著者
野村 大成 加藤 秀樹 渡辺 敦光 佐々木 正夫 馬淵 清彦 藤堂 剛
出版者
大阪大学
雑誌
がん特別研究
巻号頁・発行日
1992

「放射線被曝による継世代発がん」に関して、ヒトにおいては、馬淵班員が広島・長崎の被爆者のF_1集団72,000人の調査を行った。1946-89年の死亡者中で白血病63症例、リンパ腫22症例を発見したので、詳しい診断を確認の上、授精前被曝との相関が調査できるようになった。基礎研究では、渡辺班員がC3H雄マウスに^<252>Cf中性子放射線照射することにより、ヘパトーマが非照射F_1(3%)の14倍の頻度で発生していることを発見し、野村実験を異なった系統マウスと原爆類似放射能で確認した。野村は、LTマウスにX線(3.6Gy)を照射することによりF_1に10倍の頻度で白血病が誘発されることを発見した。ICRマウスでは見られなかったことである。加藤班員は、これらF_1での発がんに関与した遺伝子のマッピングのため、TemplateDNAの多量、短時間処理法を確立した。佐々木班員はヒトにおける父親由来の突然変異としてRb遺伝子を調べ、Rb腫瘍細胞では80%の症例に+1g異常が観察されるが、9例中8例までが母親由来の1gが過剰になっていることが分かった。新しい発見であり、今後大きな問題になるだろう。藤堂班員は、紫外線によるDNA損傷のうち、がんや突然変異と深く関与してると思われる6-4産物を特異的に修復する酸素を初めて発見した。国内外で大きな反響を呼び、新聞誌上でも大きく報道された。英国核施設従業員(父親)の授精前被曝によりF_1にリンパ性白血病が相対リスク9.0(P=0.047)の高さで発生しているとの報告が1993年3月6日にあった(BMJ)。この報告は、Gardner論文と同じく野村のマウス実験と一致しており、より一層、ヒト疫学、マウスを用いた基礎研究が必要となる。また、内部被曝や低線量率長期被曝の精原細胞および卵細胞におよぼす影響がクローズアップされるようなった。
著者
藤堂 剛 加藤 秀樹 渡辺 敦光 佐々木 正夫 馬淵 清彦 野村 大成
出版者
大阪大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

1.マウスを用いた継世代発がん:野村はLTマウスを用い精子および精子細胞期へのX線(5.04Gy)照射により、F_1マウス非照射群の約10倍の頻度でリンパ性白血病が誘発されたが、精原細胞期照射ではICRマウスと同様に白血病は誘発されなかった。本年度は、N5マウスを用いたところ、精原細胞期照射でも約6倍の頻度でリンパ性白血病が発生し、ICR,LTと異なる結果となった。白血病発生に系統差がある。また、渡辺は原爆放射能に近い線室の^<252>Cf(中性子66%)をC3H雄マウスの精子期あるいは精原細胞期に1回全身照射(O.5,1.0Gy)し、C57BL雌マウスと交配し、F_1を14.5ケ月後に屠殺したところ、いずれの群でも、肝腫瘍が約10倍も増加した。2.原爆被爆者の子供の死亡率調査:両親の被爆線量に伴う、全死因及び癌死亡の有意な増加は認められない。発癌率調査でも殆ど認められないであろう(馬淵)。3.継世代発がん機序:マウスにおける継世代発がんの遺伝様式はヒトでのRB遺伝子やp53遺伝子の変異によるがん発生と似ている。1)網膜芽細胞腫患者の突然変異の起源を調べると情報の得られた16例のうち15例までが父親由来であり、微視突然変異(RB1)では67%に欠失・挿入・塩基置換なとどの突然変異が認められた(佐々木)。2)継世代高発がんN5マウス家系においてもp53の変異が検出された(野村)。3)マウス肺腫瘍の発生には、その70%を決定する単一の優性遺伝子が存在し、マイクロサテライトマーカーを用い調べると、第六染色体上のK-rasより10cM遠位にありK-ras intron内に欠失が存在することも明らかにした(野村、加藤)。4)藤堂は、紫外線による損傷を持つDNAに特異的に結合する蛋白を2種見い出した。1つは(6-4)光産物に対する光回復酵素で、酵素蛋白の精製に成功し、この酵素が損傷DNAを元に形に修復する活性を持つ事を明らかにした。
著者
荒田 玲子 渡辺 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成25年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.9, 2013 (Released:2013-08-23)

【はじめに】節分に巻きずしを食べる習慣の起源・発祥には諸説がある。江戸時代から明治の初めに大阪の商人達が、商売繁盛、無病息災を願って行われたものが、その後大阪鮓組合や大阪海苔問屋協同組合の販売促進の宣伝により大阪を中心に広がり、1989年広島のセブンイレブンが最初に「恵方巻き」として販売し全国に広がったとされる。【目的】本学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食・儀礼食」において調査した行事のうち、認知度、喫食経験ともに高値であった節分の行事食の中から、巻きずし(のり巻き)に注目し、47都道府県におけるその喫食変化を調べることにより、県や地域の違いを掘り起こすことを本研究の目的とした。【方法】特別研究のデータを各都道府県単位で、その調査単位に10年以上居住する対象者のみを抽出し、「節分認知」「節分経験」「喫食経験」「巻きずしの喫食状況」「巻きずしの調理状況や食べ方(以前)」「巻きずしの調理状況や食べ方(現在)」「変化した時期」の項目について集計し、その喫食変化について検討した。【結果】節分に丸かぶり寿司あるいは、恵方巻きと呼ばれる太巻きずしを食べる習慣は、他の地域に比べ、大阪府を中心に近畿圏に多くみられた。「福巻寿司発祥の地の碑」がある栃木県においても、大阪より少ないが、他の関東圏より「毎年食べる」が多く、「途中から」と答えたものは少なかった。「外で食べる」が以前も現在も少なく、「買う」か「家庭で作る」が多かった。これは、巻きずしの食習慣の発祥に由来すると思われる。
著者
名倉 秀子 渡辺 敦子 大越 ひろ 茂木 美智子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.146-156, 2003-05-20
被引用文献数
4

雑煮の構成内容から地域の特徴を知る目的で,全国を12地域に分割し,各地域に在住する学生の家庭を対象に,アンケートによる実態調査を行った。雑煮のもち,だし,調味料,具,盛り付けの器,伝承など雑煮の地域的な特徴について以下のような結果が得られた。1)もちの形態は角もちが北陸,東海以北,丸もちが近畿以西にそれぞれ80%以上出現した。もちの扱い方は「焼く」が関東以北4地域,「ゆでる」が北陸,中国,北九州の3地域,「そのまま汁へ」が東海,近畿1,近畿2,四国,南九州の5地域に分類できた。2)だしの種類は魚介類が東海および中国以西,肉類が東北,海藻類が北海道,北陸,九州,野菜・きのこ類が九州でやや高めの出現率を示した。3)調味料の種類から,すまし仕立て系が北海道,東北,関東1,関東2,北陸,東海,中国,北九州,南九州の9地域,味噌仕立て系が近畿1,近畿2,四国の3地域に分類できた。4)具の種類は人参,大根,鶏肉が全国的に高い割合で出現した。野菜類の緑色系において,北海道の三つ葉,東北のせり,関東1の小松菜,関東2と北陸の三つ葉,東海のもち菜,近畿1の水菜,近畿2と中国のほうれん草,北九州のかつお菜,南九州の京菜にみられるように地域に限られた野菜や正月の期間だけの野菜が出現していた。また,かまぼこやなるとの出現は地域の特徴を捉えていた。5)盛りつけの器の材質は全国的に椀の出現率が70%をしめ,母方系統の雑煮を20〜29年前から調理していることが明らかとなり,伝承について地域的な特徴は見出せなかった。
著者
荒田 玲子 渡辺 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【はじめに】節分に巻きずしを食べる習慣の起源・発祥には諸説がある。江戸時代から明治の初めに大阪の商人達が、商売繁盛、無病息災を願って行われたものが、その後大阪鮓組合や大阪海苔問屋協同組合の販売促進の宣伝により大阪を中心に広がり、1989年広島のセブンイレブンが最初に「恵方巻き」として販売し全国に広がったとされる。【目的】本学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食・儀礼食」において調査した行事のうち、認知度、喫食経験ともに高値であった節分の行事食の中から、巻きずし(のり巻き)に注目し、47都道府県におけるその喫食変化を調べることにより、県や地域の違いを掘り起こすことを本研究の目的とした。【方法】特別研究のデータを各都道府県単位で、その調査単位に10年以上居住する対象者のみを抽出し、「節分認知」「節分経験」「喫食経験」「巻きずしの喫食状況」「巻きずしの調理状況や食べ方(以前)」「巻きずしの調理状況や食べ方(現在)」「変化した時期」の項目について集計し、その喫食変化について検討した。【結果】節分に丸かぶり寿司あるいは、恵方巻きと呼ばれる太巻きずしを食べる習慣は、他の地域に比べ、大阪府を中心に近畿圏に多くみられた。「福巻寿司発祥の地の碑」がある栃木県においても、大阪より少ないが、他の関東圏より「毎年食べる」が多く、「途中から」と答えたものは少なかった。「外で食べる」が以前も現在も少なく、「買う」か「家庭で作る」が多かった。これは、巻きずしの食習慣の発祥に由来すると思われる。
著者
渡辺 敦史 田村 美帆 泉 湧一郎 山口 莉未 井城 泰一 田端 雅進
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.298-304, 2019-12-01 (Released:2020-02-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

二つのDNAマーカー,EST-SSRマーカーとgenomic SSRマーカーを利用してウルシ林の多様性評価を行った。EST-SSRマーカーは次世代シーケンサーを利用して新たに開発した。得られたEST情報から2塩基または3塩基モチーフの一定繰り返し数以上を示した21領域にプライマーを設計した結果,最終的に8マーカーが利用可能であった。8 EST-SSRマーカーおよび7 genomic SSRマーカーを利用して,全国各地のウルシ林9集団から採取した377個体を対象として分析した。ウルシは,渡来種であり,クローン増殖が容易であることから遺伝的多様性の喪失が懸念されたが,遺伝的多様性は近縁種であるハゼノキよりもやや高く,著しい喪失は認められなかった。クラスター分析・主座標分析・STRUCTURE分析の結果は,集団によっては特異性が維持されていることを示す一方で,種苗が移動したことによる集団内の遺伝構造の存在を示していた。クローンの存在や小集団化に伴うボトルネックは限定的であり,現在のウルシ林を適切に保存すれば,ウルシ遺伝資源は維持できると考えられる。
著者
田端 雅進 井城 泰一 田村 美帆 渡辺 敦史
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.105, no.3, pp.87-95, 2023-03-01 (Released:2023-03-29)
参考文献数
32

国宝・重要文化財の保存・修復のために日本産漆の増産や安定供給が不可欠である。しかしながら,漆滲出量の多いクローンはほとんど明らかになっていない。本研究ではDNA分析によって茨城県7カ所の分根由来のウルシ林におけるクローン構造を解明し,複数のウルシクローンの漆滲出量を測定した。さらに漆滲出長,成長特性および葉特性と漆滲出量との関連性を調べ,漆滲出量の間接的な評価が可能な指標を探索した。その結果,調査したサイト1~7においてクローンA~Jの10クローンが検出され,検出されたクローンEが全体の約50%を占め,植栽個体に特定クローンの偏りが生じていた。漆滲出量はクローン間で有意な違いがあり,また胸高直径においてもクローン間差が認められ,胸高直径が大きいクローンで漆滲出量が多かった。また,成長・葉特性についてはサイトが異なってもクローンの順位がほとんど変わらず,10年生前後から20年生の個体を対象に漆滲出量の多いクローンを漆滲出長に加えて胸高直径や葉特性から簡易に判別できると考えられた。
著者
白石 進 磯田 圭哉 渡辺 敦史 河崎 久男
出版者
THE JAPANESE FORESTRY SOCIETY
雑誌
日本林学会誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.175-182, 1996-05-16 (Released:2008-05-16)
参考文献数
29
被引用文献数
1

カラマツ(ニホンカラマツ)の天然分布の北限は,福島県蔵王山系馬ノ神岳とされている。馬ノ神岳のカラマツは,外部形態的にはグイマツに類似しており,近年,ニホンカラマツとして分類することに対し疑問が呈されてきた。本研究では,DNA分類•系統学的な観点から,馬ノ神岳のカラマツの分類上の位置付けと遺伝的多様性の評価を試みた。馬ノ神岳のカラマツと分布中心地域のニホンカラマツ,グイマツ,チョウセンカラマツの葉緑体DNA(rbcL遺伝子)の塩基配列を比較した結果,馬ノ神岳のカラマツはニホンカラマツと完全に一致し,進化系統的にグイマツよりもニホンカラマツに近いことが明らかとなった。また,RAPD分析による核ゲノム組成の比較においても,同様の結果が得られた。しかし,馬ノ神岳のカラマツとニホンカラマツの核ゲノム組成には大きな差異が認められた。馬ノ神岳のカラマツは,ニホンカラマツとの遺伝的分化がかなり進んでおり,形態的にも大きく異なることから,ニホンカラマツの変種として分類するのが妥当である。
著者
馬渡 徹 越野 督央 森下 清文 渡辺 敦 一宮 康乗 安倍 十三夫 村上 弦
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 = The journal of the Japanese Association for Chest Surgery (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.14, no.5, pp.591-601, 2000-07-15
参考文献数
17
被引用文献数
2

しばしば認められる異常分葉肺の血管・気管支を詳細に観察し, 肺切除に有用と思われる知見を得た.対象は正常解剖体の肺右202体, 左211体から見出した右35体 (17 .3%) および左27体 (12.8%) の異常分葉肺である.頻度の高い異常裂は, 右下葉上部にほぼ水平に走行する右副後葉型 (右PPL型: 25体)と, 左上葉の前方縦隔側から後上方に走行する左上前型 (LUAF型: 22体) の2型であった.右PPL型の異常裂がS<SUP>6</SUP>の下縁に, またLUAF型の異常裂が上大区と舌区の境界に一致するのは, それぞれ約90%, 60%だった.右PPL型では一般肺に比してB<SUP>7</SUP>とB<SUP>8</SUP>, B<SUP>*</SUP>との共同幹形成が多く, A<SUP>6</SUP>は1本で分岐しやすく, V<SUP>6</SUP>は2本で還流するものが多かった.また, 上葉とS<SUP>6</SUP>の間に異常血管を高頻度に認めた.LUAF型では一般肺に比して舌区動脈が葉間より一本で分岐するものが多く, 舌区静脈ではV<SUP>5</SUP>が下肺静脈に注ぐものを多く認めた.異常分葉肺の肺切除では, 上記のような一般肺と異なる所見を考慮し, 周到な気管支と血管の観察, 処置を要する.
著者
荒田 玲子 渡辺 敦子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成26年度(一社)日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.42, 2014 (Released:2014-10-02)

【目的】日本調理科学会・平成24~25年度特別研究における聞き書き調査の中で、茨城県石岡市とその周辺地域における昭和20~30年代の食生活の様子、その地域で作られた食材、当時の物流の中で入手可能な食材による料理に注目して、石岡地域の食生活の特徴【目的】平成24~25年度日本調理科学会特別研究における聞き書き調査の中で、茨城県石岡市とその周辺地域における昭和20~30年代の食生活の様子、その地域で作られた食材、当時の物流の中で入手可能な食材による料理に注目して、石岡地域の食生活の特徴を知ることを目的とする。【方法】旧石岡市と八郷地区の食生活改善普及員を対象とし、複数回の直接面談法により調査を行う。調査の前に予め、「当時の食生活の様子」、「次世代に伝えたい家庭料理と地域を代表する行事食・日常食」、「地域の行事食とその料理にまつわる思い出や蘊蓄」についてのアンケートを自由記述形式にて行い、回答内容に従って面談する方法をとった。調査者は、石岡市内に35年以上居住する、59~75歳の女性(食生活改善普及員石岡地区役員)9名とした。【結果】特徴的食材・料理としては、貝地の高菜栽培と高菜漬、地域の店で現在も入手できる海藻用羹を使用した「海藻羊羹」、正月などハレの日に作られる「矢羽の羊羹」、「ばらっぱもち」、「たがねもち」などの餅類があげられた。栃木や茨城県西部の郷土食「すみつかれ」と同名の「酢みつかれ」は、鮭頭は入らないが、大豆や石岡産の落花生が入り、大根は鬼おろしでおろして作られる酢の物であった。正月の「昆布巻き」は、霞ヶ浦に近いこともあり、鮒やワカサギなどの淡水魚を昆布で巻いて作られていた。山間の八郷地区と平野の広がる石岡地区、近くに河川や霞ヶ浦を臨み、山や川や大地の恵みを利用した食生活が営まれていたことがわかった。。
著者
柳清 洋佑 馬渡 徹 黒田 陽介 桑木 賢次 森下 清文 渡辺 敦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.2659-2662, 2009 (Released:2010-02-05)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1 1

片肺換気が困難な気胸症例に対し,体外循環補助下に手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は34歳,女性.32歳時に肺気腫を指摘された.右気胸を繰り返し,3回の外科的処置を施行されたが右肺の拡張不全が残存した状態であった.34歳時に左側気胸を発症し,気瘻および肺虚脱が持続する為に外科的治療を行うこととした.術前から呼吸状態不良であり,術中片肺換気では酸素化を維持できないと予想されたため,静脈─静脈バイパスによるExtra-Corporeal Lung Assistを用いて手術を行うこととした.右大腿静脈および右頸静脈にカニューレを挿入し体外循環下に片肺換気とし,左側のbulla切除を行った.術後経過は良好であり在宅酸素療法指導後,第21日病日に自宅退院した.低肺機能の患者でも肺手術を行わざるを得ないことも少なくは無く,本症例を通じて体外循環補助下の気胸手術に関して考察を加える.
著者
吉田 恵子 飯村 裕子 野口 元子 石島 恵美子 荒田 玲子 渡辺 敦子
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.99-106, 2021

<p> 茨城県では家庭料理として,けんちん汁をそばやうどんにかけたり,つけたりして食べることが知られているが,その詳細は明らかではない。そこで,「過去」(昭和30~40年代)と「現在」(2016年)とのけんちん汁の食べ方の変化を明らかにすることを目的とし,茨城県食生活改善推進員を対象に,喫食状況,具,だし汁,調理方法についてアンケート調査を行った。さらに,けんちんそば・うどんについては食べる機会や喫食形態,頻度についても比較した。その結果,「過去」ではけんちんうどんで食べた人が多かったが,「現在」はけんちんそばで食べる人が増加した。使用する具材やだし汁も変化し,「現在」では,作り方が簡便化し調味も多様化していた。また,日常食としても行事食としてもけんちんそば,うどんを食べる人は減少した。以上より,けんちん汁の食べ方や調理方法が,現在の食習慣に影響を受けて変化していることが明らかとなった。</p>
著者
楢崎 康二 渡辺 敦史 冨田 啓治 佐々木 義則 白石 進
出版者
日本林學會
雑誌
日本林學會誌 = Journal of the Japanese Forestry Society (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.157-161, 1996-05-16
参考文献数
19
被引用文献数
3

ヒノキとサワラの自然雑種であるヒノキ精英樹の富士2号と, ヒノキおよびサワラの園芸品種を対象として, 核ゲノムのRAPD分析と葉緑体ゲノムのSSCP分析を行った。富士2号のRAPD分析の結果, ヒノキおよびサワラに種特異的なPCR産物(バンド)がともに検出され, このクローンは両樹種間の雑種であることがDNAレベルでも確認された。さらに, 葉緑体ゲノムのSSCP分析の結果, 富士2号の葉緑体ゲノムはヒノキ型を示し, この自然雑種は花粉親をヒノキ, 母親をサワラとする交配組合せによってできたことが明らかとなり, 両樹種間の交雑育種における新しい知見が得られた。また, ヒノキとサワラの園芸品種(5品種)の分析の結果, それぞれの種に特異的なバンドが出現し, これらがヒノキもしくはサワラの突然変異体であることが確認された。以上の結果から, RAPD分析やSSCP分析によって得られるDNA分子マーカーは, 種間雑種における親の交配組合せの決定および突然変異体の由来を調べる上で有用であることが明らかとなった。
著者
荒田 玲子 渡辺 敦子 大貫 愛美 金谷 由希 柳生 純代 冨岡 広平 吉田 惠子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.88, 2011

【〈B〉目的〈/B〉】平成21年12月に日本調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学:行事食」というテーマで行われた茨城県の調査をまとめ、茨城県の特徴を明らかにすることを目的とする。年代別の検討を行うために、回答者を10~20歳代、30~50歳代、60歳以上の3区分にわけ検討した。まず、年中行事の認知度、経験を調べた。調査項目のうち、年中行事の12項目を取り上げ、特に正月料理について詳細に検討した。〈BR〉【〈B〉方法〈/B〉】茨城県の調査員は3名であり、県北、県央、県南に所属する。しかし各大学の学生はこの3区分に分けることは不可能であるので、3地域を合わせて集計し検討した。10~20歳代は241名、30~50歳代は154名、60歳以上は70名であった。質問項目は、その行事の認知、経験、その行事で食べるものの喫食経験、喫食状況、調理状況を中心に解析した。〈BR〉【〈B〉結果と考察〈/B〉】年中行事の認知度、経験について検討したところ、「重陽・菊の節句」が各年代ともに低かった。正月料理の屠蘇は20歳代の80%が、30~50歳代の約半数が「飲んだことがない」という結果であった。黒豆、きんとんは若い年代は「時々食べる」という人の割合が高かった。口取りである「黒豆、数の子、きんとん、伊達巻」については、30歳代から50歳代は購入する人の割合が高かった。「田作り、昆布巻き」は30歳代以上でも購入する人数が多かったが、「煮しめ、なます」は家庭で作るという人が多かった。魚料理、肉料理については若い年代の回答率が高かった。我が国の最大の行事食である「正月料理」も若い年代では喫食経験が低いものも多くあり、年代が高くても、「家庭で作る」より「購入する」ものがあることが明らかとなった。
著者
樋口 有未 松本 麻子 森口 喜成 三嶋 賢太郎 田中 功二 矢田 豊 高田 克彦 渡辺 敦史 平尾 知士 津村 義彦
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.247-251, 2012-10-01 (Released:2012-11-22)
参考文献数
31
被引用文献数
2 3

ヒバの天然林集団と選抜集団の遺伝的多様性および集団間の遺伝構造を明らかにするため, 北海道, 青森県, 岩手県, 新潟県, 石川県のヒバ天然林集団 (1道4県7集団) と育種が盛んな青森県, 新潟県, 石川県の3県の選抜集団を対象に, 5座の核のマイクロサテライトマーカーを用いた解析を行った。青森県, 新潟県, 石川県の3県の天然林集団と選抜集団の遺伝的多様性は同程度であった。STRUCTURE解析およびNJ系統樹の結果, 新潟県と石川県の天然林集団と選抜集団がその他の集団と遺伝的に異なることが示された。NJ系統樹の結果は各集団の地理的な位置関係を反映しており, 3県の選抜集団がそれぞれの天然林集団から選抜されたことが支持された。検出されたヒバ天然林集団間の遺伝構造は, 天然林の分布変遷や選抜集団の由来に起因していると考えられた。
著者
渡辺 敦子 鷲谷 いづみ
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.65-76, 2004
参考文献数
63
被引用文献数
1

生物多様性の保全という社会的要請に応えることを目的とする保全生態学が集積する知見は,一定の整理を経た後に実社会を動かす政策に反映されることが必須である.ここでは,数年前から生物多様性保全に関わる政策にめざましい進展が認められる日本と,以前から環境保全に関わる先進的な政策を実践しながらも生物多様性条約を批准していない米国について,生物多様性保全上重要な課題のうち,「絶滅危惧種の保全」,「外来種対策」,「遺伝子組み換え生物のバイオセーフティ」にかかわる政策を社会的環境とその歴史的背景および,法的な整備と運用の現状の面から比較・考察した.米国において比較的早くから自然保護・生物多様性保全に資する政策が発展した要因としては,一つにはヨーロッパからの植民と建国以来の激しい自然資源の収奪や大規模な農地開発による生態系の不健全化に直面して醸成された自然保護思想や市民運動の隆盛があった.それと併せ,バイオテクノロジーの発展との関連で生物多様性の経済的価値を強く意識した産業界の思惑および生物学者の政策意思決定への積極的な関与などがあったといえる.それに対して,日本における保全政策は1993年の生物多様性条約への加盟をきっかけとし,過去10年間に関連法整備が進められ,それら法制度整備の有効性に関する評価・改善は今後の課題である.しかし,国内の生物多様性の衰退が急速に進んでいる現状を鑑みると,保全生態学には自然科学としての科学的な厳格さに加え,政策意思決定へのより効果的な寄与が求められるといえよう
著者
渡辺 敦史 田村 美帆 泉 湧一郎 山口 莉未 井城 泰一 田端 雅進
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.101, no.6, pp.298-304, 2019
被引用文献数
1

<p>二つのDNAマーカー,EST-SSRマーカーとgenomic SSRマーカーを利用してウルシ林の多様性評価を行った。EST-SSRマーカーは次世代シーケンサーを利用して新たに開発した。得られたEST情報から2塩基または3塩基モチーフの一定繰り返し数以上を示した21領域にプライマーを設計した結果,最終的に8マーカーが利用可能であった。8 EST-SSRマーカーおよび7 genomic SSRマーカーを利用して,全国各地のウルシ林9集団から採取した377個体を対象として分析した。ウルシは,渡来種であり,クローン増殖が容易であることから遺伝的多様性の喪失が懸念されたが,遺伝的多様性は近縁種であるハゼノキよりもやや高く,著しい喪失は認められなかった。クラスター分析・主座標分析・STRUCTURE分析の結果は,集団によっては特異性が維持されていることを示す一方で,種苗が移動したことによる集団内の遺伝構造の存在を示していた。クローンの存在や小集団化に伴うボトルネックは限定的であり,現在のウルシ林を適切に保存すれば,ウルシ遺伝資源は維持できると考えられる。</p>