著者
河本 しげ美
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.81, 2009

〈はじめに〉在宅を一人で訪問している私達は,活動中に<BR>災害が起きた時も一人で判断し,行動しなければならな<BR>い。災害現場で冷静に行動し,利用者と看護師自身の安全<BR>が確保できるよう,災害に備えて日々活動を行ってきた。<BR>その結果,利用者の防災に対する認識が高まり,また看護<BR>師の意識改革ができたので報告する。<BR>〈方法〉平成17年より定例カンファレンスで防災部会を開<BR>催し,以下のことを実践した。<BR>(1)利用者に「災害時に備えて」(記入用紙)を配布し,啓<BR>蒙活動を実施。<BR>(2)医療機器等,生命に関わるものの使用状況一覧表を作<BR>成。<BR>(3)防災マニュアルを作成。<BR>(4)所内に災害時チェックリストを掲示。<BR>(5)各公用車に防災グッズを常備。<BR>〈結果〉<BR>1.「災害時に備えて」を配布したことで,<BR>(1)利用者・家族の防災に対する考え方が理解できた。<BR>(2)連絡先や非難場所等の情報を収集することができた。<BR>(3)持ち出し物品等の準備ができた。<BR>2.防災部会で検討した事項によって<BR>(1)看護師も災害時をイメージすることができた。<BR>(2)防災に対する認識が高まった。<BR>〈考察〉利用者の防災に対する認識は様々であったが,意<BR>識していなかった利用者も,積極的な啓蒙活動によって防<BR>災を意識するようになったと思われる。また,看護師が意<BR>識をもって訪問することにより,利用者及び家族の認識に<BR>変化をもたらし,安心感につながったと思われる。啓蒙活<BR>動を拒否した利用者においては,現実感がない,諦め等の<BR>思いがあるのではないかと推測されるが,今後更に心理状<BR>態を分析していく必要があると思われる。<BR>〈おわりに〉「万が一」に備え,普段からの心がけが大切<BR>である。今後も定期的に防災部会を開催し,防災に対する<BR>活動を継続していく必要があると思われる。<BR>
著者
竹中 理恵 伊東 尚美 安 邦子 加藤 久美子 峯田 祐次 阿部 菜穂子 岩谷 さゆり 秋野 良子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.71, 2006

<b><緒言></b>当病棟では、せん妄症状の患者に対し、チューブ類の自己抜去や転倒を防ぐために、やむを得ず睡眠剤の投与や抑制を行い危険行動を抑えているのが現状であった。そこで、アロマテラピーの導入で、せん妄症状の患者に対しても少ない症例ではあるが改善が見られたためここに報告する。<BR><b><方法></b><BR>1.対象 夜間せん妄症状が見られた当病棟入院患者で、今回の研究を行うことに家族の了承を得た患者3名<BR>2.方法<BR>1)開始時期<BR> 三瓶氏らのアセスメント表を参考に、せん妄スケール表(以下スケール表とする)を作成し2段階に該当した時点でアロマテラピーを開始する。<BR>2)アロマテラピーの施行方法<BR> 精油をコットンに垂らし枕元に置く。<BR> (1)開始時:リラックス効果のあるラベンダーを使用<BR> (2)開始4時間後から起床時:鎮静効果と催眠作用のあるカモミールを使用<BR> (3)開始が0時以降の場合は2種類を混合し使用<BR>3.データ収集方法<BR> スケールの点数からアロマテラピー使用後のせん妄症状の変化を比較する。<BR>4.倫理的配慮<BR> 同意書に、知る権利・医療における自己決定権・害を与えないこと・プライバシーの保護について記載し、家族に対して説明する。<BR><b><結果></b>スケール点数を比較したところ、全ての症例において開始4時間後に点数の下降が見られた。(資料1参照)また、開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒した。<BR><b><考察></b>環境の変化に不安、チューブ類や安静などによる拘束感、苦痛からくる不眠や疲労に関連し、せん妄症状が出現した患者3名に施行した。アロマテラピー使用後、3名とも「いい臭いがする」「落ち着く」と言い入眠につながった。吉田は「香りの刺激は嗅覚によって感覚されるが、その神経ルートは他の感覚以上に情動脳系に直結している。」<sup>1)</SUP>と述べている。このことから、ラベンダー・カモミールの香りはリラックス効果が高く、ストレスに由来する各種障害に有効と言われているように、鎮痛・安眠効果が得られ入眠を促すことができたと考えられる。<BR> また、使用開始時間に関係なく全員が6時から9時の間に覚醒し「すっきり眠れた」と話された。深夜問わず睡眠剤を使用した場合その効果が日中まで遷延するが、アロマテラピーのもたらす効果で自然な入眠が得られ、崩れた入眠パターンを取り戻す機会になったと考える。<BR><結論>せん妄患者にもアロマテラピーは、自然な入眠を促すことができ、睡眠パターンを取り戻す介入方法として効果が期待できる。<BR><b><引用文献></b><BR>1)吉田倫幸:香りとリラクセーション,現代のエスプリ,P58,1993<BR><b><参考文献></b><BR>1)三瓶智美:クリティカルケアで不穏せん妄をどうアセスメントするか,看護技術,vol 51 No1,2005<BR>
著者
福村 浩一 中原 毅 小串 美由紀 倉持 龍彦 関 貴弘 堀井 京子 寺田 紀子 上野 信一 松井 則明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.137, 2008

【はじめに】近年、携帯電話や電磁調理器具などの急速な普及により、それらから発せられる電磁波による健康への影響を不安視する声が聞かれる。透析装置においても電磁波を発する装置であり、透析患者は4~5時間装置の側での治療を余儀なくされる事から、透析中における装置からの電磁波の発生強度を測定し、その安全性を検討した。<BR>【目的】透析装置から出る電磁波を測定し、その数値からICNIRPの電波防護指針をもとに透析中の安全性を検討する。<BR>【方法】当院で用いられている透析装置(DCS-72、DCS-26、DCS-27、DBB-26、DBG-02、TR-3000M)の待機時(プライミング終了後)と作動時(透析中)に放出される電磁波の強度を、アルファラボ社製トリフィールドメーター100XEを用いて測定し、また患者の透析時における電磁波の暴露量(頭部、腹部、下肢)からその安全性を比較検討した。電磁波の測定方法は透析装置のディスプレイ画面より0cmから10cm間隔で電磁波の強度を測定し、最終的に測定表示が0になるまでの距離を測定した。<BR>【結果】DCS-72では待機時が、0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.3mで0mGとなった。透析時では0~20cmで100mG以上、30cmで25mG、1.5mで0mGとなった。DCS-26では待機時が0cmで50mG、10cmで6mG、50cmで0mGとなった。透析時では0cmで100mG以上、10cmで50mG、90cmで0mGとなった。DBB-26、DBG-02ともに透析時では0cmで60mGと高い値を示したが、10cmでの測定値は一桁を示し、他の装置では0cmでも待機、透析時ともに低値を示し、待機時で30cm、透析時で40~60cmで0mGとなった。又、患者の頭部、腹部、下肢で透析時に受ける電磁波の強度を測定した結果、頭部で0~2mG、腹部、下肢では0~0.5mGであった。<BR>【考察】測定の結果からICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の定めた国際ガイドライン値(安全値4mG未満、許容値16mG未満)に当て嵌めると医療従事者が通常の操作をするパネルからの位置では、測定結果から特に問題はないと思われ、透析中における患者についても安全性をクリアしていると思われた。<BR>【まとめ】電磁波については、生体に影響が有る、無いの二極論があるが、実際に「電磁波過敏症」と呼ばれる諸症状がある事も事実であり、長時間装置の側で治療を受ける透析患者の電磁波の暴露量は重要であり、科学的根拠がなくても事前回避の措置を定めるという原則の考えが重要であると考えられた。
著者
遠藤 信英 度会 正人 堀部 秀樹
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第55回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.311, 2006 (Released:2006-11-06)

<症例>18歳女性。<既往歴>15歳の頃より近医心療内科に自ら通院。2回の自殺企図の既往があった。<現病歴>2006年4月9日、インターネットにてジギタリスの毒性を知り、花屋でジギタリスの鉢植えを購入し、その葉20枚を煮て、煮汁を服用した。服用直後から嘔気があり嘔吐を続け、症状が持続するため翌日当院救急外来を受診した。受診時身体所見は、意識清明・血圧99/59mmHg・脈拍数55回/分・経皮的酸素飽和度97%であった。心電図では_II_・_III_・aVfとV4-6に盆状ST低下を認め、2:1房室ブロックを中心に、WenckebachやMobitz2型2度ブロックといった多彩な不整脈を呈していたため入院管理とした。<入院後経過>ジギトキシン・ジゴキシンの血中濃度はそれぞれ128ng/ml,5.33ng/mlと正常値上限の5倍程度まで著明に上昇していたが、心エコー検査にて心機能は正常で心不全兆候はなく、肝腎機能は良好であり、モニター心電図にてlong pauseなどの危険な兆候が見られなかったことから保存的治療で経過を見ることとした。入院中は心電図モニターによる監視下のもと、補液治療を行った。入院時から2:1房室ブロックは持続していたが、特に危険な不整脈を誘発することなく経過し、第4病日頃から、それまで2:1房室ブロックで50台ほどの脈拍数であったものが1:1でつながり始めるようになった。第7病日頃には伝導が2:1となることはなくなり、1:1伝導で脈拍数が100ほどの洞性頻脈になった。その後は脈拍数も70ほどへ低下し、嘔気もとれ経口摂取も十分可能になったため第10病日退院した。第7病日の時点でジギトキシン・ジゴキシンの血中濃度はそれぞれ38.4ng/ml,1.75ng/mlであった。<まとめ>自殺企図にてジギタリスの葉を大量摂取した一例を経験した。本症例では不整脈の増悪・急変に備えペースメーカーなどの緊急処置も考慮していたが、健康若年者であったことから良好な転帰をとったと考えられる。
著者
山本 加代子 池部 晃司 白井 和美 笹谷 真奈美 水野 誠士 川尻 なぎさ
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.83, 2007 (Released:2007-12-01)

今回、外科領域の術中検査として検査した際に全てのパネルセルと反応する不規則性抗体が検出され、精査の結果、高頻度抗原に対する抗Ku抗体を保有した症例を経験したので報告する。高頻度抗原に対する抗体を保有する場合、ほとんどすべてのパネルセルと反応し陽性となるため、一般病院での同定や抗原陰性血の確保は困難である。このような場合、血液センターとの情報交換や連携が重要となり、主治医との迅速かつ的確な連絡を改めて示唆された1症例である。 <症例>患者 : 66歳 女性 妊娠歴あり 2子出産経験あり 現病歴:2006年12月 胃部不快感出現 2007年1月 食欲低下、体重減少のため他院受診 2007年2月1日 胃癌精査のため当院外科紹介受診 2月13日 膵臓、胃十二指腸摘出手術のため、輸血に備え、 タイプ&スクリーニング実施 既往歴:特になし <結果>ABO式血液型 O型 Rh式血液型 (+) 不規則性抗体(カラム凝集法)Pegクームス法、フィシン法 (2+)~(3+)陽性 抗体同定用パネルセルにて、Pegクームス法 自己対照以外すべて(3+)~(4+)陽性 レクチンH(3+)の反応 在庫MAP3本とのクロスマッチ Pegクームス法(4+) 上記の結果より、高頻度抗原に対する抗体の保有を疑い、広島県赤十字血液センターに精査を依頼した。その結果、ABO式、Rh式以外その他の血液型検査をさらに実施したところ、Kell式血液型がK-k-、Kp(a-b-),Js(a-b-)であり、抗Ku血清と患者血球との反応が陰性であることから、稀な血液型K0が疑われた。また、O型K0血球と患者血清との反応を確認したところ、生食法、ブロメリン法、Pegクームス法すべてにおいて陰性であったため、血清中には抗Ku抗体の存在があると考えられた。 <まとめ> 全てのパネルセルと反応することから高頻度抗原に対する抗体を疑い、血液センターに連絡し、精査と適合血の確保を依頼した。抗Ku抗体の存在が確認され、適合血が広島に解凍赤血球4単位あるとの連絡があった。主治医には高頻度抗原に対する抗体を保有しているため、適合血の確保が容易ではないことや、解凍赤血球の使用について説明した。高頻度抗原に対する抗体の同定は、一般病院では困難なため、血液センターとの情報交換や速やかな血液製剤供給体制のための連携が重要となると思われた。また今回の場合、術中および時間外に対応した症例であり、タイプ&スクリーニングの事前検査の重要性を再認識し、同定不能な時の適切な対応ができるマニュアルを備えておくことが重要と思われた。
著者
佐藤 亜紀 中野 庸子 田頭 美春 加藤 有一 大谷 優子 太田 光明
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第59回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.457, 2010 (Released:2010-12-01)

<はじめに> 近年、検査室の役割として、診療現場においてそれぞれの専門性を発揮し、より診療効果、治療成績に貢献できる検査技師の【チーム医療への参加】が求められている。当検査科でもこれまで各診療のニーズに応え、 循環器部門、整形外科・脳外科の術中モニタリング、さらにNST、ICT、糖尿病教室など、多くの部門に参画してきた。当院の新生児センター(以下NICU)は、平均入院患者数が常時定床の1.5倍と極めて高い診療需要に対し、スタッフは日々多忙な業務に追われている。このいつ破綻してもおかしくない状況を改善していくためには、医師・看護師の業務軽減が主たる課題の一つであった。そんな折、総合周産期医療センターの提案がなされ、小児科医から「検体検査測定」の充実が望まれた。また、業務軽減の対策として専任技師派遣の要望が出された。そこで検査科としても全面的な協力をする時期であると判断し「業務の効率化」と「仕事の合理化」を推し進め、小児科部門と検査業務見直しを行い、平成20年5月よりNICUへ専任検査技師を常駐させることとした。その勤務状況と効果、今後の展望について報告する。 <勤務状況>平成22年5月現在 【検体検査】検体測定(血液ガス分析、血清総ビリルビン、CRP) 【生理検査】脳波検査、A-ABR(ABRスクリーニング) 【管理業務】各検査機器メンテナンス、精度管理、検体検査データ入力及び成績管理 以上の検査業務を技師1名で行っている。 <効果> 専任技師の常駐前と比べ多くの改善がみられ、各職種がそれぞれの専門分野に集中できるようになった。改善点として、1)迅速な検査実施により診療の質が向上、2)午前の医師診療量軽減、3)機器トラブル時などのストレス軽減、4)検査領域への疑問を迅速かつ容易に解消できる、5)脳波、A・ABRのタイミングを調整しやすくなった、6)当日緊急の検査に柔軟に対応できるなどが挙げられる。 また検査科と病棟間の交流増進という意見が医師・看護師から得られた。技師も臨床の状況を把握しながら効率よく検査業務をこなすことができるようになり、相互の連携強化となった。 <まとめ> 平成18年4月に小児科より専任技師派遣の要望が出され、技師の育成及び業務の効率化、技師確保に25ヶ月(2年1ヶ月)を要した。現在の検査業務に加え、休日対応、新たな検査項目導入、検査情報の提供、看護師や研修医への勉強会開催等、臨床側からの要望や期待はまだ大きい状況にある。現在専任技師業務の土台は完成され、今後は検査科が目的意識を明確にして、当院が目指す総合周産期医療の一翼を担うよう努力していきたいと考えている。
著者
佐久間 陽子 保科 敬子 本間 文子 山口 香織 山本 彩恵子 加賀 三司
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.223, 2007 (Released:2007-12-01)

〈緒言〉当透析室では患者の高齢化と糖尿病 性腎症が誘因となり、起立性低血圧をきたし、意識消失・転倒などのリスクの高い患者が増えている。 それらの患者に対し、先行研究を基に起立 性低血の改善を目的とした透析後運動療法を行った。その結果、血圧差(透析終了止血後、臥位収縮期血圧と立位収縮期血圧との差。以下血圧差と略す)の改善に効果的であったので報告する。 〈方法〉期間:平成18年3月~10月 対象:透析後の起立性低血圧があり、立位で帰宅が可能な患者の内、研究に同意が得られ、運動療法が6ヶ月間継続できた14名。 年齢: 65歳未満2名 65歳以上12名 原疾患:糖尿病性腎症7名 腎炎他7名 実施方法:運動実施前(3月):透析終了し止 血後の臥位血圧とその直後の立位血圧を測定をする。運動実施後(4~9月):透析終了し止血後臥位で血圧測定をし、8分間の運動実施後立位で血圧測定をする。運動実施前・後期間の離床時間を測定する。運動方法 臥位:_丸1_両膝伸展し足の背屈・底屈(2分) _丸2_両肘関節屈曲・伸展を行いながらジャンケ ン運動(3分)_丸3_両膝屈曲位から片脚ずつ伸 展挙上(2分)端座位_丸4_足踏み(1分) 用語の定義:起立性低血圧=透析後の起立時収縮期血圧が20mmHg以上低下する状態 離床時間=透析終了後、立位血圧測定時から歩行でベッドを離れるまでの時間。 離床時間:透析終了後、立位血圧測定時から 〈結果〉 図1より全対象者の運動実施前後の血圧差の平均は、運動実施前46mmHg運動実施後28mmHgであった。結果、運動実施後、血圧差が18mmHg小さくなった。運動実施前後で一番変化がみられた例では、38mmHgの差があった。対象者14名のうち運動実施前後の血圧差で有意差がみられたのは10名、有意差がみられなかったのは4名であった。 全対象者の血圧差と離床時間の相関関係は各 月の離床時間の平均と血圧差の平均から相関 係数r 0.94001となり、相関関係は強い。よ って、血圧差が小さい程、離床時間が短い。 全対象者の血圧差と体重増加分の相関関係 は各月の体重増加分の平均と血圧差の平均から相関係数r 0.08015となり、血圧差と体重増加分の相関関係はほとんどなかった。
著者
遠藤 恵理子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.60, 2007 (Released:2007-12-01)

統合失調症で開放病棟に入院中のA氏は入院6年目であるが陽性症状(妄想、滅裂思考など)と認知機能の低下があり、看護師や他患と時々トラブルを起こす事がある。A氏の心に中には「退院したい」という想いがあり、それを相手に上手く伝えられない事がトラブルに至る原因と考えられる。 A氏は人付き合いが苦手である事を自覚しており、ある時看護師にSST(社会生活技能訓練)を希望してきた。SSTはA氏にとって生活技能の改善が見られ退院へ向けての最初のステップにする為、その効果を見る事を目的に関わりをもった。個人SSTによる効果はアプローチの前後に精神科リハビリテーション行動評価尺度(REHAB以下リハブとする)で評価をした。 A氏は看護師に「いつからSSTをやるのですか」と積極的に声を掛けてきて意欲が感じられたが、訓練中は話が反れ、修正してもまた反れてしまう繰り返しが多く、進めていくのは困難であった。これは認知機能の障害が強く表れていたと考えられる。看護師の問題として話の反れた場合の軌道修正が上手く対応出来ず効果的なSSTにならない場合もあった。出来る時にはA氏にメモをとって貰いロールプレイを行って、宿題を出してみたが実践するのは難しく、A氏が自信をつけて貰える様褒めながら関わりをもったが般化する事は難しかった。A氏が訴えてきた場合には傾聴しつつ正の強化を与えていった。リハブの結果では「ことばの技能」は変化が無かったが「ことばのわかりやすさ」においては障害があるという方向から普通状態になった。以前はA氏の質問を一度に聞き取れず聞き返すと易怒的になり待つ事も出来ずにいたが個人SSTを実施するようになってからは易怒的になる事は少なくなり、看護師がすぐに対応出来ない場合、理由を話すと待つことが出来るようになった。個人SSTをする事はA氏にとってストレスがかかる事であったと思われるが看護師がじっくりと落ち着いて関わりをもった事がA氏にとって良い刺激になり心地良い程度のストレスになっていたのかも知れない。 「セルフケア」は変化が無く「社会生活の技能」に関しては普通状態から障害がある方向へと悪くなっている。担当看護師とA氏で小遣い管理などについて話し合い、その場ではA氏は理解出来て決めた計画を毎日継続していくのは困難であり、現実検討能力の低さや認知・学習障害(融通の利かなさ)が現れていた。状況によって分り易く説明し、決めた事を継続出来るよう関わりをもつ事が必要である。 A氏とに関わりから患者の訴えを傾聴し、共感的態度を示し信頼関係を築く事が改めて大切であると感じ_丸1_患者と共に入院生活のあり方や看護計画(患者目標)を話し合い、援助する事が大切である _丸2_看護師は患者の持っている能力の可能性を信じ継続した援助をしていく事が重要である事を学んだ。
著者
伊藤 光洋 伊藤 良剛 吉川 秋利 大竹 正一郎
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第58回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.249, 2009 (Released:2010-03-19)

〈緒言〉整形外科の手術の際にC アーム型の外科用透視 装置が広く使用されているが,当院では2009年4月に本邦 初となる最新のO-arm を導入した。従来のC アームと同 様に透視が可能であるが,3D 画像を作成する際の収集 角度は,従来のC アームでは190°であるのに対し,O-arm では360°である。この収集角度の差によって,3D 画像 の精度,画質の向上が期待されている。今回はこの最新の 装置を使用した手術におけるスタッフの術中の被曝線量を 測定したので報告する。 〈使用機器〉O-arm : BI―700―00020(メドトロニック 社),半導体式電子ポケット線量計:PDM―112(アロカ株 式会社),プロテクター:MSA―25/鉛当量:0.25mmPb (株式会社マエダ),X 線防護衝立:H―22HKF/鉛当 量:1.0mmPb(クラレトレーディング株式会社) 〈方法〉整形外科の術中にO-arm を使用した3症例で, スタッフの被曝線量を測定した。半導体式電子ポケット線 量計を,整形外科医のプロテクターの内側と外側,放射線 技師のプロテクターの内側と外側,麻酔科医の前に立てた X 線防護衝立の内側と外側に装着して測定した。 〈撮影条件〉3D 撮影:120kV,25~32mA,100~128mAs (初期設定値),透視:62~90kV,5.0~6.6mA(AEC), 撮影中心部位からの距離は整形外科医:1m,放射線技 師:2m,麻酔科医:2m とした。 〈結果〉被曝線量が高かったのは,症例1では整形外科医 のプロテクターの外側で27マイクロシーベルト,症例2で は麻酔科医のX 線防護衝立の外側で26マイクロシーベル ト,症例3では整形外科医のプロテクターの外側で14マイ クロシーベルトであった。 〈考察〉O-arm の使用頻度を月8回として計算すると, 年間の整形外科医の被曝線量は0.027×8×12=約2.6ミリ シーベルトとなる。許容される年間の職業被曝線量である 50ミリシーベルトの5.2%と低い値であった。
著者
植松 夏子 柴原 弘明 今井 絵理 吉田 厚志 西村 大作
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.343, 2011 (Released:2012-02-13)

【背景】がん患者には様々な苦痛症状が出現する。原発部位や基礎疾患により投与できる薬剤が限られ、副作用により投与中止となる場合もみられる。また各症状に対し個々に薬剤を使用することは薬剤の相互作用や内服負担増の面で患者に苦痛を与えることもある。ミルタザピンはノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬(NaSSA)に分類されH1受容体拮抗作用、5-HT3拮抗作用を有するため、緩和医療領域では抗うつ作用以外の効果も期待されている。 【目的】がん緩和医療における苦痛症状へのミルタザピンの有用性を明らかにすること。 【対象と方法】2010年10月から2011年5月までに緩和ケア科でミルタザピンが処方された24例。自覚症状の変化を「著効(症状の消失)」「有効(症状の軽快)」「無効」「中止」の4段階に分けretrospectiveに評価した。なお当研究調査には十分な倫理的配慮を行った。 【結果】性別は男性11例 女性13例、原疾患は膵癌7例、胃癌5例、乳癌3例、胆管癌2例、大腸癌2例、肺癌1例、肝癌1例、前立腺癌1例、リンパ腫1例、GIST1例であった。ミルタザピンは不安・吐き気・食欲不振・掻痒感・疼痛・せん妄のいずれかまたは複数の症状がみられた患者に処方されていた。全24例のうち著効11例、有効6例、無効3例、中止4例で、中止理由は4例とも眠気であった。至適投与量は15mg 2例、7.5mg 9例、3.75mg 10例、1.875mg 3例であり、7.5mg以下の低用量投与が92%であった。 【考察】ミルタザピンはがん患者の苦痛症状に対し有効で、低用量で十分な効果がえられていた。本研究は少数例であり,さらなる症例を蓄積したうえでの検討が今後必要であろう。 【結語】ミルタザピンは低用量で各苦痛症状の緩和をもたらす。
著者
三宅 範明 宮本 忠幸
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第56回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.114, 2007 (Released:2007-12-01)

<緒言> 慢性血液透析を実施するにはバスキュラーアクセス(VA)が不可欠である。標準的内シャント(橈骨動脈-橈側 皮静脈間の皮下動静脈瘻)作製が自己血管の荒廃のため困難な症例が増加している。そのような症例では人工血管の使用、動脈表在化などによりVAを確保するという方法もある。しかし、いずれの方法でもVAを作製し得ない場合には血流量の多い静脈を毎回、直接穿刺する方法が選択される症例が出て来る。大腿静脈を直接穿刺する報告は散見されるが内頚静脈の直接穿刺の報告は少ない。今回我々は内頚静脈を直接穿刺し長期間血液透析を実施した症例を経験したので報告する。 <症例提示>: 症例: 80歳、女性 現病歴; 2000年3月、多発生嚢胞腎に起因する腎機能低下のため近医より紹介となる。同年11月21日、左手関節近傍で内シャント作製するもシャント血管の成長は不良であった。2001年4月10日、血液透析開始(BUN109,Cr 8.02)したが数日で内シャント閉塞のため4月18日に右手関節近傍で内シャント再建術を実施した。この内シャントは同年8月まで使用可能であったがシャント血管の狭窄、血流低下を生じ閉塞に至った。この時期より右内頚静脈の直接穿刺を開始した。以後、両側肘関節部、上腕部での自己血管による内シャント再建術、人工血管植え込み術、動脈表在化など(合計6回の手術)行ったがいずれも長期間はVAとして機能しなかった。2004年6月より左肘関節部での上腕動脈直接穿刺法と内頚静脈直接穿刺法を併用したが2006年10月からは内頚静脈直接穿刺法のみで血液透析を行っている。返血には外頚静脈を主に用いている。 <考察> 慢性腎不全の維持血液透析患者にとってVAは文字通り命の綱であり、必須のものである。近年、慢性血液透析の新規導入症例に占める糖尿病性症例の頻度は増加している。そのような症例では動静脈ともに標準的内シャント作製に不適である場合が多い。すなわち動脈硬化や長期間、採血のために穿刺を繰り返したことに起因する静脈の荒廃などによって内シャント作製そのものが困難であったり、作製し得てもシャント血管の発育が不良である症例が少なくない。 自己血管による内シャント作製が困難である場合、1)人工血管植え込み術、2)動脈表在化、3)長期留置型カテーテルの中心静脈への挿入留置、などが対応策として考慮される。 1)、2)は動静脈に問題を有する症例が多いため必ずしもVA確保に成功するとは言い難い。3)には血栓によるカテーテルの閉塞、カテーテル先端部が血管壁に密着することに起因する脱血不良、カテーテル感染などの危険性がある。 大腿静脈の直接穿刺により血液透析を長期間続行しえたとの報告は散見されるが、我々の調べ得た範囲では長期間、内頚静脈を使用したとの報告は無い。内頚静脈穿刺は大腿静脈穿刺に比し患者さんの羞恥心が軽減されるという利点がある。内頚静脈穿刺の合併症として大腿静脈穿刺と同様、動脈の誤穿刺があるが適切な圧迫止血で対応可能である。VAが自己血管や人工血管を用いても作製しえない症例にとって本法は選択肢の一つとなりうると思われる。 <結論> 諸般の事情により自己血管あるいは人工血管によるVAが作製できない場合には内頚静脈直接穿刺により血液透析を続行するという方法は1つの選択肢になりうると思われる。
著者
小柳 浩子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第60回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.470, 2011 (Released:2012-02-13)

<はじめに>リンクナースは、臨床現場(以下現場)において、感染対策の実践モデルとなるとともに現場の現状を把握し問題提起を行うなどの感染対策を推進するうえで重要な役割がある。その役割を担うためには、感染対策の基礎知識の習得が不可欠であり、リンクナースへの教育は院内感染対策上重要である。当院では、リンクナースの感染対策の知識の習得は、自己学習など本人の努力に任せている。そのため、感染対策の知識に個人差がみられた。そこで、「感染対策の実践モデルとなる」、「現場の現状を把握し問題提起できる」を目指し、リンクナース育成教育(以下勉強会)を開始した。その試みを報告する。 <方法>1.月1回開催する看護部感染対策委員会の時間を活用し、15分間の勉強会を実施 2.講義内容は、感染対策の基礎知識が習得できるよう10回に系統だて構成 3.毎回の資料に前月の復習問題をつけ、講義前に解答する 4.10回の勉強会終了後、小テスト、アンケートを実施 <結果>勉強会は、委員会の時間を活用したことで、ほぼ全員参加。アンケートでは、全員が「リンクナースとして勉強会は役にたった」、「今後も勉強会を続けた方が良い」と回答。また、半数が、「勉強会の内容を部署のスタッフへ時々伝達していた」と回答しているが、「他のスタッフへの伝達が難しい」という意見もあった。事前に資料を配布していたが、予習や復習問題の取り組み率が低いことも明らかになった。 <結論>1.系統だてた教育により、感染対策の基礎知識が得られた。2.基礎知識を習得することで、リンクナースとしての責任感や役割を認識するきっかけになった。3.得た知識を実践に活かせるように継続的な教育と活動のサポートが必要である。以上のことが再確認できた。今後も、知識の向上を目指し勉強会を継続していきたいと考えている。
著者
武井 貴裕
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.444, 2010

安城更生病院は、平成21年7月よりDPC対象病院となった。当初の試算にて出来高請求金額とDPC請求金額には大きな隔たりがあった。DPCでは、入院期間内に従来の医療の質を維持しつつコストを抑えた医療の組み立てが要求される。当院におけるDPC導入への取り組みについて述べる。DPCを導入する為の病院の方針として、「医療の質の維持」、「収入の確保」この2つを決定した。この方針の下、当院のDPC導入への取り組みは、大きく分けて_丸1_全職員周知活動、_丸2_収支分析、_丸3_全職員収支分析報告、_丸4_DPC対応型クリニカルパスの作成です。周知会にて、DPCへ移行した場合の当院の現状、改善策の必要性について全職員を対象に説明を行った。その中で現状のままDPCへ移行した場合に年間で約4億円の減収となる事を示した。その結果、全職員に危機感が現れ、DPC導入は全職員で取り組むべき課題であると認識する結果となった。医師に対しては、各診療科のカンファレンスを訪問し、DPC導入した場合に医療の抑制は行わない事、診療上必要な行為は施行してもらう事を説明した上で適正な改善策の実行やクリニカルパスの見直しを依頼した。 結果としては減収と予想されていた収支がDPC導入後には増収となる結果であった。その要因としては、平均在院日数の短縮、病床利用率の維持、費用として計上される診療行為の外来移行と適正化、DPC対応型クリニカルパスの作成、コーディングの精度向上、全職員への周知が挙げられる。特に全職員への周知は一番重要であったと考える。DPCを導入するにあたり一部の事務員がDPC制度を理解し導入を進めていくのではなく、全職員がDPC制度を理解し同じ方向性を持ち、協力体制を構築していかなければ安城更生病院でのDPC導入は不可能であったと考える。その協力体制を築けた事が医療の質を保ちつつ収入の確保に繋がったと考える。
著者
安水 洸彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.42, 2008

今日の産科医療の危機的状況すなわち産科医師の減少と、それに伴う産科医療施設の相次ぐ閉鎖は、「産科の崩壊」として社会問題にまでなって来た。この経過で重要なことは、産科崩壊が地方自治体病院から始まったという事実である。二次救急施設として地域医療を支えている自治体病院での産科診療の廃絶は、地域住民に与える影響が大きく、医療に対する不安と行政に対する不信を生じる。埼玉県草加・八潮地区の中核病院である草加市立病院も、医師の退職と大学からの医師派遣中止により、平成17年4月に産科診療と婦人科手術を停止した。産科再建の依頼を受けて、私が着任したのは平成19年4月であったが、草加市と病院当局の努力により順調に医師が確保でき、平成19年10月には産科診療を再開できた。現在は月50-60例の分娩を管理している。この経験をもとに本ワークショップでは、自治体病院の産科維持に最優先事項となる医師の確保につき私見を述べたい。<BR>産科医の雇用:従来、自治体病院の医師派遣は大学の講座(医局)に依存していた。しかし現在では、「大学は地域医療に対し何らの責任を有しない」というのが一般的見解となり、大学が優先的に教室員を派遣するセンター病院以外の病院では、医師の雇用は個人的人脈、人材派遣会社、雑誌やインターネットでの募集広告などに頼らざるを得ない。これらの方法による募集は医局依頼に比べてかなりの手間はかかるが、病院自体の判断で有能で持続性のある医師を雇用できるというメリットはある。ただし、勤務条件の明示は必須なので、自治体・病院当局との綿密な事前検討が肝要となる。<BR>産科医の維持:稀少職扱いでの産科医の給与増額が話題となっているが、高額な給与設定は、自治体病院ではまず不可能である。むしろ、勤務手当の適正化と労働環境の改善に配慮すべきである。前者の具体例としては、当直手当の増額、分娩手当、オンコール手当の支給、時間外勤務の上限撤廃などが、また後者としては就業、採用における年齢制限の撤廃、個人的事情を考慮した柔軟な勤務体制の設定、当直明け勤務の減免、学会出張や年休の確保、託児所の設営などが挙げられる。<BR>今後の展望:都立病院での産科医待遇改善、周産期医療費の増額、無過失医療保障制度の導入・異状死届出義務の改定への動きなど、行政面から産科医減少防止のための具体策が提示されているが、産科専攻志望者は増加していない。また産科医養成対策として医学部入学時の稀少科枠や奨学金制度の設置などが検討されているが、これらが実現したとしても、効力を発揮するのは早くて10数年後である。したがって、この10-20年間は乏しい人的資源の有効活用を図るしかない。その妙案として提示されている病院の集約化は、大学間協力の難しさと長距離通勤などの勤務者の負担増のため、未だ成功例は少ない(産科閉鎖による結果的集約は多数あるが、この場合は他病院医師に過剰負荷を与える)。そこで現時点では、医会と学会が協力し、産科診療に従事している医師の負担軽減案を案出するべきである。例として以下の方法が考えられる。<BR>(1)医会のリーダーシップのもとに、地域の二次医療病院のオープンあるいはセミオープン化を推進し、診療所経営医師の病院診療(当直も含め)への参加を奨励する。<BR>(2)学会(地方部会)のリーダーシップのもとに、産科診療を行っていない病院の勤務医に地域の産科診療機関での日当直を奨励し、紹介を行う。
著者
阿部 真由子 中島 まゆみ 木村 郁美 中野 はる代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 第58回日本農村医学会学術総会 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
pp.96, 2009 (Released:2010-03-19)

〈はじめに〉年間平均10件の頸部郭清術が行われている。 今回,頸部リンパ節郭清を受けた患者から,退院間近に頸 部から肩,上肢にかけての疼痛と上肢の挙上困難の訴えが 聞かれ,また,家族より退院後の生活についての不安が聞 かれた。このことから,早期からの退院指導が必要である と感じ,頸部リンパ節郭清術後の退院後の患者の精神的・ 身体的・社会的苦痛について調査し明らかにした。 〈研究方法〉頸部リンパ節郭清を受け,現在腫瘍外来に通 院中の20名に対し,半構成質問紙法で調査を行った。 倫理的配慮では研究の主旨説明,プライバシーの保護, データを研究以外に用いないことを書面で説明し,署名で の同意を得た。 〈結果〉予測されていた肩,上肢の疼痛,可動域制限から 手に力が入りにくく,フライパンを握りづらい,運転時な ど後方確認などの振り向き動作が難しかったなどの日常生 活の苦痛が聞かれた。 〈考察〉患者の生活背景や性別により,個別の苦痛などが ある。入院中には気付かなかったことが退院後に明らかに なることがあり,早期から患者のライフスタイルに合わせ た指導,助言が重要である。退院の方向性がみえ医師と相 談した上で試験外泊を行ってもらい,患者・家族が不安を 軽減し退院できる援助が必要である。 〈おわりに〉今回インタビュー調査した事で退院後の患者 の現状を知る事ができた。スタッフ各々が患者の状態を把 握し,個別性を考えた指導が出来ることが重要である。そ のためにはアンケート結果を基にしたパンフレットを検討 していく必要がある。
著者
伊藤 しげ子 井後 一夫 水野 章 諦乗 正 河内 嘉文 伊藤 恭子 伊藤 雅彦 川瀬 朋子 小寺 久子 三和 静代
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.27, 2007

_I_、はじめにいなべ総合病院は三重県最北に位置する220床の病院です。診療圏人口は約71,000人で地域の中核病院としての役割をもっている。当院は平成14年9月、新築移転をした。しかし、移転当初最新の医療設備、優秀なスタッフが揃っているのにも関わらず、地域の中では病院機能の理解はなかなかなされず、病院の活性化はならなかった。そこで、以前より活躍していた院内ボランティアの方にまず病院の機能を理解してもらうために「ボランティア委員会」を立ち上げ、年間2回の研修会と3回の委員会の開催をした。また、病院祭の際には、餅つきやアンケートの手伝いをしてもらい、職員と一体となって地域の人へのアピールを行ってきた。地域の人で作るボランティアの方の地域への宣伝効果は大きなものがあり、現在外来患者数880人(移転当初750人)、入院稼働率92%(移転当初88%)と活気ある病院になってきた。その経過を報告したいと思う。_II_方法1、ボランティアグループ1)ほほえみの会 100名登録 (玄関患者介助)2)ほほえみの会ひまわりグループ8名 (小児科外来絵本読み聞かせ)3)敷地内草取りボランティア130名 (シルバー)4)敷地内草取りボランティア5)小児科病棟絵本読み聞かせ 1名2、活動内容1)毎日2~3名が玄関で患者介助2)第1月曜日に2名が実施3)毎月1日と10日に敷地内の草取り実施4)年1回敷地内の草取り実施5)毎月第_I_土曜日に実施3、病院祭毎年開催する病院祭に、餅つき、アンケート聴取の手伝いやイベントコーナーへの参加など病院行事への自発的な参加を行っている。4、研修会年2回実施_III_、結論最初は20名ほどから始まったボランティア活動は、現在230名を超える大きな輪になった。ボランティアの人が「自分たちが支えている病院」という気持ちを持ってもらうことこそが病院活性化につながると考え、研修会、委員会、病院祭の参加とまずは病院へ足を運んでもらうこと。もう1つはボランティアの方が地域住民の代表者となり、病院への要望・意見を言ってもらい病院改善を行ってきた。年2回開催する研修会には、院長、事務部長、看護部長、外来師長が必ず出席して、常に病院の方針を話し理解していただき、考えを共有するようにした。また、ボランティアからの要望は最大限取り入れた。そうしたことで徐々に「自分たちの病院」という思いが広がっていき、その思いは地域の人にも広がっていった。移転後5年目を迎えた現在、救急車搬送率、外来患者数、入院患者数、健康診断受診者数等全てにおいて右肩上がりの成績を収めており、まさしく地域とあゆむ中で病院の活性化はなされてきたと感じている。
著者
柴田 純子 津谷 浩子 山城 洋子 浪岡 佳奈子 岩川 正子 簾内 陽子 久保 達彦
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.186, 2008

I.はじめに<BR>昨年、全職員(臨時職員・委託業者を含む240名)に対し、救急担当医師によって一次救命処置(以下、BLS)の講習が開催され、積極的な学習の必要性を感じると同時に救急への意識が高まってきた。さらに、二次救命処置(以下、ACLS)の講習会が行われるなど救急対応が確実に行える事が求められてきた。今回、BLSからACLSと一貫した講習会を受けて看護師の意識の変化・知識の向上など講習会の効果にについて知り、継続的支援の方向性を見いだす事が出来たので報告する。<BR>II.研究方法<BR>1.研究対象:当院でBLS・ACLS講習会を1回受けた看護師121名(アシスタントは除く)<BR>2.研究期間:2007年4月~10月<BR>3.研究方法<BR>1)講習会受講した看護師121名に対し質問紙調査<BR> 2)質問紙調査はAHA心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン2005に準じBLSとACLSに関して各13項目とした<BR>4.データ分析 統計処理(エクセル)<BR> III.結果<BR> BLSについての質問紙調査結果、「急変時の意識・呼吸の確認ができると思う」「急変時の応援要請ができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は100%という結果であった。「効果的な」心臓マッサージができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は89%「AED取扱いができると思う」に対しては、「はい」と答えた人は72%であった。ACLSについての質問紙調査結果、「心電図が取れると思う」「薬剤投与が正確にできると思う」「フラットライン・プロトコル適応基準が理解できたと思う」の4項目は「はい」と答えた人は、平均57%と不安の残る結果がでた。<BR>IV.考察<BR> 心肺蘇生はチーム医療で行われ看護師は役割を分担し、医師と共に救命行為を円滑に行う事が大切である。そのため、医師・看護師が統一されたプロトコルを理解しなければならない。看護師は急変の第一発見者となる機会が多くBLS習得は必然であると考えられる。調査結果よりBLSは、意識・知識を高める事が出来たと考えられるが、ACLSは4項目で出来ると答えた人は約50%であった事から、1回の講習会では習得は困難であったと考えられる。しかし、自分の弱点を明確にする事ができた良い機会であったと思われる。今後は各部署で実技訓練実施・講習会など、継続的に学習する事が重要である。河本らは「救急処置は反復訓練が重要であり、今後も患者急変時に自信を持って行動できるよう定期的に知識・技術の確認が行える場の支援が必要」と述べている。全体を通して講師・アシスタントの緊張させない和やかな雰囲気とわかりやすい指導が大きな成果を挙げたと考える。<BR>V.結論<BR>1.救急への意識が高まり院外の講習会参加が増えた<BR>2.各部署での実技訓練の実施が必要 <BR>3.定期的な講習会の開催が必要<BR>
著者
瀬能 美代子 鈴木 芳江 竹村 晶子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.265, 2006

<b><はじめに></b>日本の女性雇用者数は増加傾向にあり、働きつつ妊娠、出産、育児を続ける女性をサポートする法整備がなされている。しかし、これらのことが女性の就労の妨げとなっていることは少なくない。今回当院で分娩した褥婦の就業状況及び法制度の知識、利用状況を知り、看護者としてどのような援助が必要なのかを考えるため、アンケート調査を実施した結果、法的制度の周知度と利用状況などを知ることが出来たので、ここに報告する。<br><b><研究目的></b> <BR>当院産婦人科外来利用者を対象に労働基準法第6章の2の知識及び、利用状況について質問紙法を用いて調査し、その実態の把握を試みる。<br><b><研究方法></b><br> (1)期間<br> ・平成17年9月-平成17年11月の2ヶ月間<br> (2)対象<br> ・当院産婦人科外来に産後1ヶ月健診に訪れた褥婦100名<br> (3)方法<br> 労働基準法第6章の2の知識と利用状況を把握するためのアンケ?トを作成し、同意のもと記入後、手渡しにて回収。統計をとる。<br><b><倫理的配慮></b><br> アンケートは無記名とし研究目的と共にこの研究以外に使用しないことを説明し同意を得て実施。<br><b><結果></b><br>育児担当者は母(自分)97名であり、妊娠発覚時の就業者は73名である。<br>(1)雇用形態<br>正社員30名(41%)、準社員8名(11%)、パート21名(29%)、アルバイト7名(10%)、事業主(自営)3名(4%)、その他4名(5%)<br>(2)妊娠発覚後の就業状況仕事を辞めた46名(63%)、産後休暇をとり継続2名(3%)、産前・産後休暇をとり継続4名(5%)、産前・産後・育児休暇をとり継続18名(25%)、休暇をとらずに継続3名(4%)対象者全員に働く女性の妊娠・出産育児に関する制度について調査した(表1)利用状況(予定を含む)(表2)<br><b><考察></b><br>産前の就職状況は73%に対し、妊娠中及び産後仕事を辞めたのは63%であった。青木1)らは、「わが国においては、近年女性の社会進出が著しいものの、今なお男は仕事、女は家事、育児、という性(別)役割分担が根強いもの事実である」と述べている。育児の中心は母親であるとの結果からも、推測ができる。産前・産後休暇・育児休業の制度は6割強の周知度に対し、その他の制度に関しては1_から_2割程度の周知である。「産前休暇」「産後休暇」「育児休業」については制度を利用しようとする状況があるものの、利用者は周知度よりも低いことがわかる。(グラフ1)。つまり知っていても利用できない現状であるとわかる。正職員以外の就業者が5割以上いることから雇用形態によっては制度が利用できないことも考えられる。<br> <b><おわりに></b><br>今回の調査により法的制度の周知が進んでいない現状が明らかになった。そこで、私達看護者が法的制度の知識普及に努め、妊婦、産婦が働きながら安心して妊娠、出産、育児を両立できるよう支援していくことが今後の課題といえる。<br> <b><引用文献></b><br>1)助産学大系5 母子の心理・社会学 青木康子 加藤尚美 平澤美恵子p99、p39、<br><b><参考文献></b><br>1) 厚生労働省平成17年3月28日「平成16年版 働く女性の実情」<br>http://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/03/h0328-7a.html#zu1-9<br>2) 国民衛生の動向2003年
著者
荒川 房江 秋山 ますみ 豊田 梓 高橋 恵美 阿瀬川 満枝
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.54, pp.172, 2005

〔はじめに〕<BR>当院では、整形外科で牽引手術台を使用する際バスタオルで前腕を巻き、離被架につり下げる方法で長時間上肢の固定を行っていたが、いくつかの問題点が生じていた。そのため問題点を改善する目的で手台を作成したが、痛みを訴える患者があった。その痛みの原因を腕の太さと手台のサイズの不一致と考え、数種類のプロトタイプを作成し有効性を検証した。<BR>〔研究方法〕<BR>1.対象:手術室看護師6名<BR>2.手台の作成:3種類(S/M/L)のソフラットシーネを約40cmのところで屈曲させ肘関節部に約10cm四方の穴を開け、周囲を綿包帯で覆い、離被架につり下げるようにした。<BR>3.手台の実施:対象者の肘関節部の太さを測定し、3種類の手台で1時間体位を保持し、10分毎に痛みのレベルを4段階で評価した。<BR>〔結果および考察〕<BR>Sサイズの場合は腕の太さにかかわらず全員が時間の経過とともにレベル1-3の痛みを訴えている。その原因として最も多かったのは圧迫による痛みでありそのことにより体位の維持が出来なかった。よって肘関節の周囲が22.0cm以上の人には不適切と考えられる。Mサイズの手台では、腕の太さが22.0cm-23.0cmの人はほとんど痛みがなく、体位固定に安定性が見られた。一方27.5cmの2名には圧迫によりレベル2の痛みの出現が見られたことから、22.0cm-23.0cmの人にはMサイズの手台が適切であったと考えられる。Lサイズの手台では22.0cm-23.0cmの人には手台が大きすぎることで腕の引き抜きやずれが起こり、レベル2-3の強い痛みが出現し、固定の安定性もなく術者の視野確保の意味でも不適切であったと考えられる。27.5cmの2名には痛みの出現がなく体位を保持できたことから手台が適切であったと考えられる。腕の太さと手台のサイズの関連性を考慮したことにより、個々のニーズに応じてより安全安楽を考えた体位固定の工夫が出来たと考えられる。<BR>〔終わりに〕<BR>今回の研究では、対象人数が少なく腕の太さにバラつきがなかったため、Sサイズが適切とされる腕の太さやM・Lサイズの境界線といった細かい基準を明らかにすることが出来なかった。今後さらに研究を進めることでスタッフ間での統一を図り、いかに効果的な固定方法でも長時間の同一体位は、患者にとって精神的なストレスになることも考慮し、より安全で安楽な体位固定が出来るよう検討していきたいと思う。
著者
橋本 澄春 神林 ミユキ 原 靖子 小瀧 浩
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.230, 2009

〈緒言〉老人保健施設併設の在宅介護支援センター職員から急性期病院の医療ソーシャルワーカー(以下MSW)へ転職して約1年が経過し,入院期間という限られた時間内での業務遂行に大きな戸惑いを感じていた。そこで,この1年を振り返り,急性期病院の職員として組織の利益を守りながら,患者・家族ができる限り不安を感じることのない短期退院援助の方法を模索した。<br>〈方法〉1年間で介入したケース50件の平均在院日数は,当院の平均在院日数の約4倍であった。この結果から,現在のMSW としての退院援助に,まだ短縮できる部分があるのではないかと考えた。日報やケース記録から,ケースごとに依頼までの日数,依頼から初回面接までの日数など援助過程を細分化し,それぞれの期間におけるMSWの援助内容が妥当であったかを確認した。<br>〈結果〉専門職として学んだケースワーク過程を展開し,社会資源の利用準備を行う援助過程の中に省ける部分はないため,退院援助をおける時間短縮することは難しい。しかし,地域における急性期病院の役割を果たすためには,スピーディーな退院援助はMSW の絶対的な使命である。そこで援助過程の短縮ではなく,効果的に資源を利用し援助期間を短縮する方法として,短期完結を可能とする援助方法の獲得,社会資源を円滑に利用するための準備,院内スタッフとのコミュニケーションの促進が有効ではないかと考えた。入院期間という限られた時間内で,患者・家族が退院の準備をする時間を多く確保するため,MSW・地域・病院などの資源を最大限活用したい。<br>〈考察〉入職時に抱いていたMSW のイメージは,「退院」に対する病院と患者・家族とのギャップを患者側の立場で埋めていく専門職である。病院という組織が直面している課題を知ることで,そのイメージを現実にする方法が少しずつ具体的に見えてきた。専門職として,また病院の職員として,一つずつ課題を達成することが,患者の利益を守ることになると信じて,日々の業務に励んでいきたい。