらによいといわれている。他の毒ガス,例えばマスタードガス,ホスゲン等には特効薬はなく,対症治療が主な方法である。既存の毒ガスのみならず,新しい型の毒ガスにも注意し,その治療法についても検討すべきである。
著者
大谷 典生 浅野 直 望月 俊明 椎野 泰和 青木 光広 石松 伸一
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.12, pp.636-640, 2004-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

A case report of histamine (Scombrotoxin) poisoning is presented. Five to ninety minutes after eating cooked swordfish, 30 persons reported feverishness, diarrhea, palpitations, headache, nausea, dyspnea, generalized urticaria, angioedema, and shock. Of these, 13 persons were admitted to Saint Luke's International Hospital. The patients were given intravenous hydration, IV Hl-blocker, and subcutaneous epinephrine as needed. However, 4 patients required continuous administration of epinephrine intravenously for resolution of the anaphylactic shock. These patients required observation in our intensive care unit. On the following day, all the patients were well and ready for discharge from the hospital. There were no symptoms at the time of discharge. Quantitative determination of the plasma concentration of histamine at the time of admission revealed a value of 0.85-43.10ng/ml. Some pieces of the offending tuna were sent for analysis, and 670mg histamine per 100g of the fresh tuna and 750mg histamine per 100g of the cooked tuna were detected. Generally speaking, histamine poisoning is associated with only mild allergic symptoms. However, in this case, some people developed shock and required close observation. This experience suggests that histamine poisoning can be associated with an outbreak of anaphylactic shock and serves as a cautionary example for emergency medical staff.
著者
佐々木 庸郎 石田 順朗 小島 直樹 古谷 良輔 稲川 博司 岡田 保誠 森 啓
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.160-167, 2008-03-15 (Released:2009-07-19)
参考文献数
7
被引用文献数
1 1 1

症例は50歳の男性。視力障害,意識混濁により医療機関を受診した。当初心房細動,大脳基底核の両側対称性病変,視力障害からtop of the basilar syndromeを疑われ,脳血管造影を施行したが否定された。その後昏睡状態に陥り,CT,MRI上の両側対称性の被殻病変,重度の代謝性アシドーシスの存在から,メタノール中毒が疑われた。集中治療室へ入院し,気管挿管,血液浄化療法,エタノール投与,活性型葉酸投与などを行った。意識は回復したものの,ほぼ全盲であり見当識障害が残存した。その後妄想性障害のため精神病院へ転院となった。メタノール中毒において,治療の遅れは重篤な後遺障害につながる。メタノールの血中濃度は迅速に測定することができないため,臨床症状,血清浸透圧較差,CT及びMRIの特徴的な病変から疑い,迅速に治療を開始する必要がある。
著者
伊関 憲 朝長 鮎美 林田 昌子 清野 慶子 篠崎 克洋 羽田 俊裕 山崎 健太郎
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.775-780, 2012-11-15 (Released:2013-01-17)
参考文献数
13

症例は45歳の男性。頭にごみ袋を被りヘアゴムで頸部を留めて,浴室の洗い場で全裸の状態で座っているところを発見された。意識はなく心肺停止状態であり,心肺蘇生を行うも死亡確認となった。蘇生中,気管チューブよりピンクから赤色の泡沫痰が多量に吸引された。死後の胸部CTでは,両側肺野に著明な肺水腫,肺胞出血の所見があり,気管から両側主気管支内に液体貯留を認めた。現場検証で浴室内からエアダスターが発見された。司法解剖では,左右の肺に高度肺水腫と肺胞出血が認められた。左右ともに濃紫赤色,血液量が多く,水腫高度であった。両側眼瞼結膜に溢血点あり,口唇結膜,上下肢にチアノーゼを認めた。さらに心臓血より1.1-ジフルオロエタン(HFC-152a,以下DFE)が検出された。DFEはフロンガスの一種であり,冷媒や噴射剤などに用いられる。吸入により多幸感や気分の高揚感が得られるため乱用される場合がある。しかし,高濃度のDFEを吸入すると中枢神経系の抑制や催不整脈作用がある。死亡例も散見され,剖検例では両肺で著明な肺水腫と肺胞出血がみられた。今回の症例では,頭からビニール袋を被りDFEの吸引をしていたところ意識を消失し,低酸素,窒息状態となり死亡したものと思われる。本症例のような吸入法での死亡例が国内で散見され,インターネットでのフロンガス吸入に関する情報の規制などが必要である。
著者
白子 隆志 加藤 雅康 藤山 芳樹 田尻下 敏弘 沖 一匡 吉田 隆浩 小倉 真治
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.12, pp.897-903, 2014-12-15 (Released:2015-03-12)
参考文献数
17

介護老人保健施設(以下,老健施設)に入所中の83歳女性が心肺停止になり,勤務中の看護師らスタッフによる心肺蘇生が実施された。心肺蘇生中の看護師A(53歳,女性)が突然意識を消失したため,残りのスタッフが入所者の心肺蘇生を引き継ぐとともに看護師Aの心肺停止を確認し,救急隊の追加要請と看護師Aのcardiopulmonary resuscitation(CPR)を開始した。施設唯一のautomated external defibrillator(AED)は入所者に装着されたため,救急隊到着後に救急隊の半自動式除細動器を入所者に装着し,施設のAEDを看護師Aに装着した。「shock advised」の指示に従いスタッフが1回目のショックを看護師Aに実施した。先着救急隊により入所者を搬送後,追加要請された後着救急隊により看護師Aを救命救急センターに搬送した。救急外来にて看護師Aの心肺停止,VFを確認後2回目のショックを実施し,アドレナリン1mgを投与後に自己心拍が再開した。抗不整脈薬投与,人工呼吸管理,低体温療法を行い,その後implantable cardioverter defibrillator(ICD)を移植し,完全社会復帰した。看護師Aは既往歴に肥大型心筋症を罹患しており,今回の心肺停止は急激な心肺蘇生によって身体的・精神的負荷がかかったために,VFを発症したものと推測した。本症例は,日常の訓練とスタッフを含む適切な救命の連鎖が看護師Aの社会復帰につながったものと考えられた。院内の事後検証において老健施設のAEDの機種,設置場所,台数,予備パッドの管理体制の不備を指摘し,既設のAEDを廃棄後2台新設した。Japan Resuscitation Council(JRC)ガイドライン2010によると心肺蘇生中の救助者が心肺停止に陥ることは極めて稀であるが,救助者の安全についても十分考慮する必要がある。
著者
三宅 康史 有賀 徹 井上 健一郎 奥寺 敬 北原 孝雄 島崎 修次 鶴田 良介 前川 剛志 横田 裕行
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.309-321, 2008-06-15 (Released:2009-07-25)
参考文献数
9
被引用文献数
7 10

目的:日本救急医学会熱中症検討特別委員会は,全国の救命救急センター及び指導医指定施設に対し平成18年6-8月に診療した熱中症患者に関する調査を依頼し,66施設から収集された528症例につき分析を行った。結果:平均年齢は41.5歳(3-93歳),男女比413:113(不明2),日本神経救急学会の提唱する新分類でI° 62%,II° 18%,III° 20%であった。発生状況で,スポーツの若年男女(平均年齢25歳),肉体労働の中年男性(同47歳),日常生活中の高齢女性(同59歳)の 3 つのピークがあった。 7 月中旬と 8 月上旬に多く発生し,高い平均気温の時期と同期していた。 1 日の中では11時前後と15時頃に多かった。意識障害(Japan coma scale: JCS)の変化では現場0/JCS:43%(=I°),1/JCS:15%(=II°),2-300/JCS:42%(=III°)に対し,来院時では61%,12%,27%と応急処置による改善がみられた。外来診療のみで帰宅したのは285例(平均年齢38歳),入院は221例(同51歳)あり,収縮期血圧≤90mmHg,心拍数≥120/min,体温≥39°Cを示す症例は入院例で有意に多かった。入院例のALT平均値は240 IU/l(帰宅例は98 IU/l),DIC基準を満たすものは13例(5.9%)であった。入院例における最重症化は死亡例を除きほぼ入院当日に起こり,入院日数は重症度にかかわらず 2 日間が最も多かった。死亡例は13例(全症例の2.5%)あり,III° 生存例との比較では,深昏睡,収縮期血圧≤90mmHg,心拍数≥120/min,体温≥40°C,pH<7.35の症例数に有意差がみられた。日常生活,とくに屋内発症は屋外発症に比べ高齢かつ重症例が多く,既往歴に精神疾患,高血圧,糖尿病などを認め,死亡 8 例は全死亡の62%を占めた。考察:予後不良例では昏睡,ショック,高体温,代謝性アシドーシスが初期から存在し,多臓器不全で死亡する。高齢者,既往疾患のある場合には,日常から周囲の見守りが必要である。後遺症は中枢神経障害が主体である。重症化の回避は医療経済上も有利である。結語:熱中症は予防と早い認識が最も重要である。
著者
青木 芳朗
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.121-131, 1999-03-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
13

原子力発電所の事故では,放射線障害を引き起こすような人身事故の発生はきわめて稀である。むしろ,放射線発生装置の取り扱い不注意による人身事故が多発している。わが国でも,非破壊検査用のイリジウム線源による被曝事故,X線解析装置の取り扱いミスによる放射線熱傷等が報告されている。外部被曝患者を治療する際には,術者は特別な注意を必要としない。しかし,放射性物質による汚染患者の取り扱いには,術者が二次汚染しないように十分な注意が必要である。汚染患者を治療するときには,(1)鉛エプロンなどで遮蔽,(2)ピンセットなどを用いて距離を確保する,(3)治療時間を短くする,(4)素手で患部を触れない,などの放射線防護の基本を守ることが必要である。放射線による骨髄障害は,成分輸血,rhG-CSFなどのサイトカインやOK-432,アンサーなどの放射線防護剤によって治療可能である。しかし,消化管障害や中枢神経障害には治療法がなく,対症療法にならざるを得ない。放射性物質による内部汚染患者の治療には,汚染した核種を体内より除去するキレート剤(239Puに対してはDTPA, 137Csに対してはプルシアンブルー,131Iに対してはヨウ素剤など)が用いられる。生命が危険な状態の放射能汚染患者の治療では,救命措置が優先され,除染はバイタルサインが安定してから行っても遅くはない。
著者
箕輪 良行 柏井 昭良 井上 幸万
出版者
Japanese Association for Acute Medicine
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.9, pp.444-450, 2000
被引用文献数
1

目的と背景:自動二輪車と自転車の乗用者ヘルメット着用は,頭部外傷を減らし死亡率を下げると実証されている。大宮市は人口44万人で交通の要地にある首都圏の都市である。約25年間にわたり児童がヘルメットを着用して通学している小学校がある。ヘルメット着用の義務化が交通事故およびその死亡を減らすかを検討するのが本研究の目的である。方法:遡及的なケース・コントロール法で検討した。市内36の小学校の生徒(延べ約20万人)を対象母集団とした。89~95年度に学校管理内外に発生した学童の交通事故およびその死亡について調べた。年間交通事故件数が10件以上の主要な国道および県道から1km以内にすべての小学校が存在している。ヘルメット全員着用を指導している4校と,91年前後に着用を自由化(中止)した4校をケース群とした。これ以外の28校をコントロール群とした。着用を自由化した前後で期間を分けて,交通事故件数,死亡者数を比較検討した。結果:89~91年度(前期)から92~95年度(後期)で36校の生徒1,000人当たりの年間交通事故件数(事故率)は1.0から1.4に増加した(p<0.05)。ヘルメットの全員着用を自由化した4校(自由化群)の事故率は前期0.4から後期1.6に有意に増加した(p<0.01)。全員着用を継続した4校(全員着用群)の事故率は,前期1.3から後期0.4へ減る傾向がみられた。ケース群の全員着用群と自由化群のうち前期の部分を合わせたものの事故率は0.7で,コントロール群と自由化群の後期を合わせたものの事故率1.3に比して低かった(p<0.05)。36校全体の死亡数は前期0人から後期3人へ増加した。全員着用群では期間中に死亡がなかった。結語:交通の要地である都市で実施されてきた小学校児童のヘルメット着用は,交通事故および死亡を減らしたと示唆された。
著者
牛田 美鈴 小早川 義貴 新納 教男 越崎 雅行 山森 祐治 佐々木 晃 松原 康博
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.7, pp.361-366, 2009-07-15 (Released:2009-09-04)
参考文献数
4
被引用文献数
2 1

56歳の男性が卓球中に突然心肺停止となりバイスタンダーCPR(cardiopulmonary resuscitation)を施行され,救急要請された。救急隊到着時automated external defibrillator(AED)の波形にてventricular fibrillation(VF)と思われたが除細動適応外と判断された。 4 回目の解析で除細動適応と判定されて除細動が施行され,自己心拍が再開した。入院後順調に経過し後遺症なく社会復帰に至った。冠動脈造影にて右冠動脈に99%狭窄を認めVFの原因と思われた。各社のAED解析ソフトはAHA(American Heart Association),AAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentations)の基準を満たすように作成されているが,いずれも感度は100%ではない。AEDの特異度を高くするためには感度がある程度犠牲となることはやむを得ず,除細動適応波形であるにもかかわらずAED解析の結果適応外と判断される症例が存在することをメディカルコントロール協議会を通じて救急隊員に周知する必要がある。その際,ショック不適応と判断されても絶え間ない胸骨圧迫を行い,解析を繰り返すことが重要であることを強調すべきである。
著者
大嶋 清宏 萩原 周一 青木 誠 村田 将人 金子 稔 中村 卓郎 古川 和美
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.6, pp.345-350, 2013-06-15 (Released:2013-10-16)
参考文献数
14

症例は84歳の女性。認知症のため施設入所中である。某月某日朝,意識障害と40℃の発熱のため近医へ救急搬送された。動脈血ガス分析で低酸素血症と代謝性アルカローシスを認め,気管挿管され当院へ搬送された。来院後の血液検査で高カルシウム血症(13.8mg/dl)あり,胸部CT検査では左下葉に気管支透亮像を伴う浸潤影を認めた。頭部CT検査では明らかな異常所見はなかった。高カルシウム血症により意識障害を呈し誤嚥性肺炎を併発したと考え,入院の上,全身管理を開始した。呼吸に関しては人工呼吸器管理に加え,誤嚥性肺炎に対する抗菌化学療法を行った。高カルシウム血症の原因について精査したが,副甲状腺機能亢進症および悪性腫瘍は否定的であった。長期にわたり乳酸カルシウムおよび酸化マグネシウムが投与されており,これらによりミルクアルカリ症候群に陥り,その結果として高カルシウム血症性クリーゼを来したと考えられた。これら薬剤の投与を中止するとともにカルシトニンおよびビスホスホネートの投与を開始した。その後,徐々に血清カルシウム値は正常化し,それに伴い意識状態も改善した。第5病日には抜管し人工呼吸器から離脱でき,第6病日に紹介元の病院へ転院となった。ミルクアルカリ症候群は,牛乳や炭酸カルシウムのようなカルシウムと弱アルカリ性の吸収性制酸薬の過剰な経口摂取により発症するとされ,以前は消化性潰瘍治療時に認められていたが,その治療の変遷とともに激減した。しかし近年,骨粗鬆症の管理および予防に炭酸カルシウムが頻用されるようになり,再び報告されるようになってきている。とくに高齢者では,上記のような目的で長期間にカルシウム製剤を処方されている例が多く,かつ慢性の便秘に対して弱アルカリであるマグネシウム含有緩下剤を処方されている例も多い。高齢者の高カルシウム血症の際には本症候群の可能性も検討すべきと考える。
著者
中尾 彰太 渡部 広明 松岡 哲也
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.365-371, 2010-07-15 (Released:2010-09-20)
参考文献数
14

高マグネシウム(Mg)血症は,その多くが医原性とされ,Mg製剤投与で起こる比較的稀な病態である。我々は,便秘症に対して処方された酸化マグネシウム(MgO)の長期内服により,重症高Mg血症を来した3例を経験したので報告する。3例とも当院来院時には血清Mg濃度が15mg/dlを超えており,血圧低下や意識障害を来していた。全例グルコン酸カルシウムを投与するとともに,1例は持続的血液透析(continuous hemodialysis; CHD)を,1例は血液透析(hemodialysis; HD)を施行して治療したが,最終的に1例は救命できなかった。従来,MgOのように1回投与当りのMg含有量が少ないMg製剤による重症高Mg血症のリスクは高くないとされてきたが,本症例のような長期投与は,重症高Mg血症の危険因子となり得るため注意が必要である。また高Mg血症の症状は非特異的であるため,積極的に疑わなければ早期診断が困難であり,しかも診断と治療が遅れれば致死的となり得る。このため,便秘症に対してMg製剤を長期間処方する際には,高Mg血症発症の可能性を想定し,必要に応じて血清Mg濃度の測定を施行することも含めた経過観察を行うべきである。
著者
岩崎 泰昌 奈女良 昭 宇根 一暢 太田 浩平 木田 佳子 廣橋 伸之 谷川 攻一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.797-803, 2014-10-15 (Released:2015-03-12)
参考文献数
12

室内など閉鎖空間での火災による傷病者は,熱傷の他に一酸化炭素中毒(CO)を合併することが多いが,同時に化学繊維などの燃焼で発生したシアン化水素の吸入によりシアン中毒を生じることがある。室内火災の現場から救出されCO中毒にシアン中毒を合併した1例を経験したので報告する。症例は18歳の男性。ビル内にある飲食店の一室で火災に巻き込まれて,消防により倒れているところを救助され,火災発生から約1時間後に当院救命救急センターへ搬送された。来院時,意識はGlasgow coma scale score 3,顔面にII度熱傷 7%,両手にIII度熱傷 5%を受傷しており,気道内に大量の煤を伴う気道熱傷を認めた。血中乳酸値は13.5mmol/Lで高度の乳酸アシドーシスを認め,carboxyhemoglobin(COHb)濃度は33.8%,来院から1時間後の血中シアン濃度は,4.3µg/mLであった。乳酸値は来院後12時間で正常化,100%酸素換気下でCOHb濃度は来院3時間後に5%以下,シアン濃度は来院4.5時間後に0.3µg/mLにそれぞれ低下したが,意識の回復は認めなかった。来院時の頭部CTでは,軽度の脳浮腫と皮髄境界の不鮮明化を呈し,第3病日には明らかな皮髄境界の消失と高度の脳浮腫が認められ,来院から6日後に低酸素脳症で死亡した。来院1時間後の血中シアン濃度は,致死レベルを越えていたことから,COHb濃度の上昇による酸素運搬障害に加えて,シアン中毒による脳細胞の細胞内窒息により,来院時からすでに高度の低酸素脳症が生じたものと考えられた。本症例では,シアン中毒の解毒薬であるヒドロキソコバラミンの投与はできなかったが,室内などの閉鎖空間での火災による傷病者に対しては,ヒドロキソコバラミンを早期に投与する必要性があると考えられた。
著者
小林 誠人 甲斐 達朗 中山 伸一 小澤 修一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.18, no.9, pp.652-658, 2007-09-15 (Released:2009-02-27)
参考文献数
7
被引用文献数
2 1

JR福知山線列車脱線事故における初動期の現場医療活動について報告し, 災害医療の観点から検証する。事故概要 : 2005年4月25日9時18分JR福知山線で列車脱線事故が発生した。死者107名, 負傷者549名 (重症139名) の多数傷病者発生事案であった。現場活動 : 我々は事故発生から約40分後の10時01分に現場到着した。先着医療チームとして2次トリアージと応急救護所における緊急処置に従事した。また医療チームが順次現着した後は医療チームのcommanderを担当し, 現場医療活動の統括にあたった。検証 : ドクターカーシステムが整備, 認知されており発災早期に医療チームの現場派遣が可能であった。また医療チームは統制がとられ適切にトリアージ, 現場治療がなされたと評価される。その結果, 科学的に証明することは種々の理由により困難ではあるが, preventable deathが回避できたと推測している。しかし, 初動期において各機関は十分な情報収集と共有化が行えなかった。その結果, 詳細な事故状況, 通信手段, 患者搬出の動線, 搬送手段 (救急車, ヘリなど) の状況, 搬送医療機関の選定, 医療チームの要請状況などの把握, 整備, 確立に時間を要した。今後は現場指揮本部を通じて消防, 警察と早期から十分に情報共有を行い, トリアージ, 処置, 搬送の一連の連鎖が途切れることなく行われることが期待される。まとめ : 災害医療は日常業務の延長にあり, 本事案で明らかとなった課題を検証し, 本邦における災害医療システムの構築, 整備, 啓蒙が望まれる。
著者
臼元 洋介 一二三 亨 霧生 信明 井上 潤一 加藤 宏 本間 正人 乾 昭文
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.174-179, 2008-03-15 (Released:2009-07-19)
参考文献数
9

電撃傷は生体内に電気が通電することによって発生する損傷を総称しており,雷撃傷も同様に扱われることがある。しかしながら,雷撃傷は受傷時の状況,臨床症状,予後などにおいて,電撃傷とは異なる特徴をもっている。今回我々は,登山中同時に落雷にあい,当院へ救急搬送された雷撃傷の 2 例を経験した。66歳の男性と52歳の女性が大木の下で雨宿りをしている最中に落雷にあった。男性は心肺停止(cardio pulmonary arrest; CPA)状態で搬送され蘇生せずに死亡,女性は第 7 病日に後遺症なく独歩退院した。 2 例とも搬送時に,雷撃傷に特徴的である電紋を認めた。電紋は,体の表面に沿って火花放電(沿面放電)が起きたときに生じる熱傷であるが,電気学的な観点からこの放電は樹枝状に伸展することがわかっている。また電紋の枝の広がる方向を観察することにより,電流の流れた方向が推測できる。今回経験した 2 症例をもとに,生存者の問診から得た情報と電紋の観察から,電流の流れと転帰について考察した。CPA症例では,側撃雷といわれる現象がその転帰に大きく関与していたと考えられ,従来の直撃雷のみではなく,側撃雷についてその啓蒙的意義をふまえて報告する。
著者
服部 憲幸 森田 泰正 加藤 真優 志鎌 伸昭 石尾 直樹 久保田 暁彦
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.804-810, 2010-09-15 (Released:2010-11-09)
参考文献数
11

2009年に世界規模で流行した新型インフルエンザA/H1N1に劇症型心筋炎を合併した症例を,経皮的心肺補助装置(PCPS: percutaneous cardiopulmonary support)による循環補助を含む集中治療にて救命した。症例は24歳,女性。2009年11月,近医でインフルエンザA型と診断され,オセルタミビルの投与を受けた。2日後には解熱したが発症5日目に頻回の嘔吐と下痢が出現,翌日当院へ救急搬送された。心電図上II,III,aVF,V3-6の各誘導でST上昇を認め,クレアチンキナーゼ,トロポニンTも上昇していた。心臓超音波検査でも壁運動が全体的に著しく低下しており,心筋炎と診断した。当院受診時にはインフルエンザA型,B型ともに陰性であった。ICUにて大動脈内バルーンパンピング(IABP: intra-aortic balloon pumping),カテコラミンによるサポート下に全身管理を行い,合併した急性腎不全に対しては持続的血液濾過透析(CHDF: continuous hemodiafiltration)を行った。来院時にはインフルエンザ抗原が陰性であったことからオセルタミビルの追加投与は行わなかった。一般的なウイルス感染も想定して通常量のγグロブリン(5g/day×3日間)を投与した。しかし翌朝心肺停止となりPCPSを導入した。PCPS導入直後の左室駆出率は11.0%であった。第4病日にPCPSの回路交換を要したが,心機能は次第に回復し,第7病日にPCPSおよびIABPを離脱した。第8病日にはCHDFからも離脱した。気道出血および左無気肺のため長期の人工呼吸管理を要したが,第15病日に抜管,第17病日にICUを退室し,第33病日に神経学的後遺症なく独歩退院した。インフルエンザ心筋炎は決して稀な病態ではなく,新型インフルエンザにおいても本邦死亡例の1割前後は心筋炎が関与していると思われる。本症例も院内で心肺停止に至ったが,迅速にPCPSを導入し救命できた。支持療法の他は特殊な治療は必要とせず,時期を逸さずに強力な循環補助であるPCPSを導入できたことが救命につながったと考えられた。
著者
落合 香苗 齋藤 豊 種田 益造 加藤 啓一
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.3, pp.125-132, 2011-03-15 (Released:2011-06-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

automated external defibrillator(AED)の普及に伴い,医療機関内で医師がAEDを操作する機会も増加している。我々は医師がショック適応と認識した心電図波形に対してAEDがショック不要と判断した2症例につき事後にデータを検証した。事例1:78歳,男性。前立腺腫瘍精査目的に入院し,病棟で心肺停止となりAEDを用いた心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation; CPR)が実施された。AEDモニター画面で医師が心室性頻拍(ventricular tachycardia; VT)と認識した心電図波形に対し,AEDはショック不要と判断した。事後検証にてこのVTは心拍数が少ないためショック適応外と判断されたことが判明した。事例2:56歳,女性。骨髄腫の化学療法入院中に心肺停止となりAEDを用いたCPRが実施された。AEDモニター上で医師はVTを認識したが,AEDはショック不要と判断した。事後検証にてこのVTはAEDの心電図解析中または充電中に振幅が減衰したためショック適応外と判断されたことが判明した。AEDは AHA(American Heart Association)とAAMI(Association for the Advancement of Medical Instrumentation)の勧告に基づいて,一般市民による誤ったショック実行を避けるため,感度より特異度を重視した設計となっている。医師はAEDの機能や性能限界を認識するとともにAEDの機種特性について精通し,AEDを使用したCPR中でも手動での除細動に切り替える必要性を常に考慮すべきである。