著者
田淵 創
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.123-127, 1999-06-25
著者
門田 昌子 寺崎 正治
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.67-74, 2005

本研究の目的は,体験抽出法を用いて実際の対人相互作用を測定し,パーソナリティと実際の対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルとの関連,パーソナリティが,対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルを媒介して,主観的幸福感に及ぼす影響について明らかにすることであった.また,使用されたソーシャル・スキルと対人相互作用の質との関連について検証した.さらに,質問紙法を用いてソーシャル・スキルを測定し,パーソナリティとソーシャル・スキルおよび主観的幸福感との関連について検討した.分析の結果,パーソナリティと実際の対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルとの間には関連が見られず,パーソナリティが対人相互作用において使用されたソーシャル・スキルを媒介して,主観的幸福感に及ぼす影響については明らかにされなかった.一方,質問紙を用いた分析では,外向者ほど,ソーシャル・スキルが高く,そのことが主観的幸福感の高さをもたらしていることが示された.対人相互作用に関する分析において,有意な結果が得られなかった理由として,分析対象者数の少なさが考えられた.よって,本研究結果から,実際の対人相互作用におけるソーシャル・スキルが,パーソナリティと主観的幸福感との関連を媒介していないと結論付けるのは尚早であると思われた.対人相互作用におけるソーシャル・スキルの使用と対人相互作用の質との関連については,反応性スキルを使用したと認知している人ほど,質を高く評価し,主張性スキルを使用したと認知している人ほど,質を低く評価することが示された.ソーシャル・スキルの中には,対人相互作用の質を高めるものや低めるものが存在しているのではないかと推察され,今後より多面的にソーシャル・スキルを捉える必要があるだろうと思われた.
著者
古川(笠井) 恵美 内藤 孝子 松嶋 紀子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.47-58, 2009

発達障害のある高校生をもつ保護者を支援する方策を考える資料とするために,保護者が心配していることを調査票により調査した.全国LD親の会の高校生相当の子どもを持つ会員527人を対象として,315人(59.8%)から回答を得た.彼らの子どもたちは一人で複数の診断名または判定名を持ち,学習障害(LD)が128人,注意欠陥多動性障害(ADHD)が84人,広汎性発達障害(PDD)が126人,知的障害(MR)が72人であった.通常の高校在籍者199人の障害の重複状況はLD単独が46人,LD・ADHDの重複が24人,LD・PDDの重複が13人,LD・MRの重複が4人,LD・ADHD・PDDの重複が6人,LD・ADHD・MRの重複が3人,LD・PDD・MRの重複が1人であり,199人中97人(48.7%)がLDを含む.また,ADHD単独は12人,ADHD・PDDの重複が4人,ADHD・MRの重複が2人,PDD単独が67人,PDD・MRの重複が5人,MR単独は12人であり,LDを含まない者が102人であった.なお,通常の高校においてMRを含む者は26人であった.多くの保護者は,状況判断が悪い,話すことに困難がある,自分の気持の表現が下手,不器用である,暗黙のルールがわからない等を心配していた,これらは人間関係がうまく築けない原因と考えられた.LDと他の障害が重複する場合は,LD単独の心配より他の障害の心配事が強く現れた.LDを含まない障害の重複は少数であった.ADHDは不注意,注意集中の困難が多く,PDDは上記の他,他人との付き合い方がわからないという心配があった.MRは上記の他,金銭の管理ができないという心配があった.学校側との連携は担任を中心に行われており,養護教諭の関与についてはわからないとするものが多く,保護者は養護教諭との関係性が薄い傾向にあることが推察された.発達障害のある生徒に関わる教員は,こどもや保護者とよく接触をして,一人ひとりの子どものタイプや特性を理解し,その特性に合わせた学習指導や生活支援が必要である.
著者
中尾 竜二
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.359-368, 2019

本研究は,役割を付与された地域住民ならびに民生委員を対象に認知症の疑われる高齢者を発見した場合の相談先の意向を明らかにすることを目的とした.調査対象者は A 市,B 市,C町,D市の人口・高齢化率の異なる4市町村の地区社会福祉協議会(支部社会福祉協議会),認知症キャラバンメイト,小地域ケア会議に所属する地域住民2,503名とした.調査内容は,回答者の属性,認知症の疑われる高齢者を発見した場合の相談先の意向などで構成した.相談先の意向の遠近構造は,クラスター分析を用いて類型化し,コンボイモデルを用いて模式化した.その結果,役割を付与された地域住民ならびに民生委員ともに3つのクラスターが抽出された.役割を付与された地域住民は,「民生委員」を相談先とする意向が高かった.また,民生委員は「地域包括支援センター」,「認知症が疑われる高齢者の同居家族」,「認知症が疑われる高齢者の別居家族」へ相談する比率が有意に高かった.本研究結果より,地域において潜在する認知症が疑われる高齢者を早期に発見するため,援助要請する重要な存在としての地域コミュニティ(地域で一定の役割を付与されている住民と民生委員)による認知症の早期発見・早期受診を可能とする受診・受療連携システムの構築のためには,それぞれの役割を明確にし分担していくことも重要であると考えられた.今後は地域包括ケアシステムをふまえた受診・受療における両者の相談先の順序性を明らかにすることが課題である.
著者
竹田 恵子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.45-55, 2010
被引用文献数
1

高齢者の健康支援に対する看護実践は,幅広い年齢層の多様な健康状態を対象に,多様な場で展開されるものである.そこで本稿では,高齢者が "人生の最終章を生きる人々である"という高齢者の最大の特徴をふまえ,高齢者への看護について論述した.まず,老年看護実践の特徴について概観した後,高齢者の健康の捉え方と老いることの意味について確認した.高齢者の健康は,日常生活機能の自立をもって評価される包括的な概念であること,社会文化的背景に影響され,その人の価値や信念と深くかかわる概念であるスピリチュアルな側面の健康も重要な視点であることが示された.また,老年期は「豊かな実りの時期」であり,高齢者が「統合と絶望」という発達課題に向き合うことを通して自己の存在意義を確認し,それを次世代へと繋いでいく人々であるという点に老いることの意味を確認した.以上の内容をふまえて,人生の最終章を生きる高齢者への健康生活支援として,「人生の統合」への支援に注目した看護,「スピリチュアリティ」に注目した看護,「死の準備教育」に注目した看護について概観した.これらの看護支援に共通するのは,一人の大切な人として高齢者に出会い,その人に関心を寄せ,その人のもてる力を信じ,日常生活を整えること,良き話の聴き手となることであった.また,高齢者と看護職が関わりあいを通して学び合い成長し合うという性質を持つことであった.
著者
"鈴井 江三子"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.385-392, 2006
被引用文献数
2

"本研究では,戦後の医療制度の再編が行われた1945(昭和20)年から病院出産が成立した1974(昭和49)年までの約30年間を中心に,医療制度や医療政策および母子保健政策関連資料等を基に,出産の直接介助者が変更した要因を明らかにした. その結果,出産介助者が変更した要因は主に3つがあげられた.1つめは,総助産婦数の減少であった.これは開業助産婦数の減少と病院勤務助産婦数の抑制であり,なかでも開業助産婦数の減少は2回大きく激減し,1回目は1962(昭和37)年の急激な減少であった.この時期は国民皆保険と医療金融公庫により私設産婦人科病院の拡大が図られた時期であった.また嘱託医拒否問題も開業助産婦の運営維持に深刻な影響を与えた.2回目は1966(昭和41)年であり,この年は丙午の影響を受けて出生数が462,026人減少したためであった.2つめは,母子保健法が契機となった.同法により施設出産が奨励され,医師による定期的な妊婦健診が義務化された.また同法を受けて母子保健管理の徹底が強調された.さらに母子管理委員会により出産の異常性が強調され,出産は医師の常在する施設で行うことが教示された.3つめは,産婦人科医の増加と産婦人科病院の拡大であった.これらに関する諸政策がほぼ同時期に重複することで,出産介助者の変更は達成したといえる."
著者
鈴井 江三子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.237-248, 1997

日本では母体保護法のもとに, 出生数の約半数近くの人工妊娠中絶があり, その多くは既婚女性だ.妊娠を中断した女性は, その後, 悲嘆や罪悪感または空虚な気持を感じるとの報告がある.残念なことにそういった女性に対しての, こころのケアは全くと言っていいほどなされていない.その上日本では今でも避妊の方法はコンドームと荻野式が主流である.第二次世界大戦後に, 画期的に紹介された避妊100%の経口避妊薬は, 少数のカップルにしか使用されていない.この避妊方法のあり方について検討をするとともに, 人工妊娠中絶を受けた女性に対して, 専門家からの継続的なカウンセリングが必要である.
著者
佐藤 隆也
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.259-268, 2018

知識基盤社会に求められる汎用性の高い資質・能力を育成するために,授業改善が求められている. 従来の講話中心の授業において,学習者は学びに対して受動的になりがちで,思考力,判断力,表現 力等を育成するには,限界や弊害がある.資質・能力向上のためには,主体的な学びを実現するアク ティブラーニングの導入による学習者を主体とする授業設計が必要である.授業設計においては,ユ ニバーサルデザインの視点を取り入れることで学習の障壁が軽減され,学習は活性化し,すべての学 習者の参加・理解につながることが期待される.そこで,ユニバーサルデザインの視点による授業改 善の取組及びアクティブラーニングを活用した実践研究を概観・整理し,主体的な学びを実現するア クティブラーニングがより有効にはたらくために,学習の障壁をなくす授業環境としてユニバーサル デザインの視点を取り入れることの意義を示した.Course improvements are being sought for to nurture the higher versatility and abilities needed in a knowledge- based society. Students have been passive until now in most lecture-centered learning which is limiting and has ill-effects on the effort to foster the ability to think, make decisions and express one's own opinion. To improve character and abilities, there is a need to have lesson designs that have the learner act on own initiative by introducing active learning. By introducing universal design to lesson design, the obstacles to learning will be alleviated and we can expect learning to be activated, leading to the participation and increased knowledge of students. We reviewed and organized the literature on lesson improvement and active learning from the viewpoint of universal design. In order for active learning to work even more effectively, we pointed out the importance of introducing universal design as the study environment that eliminates obstacles to learning.
著者
菊井 和子 竹田 恵子
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.63-70, 2000-06-26

エリザベス・キュブラー・ロスの名著「死ぬ瞬間」(1969年)がわが国に導入されて以後, 死にゆく患者の心理過程はターミナルケアにあたる医療職者にとっても社会全体にとっても重要な課題となった.なかでもその最終段階である"死の受容"についての関心が高まった.キュブラー・ロスは"死の受容"を"長かった人生の最終段階"で, 痛みも去り, 闘争も終り, 感情も殆ど喪失し, 患者はある種の安らぎをもってほとんど眠っている状態と説明しているが, わが国でいう"死の受容"はもっと力強く肯定的な意味をもっている.患者の闘病記・遺稿集およびターミナルケアに関わる健康専門職者の記録からわが国の死の受容に強い影響を及ぼしたと考えられる数編を選び, その記述を検討した結果, 4つの死の受容に関する構成要素が確認された.つまり, 1)自己の死が近いという自覚, 2)自己実現のための意欲的な行動, 3)死との和解, および4)残される者への別離と感謝の言葉, である.わが国における"死の受容"とは, 人生の発達の最終段階における人間の成熟した肯定的で力強い生活行動を言い, 達成感, 満足感, 幸福感を伴い, 死にゆく者と看取るものの協働作業で達成する.
著者
佐久川 肇 保住 芳美
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.145-148, 1999-12-25

近年, ペットに死なれた飼い主が, 身近なものを失った場合と変わらない精神的打撃を受けることがしられ, ""ペットロス""として注目されている.ペットロスは特に孤独な老人の場合に, より深刻な様相を呈するといわれている.現代の産業社会においては, 老人は生産活動から遠のき, 人間関係が希薄になって, いわゆる脱社会化現象が起こりやすく孤独に陥りやすい.ペットとの関わりはこのような老人の孤独に対して大きな支援をもたらす.ペットとしての犬の場合にはその特性から飼い主と関わることを心から喜んで飼い主に従う.それは対等な人間関係とは本質的に異なるが, 関係の真実さと, 老人のペースに見合った関係が得られることから, 生命エネルギーが乏しくなった老人にとっては, 人間関係に代わるものを与える援助の手段として積極的な評価が必要である.
著者
大森 美由紀 寺岡 幸子 伊東 美佐江
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.160-173, 2017

本研究の目的は,文献検討により OJT における新人教育で師長が果たす役割を明らかにすることである.「新人」と「教育」と「看護管理者」あるいは「師長」をキーワードとして,2002年1月~2014年9月までの文献を検索した.OJT における新人教育の師長の役割について記載の可能性がある 文献を選択し,最終的に38件の文献を分析対象として文献検討を行った.その結果,「担当部署の教 育方針の決定と周知」,「リアリティショック防止」,「個人の能力に応じた段階的・継続的な教育」,「担 当部署の教育体制の整備」,「専門職業人としての自律促進」,「システムへのフィードバック」の6つ の役割を遂行,および期待されていることが明らかとなった.師長は担当部署の目標を設定し周知し, 新人のリアリティショックを防止するために,組織社会化を促し,新人を尊重する姿勢で接しており, メンタルヘルスを把握しサポートしていた.新人の実践能力を把握しながら個別に応じた指導,能力 に応じた業務分担し,自信をもって前進できるよう支援していた.また,チーム体制や教育体制を整 備しながら,効果的な教育を考えていた.そして,看護の概念化を促し,モデルを示すことによって 専門職業人として自律を促し,新人教育における問題をフィードバックしていた.師長は,新人看護 師が職場に問題なく適応し,看護実践能力を獲得できるようにさまざまな戦略が求められていた.
著者
富安 俊子 鈴井 江三子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.65-74, 2008
被引用文献数
1

日本におけるドメスティック・バイオレンス(Domestics Violence;以下DV)は,2001(平成13)年10月に配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV法)が施行されたことにより,それまでは家庭内の出来事であった夫婦間の暴力が顕在化し,夫婦であっても相手の人権を侵害する暴力支配を行ってはいけないと明確に法律で定義された.夫婦間に存在する暴力は,決して家庭内の出来事として安易に見過ごせるものではなく,被害者の生命に関わる深刻な問題として取り上げられるようになった.その結果,夫婦間に起きる暴力に対しては女性の意識も変化し,人権意識が高まることで,DVの被害届が年々増加してきた.そして今では,DVという用語は広く一般に認知され,親密な関係性に存在する暴力全般をDVと総称して呼ぶ傾向にある.「デートDV」がそれである.しかし,「デートDV」の場合,言葉としてはDVという用語を付与しているが,実際はDV法の適応とならない.つまり,DV法が定める保護の適応となる者は法律婚と事実婚の民法で定める対象者のみであり,法的根拠の無い恋愛関係にあるカップルはDV法で定める保護命令の適応外である.そのため現時点での青年期の恋愛カップルに存在する暴力からの被害者救済は,民間のシェルターか被害後警察に相談するしか方法が見当たらないといっても過言ではない.また,青年期のカップルの場合,被害者の身近に有益な相談相手が居ないことも多く,被害者は加害者から物理的にも精神的にも逃避することができず,パートナーからの暴力を受けながらその関係性を維持している場合も珍しくない.特に,高校生のカップルの場合,学校の先生や保護者等の大人に相談することは極端に少なく,友人同士の相談では解決方法がみつからずで,暴力の長期化と深刻化を招きやすいと報告されている.以上のことから,法律婚と事実婚以外のカップルにみられる暴力支配に対して,DVという用語を用いることは,暴力を受けた誰もが法的根拠を基にした保護命令等が受けられると誤解しやすい.そのため,「デートDV」という表現方法が適切かどうか,今後検討し,暴力を受けた女性全般に対する支援体制と法の整備が必要であると考える.
著者
忠津 佐和代 梶原 京子 篠原 ひとみ 長尾 憲樹 進藤 貴子 新山 悦子 高谷 知美
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.313-331, 2008

青年期のヘルスプロモーションの視点から,大学生のピアカウンセリング手法による性教育の必要性と教育内容を検討するため,某大学生858人を対象に自記式質問紙調査を行い,以下の結果を得た.性交経験者は,男性では1年生(62.1%)・2年生(77.1%)・3年生(91.1%),女性では1年生(41.5%)・2年生(62.4%)・3年生(70.1%)と学年を上がるごとに増加していた.性に関わる問題の第1の相談相手の割合が最も高いのは「友人(73.1%)」であり,性に関わる意識や行動に最も影響を与える第1のものも「友人(45.5%)」であった.性の問題の相談場所がない者が24.0%いた.大学生のピアに対する期待は,具体的な知識に加え,交際相手とのトラブルへの対応や避妊法の具体的な技術指導,ピアカウンセリングが包含する相談しやすい人や秘密の守られる場の提供であった.最も知りたい内容は,21項目中,「性感染症の知識(47.0%)」で,以下2割以上は「男性と女性の心理や行動の違い(46.3%)」,「エイズ(44.8%)」,「愛とは何か(40.5%)」,「緊急避妊法(39.6%)」,「避妊の方法(35.8%)」,「異性との交際のしかた(34.8%)」,「セックス(性交)(29.3%)」,「自分の体について(27.2%)」,「性の人生の意味(26.1%)」,「性欲の処理のしかた(24.9%)」,「思春期の心理(23.6%)」,「性に関する相談機関(22.0%)」の12項目であった.以上から,青年期にある大学生にもピアによる性教育の潜在的・顕在的ニーズがあること,その教育内容として心理的・性行為付随側面のニーズが高くなっていることが窺える.この時期のQOLを実現するため,新入生の時期からピアカウンセリング講座やピアカウンセリングが展開できる場やサポート環境を整えていくことが求められる.
著者
林 秀樹 武井 祐子 藤森 旭人 竹内 いつ子 保野 孝弘
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-11, 2016

本論文では,非定型うつ病に関する研究の動向を調べ,その背景について検討した.まず,非定型うつ病に関する文献数の推移を概観したところ,非定型うつ病に関する研究が増加傾向にあることが 明らかになった.そして,この推移には,非定型うつ病が DSM で記載されたことが影響を与えてい ると推察された.また,非定型うつ病の定義や診断基準に関する研究の増加も影響を与えていると考 えられた.次に,各文献のキーワードを整理したところ,これまで主に取り上げられてきたキーワー ドは,非定型うつ病や抑うつ障害,双極性障害,薬物療法,診断,治療であることが明らかになった. そのため,これらのキーワードについて,文献の内容を吟味し,非定型うつ病との関連等について確 認した.その結果,近年では,類似する様々な症状との関連についての検討のみならず,より細やか な検討(詳細な病態など)が進められていることが明らかになった.さらに,非定型うつ病の治療に 関する研究としては,薬物療法に関心が向けられていることが明らかになった.
著者
三徳 和子 高橋 俊彦 星 旦二
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.1-10, 2006

主観的健康感の関連研究から,主観的健康感は死亡率に対し独立した寄与因子であることが指摘されている.そうであるなら死亡率に与える効果の大きさには,死因や性別,年齢および観察期間によって差異はあるのかという疑問が生じる.この問題は主観的健康感の意義を解釈をしたり保健活動への応用を議論する上で重要と思われる.本研究の目的は,主観的健康感と生命予後との関連性について,これまでの研究成果を整理し,今後の研究の方向と課題を提示することである. 主要な結果は以下のとおりである. (1)主観的健康感の低い者のその後の生存妥当性が低いことは,大多数の研究で確認されたが,そのメカニズムに関する詳細な研究報告は見あたらなかった. (2)主観的健康感と死亡との関連性の強さは,男女間で差がないとする報告と男性により強い関連性がみられたとするとする報告とがあった. (3)年齢は多くの研究で潜在的交絡因子として調整され,死亡率との関連性を年齢別に観察した研究は少なかった.いくつかの報告では関連性は高齢者のみではなく中年や若年者年齢層にもみられること,85歳以上では関連が弱いことが示されている. (4)主観的健康感の良否と死因とに関する追跡研究は,主観的健康感の低い者は高い者に比べて心血管疾患やがんによる死亡危険度が有意に高いことを明らかにしている.また最近では,死亡率に与える効果には,死因によって強弱の差があることも示されている. 以上の結果から,主観的健康感はその後の生存とその予測等に関連していることが明らかとなったが,主観的健康感が生命予後に対する予測効果をなぜ持つのかを明らかにすることが今後の課題である.
著者
金光 義弘
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.249-256, 1997

本論文の目的は, 一人の聾唖聴覚障害者が司法の場で裁かれることの妥当性について心理学的な考察を試みることである.主たる問題の所在は次の4点である.(1)訴訟能力を持たない被告人に対する司法的処置の妥当性, (2)17年間という異常に長い裁判の違法性, (3)障害者に対する社会的i援助や教育の欠如性, 最後に(4)心理学者が作成した被告人鑑定書の妥当性と信頼性である.これらに関する心理学的考察を通して以下の2点が結論づけられる.すなわち, (1)日本の司法制度は障害者に対する手厚い援助の手を差し伸べてこなかった.したがって, 障害者に対する現行の司法的手続きは人権保障の観点から問い直されなければならない.(2)心理学は障害者の人権問題に対して, ノーマライゼーションや社会的援助の方向から一層の貢献が期待されている.
著者
"柳井 玲子 増田 利隆 喜夛河 佐知子 長尾 憲樹 長尾 光城 松枝 秀二"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.109-119, 2006
被引用文献数
2

"日本人若年男性37名,女性174名を対象に,実測した基礎代謝量を基準にしてタイムスタディ法で算出したエネルギー消費量と,食物摂取頻度調査(FFQg)より得られたエネルギー摂取量との差を△エネルギー量として,食事量の過小・過大評価の実態と要因について検討した. 本研究では,若年男女ともに,エネルギー摂取量はエネルギー消費量より有意に(p<0.01)低く評価された.エネルギー摂取量の過小・過大評価の平均値(△エネルギー量/エネルギー消費量×100)は男性-26±20%,女性-12±26%となっており,女性は男性よりも過小評価率が有意に(p<0.01)低かった.Body mass index(BMI)と △エネルギー量の間には,男女とも有意な(男性p<0.01,女性p<0.001)負の相関関係(男r=-0.463,女r=-0.360)がみられ,BMIが高値の者ほど食事量を過小に見積もっていた.また女性の「やせたい」という意識は食事量の過小評価量を有意に(p<0.01)大きくさせていた.同様に「体を動かす心がけ」という意識は女性の過小評価量を有意に(p<0.05)大きくさせていた.逆に「栄養バランス」を意識する女性は過小評価量が有意に(p<0.05)小さくなっていた.同様に「朝食を食べる」「欠食をしない」女性や「夕食時間を決めている」男性は,過小評価量が有意に(それぞれp<0.05,p<0.01,p<0.001)小さくなっていた.これらの結果から,食事量の過小・過大評価には身体的要因や社会的望ましさといった心理的要因と共に,食に関するライフスタイルが関わっていることが示唆された."
著者
安斎 芳高
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.229-235, 2001-12-25

今, 保育所を悩ましているのが保護者からの与薬依頼である.病気の回復期や慢性疾患をもつ子どもにとって, 薬は欠かせない.本来, 保育所では, 子どもへの薬の服用は親が行うことを原則としているが, 働いている親は会社を休むわけにもいかないため, 保育士に与薬を頼むことになる.しかし, 医師でないものが親に代わって薬を飲ませることは医師法による医行為に触れるという法的な問題が絡む.保育所には, 嘱託医を配置することが義務付けられているが, そのほとんどが常駐ではないため, 随時対応できる状況にはない.また, 保育所における看護婦等の配置率は未だ2割弱にすぎず, 保育所の保健対応体制は十分ではない.そのため保育所は, これら保護者のニーズに対しそれぞれ独自の判断で対応しており, 様々な薬の扱いに対する混乱と事故を招いている.一方, 平成12年改訂された保育指針では, 積極的な保健対応策を打ち出した.病気の子どもの保育については, 「乳幼児健康支援一時預かり事業」の活用を推奨すること, 保育中に体調が悪くなった子どもには, 嘱託医などに相談して適切な処置を行うよう特に書き加えるなど, 従来の保育機能に加えて保健対応機能の必要性を示したものと言えよう.そこで本稿では, 保育所が行う与薬を安全かつ適切に行うための与薬行為のあり方とその対応策について, その実態と法的側面, また保育サービスの機能的側面から考察をした.結論として, 保育所の保育士が与薬を子どもにする場合, 医師や看護婦等の協力が条件となること.また, これからの保育所のあり方として福祉サービスと保健・医療は一体的に捉え, 切り離すべきではないことなどである.したがって保育所における保健・医療体制の早期確立が望まれ, 少なくとも嘱託医に加えて看護婦等医療関係者の配置を全保育所に義務づけることがぜひ必要である.