著者
有馬 聡一郎 佐川 京子 北川 千佳子 河村 加代子 藤原 拓也
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.168, 2010

<はじめに>MSWとして様々な疾患を抱える患者と関わる中で、医療費の支払いに苦慮している患者への対応を行う場面は多い。中でも近年外来化学療法を受けている患者からの相談が増加しており、この要因としては、DPC導入に伴う化学療法の「入院治療」から「外来治療」へのシフトが考えられる。この度「治療と生活」を両立することが困難になり、主治医に治療中止を申し出た患者が来談した一事例を報告する。<患者情報>60歳男性 膵臓がんを罹患。仕事もできなくなり約10万円の傷病手当で生活。月約7万円の治療費と通院費が生活を圧迫し、食事の回数を減らすなど日常生活も破綻している状況。親族の援助も得られず自暴自棄となる。幸い治療は奏功しがんの進行は抑えられているが、治療を断念する旨主治医に申し出る。<関わりと経過>患者の情報収集を行い、後日面談。直接生活暦や世帯状況、収入や生活費について細かく情報を得ることで、多角的視点から生活実態を把握。これにより以前福祉事務所へ相談に行きながらも断念した「生活保護」の申請が可能であることを確認。MSWより福祉事務所へ治療を断念するまでの経緯について詳細な情報を提供し患者にも生活保護申請を進言した。その申請も受理され、生活保護は決定した。治療費の不安が軽減した患者は表情も良く、当院への通院治療を続けている。<考察>経済的事情で「治療と生活」の両立が困難な患者は、非常に厳しい選択を迫られる場面がある。生きるために必要であるはずの治療が生活を破綻に導くのは本末転倒である。このたびの事例で適切なタイミングでのMSWの介入が治療継続に繋がることがわかった。<おわりに> 病気や障害を抱える患者はそれだけでも相当なストレスを被り、またそれに伴い社会的な不安や負担も増大する。MSWはそれに対応し、療養上の負担を軽減できるよう、また治療に専念してもらえるようなアプローチが求められる。
著者
渡辺 隆行 大城 貞次 守田 昌美 八木 敦子 今井 厚 寺島 茂 高野 靖悟
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.104, 2009

〈はじめに〉わが国のHelicobacter pylori(以下H. ピロ<BR>リ)感染者は推定5,000万人とも言われている。H. ピロリ<BR>は胃炎や胃十二指腸潰瘍の主な原因として,さらに胃癌と<BR>の関わりも注目されている。当院では2005年よりH. ピロ<BR>リ感染診断と除菌判定法の検査として尿素呼気試験,2008<BR>年4月より尿中H. ピロリ抗体検査を行っている。尿素呼<BR>気試験は非侵襲的,簡便で感度,特異度ともに高く,尿素<BR>呼気試験陰性の場合は除菌成功の信頼性は高い。<BR>〈目的〉H. ピロリ検査の現状を把握し,スクリーニング<BR>検査として人間ドックに新規検査項目としての導入効果が<BR>あるか検討した。<BR>〈方法〉2008年2月から2009年1月までの1年間における<BR>尿素呼気試験440件の陽性率,年代別検査依頼数と陽性<BR>率,尿中H. ピロリ抗体の陽性率と尿素呼気試験陽性患者<BR>の除菌治療後の除菌成功率について検討した。<BR>〈結果〉尿素呼気試験陽性率は27%であった。年代別検査<BR>依頼数と陽性率を比較すると,30代では42件で38%,40代<BR>では66件で23%,50代では105件で23%,60代では151件で<BR>26%,70代では58件で33%,80代以上では14件で29%で<BR>あった。尿中H. ピロリ抗体の陽性率は58%であった。陽<BR>性患者の除菌治療後の除菌成功率は85%であった。<BR>〈考察〉尿素呼気試験陽性患者の除菌治療後の除菌失敗率<BR>は15%であった。薬剤耐性菌の存在も確認されたとの報告<BR>もあり,1回の除菌だけでは効果がない場合も考えられ<BR>る。尿素呼気試験と尿中H. ピロリ抗体との陽性率の比較<BR>では,尿素呼気試験の陽性率が低くなったことからも,今<BR>後,人間ドックのスクリーニング検査としては,検体採取<BR>が容易で迅速に結果報告が可能な尿中H. ピロリ抗体を行<BR>い,除菌後は尿素呼気試験でH. ピロリの有無を評価する<BR>方法を提案していきたい。<BR>
著者
谷口 清州
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.370, 2007

新型インフルエンザによるパンデミックは、20世紀に入って以降、1918-19年、1957-58年、1968-69年と3回が記録されており、それぞれ、スペインインフルエンザ(原因ウイルスはA/H1N1亜型)、アジアインフルエンザ(A/H2N2亜型)、香港インフルエンザ(A/H3N2亜型)と呼ばれているが、その後、2005年現在までパンデミックの発生はみられていない。インフルエンザに関する科学的知見が蓄積されるにつれ、再びパンデミックがおこることが懸念され、1993年にはドイツでの第7回ヨーロッパインフルエンザ会議、また1995年に米国でのパンデミックインフルエンザ会議での報告をはじめとして、多くの専門家から「人の世界において流行する新型インフルエンザウイルスが早ければ数年のうちに出現する」との警告が出されていた。世界保健機関(WHO)は、1999年4月に、Influenza pandemic preparedness plan. The role of WHO and guidelines for national or regional planning. Geneva, Switzerland, April 1999を発表し、各国でPandemic Planを策定することを勧告し、2005年5月には、WHO global influenza preparedness plan. The role of WHO and recommendations for national measures before and during pandemics.(グローバルインフルエンザ事前対策計画)を発表してその具体的な方針を示したことから、世界各国のパンデミックプランの策定は促進された。そして、近年の鳥インフルエンザのヒトへの感染事例の多発を受けて、現在世界では、H5N1亜型の鳥インフルエンザウイルスがヒト世界に侵入してパンデミックを起こすのではないかという目前の脅威に対して莫大な予算をかけて準備を進めており、本邦においても、2007年度末に新型インフルエンザ専門家会議が、サーベイランス、公衆衛生対策、ワクチン及び抗ウイルス薬、医療、情報提供・共有の5つの部門別に設置され、2007年3月にそれぞれのガイドラインとしてまとめられた。もちろん、この背景にはこれまでの歴史的な背景からH5N1亜型のような高病原性の鳥インフルエンザウイルスはヒト世界には侵入しないのではないかと議論も理解した上で、これが近い未来にパンデミックを起こさなかったとしても、他の亜型による発生の危険性は依然として存在する。また、これに対して準備を進めることは、大地震、ハリケーン、津波などの自然災害、バイオテロなどの人為災害、すべての健康危機から国民を守ることにつながるという国家戦略としての危機管理の考え方がある。ここでは、歴史的なLesson Learnedや世界の対応状況をもとに、パンデミック対策の戦略を考えてみたい。
著者
澁谷 直美 大浦 栄次
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.352, 2007

〈緒言〉高齢者の骨密度増加に及ぼす因子について3年前の本学会で報告した。つまり、運動習慣を増やした群において、1年後に骨密度が増加しており、食生活においてカルシウム摂取を増した群では、骨密度の低下が少なかった。今回は例数を増やし、また経過観察期間を2年後とし、高齢者の骨密度増加に関わる要因を再検討した。〈対象〉JA高岡、JAいなば、JA氷見市の協力を得て、承諾が得られた転倒予防教室等に参加した60歳以上の男女で、平成13年度から平成18年度の5年間の測定期間のうち、2年後の測定値が得られた者。〈方法〉超音波を用い、骨量を踵骨にて測定(US法、アキレス)。SOS値(皮質骨測定値)とBUA値(海綿骨測定値、以下BUAとする)のうち、今回はBUA値を用い、現病歴・既往歴、身体活動量の変化や食事内容の変化による2年後のBUA変化率を比較検討した。〈結果・考察〉対象者数は、男56名(平均年齢75.1歳)、女236名(平均年齢73.5歳)である。そのうち増加者は男21名37.7%、女89名37.7%であった。2年後の平均BUA変化率は男-1.77%、女-1.46%で男女とも骨密度が減少していたが、男の方がより減少していた。<BR>胃や腸の手術歴がある者は、男性7名、女性9名で、平均BUA変化率は男性-5.77%、女性-3.88%であった。関節リウマチや腰痛・膝痛等の整形外科的疾患の既往のある者は、男性9名、女性46名で、平均BUA変化率は男性-3.96%、女性-2.07%であった。脳出血や脳梗塞の既往のある者は女性4名で平均BUA変化率は、-8.02%であった。胃や腸の手術歴は骨吸収を悪くするため骨密度が低下したと考えられる。また、整形外科的疾患や脳血管疾患は、運動による刺激が少なくなるため骨密度が低下したと考えられる。今までより身体活動を増やしたと答えた者は、女性25名で、平均BUA変化率は+1.33%で増加していた。運動の種類で、布団上での体操や屋内での軽度の身体活動を増やした者等を除き、より活動的な散歩やペタンクなどの屋外での活動を増やした者は12名で、平均BUA変化率は+4.48%であった。高齢者でも運動を増やすこと、特に屋外での運動を増やすことで、骨密度が増加すると考えられた。今までより身体活動量が減った者は、女性では11名で、平均BUA変化率は-2.65%であった。食事に注意した者は女性で22名であった。平均BUA変化率は2.48%で骨密度は増加していた。牛乳やヨーグルトを食べるようにした者の他に、ひじきや小魚を粉にして食べたなど食べ方に工夫をした者がいた。〈まとめ〉2年間に、運動を積極的にとりいれたり、カルシウムをより多くとること等、生活習慣を変えることにより、高齢者においても骨密度が増加すると考えられた。
著者
土屋 千恵 郷道 順子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.262, 2007

〈緒言〉核家族化、少子化が進む現代社会において、父親の育児参加の必要性が論じられている。国単位での調査、報告が進む中、高度経済成長時代の親役割分業制から、父親も育児参加はしているもののまだまだ母親の負担が大きい。当院でも妊娠中、分娩、産後と父親への関わりを持っているが、母親と比べ、児の誕生と共に親としての役割を果たしていくのは難しいと感じた。そこで、妊娠後期に父親、母親となる為に、何を考え、どう行動しているのか現状を知り、私たち産科スタッフがどう関われば親を育む一助となれるのか検討したのでここに報告する。<BR>〈対象及び方法〉当院産婦人科に通う妊娠30週以降の妊婦とその夫41組(帰省分娩を除く)にアンケートを配布、回収した。分析では先行研究と研究者が育児参加に影響を及ぼすと考えた「子どもの数」、「夫自身の父親の育児協力」を因子として、質問したそれぞれの項目とχ2検定、一元配置分散分析を行った。<BR>〈結果〉本研究において育児参加に影響を及ぼすと考えた因子、子どもの数、夫自身の父親の育児協力についてのそれぞれの項目とχ<SUP>2</SUP>検定(p<0.05)を行ったが、帰宅時間以外での関係性はみられなかった。また、子どもがうまれたらどのような育児協力をしようと思っているかの項目と家族構成、夫自身の父親の育児協力、赤ちゃんの面倒をみた事があるかどうかの因子で一元配置分散分析を行ったが、こちらも関係性はみられなかった。<BR> 対象者は核家族が7割を占め、すでに子どもを有している夫婦が半数であった。子どもがおらず、赤ちゃんの面倒をみた事がある夫は約20%だった。夫自身の父親が育児に協力的だと思っていた夫は48%いた。妻の妊娠を肯定的に受け止め、胎児の成長を喜び、妊娠に関して肯定的な感情が多かったが、母親学級や助産師外来の夫の参加は2割に満たなかった。育児参加について、赤ちゃんが生まれたら「おむつ交換」「沐浴」「抱っこ、あやす」など高い割合で手伝おう、手伝いたいと思っていることがわかった。妻に夫に希望する育児行動を質問したところ、ほぼ同じ項目であった。育児行動に優先順位をつけてもらうと夫は「おむつ交換」などの直接的な育児行動が順位として高く、妻は直接的な育児行動のほかに「精神的なねぎらい」の順位が高かった。<BR>〈考察〉赤ちゃんの接触体験や自分自身の父親の育児協力、夫婦が有している子どもの数が育児参加に影響を及ぼすという結果は得られなかった。アンケートの結果から多くの夫は妊娠、胎児に関心を持ち、肯定的な感情を抱いており、育児に参加しようという気持ちも持っている。その気持ちが実際の育児行動につながるように、妊娠中から多くの夫が母親学級や助産師外来に参加できるような取り組みが必要と感じた。また、妻は夫が考えている以上に精神的なねぎらいを求めており、直接的な育児行動だけではない、共に親として子を育て、共に助け、支えあう存在としての夫を求めていると考えられる。
著者
鳥谷部 邦明 高木 幹郎 村田 哲也 濱田 正行
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.59, 2009

〈諸言〉サルモネラ菌は細菌性胃腸炎の主な原因菌である<BR>が,臨床症状が他の細菌性胃腸炎より激しいことが多く,<BR>急性腎不全の合併も稀ではないとされている。今回我々は<BR>急性腎不全を合併したサルモネラ胃腸炎の1例を経験した<BR>ので報告する。<BR>〈症例〉58歳男性。飲食店で昼食にエビ天丼を食べた数時<BR>間後より下痢,嘔吐が出現し,翌日には吃逆も出現した。<BR>1日に20回以上の下痢,嘔吐を繰り返し,ほとんど食事,<BR>水分も摂れない日が続いた。それから4日後に衰弱してい<BR>るのを家人が発見し,近医から当院へ紹介となった。受診<BR>時,バイタルサインに大きな異常は認めないものの,口腔<BR>内・皮膚の乾燥,頸静脈の虚脱,四肢の冷感を認め,脱水<BR>が疑われた。血液検査では血液濃縮,異常な高窒素血症,<BR>代謝性アシドーシス,CPK 高値を認めた。腹部エコーで<BR>は腎萎縮や水腎症は認めず,尿検査では腎前性が疑われた<BR>ため,感染性胃腸炎に伴う腎前性急性腎不全の診断で入院<BR>となった。入院後,初期輸液にて尿量の反応を認めたた<BR>め,輸液を続行し高窒素血症の改善を認めた。また便培養<BR>より非チフス性のサルモネラ菌O―9群が検出され,下痢<BR>が非常に激しかったため,FOM の内服を行った。下痢が<BR>改善した後に経口摂取を開始し,第24病日に輸液を終了し<BR>て第26病日に退院となった。退院後の経過は良好でBUN,<BR>Cr 値は正常値まで回復した。<BR>〈結語〉サルモネラ胃腸炎により腎前性急性腎不全をきた<BR>した原因は主に脱水と考えられ,補液によって腎不全は著<BR>しく改善した。高度の腎不全であっても腎前性の場合は経<BR>過に注意しつつ十分な補液を施行することが重要と考えら<BR>れた。<BR>
著者
疋田 善平
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.401, 2009

〈すじがき〉私は母からは供養して人助けを,父からは三<BR>方よしを仕込まれ,国立京都病院で予防に勝る治療なし,<BR>と,イメージ療法を学びました。<BR>高知の僻地で住民参加のPPC 医療から,満足死を提唱<BR>し,全村病院構想からケア完備集落構想・在宅ホスピスへ<BR>と前進するも,施設死が70%を超える様になり,この70%<BR>をどう考えたらよいのか? 誰もが住み慣れた地域の自宅<BR>で自分らしく暮らしたいが,ケアが必要になった時,ケア<BR>を求めて施設に入るが,ケアは人に必要なので,施設には<BR>無くても良いから〔住まい〕と〔ケア〕を分離して,ケア<BR>を宅配すれば,入所による損失…地域を・家族を・自分を<BR>…等々を失うことなく自宅で終われるでしょう。<BR>ところが,日本には古来,物より心・人の道を大切にす<BR>る素晴らしい文化があり,ケア,即ち人をお世話するの<BR>は,ひとを思いやる心が基本にあるのです。然し,戦後,<BR>育児方法や核家族化など,アメリカナイズされ,自己中心<BR>的で金権至上の市場原理主義から,競争社会へと社会環境<BR>が変化し,家族の絆が薄くなり,相互扶助力の低下に加<BR>え,結晶的能力の低下,等々が思いやる心が無くなり<BR>秋葉原事件などが起ったのではと思う。(日米育児差・2<BR>~3の成績を示す)<BR>〈まとめ〉前回は満足死した方々は家族の絆が強く,宗教<BR>心があり,仕事熱中人etc でしたから,老人の願望である<BR>家庭円満,子供に迷惑をかけない,延命医療お断り,出来<BR>たら自宅で終わりたいでしたから,自分の願望をバネに家<BR>族の絆をと申しましたが,今回は家族の絆を強くする,家<BR>族を思いやる心を,お隣さんにも,いや,他人様にも同じ<BR>気持ちで毎日を暮らせば,それは必ず自分に返ってきま<BR>す。そうすると自分もうれしく心豊になり感謝して旅立て<BR>ますよ。<BR>
著者
熊田 克幸 桑原 清人 柴田 由美 白川 舞 堀田 宏 近澤 豊
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.322, 2008

〈緒言〉近年、オーダリングシステムや電子カルテシステムの導入によってコンピュータ端末がより身近な存在となり、院内ネットワークを利用することで医薬品情報をはじめ様々な情報を共有することが可能になった。しかし、最新の情報を提供するためには、医薬品情報の頻回にわたる更新、膨大な労力と時間、コストの問題からも難しい状況にある。 その配信方法においても医療従事者が必要とする際にはいつでも最新情報を見慣れた形式で閲覧できるシステムを構築し運用することは非常に有用であると思われる。そこで、今回市販データベースソフトウエアのMicrosoft Access 2003を用い、オーダリングシステム端末上で利用可能な院内電子医薬品集とそれにリンクした添付文書参照システムの構築と運用について検討を試みたので報告する。<BR>〈方法〉1.医薬品集の機能・項目の検討<BR>簡便な操作性、必要最小限な機能、シンプルな表示とし薬品検索は医薬品の商品名または一般名の一部を入力することで可能にした。 検索薬品表示後にはワンクリックで情報の印刷や同効薬品の表示および各製薬会社から提供される医薬品添付文書のPDFファイルを表示する。<BR>2.利用可能な端末の検討<BR>医事ネットワーク上のデスクトップ端末103台(オーダリング端末62台、レセプト端末28台、看護システム端末7台、事務用端末6台)。OSはすべてMicrosoft Windows XP Professional SP2である。<BR>3.利用端末における更新方法の検討<BR>各端末における更新は、メンテナンスフリーにするために端末起動時または24時間毎に操作の必要なしで自動に更新されたファイルをダウンロードしサーバーと同期する。<BR>4.医薬品情報の更新・チェック機能の検討<BR>情報更新はサーバー上で随時行い、医薬品添付文書のPDFファイルは、各製薬会社の提供または医薬品医療機器情報提供ホームページよりダウンロードしサーバー上のファイルを更新する。添付文書改訂情報はインフォコム社の医薬品データベースDICSを利用し更新をチェックする。<BR>〈結果〉日常業務の中で検索したい医薬品情報は医薬品集に掲載されている薬品の効能・効果や用法・用量であることが多い為、その内容を短時間で検索し充分理解できることが重要である。また、その内容では不十分な際、より根拠に基づく詳細情報である添付文書の参照が出来るように、電子医薬品集は紙媒体の医薬品集をデータベース化した基本の医薬品情報と医薬品添付文書PDFファイルの2段階とした。また、薬効分類は実務に使用できる分類がないため、当院で細分化し同効薬品の検索および表示に利用した。<BR> 医薬品情報の更新や添付文書の改訂は不定期に案内があるうえ、随時行う必要があり平成19年度は当院採用1,362品目のうち815品目の添付文書改訂があったがチェック機能により更新時期を容易に把握することができた。また、各端末はサーバー上のファイルを参照するのではなく任意にファイルをダウンロードして使用できるため、常時ネットワークに接続していないモバイル端末でも使用可能であり、複数の端末での同時使用やメンテナンス中にも制約を受けることなく使用できる。今後、電子医薬品集の需要も高まることが予想され、電子医薬品集の機能向上を図ることが重要である。
著者
丸山 雅和 長島 美幸 白瀬 昌宏 古屋 香 松田 訓弘 成田 孝行
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.107, 2006

今回、過去5年間におけるシリンジポンプ保守管理データについて、機器不具合事例をFMEA分析によって定量評価し、現シリンジポンプ中央管理体制に関して考察したので報告する。<br><b><方法></b> 保守管理データより発見し得たシリンジポンプ不具合の各事例に対し、当院独自に定義したFMEAワークシート及び評価点表を作成し、機器不具合の影響度、致命度、RPN(危険優先指数)を算出し、定量評価及び特性要因図を作成、現シリンジポンプ中央管理、保守管理体制における改善箇所の抽出とシリンジポンプの安全管理に向けた対策を考察した。<br><b><結果></b> 過去5年間の保守管理データより、RPN平均4.93、(最高値:16.8、最小値:0.308)、致命度平均975.5/6000(最高値:2160、最小値:96)影響度平均29.3/60(最高値:38、最小値:7)を得た。<br><b><考察・まとめ></b> 致命度、影響度、RPN(危険優先指数)を算出することにより明確な対策作成順序及び中央管理体制、保守管理法に関する対策を明瞭化することができた。当院における現シリンジポンプ中央管理体制は基本的に予防保守を行っておらず、発生不具合の致命度、影響度について診療を観点に入れて評価すると、評価内において下位にあったものでも診療においては無視できるものではないと思われた。<br> 今回のFMEA結果より中央管理・保守管理体制におけるシリンジポンプ予防保守の必要性または中央管理方法の改善は示唆されたものの、経済的要因やマンパワー等を考慮すると完全な予防保守は不可能であるのが現状である。今回の結果を更にいろいろな観点から分析し、より信頼性の高い体制を確立していくこと、及び保守管理データの評価を行いデータベースとして活用できるシステムの構築が望まれる。
著者
納 光弘
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.3, 2008

椎貝学会長から『この学会に全国から参集する医師・看護師の皆さん方に、あなたがこれまで実践してきた「医学する姿勢」、「未知の病気」にせまる姿勢、「医師・看護師」にとって基本となる姿勢について話してほしい』との依頼を受け、身に余る光栄と感動してお引き受けした。 タイトルは、夢を追い続けてきたこれまでの私の歩みを語る中から何かをお伝えできればと考え、『夢追って生きる』とさせていただいた。<BR> 私は、昨年3月、鹿児島大学を定年退職し、現在66歳になるので、24歳で医学部を卒業して以来、今日までの42年間の私の夢追いの歩みを語りたい。私が医学部を卒業した1966年当時は、学園紛争の火が全国で燃え広がっていた時期にあたり、私達同期生は、医療は如何にあるべきかという問題に、好むと好まざるに関わらず真剣に向き合いながら、毎日を過ごしたのであった。やがて、学園には百人を超える機動隊が常駐し、紛争は鎮圧されたが、あの時、『いい医療を提供する、いい医師になろう』と心に誓ったその思いは、その後の私の人生を導く灯明となってくれたように思う。3年間在籍した内科の医局を辞し、ECFMG(米国臨床研修資格試験)を取得し、米国でのレジデント研修先をさがした。その過程で、縁あって、聖路加国際病院のシニアレジデントの立場で研修する機会を得た。ここで、内科の日野原重明先生にお会いし、先生の医療に対する姿勢に心をうたれ、以後、日野原先生のような医療人になりたい、というのが私の人生の目標となった。先生の推薦のお陰で米国のアルバート・アインシュタイン メディカルセンターへの留学も決定し、星雲の志に燃えたのであったが、運命はそれを許してくれなかった。鹿児島の郷里で開業していた父親が脳卒中で倒れ、私は、留学を断念して、郷里に帰ることとなった。やがて、父親も診療を再開できるまでに回復し、私は再び自分の研修先を探さねばならなくなった。丁度、この時、鹿児島大学に新しい講座・第3内科が新設され、初代教授として井形昭弘先生が赴任して来られた。そして、縁あって、井形先生にお会いし、先生の医療に対する姿勢に感銘をうけ、弟子入りをお願いした。私の医療人としてのこれまでの人生を振り返って考えると、日野原重明先生ならびに井形昭弘先生との出会いにより、それぞれの生き様に感動し、それを目標に生きてきたように思う。このたびの講演では、私がお二人の何に感動し、何を学び、そして私の人生にそれをどの様に生かしてきたかについて具体的にお話しする。それに加えて、もう一つ、ぜひお話したいことがあり、私自身が病気で倒れた体験の中から、とても大切なことを学んだので、このことについても話したい。6年前、2002年8月末、私が鹿児島大学病院の病院長の時、過労で倒れ、入院を余儀なくされたのであった。病院長も辞し、将来の展望も見えないままでの入院生活を過ごす中で、これまでの人生を振り返り、自分を見つめなおし、4ヵ月後に退院してから後は、全くあたらしい生き方を模索しながら今日を迎えるに至っている。何を考え、どの様な生き方をしてきたかについても、この講演でぜひとも語りたいと考えている。これらの詳細は私のHP(納 光弘のキーワードで検索していただくと出てきます)にも掲載してあるのでご覧いただければと思う。
著者
冨永 千珠 木下 美奈 山本 順子 竹之内 美樹 福山 國太郎
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.164, 2010

(背景)<BR>当病棟は日常生活自立度(寝たきり判定基準)でB・Cランクの褥瘡発生ハイリスク患者が多い。褥瘡発生率が低下した要因を分析し、得られた今後の課題について報告する。<BR>(対象)<BR>2007年1月~2009年12月に褥瘡発生した当病棟患者<BR>(方法)<BR>褥瘡発生原因(部位、自立度、バスタオル・横シーツの使用状況、ベッドアップ角度)の分析と対策を行い褥瘡発生数の変化を記録した。<BR>(結果)<BR>2007年に発生した褥瘡は仙骨9件、踵7件、その他10件。2008年は仙骨12件、踵2件、尾骨4件、その他11件。2009年は仙骨2件、その他5件。当初はバスタオルを使用した体位変換や横シーツ使用が見られ、体圧分散寝具の不適切な使用や、不充分な体位変換により仙骨・尾骨部に湿潤・摩擦・ずれが生じた例や、踵の除圧不足も見られた。また、経管栄養施行中の過度なベッドアップ、背抜きや除圧不足、脆弱な皮膚のケア不足も見られた。その他に酸素カヌラによる耳介圧迫、弾性ストッキングによる膝窩圧迫、手指・足趾の拘縮による圧迫も見られた。<BR> 踵部除圧チェックや横シーツの使用中止、バスタオルなしの体位変換実技指導を導入し、経管栄養施行中のベッドアップ適正化、スタッフへの予防策の継続指導・教育を行った。<BR> 酸素カヌラ固定の工夫や弾性ストッキングのしわ伸ばし、手袋や5本指靴下の着用を徹底した。2009年には踵部除圧が徹底され、バスタオルなしの体位変換の円滑な実施が実現された。<BR>(考察)<BR>スタッフへの実技指導や継続教育により褥瘡予防への意識が向上し褥瘡発生が減少したと考える。今後はベッドアップ時の背抜きや除圧、撥水・保湿クリーム塗布徹底で更に減少すると考える。<BR>(まとめ)<BR>スタッフ全員が褥瘡予防の重要性を認識し実施することが褥瘡発生減少につながるため、定期的勉強会や継続指導・教育を行うことが今後の課題である。
著者
李 啓充
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.3, 2011

米国医療の「光」は,自己決定権を中心とする患者の権利が州法等で手厚く保証されていることであり,「影」は市場原理に基づいて医療が運営されていることといってよいだろう。しかし,患者の権利が手厚く保証されているとはいっても,日本で「生存権」が憲法で保障されているのとは対照的に,米国では国民が医療にアクセスする権利は救急医療以外では保証されていない。医療へのアクセスは,「権利」ではなく,「特権(お金を払った人だけが受けられるサービス)」となっている現実があるのである。<BR> たとえば医療保険についても,米国では,国民が民間保険を「自己責任」で購入するのが原則である。制度上,高齢者・低所得者等の弱者に対する公的医療保険が用意されているものの,歳が若く(65歳未満),そこそこの収入はあっても民間保険の保険料を払うほどの経済的余裕がない場合は,「無保険者」とならざるを得ない。その結果,米国では,国民の6人に1人が無保険の境遇に喘ぎ,医療へのアクセスが著しく制限されるという,苛酷な状況が現出している。近年,日本でも「米国式に,医療保険の『公』の部分を減らして『民』を増やせ」とする主張が声高に叫ばれているが,国民が医療にアクセスする権利を損なう危険があるので注意しなければならない。特に,「混合診療解禁」論者は,「高度の治療・最新の治療は高くつくので,保険財政では賄いきれない。保険外の診療として,お金を払った人だけが受けられるようにする」と主張しているが,これは医療へのアクセスを「特権化」する主張に他ならない。<BR> さらに,米国では,保険に加入しているからといって医療へのアクセスが保証されるわけではない。たとえば,保険会社が医療内容の決定に介入する権限を有しているため,患者と医師がインフォームド・コンセントのルールに基づいて共同で決めた治療方針が,保険会社によって「否定」されることも珍しくない。米国のとりわけ高額な医療費を自弁できる患者は稀であり,保険会社が保険給付を拒否した途端に,患者の自己決定権が「絵に描いた餅」と化してしまう現象が起こっているのである。最近,日本でも,財界・保険団体を中心に「保険者機能の強化」を主張する動きが目立っているが,「医師と患者の間に立って通訳の役を務める」という言い方で「治療内容に介入する権限」を獲得することをめざしているので警戒を怠ってはならない。<BR> ところで,日本で医療費抑制路線が強化されるようになったのは,1980年代にレーガノミックス,サッチャーリズムを後追いする形で「小さな政府」路線がとられるようになったことがきっかけだったが,「小さな政府」で運営されている国で,貧富の格差が拡大することは周知の事実である。日本も例外ではなく,現在,OECD 加盟国中第3位の「貧困大国」となっている。社会経済的格差が健康被害をもたらす現象は公衆衛生学の領域では「status syndrome(格差症候群)」として知られているが,今後,日本においても,格差に起因する健康の不平等が深刻化することが懸念される。
著者
柳沢 正 砥石 佳子 中島 文香 三島 済 中島 浩美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.198, 2005

はじめに<BR>今回当院手術室において17年間使用しているスリッパ洗浄機が故障を繰り返し、買い換えるか買い換えないか、という問題を機会にスリッパ管理の見直しをした。CDCガイドラインにおいては手術室の床が手術部位感染(SSI)の原因とはならないとされていることから、スリッパ洗浄を中止し、院内一足制を導入することにした。導入にあたり医師、スタッフの感染に対する意識の改革とスリッパ洗浄にかかるコストの削減ができたので報告する。<BR>結果、考察<BR>2004年4月に調査した結果、手術室に出入りした人数は約1900人、洗浄スリッパ数2694足であった。1か月の洗浄回数は83回。スリッパの履き替えに関しては規則が無く、1人で1日に何回も履き替えていたことがわかった。出入り口には脱ぎっぱなしのスリッパが散乱し、通行の妨げになっていた。また助手業務にスリッパ洗浄に費やす時間が多い事がわかり業務の見直しを行なった。<BR>手術室スタッフ、医師にスリッパ履き替えについてアンケート調査を行なった結果は1足制導入に関して感染、物品の汚染が考えられるという回答が多くあまりいい返事が聞かれなかった。手術室の床は手術部位感染の原因にはならないこと、床はもともと汚く床に座る、床置き物品、清掃など間違った認識の改革から始めることにした。<BR>院内感染対策委員会のアドバイスを受け、CDCガイドラインに基づいた手術部位感染防止について、手術室スタッフに学習会を行ない、床置き物品の整備、清掃手順を明文化し統一化を図った。医師に関しては部長医長会議で反発の意見が多い中、手術部部長より今なぜ履物交換規則の廃止なのかについて説明し説得した。また院内メールを利用して、職員に1足制導入についての情報提供することで、入室に関しての統一化ができた。またさまざまな意見や要望をいただき、参考にすることができた。<BR>院内1足制導入に伴い、個人別下駄箱を設けることにより履物を自己管理とし、導入後1か月で3割が院内1足制、7割が手術室1足制に移行することができた。この事で出入り口周辺のスリッパの散乱が無くなりスムーズな通行ができるようになった。<BR>スリッパ洗浄が無くなり、洗浄機の買い替えが無くなった事、スリッパ代、修理代、スリッパ洗浄にかかっていた、水道代、電気代、洗剤代、人件費のコスト削減につながった。院内一足制導入に伴い自己を守る、感染防止などでシューズカバーの使用が増えたことに関しては、感染に対する意識が高まったと考えられる。そして床に座ること、床置きの物品が無くなり、清掃手順も遵守されていることは、床に対して不潔であるという認識が強くなったと考えられる。
著者
林 勝知 上田 宣夫 森 茂 三鴨 肇 山田 敦子 島田 武
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.274, 2006

<B><緒言></B>中濃厚生病院救命救急センターは、2000年8月から約6年、岐阜県の狭義の中濃地域(関市、美濃市)で、救急診療を行っている。今回、当センターとして、岐阜県中濃地域の救急医療体制の検証を行ったので報告する。<BR><B><検証結果></B><BR> 1.当センターの現状:年間の総救急患者数は約2万人で、重症度別にみると、一次が約90%と多い。救急車搬送による救急患者は、開設後約2年間は、一次が60から70%と多かったが、その後の約4年は一次が約50%となり、それに伴い急性心筋梗塞及び脳卒中等の重症救急患者の中濃医療圏の他の病院からの紹介、転送も増えてきている。ときどき生じる問題は、(1)約1時間に、三つの消防組合からあわせて4から5例の救急車搬送の要請があることにより初療室が混雑したこと、(2)中濃消防組合から約1時間で心肺機能停止状態(CPA)2例、重症外傷1例症・中等症外傷3例のホットラインが4回あり、大混雑の中で、診療を行なったこと、(3)夜間の中濃消防組合からの救急車搬送が、他の三つの二次病院ではなく、ほとんどが当センターであったこと等である。中濃地域の救急の協議会等で病診連携や二次病院の救急診療の役割分担を要望しているものの、未だ改善されてはいない。今後とも、行政の協力も求めながら、システムの改善を目指している。また、夜間、休日に直接来院する軽症患者が多いため、救命救急センターの利用法についてという掲示を出して、軽症例については、開業医の受診を奨めている。平日夜間については、少し受診患者が減少した。しかしながら、休日の午前中は多くの小児患者が来院している。このことについても今後改善されるよう模索している。<BR> 2.メディカルコントロール:オフラインメディカルコントロールとして、(1)中濃消防組合の救命救急士に対する包括的指示下の除細動のトレーニングは、プレコース、本コースあわせて8時間行った。(2)中濃消防組合の救命救急士でない一般の救急隊員約120名には一次救急処置(BLS)、自動体外式除細動(AED)のトレーニングを1)に準じ計8時間のトレーニングを行った。(3)気管内挿管の研修を2005年2名の救命救急士、2006年3名の救急救命士に行った。いずれも消防組合からの評価は高かった。
著者
椎貝 達夫 桑名 仁 神田 英一郎 前田 益孝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日農医学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.114, 2005

<B>目的</B>:進行性腎不全(PRF)の治療は世界の腎不全対策を考えるとき、きわめて重要である。前医での腎不全進行速度がわかっているPRF60例について治療成績をまとめた。<BR><B>方法</B>:対象は前医での進行速度がScrの経時的変化からわかっている60例のPRFで、男42人、女18人、年齢58.2±14.7歳、原疾患は多発性のう胞腎以外の非糖尿病性腎症(NDN)57例、糖尿病性腎症3例である。<BR> 当院診療開始時のScr3.60±1.80mg/dl、Ccr26.3±16.0ml/minで、前医と当院での進行速度をScr<SUP>-1</SUP>・時間(月)勾配で求め比較した。当院の診療は24時間蓄尿による食事内容モニタリング、各種データの腎臓病手帳への記入・説明、家庭血圧測定によりプログラム化されている。<BR><B>結果</B>:図は60例のPRFの当院受診前と受診後の速度のちがいを示している。一番左は前に較べて進行速度が80%以上遅くなったグループで、31人(51.7%)がこのグループに属した。中央は進行速度の減少が前に較べて79%未満に止まったグループで、21人(35%)だった。一番右は当院受診後進行速度が前よりかえって速くなったグループで8人(13.3%)だった。<BR> 全体として、前医での治療が続けられていた場合、透析導入まで平均78.2か月を要するが、当院での治療で187.0か月となり、腎臓の寿命が2.4倍延長される。<BR><B>結論</B>:60例のPRFを対象とした交差法による検討で、従来の治療に比べ、腎臓寿命が全体として2.4倍延長された。今後当院が行っている治療法の全国への普及が必要である。
著者
理嵜 弥生 深津 葉子 宮本 三千代 須賀 良子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日農医学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.351, 2006

<B><はじめに></B>四肢切断術を受けた患者は危機的状況におかれ、障害を受容しそれを乗り越えるためのサポートが必要となってくる。今回、仕事中の事故で右上肢不全切断した患者の精神的変化に対するサポートについて振り返った。フィンクの危機モデル&sup1;⁾を活用することで、段階にあった看護介入や援助が行えたか分析し、結果、所見を得たので報告する。<BR><B><方法></B><BR>(1)対象及び経過:49歳女性、仕事中の事故で右上肢不全切断となり再接着術を行ったが、1ヵ月後急激に循環不良となり緊急で切断術を行った1事例<BR>(2)方法:患者との関わりを看護記録、スタッフからの情報、患者ケアカンファレンス用紙をもとに振り返り、フィンクの危機モデルを用いて分析した。<BR>(3)研究期間:受傷から退院まで<BR>(4)倫理的配慮:研究の取り組みと意義、プライバシーの保護について、患者に口頭で説明し同意を得た。<BR><B><結果及び考察></B>フィンクは危機のたどるプロセスをモデル化し、それを衝撃・防御的退行・承認・適応の4段階であらわしている。患者は受傷後上肢再接着術が行われ、比較的順調に経過していたが、術後3週目頃から発熱、疼痛増強、皮膚色不良となり、壊死組織による圧迫を疑い洗浄・デブリートメント術を行った。しかし、循環の改善はみられず高熱が続き、敗血症の危険性があると判断され翌日上肢切断術を行った。患者は受容できないまま切断となり、ただ一点を見つめ涙していた。この時衝撃の段階であったといえる。手術室入室までの間付き添い、訴えに耳を傾けるようにした。術後は会話の中で切断したことにはあまりふれず、時間が経つにつれ「昔に戻りたい」「治ると思っていたのに」と悲観的な言動が多く聞かれるようになった。また、人と対面することも避け塞ぎがちであった。この時防御的退行の段階であったといえる。訪室した際には患者が不安や悲しみの感情を表出できるよう傾聴し、精神的安定が保てるようサポートした。また、一番身近な存在である夫が付き添っており、患者の支えとなっていた。日が経つにつれ「手術してよかったんだよね」という言葉がきかれ、障害に向き合えるようになっていった。上肢を失ったショックは変わらずにあったが、その現実を受け止めていこうとしているようであった。この時は承認の段階であったと考えられる。この頃、退院の話もでて試験外泊を行った。「片腕がないのがこんなに不便だと思わなかった。これからどうしたらいいんだろう。」と不安もあったようだが、「洗濯物はたためたの。出来ることはやらなくちゃね。」と上肢切断という障害を受け止め、今後の生活について考えられるようになっていた。患者が一番不安に感じていることは何か、問題点は何かを見極め、解決に向けて働きかけていけるようにアドバイスするよう心掛けた。患者の多くは不安や問題を抱えたまま退院となってしまい、入院中に適応の段階まで迎えることが少ない。今回の患者は、外来にて義肢を作成することとなり、退院後は、外来にてフォローするかたちとなった。<BR><B><まとめ></B>危機的状況にある患者の精神的変化を把握するのに、危機モデルを活用することで、段階にあったアプローチを行うことができたと考えられる。<BR><B><引用文献</B>><BR>&sup1;⁾小島操子;看護における危機理論・危機介入-フィンク/コーン/アグィレラ/ムースの危機モデルから学ぶ、2004.6、金芳堂
著者
神谷 有希 松野 俊一 田中 史朗 高橋 治海 山本 悟
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.148, 2006 (Released:2006-11-06)

<はじめに> 非浸潤性乳管癌(以下DCIS)の発見契機は、MMGでの微細石灰化や腫瘤・乳頭異常分泌である。MMG上では石灰化で検出されることが多いというのは知られているが、腫瘤・非対称性陰影・構築の乱れなどでも描出される。 今回は、非触知・US上所見なし・MMG上微小石灰化で発見されたDCISの症例を報告する。<対象> 女性 39歳<経過>2003年10月左乳頭異常分泌により当院受診 MMG・USとも異常なし 1年後のfollow up 2004年12月左MMGに集簇性、円形の微小石灰化 カテゴリー3 USは異常なし 6ヵ月後のfollow up 2005年6月左MMGに集簇性微小石灰化 前回より変化なし 6ヵ月後のfollow up 2005年10月前回の微小石灰化が一部線状 カテゴリー4 ステレオガイド下マンモトーム生検を実施<結果>生検の結果DCISであった。 触診では触れず、US上石灰化の場所が特定できず、ステレオガイド下においてフックーワイヤーを留置し、Bq+Axを行い、断端(-)であった。<考察> 乳癌は乳管上皮層から発生するため、ある時期には乳管の中に留まっており、その時期の癌は非浸潤癌である。この時期はまちまちであり、人により異なる。この非浸潤癌は癌細胞が乳管の中だけで増殖し、乳管内を進展するためリンパ節転移や遠隔転移をきたすことのない癌である。そのため、早期の発見が大切である。 集簇性の微小石灰化は乳がんを疑うものであるが、ごく狭い範囲に微小石灰化がある場合は良悪性の判断は困難である。 今回はfollow upしていたところ一部線状の石灰化が発生したため、マンモトーム生険を施行し、確定診断を行った。石灰化の位置がUS上で特定されなかった為、ステレオガイド下においてフックーワイヤーを留置し、手術を施行した。このように、エコー下にて病変部位が特定できず石灰化がある場合においての生険およびフックーワイヤー留置はステレオガイド下のマンモトームが大変有用である。
著者
杉山 貴敏
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.270, 2006 (Released:2006-11-06)

<緒言>近年, 傷を消毒しない,傷を湿潤環境下で治療する創傷治療(湿潤療法, Moist Wound Healing)が提唱されている. この療法は生体の細胞成長因子を積極的に利用する治療法で,創傷の治癒が従来の治療に比べて早いのが特徴である.口腔外領域は創を創傷被覆材などで閉鎖し湿潤環境下で治療し,口腔内領域はすでに唾液による湿潤環境にあるため, 含嗽剤をふくめた消毒を行わないことが, 湿潤療法を実践することにあたると考えられる.当科では平成15年5月より現在にいたるまで, 抜歯をはじめ外傷など創傷治療は全て湿潤療法に基づく治療を行っている. 今回,西美濃厚生病院歯科口腔外科で演者自身が行った平成13年5月より平成17年5月までの全ての創傷治療について, 湿潤療法実施前と湿潤療法実施後の2群に分けて, 術後の治癒不全, 感染等について比較検討を行った. 対象は1歳より96歳までの患者計733名, 湿潤療法実施前群(平均年齢60.2歳)556例, 湿潤療法実施後群(平均年齢58.5歳)591例で乳歯抜歯症例は除外した. 術後, 抜糸時に創が哆開した症例, 創のびらん,潰瘍,壊死を生じた症例,細菌感染を生じた症例,創部の疼痛が消失しない症例を治癒不全例とした。<結果>治癒不全例は湿潤療法実施前群52例(10.97%), 湿潤療法実施後群21例(3.55%)であり湿潤療法実施群が有意に少なかった. また, 抜糸までの期間は湿潤療法実施前群平均6.83日, 湿潤療法実施後群4.78日であった. <考察>以上の結果より、創を消毒しても術後の治癒不全や創感染を防止することはできないこと,湿潤療法による治癒期間の短縮の可能性が示唆された. 夏井は,創感染は縫合糸,壊死組織,血腫,痂皮などの異物が存在するからおこるのであって,細菌が存在するからおこるのではないと述べている.皮膚や皮下組織の感染は細菌単独でおこすためには組織1gあたり105から106個の細菌が必要とされているが,異物の存在下では200個の細菌で感染が成立するといわれている.消毒薬による消毒は一時的に細菌数を減少させるが,皮膚の皮脂腺や汗腺,口腔常在菌の増殖により細菌数は1日を通しては大きくは変化しないと思われる。 また、創傷治癒には肉芽組織が増生し,線維組織や上皮組織が再生されなければならない。消毒薬はイソジンガーグルの希釈濃度0.23から0.47%でも組織障害性をもっており、組織再生に必要なPDGF, EGF, bFGF, TGFβ, NGFなどの細胞成長因子を無効化し,上皮細胞や線維芽細胞の増生を阻害している。さらに,口腔内で消毒効果を発揮させるにはイソジンではポピドンヨード濃度で0.1%濃度を2から3分間持続させることが必要である.唾液で満たされた口腔内で、この濃度を保つことは困難である。 つまり、口腔内の消毒は,消毒効果よりも組織障害作用の方が大きく,治癒を遅延させているのである。口腔領域の創傷時には水道水や生理食塩水あるいは消毒薬を含まない含嗽剤で口腔をよく洗浄し,壊死物質や血腫など感染源をよく取り除くことが大切であり,異物である縫合糸などは可及的早期に抜糸する必要があると考えられる.湿潤療法により生体の治癒能力を最大限に発揮させ,治癒を早めることが, 術後障害も減少させることができると考えられた.
著者
岩船 貴子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.210, 2010 (Released:2010-12-01)

昨年度A病院において、出産数396件のうち96件の里帰り分娩があった。お母さん方からは1ヶ月健診後、実家から自宅に戻り身近な相談相手がいなくなることで育児に対する不安が増大するという声が多く聞かれた。そこで、1ヶ月間で自信を持って楽しく育児を行えるように個々の抱えている問題に適切な支援をしていく必要性があると考える。 平成17年度、A病院において褥婦に行った退院後の母乳育児に関する調査で「退院してから一番母乳のことが心配だが、気軽に相談できる場所がない」という意見が多くあり、平成18年8月から退院後の電話訪問を開始した。しかし、電話だけでは状況が分かりにくく適切な指導が出来ないと感じる事が多く、直接褥婦に接し会話を通じて適切な援助を行えるように、平成21年6月に産褥助産外来(以下産褥外来とする)を開設した。 開設から翌年の3月までの出産件数326件のうち産褥外来、受診件数は88名であった。助産師の指導方法は、時間を掛け実際の授乳場面や乳房を観察し母乳不足に対する不安の対処や家庭での生活についてのアドバイスを行った。その後の、産褥外来を受診した褥婦の聞き取り調査で、「母乳や育児に対する不安があり助産師さんからアドバイスして貰う事で不安を解消でき、育児のストレスが発散出来た。」など気分転換の場になっていることがわかった。産褥外来での関わりが精神的な安定に繋がりその後の母子関係の確立に有効に働いていると思われる。
著者
大塚 隆信
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.5, 2011 (Released:2012-02-13)

日本においては平均寿命が延び,急速に高齢化社会が到来している。男性のほぼ5人に1人,女性の4人に1人が高齢者である。それにともなって介護を必要とする要支援・要介護者は約450万人と増えている。その原因として「関節疾患」「転倒・骨折」などの「運動器」の障害が20%を超えている。ロコモティブシンドロームという言葉は日本語で「運動器症候群」と訳され『ロコモ』という通称が使用されている。運動器の障害により日常生活での自立度が低下し,要介護の状態や要介護の危険のある状態をいう。これは運動器のことをロコモティブオルガン(locomotive organ)ということから派生している。またロコ モティブには「機関車」という意味もあり人生を機関車のようにアクティブに生きようという意味が込められている。 ロコモティブシンドロームの徴候・症状 関節や背部の痛み,関節や脊柱の変形,関節や脊椎の可動域制限,下肢・体幹の筋力低下,バランス能力の低下がポイントとしてあげられる。 日常生活でチェックすべき項目 1.家のやや重い仕事が困難である。 2.家の中でつまずいたり滑ったりする。 3.15分くらい続けて歩けない。 4.横断歩道を青信号で渡りきれない。 5.階段を上がるのに手すりが必要である。 6.片脚立ちで靴下がはけない。 7.2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である。 ロコモティブシンドロームの判定基準 1)開眼片脚起立時間:15秒未満 2)3m Timed up and go test:11秒以上 運動機能低下をきたす疾患 脊椎圧迫骨折及び各種脊柱変形(亀背,高度脊柱後弯・側弯),下肢の骨折(大腿骨頚部骨折など),骨粗鬆症,下肢の変形性関節症(股関節,膝関節など),脊柱管狭窄症,脊髄障害,神経・筋疾患,関節リウマチおよび各種関節炎,下肢切断,長期臥床後の運動器廃用,高頻度転倒者 予防と治療・ロコモーショントレイニング ロコモ対策の基本は運動器局所の治療と歩行機能の維持改善の2本立てである。 これらの項目の解説と運動機能低下をきたす主なる疾患(骨粗鬆症,下肢の変形性関節症,脊柱管狭窄症)の診断・治療などについて述べる。 参考文献: 日本整形外科学会編;ロコモティブシンドローム診療ガイド2010,文光堂