著者
備瀬 美香 伊藤 智子 鈴木 雅之
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
pp.S41054, (Released:2017-10-13)
参考文献数
12

本研究は,英語学習方略の中でも英文読解方略に着目し,中学校における方略指導の実態を明らかにすることを目的とした.中学英語教師85名と中学3年生303名を対象に調査を行った結果,中学校ではボトムアップ方略の指導が重視されている可能性が示唆された.また,教職歴の長い教師ほどトップダウン方略の指導を行う傾向にあることが示された.さらに,生徒の方略被指導経験と動機づけの関係について検討した結果,方略の種類に関係なく,方略を指導された経験の多い生徒ほど読解意欲や効力感が高く,長文が好きである傾向にあった.
著者
池尻 良平 大浦 弘樹 伏木田 稚子 安斎 勇樹 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.53-64, 2017-05-20 (Released:2017-05-26)
参考文献数
20

MOOC(大規模公開オンライン講座)の普及によって遠隔地であっても無料で大学の講義を受講できるようになっている.しかし,講座の学問領域において何が学習されているかを実証的に評価している研究は少ない.そこで本研究では,MOOC の歴史学講座の受講による学習効果を評価した.講義内容を視聴し課題に取り組んだ実質的な受講者を分析した結果,歴史領域の知識の獲得を要する各週課題の平均得点率はどれも80%以上,歴史的思考力を要する講義課題の平均得点率は68%であることが確認された.一方,事前事後の質問紙・テストで測定した歴史的思考力は事前に比べて事後で有意に向上したものの,効果量としては小さいということが示された.これらの結果を踏まえ,講義映像と掲示板で構成されるMOOC に対し,より歴史的思考力を育成する方法として,対面学習と組み合わせたり,CSCL 研究の知見を踏まえた機能を追加したりする改善方法も示した.
著者
神邊 篤史 永井 久美 松原 行宏 岩根 典之 岡本 勝
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.143-150, 2009-10-10 (Released:2016-08-06)
参考文献数
7

運動学習による動作訓練は,新たな身体技能の獲得や日常生活における身体機能の再獲得において重要である.本報告では上肢の大きな動作の学習のための仮想環境について提案する.本システムにおいて,学習者は環境内に提示されるポインタの位置を視覚や触覚を通して確認することで,動作を修正しながら目標位置に向かって上肢を動かしていく.具体的には,cube型環塊と三次元迷路環境の2つの環境での訓練により,上肢の大きな動作を行う際の運動の計画,運動の実行と修正や,問題のある筋の特定が可能である.健常大学生を対象とした実験では,本システムを用いた動作習熟の可能性を確認できた.
著者
山室 公司 久保田 賢一
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.Suppl., pp.1-4, 2010-12-20 (Released:2016-08-07)
参考文献数
11
被引用文献数
3

本研究の目的は,教育工学の研究方法と研究対象について分析し,今後の研究の方向性を展望することである.2003年度から2008年度まで6カ年分の「日本教育工学会論文誌」に記載された論文を対象に研究方法と研究対象について分析を加えた.研究方法に関しては,量的研究法が約4分の3を占めていた.質的研究法のデータ収集法としてはインタビューが多用され,量的・質的両方を併用している研究もある.研究対象の校種別では高等教育が6割以上を占めている.量的研究の場合は被験者が学習者である研究が多く,校種は万遍なく分散しているが,質的研究の場合は研究対象が教授者もしくは高等教育の学習者に偏在していることなどが明らかになった.
著者
佐藤 朝美 佐藤 桃子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.49-52, 2013

本研究では,子どもを取り巻くメディアに対する親の意識調査と,タブレット用デジタル絵本について「読み聞かせ」の観点から分析を行う.親子による絵本の読み聞かせは,親子のコミュニケーションを促すとともに,子どもの認知発達を促す場としても重要な役割を果たすという.紙媒体からタブレットに変化する事で,どのような差異が生じるか把握するために,紙絵本とタブレット用デジタル絵本の親子による読み聞かせ場面を記録し,質的に分析を行った。その結果,紙絵本では親主導で読み聞かせが行われるのに対し,タブレットでは子ども中心で操作が行われるケースが多く見られた.いっぽう,タブレットでは絵本に接する時間が増え,子どもからの発話数も増える傾向にあった.親子の対話も紙絵本と異なる内容が生じており,飽きずに物語世界を繰り返し堪能している様子がみられた.
著者
吉冨 友恭 今井 亜湖 埴岡 靖司 前迫 孝憲
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.165-168, 2008
参考文献数
3
被引用文献数
1

本研究では河川上流域の瀬・淵を対象として,児童が川をどのように観察するか(川の見方)を小学生を被験者として調査し,その結果から得られた知見をもとに,河川の生物と環境を題材としたデジタルコンテンツを開発した.開発したデジタルコンテンツは,児童の川の見方の調査実施場所で撮影された生物と環境の短編映像を素材とし,河川環境の縦横断面を表現したイラストや360度回転させながら風景全体を確認できるバーチャルリアリティ画像から,これらの素材を視聴できるようにした.また,開発したデジタルコンテンツが児童の川の見方を補完するものであるかを評価した.
著者
駒谷 真美 無藤 隆
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.9-17, 2006
参考文献数
19
被引用文献数
1

児童は,テレビをはじめメディアが発信する様々な情報を受け取っている.彼らには,メディアと正しく上手につきあうメディアリテラシー教育が必要である.そこで本研究では,小学校低学年を対象とし,「テレビの中の空想と現実の理解」に特化したメディアリテラシー教育入門教材「うっきーちゃんのテレビふしぎたんけん」(ビデオ・ガイドブック)を開発し,実践において総括的評価を行った.プレポストデザインの統制群法による授業実験を公立小学校1学年2学級で実施した.その結果,「テレビの現実性理解度」について実験群が統制群より有意に上昇し,本教材の効果が認められた.この教材活用により,児童はメディアリテラシー教育への「気づき」と「やる気」を示した.加えて,本教材を使用しても児童の一般的なファンタジーは維持されることがわかった.
著者
姫野 完治
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.Suppl., pp.13-16, 2017-01-15 (Released:2017-03-06)
参考文献数
10

本研究では,公立小学校教師1名を対象として,授業者の視線から撮影・記録した映像をもとに,授業中の教師の視線傾向や意図を継時的に振り返る授業リフレクションの試行と評価を行った.その結果,教師の視線に焦点を当てた授業リフレクションは,授業中に教師が無意識で行っている教授行動の意図の表出や,授業中の子どもの様子を教師自身の視線を通して対象化することに寄与するという特徴があることが明らかになった.また,教師の視線から撮影された映像に資料的価値が認められた一方で,その利用目的を明確にしておく必要性があるといった課題が示された.
著者
山口 洋介 三宮 真智子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.Suppl., pp.113-116, 2013-12-20 (Released:2016-08-10)

本研究では,思考過程を推測するための新たな手法として,「タイピング思考法」を提案し,その有効性について検討した.タイピング思考法とは,「課題遂行時に,頭の中で考えている内容を,そのまま即時にコンピュータにタイピング(キーボード入力)する」という手法である.大学生および大学院生10名を対象に,タイピング思考法を実施してもらった後,アンケートへの回答を求めた.その結果,参加者は自身の思考内容をプロトコル上におおむね反映できたと報告し,困難感も比較的小さいことが示された.さらに,得られたプロトコルをもとに,創造的思考方略を抽出・分類した結果,多様な側面が見出だされた.
著者
尾関 基行 野宮 浩揮
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.23-32, 2016-06-20 (Released:2016-06-17)
参考文献数
8

本論文では,近年話題となっている“人工知能”をテーマとした学生実験の設計と実践について述べる.情報工学分野の学生実験でよく実施されている画像処理やシステム制御といったテーマに比べて,人工知能の取り扱う範囲は広く,また各々が独立しているため,トピックを単純に並べただけではその関連性が掴みにくい.そこで我々は,ミンスキーの心的活動の6階層モデルを学生実験の土台に据え,その各階層に一つずつトピックを割り当てることで,トピック間の繋がりを強く意識させる学生実験を設計した.本学生実験では,小型移動ロボットがエネルギーを補給しながらポイントを獲得するタスクを設定し,シミュレータと実機(e-puck)による実験環境を用意した.実際に学生実験として3年間実施し,アンケート評価を行った結果,ミンスキーの心的活動の階層に各トピックが紐付けられたことで相互の関連性がよく理解できたという回答が多く得られた.
著者
清水 康敬 堀田 龍也 中川 一史 森本 容介 山本 朋弘
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.115-123, 2010
参考文献数
13
被引用文献数
2

教員のICT活用指導力を向上させる教員研修Web統合システム(TRAIN)を開発した.このTRAINでは,教員のICT活用指導力の向上や校内でのICT活用の普及促進に役立つことを意図した短時間のビデオ・モジュール218本をストリーミング視聴ができるようにした.また,全ビデオ・モジュールのタイトルと内容説明,画面の一部,説明者名をA4版半ページ程度で分類整理したハンドブックを作成し,これを参考に視聴することができるようにした.さらに,TRAINを利用した自己研修,校内研修,神合研修への支援を強化するために,ビデオ・モジュールの中から50の実践事例を選んで,アドバイス付き事例を作成した.これらと関連した指導場面,実践事例とともにTRAINから提供した.教員のICT活用指導力に関する234件のFAQを提供し,このFAQを利用した学習も可能とした.このTRAINに関する教育委員会対象の評価を実施した.
著者
杉原 真晃 橋爪 孝夫 時任 隼平 小田 隆治
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.341-349, 2015-03-20 (Released:2016-08-11)

本研究では,大学初年次教養教育科目としてのサービス・ラーニングにおける現地での活動の質の向上という課題に対して,地域住民とともに活動を行う参与型の実践,評価者に地域住民も加わる実践,地域住民と教員が協働で評価基準を開発・活用するケースについて,評価基準の協働作成と学生への提示の有効性を検討した.その結果,現地での活動の目標の意識化・再設定,意義・方法・役割の明確化,現地の人々や他学生との意義の共有・一体感の獲得等に対して,評価基準が有用であることが明らかとなった.学習成果との関連については,評価基準に示された項目の中で,現地にて重要視されており,学生がそれを達成し,評価基準がそれに対して有用であったと感じられた項目が多い結果となり,本授業で活動・学習の質の保証・向上が概ね達成されており,協働作成した評価基準が有効に機能したことが明らかとなった.
著者
望月 博文 山田 朗
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.73-76, 2013

プログラミングにはパズルを解くような楽しさがある.しかし,プログラムの作成を行うためにはプログラム言語の習得が必要であり,その難解なルールを覚えなくてはならない.そこで,プログラミングの持つ楽しさのみを取り出すために,カードを並べることでプログラム言語を記述する代わりとすることを試みた.更にフローチャートとあみだくじの類似性を利用して,遊びながらプログラミングの学習ができるカードゲームを開発した.
著者
木原 俊行 島田 希 寺嶋 浩介
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.167-179, 2015

本研究は,学校における実践研究の発展要因の構造に関するモデルを開発することを目的とするものである.そのために,4つの小中学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,実践研究の詳細について,聞き取り調査を実施した.得られたデータを,「専門的な学習共同体」の発展要因に関する先行知見を参照して整理し,また4校間で比較して,学校における実践研究の発展を促す要因の構造を暫定的にモデル化した.次いで,モデルの信頼性を検証するために,あらたに別の3つの小学校を対象として,研究推進リーダーを務めた教師に,同様の聞き取り調査を実施した.得られたデータを,再度「専門的な学習共同体」の発展に関する知見を用いて分析し,3校間で比較して共通項を導き出した.そして,それらとモデルの整合性を分析して,その信頼性を確認した.また,一部の要因を加えて,要因間の順序性や関係性を考慮し,モデルを精緻化した.
著者
宮田 明子 山本 朋弘 堀田 龍也 伊藤 三佐子 片山 淳一 鈴木 広則
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.49-52, 2016

校務支援システムを導入した小・中学校の教員を対象に,校務支援システムの運用前・1年後・2年後の3回において質問紙調査を実施し,校務の状況に関する教員の意識および校務支援システムの機能の必要性についての経年比較を行った.その結果,校務支援システムの運用前と比較して1年後・2年後に,教員は校務の状況が改善されたと感じること,校務支援システムの機能の必要性を高く感じることが示された.また,校務支援システムの利用年数が1年目の教員と比較して2年目以降の教員は,児童生徒の状況把握や帳票印刷の機能に対して,より高く必要性を感じていることが示された.
著者
近藤 智嗣 芝崎 順司 有田 寛之 真鍋 真 稲葉 利江子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.45-48, 2006
被引用文献数
8

本研究の目的は,ミクストリアリティ(MR)技術を博物館の展示に応用し,1)MR型展示システムと 2)推定支援型展示手法を提案することであった.本研究では,国立科学博物館新館の恐竜コーナーを研究事例の対象としたシステムを開発した.このシステムは,MR型展示の機能として,生体復元された恐竜の3DCGを化石骨格標本に合成させて提示でき,また,そのコンテントは恐竜の解説だけでなく,推定支援型展示の機能として,重さや皮膚の模様などを推定しながら見学するという内容であった.評価調査の結果,3DCGの安定性については問題点が指摘されたが,これらの展示手法については高い評価が得られた.
著者
吉岡 敦子
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.115-123, 2007
被引用文献数
2

インターネット情報検索は,検索テーマに関する既有知識と検索したサイトから得られる知識を体系化させながら検索を進めていくことから,本研究では,インターネット情報検索を知識構築過程と捉えて,知識構築を促すメタ認知とメタ認知活性化のための支援の効果について,特徴的な事例を挙げて質的に検討した.その結果から,「検索テーマについての既有知識や検索経験を検索のリソースにするためのメタ認知」と「サイトの文書から有効な情報を得て検索のリソースにするためのメタ認知」が有効なことが明らかになった.求める情報を得ることができた検索者は,これらのメタ認知を促して確認したり理解するなどの認知活動を行っている一方,求める情報を得ることができなかった検索者は,メタ認知を活性化できないために判断できず迷っていることが示唆された.また,これらのメタ認知を促す支援を与えることの有効性も示唆された.今後の課題として,検討した事例数が少ないことから,量的なデータにもとづいた分析を行うことと,本研究で与えた支援だけでは効果がみられなかった検索者に対する支援方法について解明することが挙げられる.
著者
伊藤 清美 柳沢 昌義 赤堀 侃司
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.491-500, 2006
被引用文献数
7

eラーニングやコンピュータを使う授業などでは,Web教材を使った学習が使われている.しかし,それらの教材は主に学習者のディスプレイ上に表示されるため,教科書や印刷教材のように自由に書き込みを行うことができない.本研究では,学習者が印刷された教材に書き込むのと同様にWeb教材に書き込めるシステム,WebMemoを実現した.学習者はWeb教材にメモ・蛍光ペン・図などを自由に書き込み・保存・閲覧することができる.Webページに描画されたデータはシステム内のデータベースに保存され,次回参照時にも表示される.大学生を被験者とし,実際の授業で3種類の評価実験を行った.その結果,紙と同様にWeb教材に直接書込むことの有用性が評価され,Webへ書き込んだ内容を見直すことによる学習効果があることが明らかになった.また,紙への書き込みと比較した結果,直線,囲みなどといったインタフェースの改良の必要性が示された.
著者
高橋 純 高坂 貴宏 前田 喜和 森谷 和浩 堀田 龍也
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.317-327, 2014

韓国の公立小学校の1人1台の情報端末の導入初期段階において,1名の教員の3時間分の算数科の授業を対象に,活用されたICTの種類や時間,授業過程や授業形態の特徴の検討を行った.その結果,1)教員は,93%の授業時間でICTを活用しており,最も活用時間の長いハードウェアは大型提示装置であり,ソフトウェアは授業支援システム(81%)であった.2)教員が授業支援システムで最も活用した機能は,ペン描画と児童のデジタルノート一覧と提示であり,限られた機能が多用されていた.3)児童は,57%の授業時間でタブレットPCのみを活用しており,最も活用時間の長いソフトウェアは授業支援システム(90%)であった.4)授業過程は,導入,展開,まとめといった我が国でも典型的にみられるものであった.展開では2〜4回の課題解決学習が繰り返し行われていた.5)授業形態では,一斉指導が最も長く(58%),次いで個別学習(29%)であった.
著者
安斎 勇樹 益川 弘如 山内 祐平
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.287-297, 2013

本研究の目的は,協同制作を課題とした大学生向けのワークショップにおいて,創発的コラボレーションを促すプログラムの活動構成の指針を示すことである.本研究では,ジグソーメソッドと類推の効果を組み合わせた「アナロジカル・ジグソーメソッド」という活動構成を仮説として設定した.アナロジカル・ジグソーメソッドのほかに,ジグソーメソッドと類推の有無によって合計4群の活動構成を設定し,それぞれ2回(各6-7グループ)の実践を行い,各グループの制作プロセスを質的に分析した.その結果,アナロジカル・ジグソーメソッドによって活動を構成すると,創発的コラボレーションが促されることが示唆されたほか,視点の相違から類推が活用され,さらにそれが異なる視点から再解釈されたり,複数の概念を結びつけたりする可能性が示された.