著者
三宅 妙子 加藤 保子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.411-419, 1997

1.岡山県下にある3高齢者施設および上海1高齢者施設, それぞれの1週間の献立から使用食品数を6つの基礎食品群に分類した.また, 調理形態を比較した.2.どの施設でも1日の平均使用食品数は, 27から30であって, 各地設問でほとんど差は認められなかった.1日の献立で比較すると, 日本の施設では夕食に, 上海では昼食に最も多くの料理が提供された.日本の施設では1週間ほぼ均等な献立が実施されていたが, 上海の施設では金曜日は品数が少なく, 週末にはかなり多いものであった.3.2群に属する乳製品などの食材は, 日本では毎日使用されていたが, 上海では1週間のうち1回のみの使用であった.4.日本の施設給食の代表的な調理形態は煮物, 焼き物, 和え物で, これらの出現頻度は約70%弱であった.上海の施設給食では炒め物が圧倒的に多く, さらに炒め煮, 揚げ物を加2ると.油タ使った調理形態の出現頻度は74%であった.
著者
荒井 佐和子 進藤 貴子
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 = Kawasaki medical welfare journal (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.251-257, 2016

アルツハイマー型認知症(Alzheimer's disease : AD)の初期から終末期までの自然経過を理解することは,認知症の人と家族へのよりよいサポートを行うために重要である.しかし,医療福祉職を目指す学生がAD の進行に伴い生じる症状や取り組むべき課題についてどの程度認識しているのかは明らかでない.そこで,本研究では,医療福祉系大学に在籍する学生が,AD の進行についてどのように認識しているのか,探索的に検討した.調査は127名を対象として,認知症の人との接触経験,知識,およびAD の進行期に対する認識を尋ねた.その結果,認知症の人との接触経験や知識は高かったが,AD の進行期に対する認識は軽度から重度の段階で存在する認知機能障害に関する記述が多く,重度の段階で生じる身体機能の障害に関する記述は少なかった.多くの認知症が進行性であることからも,認知症進行期に関する教育の充実が必要であると考えられた. To provide better support to people with dementia and their families, it is important to understand the development of Alzheimer's disease(AD)from the early stage to the end-of-life. However, it is still unclear whether students who are studying to become health care providers understand the difficulties that arise with the progress of AD. The purpose of this study was to examine the extent to which students who enrolled in the Medical Welfare University recognize the progression of AD. Undergraduate students of the Medical Welfare University (n = 127)were asked about their contact experience with people with dementia, knowledge of dementia, and their understanding of the advanced stages of AD. It was investigated that many students had contact experience and knowledge of the people with dementia. During the recognition of the advanced stages of AD, many students described the cognitive dysfunction that people experienced from mild to advanced stages of AD; however, there was little understanding of the decline in physical functions in advanced AD. Because the many types of dementia are characterized by a progressive decline in cognitive and physical functions, it is necessary to educate students about advanced dementia.
著者
倉藤 利早 長尾 光城 宮川 健 松枝 秀二 Kuratou Risa Nagao Mitsushiro Miyakawa Takeshi Matsueda Shuji
出版者
川崎医療福祉学会
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.233-242, 2014

本研究では,高等学校バスケットボール選手に熱中症に関する継続的な予防活動を行い,予防活動 の有効性を検討することを目的とした.高等学校の男子バスケットボール部に所属する選手9名を対象に調査を行なった.測定項目は,水分摂取,体重,脈拍,赤外線式鼓膜温,腋下温,環境温度,主観的口渇感,主観的温度感,主観的運 動強度とした.熱中症予防活動は熱中症予防NOTE を作成し,調査1回目の測定終了後に実施・配布を行なった.また,日々の練習で使用できる水分補給量の目安を記したコップを配布し,自己チェックシート,熱中症計,体重計の配布も行ない,日々の練習で活用するよう教示した.測定月ごとに体重あたりの水分摂取量と体重あたりの総発汗量の相関関係を示した結果より,7月において有意な正の相関関係が示された.また,8月においても有意な正の相関関係が示された.次に,測定月による選手の水分補給率・体重減少率の変化を示した結果より,測定月の違いによる, 水分補給率,体重減少率において有意な差は示されなかったものの,個人データで以上の二つを比較 した結果,対象者9人中8人において,水分補給率が増加し,体重減少率は減少を示した.そして,予防活動について内省を行った結果,選手から自己チェックシートや体重測定は習慣がないため,なかなか継続して行うことが難しいという報告を受けた.一方,熱中症計は毎回の部活において使用し,練習前はもちろん練習中もほとんどの選手がチェックしたという報告を受けた.本研究において行った予防活動の有効性を検討した結果,選手が熱中症にならないために,自分自身による管理はもちろん,特に周りのサポートが重要であることが考えられた.また,そのサポートが一過性のものではなく,選手に習慣づくまで継続的に行なう必要が考えられた.そして,最終的に選手自ら自己管理ができるような指導が行える指導者像が求められる.The purpose of this study was to study the effectiveness of continuous prevention activities of heat disorders in high school basketball players. Nine boys participated in this study. The subjects' water intake was monitored without forcing fluid intake. Body weight, pulse rate, environmental temperature, VAS for measuring the SST, RTS, and RPE were measured.For the activity, we made a heat disorders prevention notebook and performed the implementation and distribution after the measurement of the first investigation. In addition, we distributed cups which had marks indicating the quantity of water intake. And we distributed the self-check sheet and the scale of heat disorders and body weight. We instructed them to utilize it in their daily exercise. Significant correlation was observed between water intake and the total quantity of sweat per body weight in July and August. Then the results showed that a change of water intake rate and the body weight rate of decline in every measurement month, but both water intake rate and weight rate of decline were not significant. The self-check sheet and the scale of body weight were not used continually. However, the scale of heat disorders was continued from the introspection report of the players.
著者
"忠津 佐和代 梶原 京子 篠原 ひとみ 長尾 憲樹 進藤 貴子 新山 悦子 高谷 知美"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.313-331, 2008
被引用文献数
3

"青年期のヘルスプロモーションの視点から,大学生のピアカウンセリング手法による性教育の必要性と教育内容を検討するため,某大学生858人を対象に自記式質問紙調査を行い,以下の結果を得た.性交経験者は,男性では1年生(62.1%)・2年生(77.1%)・3年生(91.1%),女性では1年生(41.5%)・2年生(62.4%)・3年生(70.1%)と学年を上がるごとに増加していた.性に関わる問題の第1の相談相手の割合が最も高いのは「友人(73.1%)」であり,性に関わる意識や行動に最も影響を与える第1のものも「友人(45.5%)」であった.性の問題の相談場所がない者が24.0%いた.大学生のピアに対する期待は,具体的な知識に加え,交際相手とのトラブルへの対応や避妊法の具体的な技術指導,ピアカウンセリングが包含する相談しやすい人や秘密の守られる場の提供であった.最も知りたい内容は,21項目中,「性感染症の知識(47.0%)」で,以下2割以上は「男性と女性の心理や行動の違い(46.3%)」,「エイズ(44.8%)」,「愛とは何か(40.5%)」,「緊急避妊法(39.6%)」,「避妊の方法(35.8%)」,「異性との交際のしかた(34.8%)」,「セックス(性交)(29.3%)」,「自分の体について(27.2%)」,「性の人生の意味(26.1%)」,「性欲の処理のしかた(24.9%)」,「思春期の心理(23.6%)」,「性に関する相談機関(22.0%)」の12項目であった.以上から,青年期にある大学生にもピアによる性教育の潜在的・顕在的ニーズがあること,その教育内容として心理的・性行為付随側面のニーズが高くなっていることが窺える.この時期のQOLを実現するため,新入生の時期からピアカウンセリング講座やピアカウンセリングが展開できる場やサポート環境を整えていくことが求められる."
著者
清水 研明
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.15-20, 1994

読み手は, 書かれたテクストの内容に関する背景知識(内容スキ・一マ)と修辞構造に関する背景知識(形式スキーマ)とを, 明示的に示された情報と融合させることにより, テクストをインターアクティヴに読むことができる.本論は, このスキーマ理論を, 外国語としての英語の教育にどのように取り入れるべきかを論じたもの.
著者
田淵 昭雄
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.401-408, 2012

著者が勤務した兵庫県立こども病院(1970年〜1977年)頃の視覚障害者(児)のリハビリテーション・ハビリテーション(眼科リハ)は医療と福祉が個別に機能していた.しかし,川崎医科大学附属病院(1977年〜2004年)時代には,両者が重なる総合的眼科リハが徐々に進み,当大学感覚矯正学科(1992年〜現在)の期間は両者の協働時代になっている.この「視覚障害者(児)の医療福祉」の変遷を著者の経験から述べた.(1)1970年〜1977年における眼科リハ(小児):日本では視覚障害児専門施設が少なかった.しかし,米国でのBlind Childrens Centerでは眼科医,精神科医,視覚障害ケースワーカーなどがチームとなった眼科リハが施行されていた.(注:Blind Childrens Centerは何故かChildren'sではないのが正式名称のようである.)(2)1977年〜2004年における眼科リハ:岡山県下には視覚障害者(児)の訓練施設は無く,川崎医大病院眼科外来にて眼科医や視能訓練士よる視覚障害者の眼科リハを行った.1993年からは眼科ケースワーカーを加えた眼科リハ・クリニックを開始した.2000年に日本ロービジョン(Low Vision:LV)学会が創設されて以来,眼科医,視能訓練士,教育,福祉,行政,内科医や光学・工学関係者などの会員が学際的LV研究を行っている.(なお,LVとは日常生活などで何らかの支援が必要な状況にある視覚障害を意味している.)学会の設立は全国各地でのLVクリニック開設を促した.岡山県(地域)眼科リハについては,2010年の県下の視覚障害者は約2万5千人,眼科医が約250人であるので,眼科医1人で約100人のLV者の対応が必要である.Lケアの診療報酬化が実現されればLVクリニックの普及が進むだろう.一方,ボランティア組織の「岡山県視覚障害を考える会」とか各種患者団体の会が活動している.(3)1992年〜現在までの当学科視能矯正専攻でのLVケア教育と研究:1993年からLV学の教育,学部の卒業研究と大学院の研究でLV関連の研究を行っている.2003年から教育カリキュラムの中にLV学が取り入れられた.研究では科学的に裏付けされた多くの知識と技術が明らかとなった.「視覚障害者(児)の医療と福祉」は科学的な研究と教育によって発展している.
著者
原野 かおり 谷口 敏代 小林 春男
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.208-217, 2012
被引用文献数
1

介護労働は,仕事の内容が広範囲であるため,身体的および精神的負担が大きいと言われているが,その実態は明らかになっていない.そこで本研究においては,夜勤のある介護労働者の主観的および客観的疲労の実態を明らかにすることを目的とした.対象は,介護老人福祉施設に勤務する女性介護労働者19名(夜勤群)と通所介護事業所に勤務する女性介護労働者18名(日勤群)を対照群として連続7日間調査票による質問紙調査および実験を行った.調査の内容は,主観的疲労感として自覚症しらべを用い,客観的疲労として,アクティグラフ(A.M.I社製)を用いて,睡眠-覚醒リズムから活動能力,および能力の減退状態を評価した.また,疲労の補助指標として唾液中コルチゾール濃度を測定した.結果は,主観的疲労感は,夜勤群においてI群ねむけ感,III群不快感,IV群だるさ感,V群ぼやけ感が有意に高かった.日勤群では,V群ぼやけ感が有意に増加した.客観的疲労として,睡眠-覚醒から生活パフォーマンス反応速度時間効率「Effectiveness」を求めた結果,夜勤群において有意に低下した.しかしながら夜勤の際に低下した「Effectiveness」は,休養によって次の勤務には回復していることが明らかになった.また,夜勤群の「Effectiveness」と仮眠時間との間に中等度の相関関係が認められ,仮眠の有用性が明らかになった.唾液中コルチゾール濃度は,両群間においては有意差は認められなかった.以上,介護労働者の疲労が認められたが,夜勤中の仮眠および夜勤後の十分な休養により,次の勤務までには回復可能であった.
著者
松枝 秀二 小野 章史 内田 郷子 中田 裕美
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.253-257, 1992

高校生野球部員の食生活調査をおこなった.対象はレギュラークラス11名.調査期日は平成元年10月と12月に一週間づつおこなった.その結果, スポーツ選手としては摂取栄養素量は少なく, 特に野菜類, 乳類の摂取不足が顕著であった.エネルギー充足者では内容が蛋白質, 脂質にかたよっていた.今回の調査から若年スポーツ競技者に対する食事指導の必要性が強く感じられた.
著者
土田 耕司
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.269-273, 1999-12-25

社会リハビリテーションにおいての援助課程で, 自らの余暇活動を自分の能力のみで実現することが比較的困難な障害者などを対象として, その実現のための諸条件を整備する営みの援助技術がセラピューティック・レクリエーション・サービスである.障害者の余暇活動を, 障害者の自立生活の視点から「見つけだす余暇活動」としての援助を試み, 余暇活動を獲得することができた.障害者が余暇活動を獲得することは, 社会リハビリテーション過程での様々な訓練や援助の相互的関係のうえに成り立ち, 自由時間としての余暇活動の充実に止まらず, 障害者の生活自立や社会参加へと発展していくことが確認できた.
著者
吉本 一夫
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.128-129, 2012

本稿は,2012年成人の日に発売された日本酒「HARE・祝結(いわいむすび)」をプロデュースした農産官学共同の若者向け地酒開発プロジェクト「Takeo 20 Project」の事例紹介である.プロジェクトメンバーは,岡山市建部町農家,倉敷市酒造会社,岡山市酒販売・居酒屋会社,岡山市役所,川崎医療福祉大学医療福祉デザイン学科学生と教員である.
著者
中村 陽子 宮原 伸二 人見 裕江
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.195-204, 2000-12-25
被引用文献数
1

戦後日本においては疾病構造の変化, 医療技術の高度化, 病院化の進展の中で, 死亡に関しては, 在宅での死は減り, 病院での死が急増しているのが現状である.1965年には死亡者全体の29%が病院死であったが, 1995年には74%になり, 日本人の死に場所は家から病院へと変わった.死についての今日の人々の意識や実態は, 高度経済成長期をへて, ここ30年の時代環境で大きく変化した.さらに, 現在多くの国民は在宅死を再び望むようになってきた.高齢者の在宅死を可能にするためには, 医療福祉の役割として, 現在存在するサービスを整備するだけでは課題への対応は困難であり, 新たなケアマネジメントが重要となってくる.具体的な内容としては, 死への不安や恐怖に対して, あらゆる専門職との連携が重要となる.特に心理の専門家やボランティアとの連携が, 看取りにおける心の援助を可能にすると思われる.家族・地域を包括した看取りの教育が急務である.死の教育こそが看取りの文化を継承していく.また, 都市の看取りを考える場合, これまで日本にあった隣近所による助け合いの精神に基づいた相互扶助の援助に変わる, 新しい援助が重要になってくると考えられる.地域共同体意識の低い都市においては, 地域が看取りの力を持ちうるためのまちづくりが重要な課題である.介護者に犠牲を強いることのない, 介護を生きがいのある魅力あるものにし, 自己決定に基づく死に場所選びを可能にするため, 医療福祉として統一された援助が重要となる.医療福祉はその役割を負う.
著者
笹野 友寿 塚原 貴子
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.39-45, 1998

本研究の目的は, 神経症の主要な下位分類である解離性障害について, 大学生を対象にスクリーニングすることにある.対象は岡山県内にある短期大学の1年生57名で, 全員女性である.入学後2週目に解離性体験尺度(DES : DissociativeExperienceScale)を採点した.DES得点の基礎データは, 中央値1.94,平均値16.03,平均値の標準誤差1.94,歪度1.61,尖度5.82であった.DES得点が30点以下の者は57名中48名(84.2%)であったが, 適応レベルに問題は認められなかった.一方, DES得点が30点以上の者は57名中9名(15.8%)であったが, 適応レベルが良好でない者が含まれていた.この結果より, DESを用いたスクリーニングは, 大学生を対象とした精神保健活動にとって有用であると思われた.そして, DES得点が30点以上の場合は, 精神科医や臨床心理士などによる面接が望ましいと思われた.
著者
嶋田 義弘 緒方 正名 藤井 俊子 堀家 徳士 道辻 広美 細川 幹夫 田口 豊郁
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.67-73, 1995

外部精度管理の実情に近い条件のもとで, 有機溶剤の尿中代謝産物である馬尿酸, メチル馬尿酸, マンデル酸を人工尿, ヒト尿に加えた試料について, 郵送した後の濃度を, 東京都, 大阪市, 岡山市に存在する3検査機関で測定した上述の3種類の尿中代謝産物の郵送後の値の, 郵送前の研究室の値に対する比率(回収率)を求めた.その成績として, 液性試料で冷蔵保存(0〜4℃), 冷凍保存(-20℃)下の郵送では, 人工尿は郵送前のほぼ100%の値を示した.ヒト尿中の馬尿酸, メチル馬尿酸, クレアチニンは凍結保存では98%を示したが, 冷蔵保存では郵送前よりやや低い値を示した.凍結乾燥した人工尿, ヒト尿の冷蔵保存下の郵送では, 3種の代謝産物はほぼ98%以上の値を示し, 実用可能な事が推定された.
著者
嶋田 義弘 緒方 正名 藤井 俊子 堀家 徳士 道辻 広美 細川 幹夫 田口 豊郁
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.67-73, 1995

外部精度管理の実情に近い条件のもとで, 有機溶剤の尿中代謝産物である馬尿酸, メチル馬尿酸, マンデル酸を人工尿, ヒト尿に加えた試料について, 郵送した後の濃度を, 東京都, 大阪市, 岡山市に存在する3検査機関で測定した上述の3種類の尿中代謝産物の郵送後の値の, 郵送前の研究室の値に対する比率(回収率)を求めた.その成績として, 液性試料で冷蔵保存(0~4℃), 冷凍保存(-20℃)下の郵送では, 人工尿は郵送前のほぼ100%の値を示した.ヒト尿中の馬尿酸, メチル馬尿酸, クレアチニンは凍結保存では98%を示したが, 冷蔵保存では郵送前よりやや低い値を示した.凍結乾燥した人工尿, ヒト尿の冷蔵保存下の郵送では, 3種の代謝産物はほぼ98%以上の値を示し, 実用可能な事が推定された.The hippuric acid, methylhippuric acid and mandelic acid were spiked into artificial prepared urine and human urine, and used as specimens for external quality controls. These specimens were sent to the three laboratories located in Tokyo metropolis, Osaka city and Okayama city. Then concentrations of three acids and creatinine were measured in the laboratories. The ratio of the concentrations of three acids in artificial prepared urine measure in the three laboratories tested to those in the laboratory, where specimens were prepared and sent, was about 100 percent under the mailing condition at 0~4℃ and at -20℃. The ratios of three acids in human urine was about 98 per cent under the condition at -20℃ and slightly lower ratio was obtained at 0~4℃ in human urine. The three acids were spiked in artificial prepared urine and in human urine, and then these specimens were freeze-dried and mailed to three laboratories at 0~4℃. The ratios of three acids in artificial prepared urine and those in human urine were above 98 percent. The results indicate that the three acids in artificial urine and human urine are useful under mailing condition at 0~4℃ and at -20℃, though slight lower values are shown in human urine at 0~4℃ and can be useful under sending condition at -20℃. The freezedried artificial and human urines are useful under mailing condition at 0~4℃.
著者
種村 純
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.409-417, 2012

高次脳機能障害に伴って生じる言語コミュニケーション障害者,すなわち失語症者および認知コミュニケーション障害者に対する医療と福祉の間のギャップとその対策に焦点を当てた.多くのコミュニケーション障害者はリハビリテーションによって日常生活活動(ADL)は自立するが,就労は困難である.コミュニケーション障害者は就労を強く求めるが,職業生活で要求されるコミュニケーション能力を回復することは難しい.コミュニケーション障害者は孤独,意志決定や活動の制限,役割の変化などを経験する.失語症者の社会参加を促すためにはコミュニケーションによって失語症者の心理社会的ニーズを満たそうとする働きかけが重要である.集団での会話訓練や会話パートナーによって生活場面でのコミュニケーション活動を促す.慢性期の失語症者が集い,安全に社会活動を行う場として,失語症友の会が全国で展開されている.障害者福祉制度の面では失語症の身体障害者手帳および障害者年金の等級が低く,中年世代の就労できない失語症者への生活保障が不十分であることが指摘されている.外傷性脳損傷などによって広範囲の脳損傷を受けた場合には記憶その他の認知機能が障害され,認知機能の障害の結果として話す内容を上手く組み立てることができなくなり,会話での受け答えに齟齬が生じる.また説明が回りくどく,聞き手の立場に立って説明することができない.こうした障害を認知コミュニケーション障害と呼ぶ.この障害ではコミュニケーションの問題を媒介として攻撃行動や抑うつなど重大な社会的行動障害が出現する.認知コミュニケーション障害に対する介入としては,会話相手が協力的なコミュニケーションスタイルを示すことによって反社会的なコミュニケーション態度を改善したり,集団での生活技能訓練を行ったりする.社会的行動障害を伴う場合にはその家族に大きな介護負担が生じる.社会的アプローチとして高次脳機能障害支援普及事業が進められている.各県の支援拠点機関には支援コーディネーターが配置され,原因疾患の治療,リハビリテーション,生活支援,就労支援,就学支援,当事者団体による支援ネットワークが構成されている.本事業は障害者自立支援法の地域生活事業のうち,都道府県が行う専門的相談支援事業に位置づけられている.
著者
"塚原 貴子 新山 悦子 笹野 友寿"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.95-101, 2005
被引用文献数
1

"看護学生106名と栄養科学生54名を対象に,アダルト・チルドレンの特性(以下AC特性と略記)が看護学生と他学部学生で差があるのか,また,AC特性と対人関係のストレスの自覚との関係を明らかにすることであった.看護学生のAC得点の平均値は10.63(SD=4.85),栄養科学生の平均値は9.30(SD=4.73)で有意差(p>0.05)は認められなかった.対人関係でのストレスの自覚の程度の合計平均値は,看護学生6.57(SD=2.31),栄養科学生の平均値は5.78(SD=1.69)で有意(p<0.05)に看護学生が高かった.AC得点と対人関係のストレスの自覚の程度をピアソンの積率相関係数にて検討した結果,0.587(p<0.01)で比較的強い相関が認められた.看護学生のみに,「親との対人関係」や「先輩・教員との対人関係」でのストレスの自覚とAC得点に相関が認められた.看護学生にAC特性が高いとは言えないが,AC得点の高さとストレスの自覚の強さが関連していた.看護学生は,臨地実習などで対人関係を使った学習が要求され,ACの心理的特性が対人関係を経験することで顕在化している可能性が示唆された."
著者
"八並 光信 渡辺 進 上迫 道代 小宮山 一樹 高橋 友理子 石川 愛子 里宇 明元"
出版者
川崎医療福祉大学
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.227-235, 2005
被引用文献数
1

"本研究の目的は,造血幹細胞移植患者の無菌室治療期間中に生じる廃用症候群に対して,理学療法の頻度による効果の違いを検討することにある.対象は,2002年1月より2003年12月までの患者57名中,重度のGVHDおよび早期死亡を除いた34名であった.理学療法評価は,移植患者の握力・下肢伸展筋力・運動耐容能について無菌室入室前後(移植前後)で行った.理学療法は,理学療法士のデモンストレーションに従って,患者が自覚的運動強度で「きつい」と感じる強度で,ストレッチングおよび筋力増強訓練を15分から20分間行った.この他,理学療法士の非監視下で行う自主訓練は毎日行った.理学療法士のデモンストレーションに従って患者が行った理学療法頻度の違いにより,隔日群(16名)と毎日群(18名)の2群に分けた. 移植前後の筋力の変化率に対する,訓練頻度の違いによるに効果は認められなかった,運動耐容能の変化率に対する効果は,運動耐容時間を除き認められなかった.移植前後の筋力・運動耐容能の変化率を従属変数,性別・年齢・入院から移植までの期間・無菌室期間・訓練頻度を独立変数として重回帰分析を行った.筋力の変化率に関しては,無菌室滞在期間が寄与していた.しかし,運動耐容能の変化率は,この回帰モデルで説明できなかった. 我々は,今後も,移植治療中の廃用症候群を抑制できる理学療法システムについて検討していきたい."