著者
佐川 暢俊 金野千里 梅谷 征雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.36-45, 1989-01-15
被引用文献数
15

スーパコンピュータによる大規模な数値シミュレーションの要求が高まっているが そのソフトウェア環境は必ずしも満足すべきものではない.著者らはプログラム生産性の大幅な向上とスーパコンピュータの有効利用とをねらいとしてDEQSOL(Differential EQuation SOlver Language)の開発を進めている.DEQSOLは 問題仕様書レベルの記述からFORTRANによる数値シミュレーションプログラムの自動生成を行う問題向き高水準言語である.入力となるDEQSOL言語はシミュレーション対象を簡潔に表現するとともに解法アルゴリズムを柔軟に表現できるように設計されている.すなわち 空間メッシュの生成 境界条件の取り込みを自動的に行うのみならず 繰り返し 条件分岐と微分演算子を含む計算式を組み合わせて広範囲の解法スキームを構築することができる.連立偏微分方程式の一括離散化 Body Fit用プリプロせッサの装備などの拡張を加え さらなる適用範囲の拡大を図りつつある.一方生成されるFORTRANコードはスーパコンピュータを意識したものであり ループ長の拡大 コンフリクトの少ないデータ構造の採用などの配慮がなされている.その結果 各種の問題に対して記述効率(記述行数比)でFORTRANの10倍以上 ベクトル化率で90%以上のコードの生成を可能としている.
著者
高田 昌忠 長島 勝城 渡辺 尚
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.2513-2522, 2005-10-15
被引用文献数
1

無指向性アンテナを前提とした従来の無線アドホックネットワークMACプロトコルの空間利用効率が低い等の問題に対して著者らは,干渉の低減・空間利用効率の向上・通信距離の拡張を提供しうるスマートアンテナを利用したアドホックネットワークMACプロトコルSWAMP(Smart antennasbased Wider-range Access MAC Protocol)を提案している.本論文では計算機シミュレーションによるSWAMPの性能評価を実施し,スループット・遅延・オーバヘッド特性を明らかにする.その結果,IEEE 802.11と比較しSWAMPは約3.5倍のスループットおよび低遅延を実現し,追加したオーバヘッドがあるものの,それを上回る性能向上がなされることを示す.また,ノードの移動速度・ノード密度に対するスループット特性をそれぞれ示す.次に,SWAMPの通信失敗の原因を7つに分類して考察し,低負荷時にはアンテナの指向性制御が不正確になる問題が発生することを示す.さらに,この問題に関連するビーム幅,近隣端末位置情報の有効期間および最大再送回数がSWAMPの性能に与える影響に関してそれぞれ検討を行う.結果,負荷量・ノードの移動速度に応じてビーム幅の適応制御を行うことでさらなるSWAMPの性能向上の可能性があることを示す.To address issues of MAC protocols using omni-directional antennas, such as the low efficiency of spatial reuse, authors have proposed a MAC protocol for ad hoc networks using smart antennas called SWAMP (Smart antennas based Wider-range Access MAC Protocol). Smart antennas may offer some benefits, e.g., interference reduction, spatial reuse enhancement and the transmission range extension. This paper evaluates SWAMP through simulation studies in terms of throughput, End-to-End delay and overhead characteristics. Results show that SWAMP improves throughput and delay performance against IEEE 802.11 though it has more overhead. Also, we evaluate the effects of the mobility of nodes and node density. This paper then investigates different factors which reduce the probability of successful transmissions. SWAMP increases the communication failure due to location information staleness when offered load is low because a gap between the table information and actual location of the neighbor nodes is arisen due to the lapse of time and the mobility of nodes. This paper also examines the effects of the beamwidth and lifetime of the location information associated with location information staleness. The experimental results show that the dynamic adaptation of the beamwidth may mitigate the location information staleness and improve the overall network performance.
著者
酒居 敬一 光成 滋生 成田 剛 石田 計 藤井 寛 庄司 信利
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.1028-1038, 2002-04-15
参考文献数
19

近年の汎用パーソナルコンピュータに多く使われているIA-32プロセッサは過去との互換性のために命令体系はCISC的である.しかし内部動作はRISCマイクロ命令への変換,ハイパーパイプライン,アウトオブオーダ,などRISC的アーキテクチャが多数取り入れられている.さらにSIMD的演算命令の搭載によりデータ並列処理を実現している.とはいえその新しい機構に応じたコードを生成するコンパイラはまだまだ少数であり,また対応していたとしてもコンパイラ独自の拡張C言語による記述が必要であることが多い.そのため通常のC言語による記述を主体としたベンチマークではプロセッサの正当な評価を行いにくい.そこで我々は実用的なアプリケーションとしてMP3エンコーダを選択しコード全般にわたってアセンブリ言語による最適化処理を行った.その結果C言語によるコードに対し2倍から3倍の高速化を達成した.The architecture of IA-32 processors, which are recently used in personalcomputers in general, can execute the industry-standard x86 instruction setlike CISC for binary compatibility.But in fact, the processors process simpler RISC micro operations instead ofcomplex x86 instructions, and support hyper pipelined technology and out-of-oder speculative execution.IA-32 processor also has the SIMD instructions.However, there are few compilers which generate the code supporting the newtechnology, or we must use the extended C language, if any.Therefore it is difficult to evaluate the processor exactly by the benchmarkbased on the ordinary C language.Then we chose a MP3 encoder for practical application and rewrote the mainroutines of the encoder by assembly language.As a result, we have achieved about two or three times faster optimization.
著者
角本喜紀 西島 英児 水津 宏志 先崎 隆 薦田憲久
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.209-216, 2006-01-15

LSI 技術の進歩にともない,監視制御系システムにおいても汎用製品の利用や効率的なソフトウェア開発が浸透しつつあり,鉄道運行管理システムにおいてもソフトウェア開発の効率向上がこれまで以上に強く要求されている.本論文では,鉄道運行管理システムにおいて,様々なシステム構成に共通に適用可能とするソフトウェアアーキテクチャとこれを実現するミドルソフトを提案する.提案ミドルソフトは,受信データのバッファリングと提示処理を1 つの処理モジュールにて実行することにより排他制御のない高信頼な構造を実現する.また運行情報をシステム構成に依存せずつねに鉄道路線全体の情報として鉄道運行管理アプリケーションに提供する共通データインタフェース機能を持つ.
著者
飯島 安恵 藤田 茂 今野 将
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.873-885, 2016-03-15

近年,iPadなどのタブレット型端末の普及にともない,電子譜面が注目・開発されてきている.また,電子譜面システムを演奏会(特に吹奏楽団など)で使用すると,紙の譜面を利用する際に演奏者にかかる負荷の軽減が期待できる.しかし,現状の電子譜面システムは個人使用(主にピアノ演奏者)を想定して開発されているため,吹奏楽団のような集団での使用は想定されていない.そのため,演奏者にかかる譜めくり作業の負荷が依然として大きい.そこで,本研究では,譜めくり作業負荷の軽減を目的として,現在吹奏楽団などで使用されている紙の譜面を再利用することを前提とした,タブレット型端末の特性を活かした吹奏楽団向け電子譜面システムPEANUTSの提案,試作を行った.PEANUTSシステムでは,吹奏楽団で楽曲を演奏する際に演奏者にかかる負荷の1つとして譜めくり作業に着目をした.譜めくり作業の負荷を軽減するために,譜めくりタイミングが同じ演奏者の中から,譜めくり作業を行う譜めくり担当者を,本論文で提案するモデルとアルゴリズムに基づいて選定する.この結果,演奏者全体での譜めくり負荷が,既存の譜めくり手法や電子譜面アプリケーションと比べて低くなる.本論文では,PEANUTSの評価実験と,PEANUTSを用いた実際の楽器演奏者による実地実験の結果を示す.In recent years, with the spread of tablet computers, such as the iPad, applications such as electronic musical scores have been developed that exploit the special features of tablet computers. However, existing electronic musical score applications were developed considering individual use (principally by pianists), and when using electronic musical score systems for a wind orchestra, for example, the load placed on the musical performers are effectively the same as when using paper scores. Therefore, in this study we're taking advantage of the characteristics of the tablet terminal and carrying out the proposal and trial production of the Electronic Musical Score System for Wind Orchestra called PEANUTS. It is presupposed to reuse the score of paper that is currently being used. PEANUTS, is focused on page turn as a load applied to the performer when playing musical piece in Wind Orchestra. We have proposed a system for designating the person in charge of page turn to reduce the load based on algorithm of designating the person in charge of page turn. In this paper, we carried out the simulation and perform experiments using PEANUTS.
著者
久保 勇貴 志築 文太郎 田中 二郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.1061-1072, 2017-05-15

本論文において,我々は超小型端末向けの新しいタッチジェスチャとして,ベゼルからベゼルへのスワイプジェスチャBezel to Bezel-Swipe(以降,B2B-Swipe)を示す.ユーザは指の触覚から各ベゼルを見ることなく区別できるため,B2B-Swipeをアイズフリーで行える.また,矩形の超小型端末の場合,B2B-Swipeは16通り存在する.さらに,B2B-Swipeは1本指による1回のスワイプであるため,超小型端末が備えるタッチパネルのみを用いて実装可能である.これらにより,B2B-Swipeは端末にセンサを追加することなく,かつ既存のタッチジェスチャと共存しつつ超小型端末の入力語彙を増やすことができる.本論文では,B2B-SwipeがBezel Swipeおよびフリックと共存できること,およびアイズフリー入力可能であることを検証するために行った性能評価実験の結果も示す.
著者
小島 清信 徳田 英幸
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.148-160, 2015-01-15

講演会などイベント活性化のため,口頭によるコミュニケーションと並行してTwitterのハッシュタグを利用したオンライン上の会話が利用されている.一方,時間順に各々の投稿を同等に扱うため,件数が増加すると,投稿を逐一確認する認知負荷が高くなる.この問題を解決すべく,興味のあるトピックを参加者が短い文字数で入力し,リアルタイムで相互投票によるランキングを集計するTokenCastシステムを設計・実装し,講演会や勉強会などで運用した.その結果,傾向を把握しやすくする効果にとどまらず,興味を高めるのに時間がかかるようなトピックについて参加者の興味をあぶり出す効果が観測され,投票者数の多い55件のトピック中の22%が該当した.この現象を本稿では,"コミュニティの共振現象"と名付けて分析を行い,共振の要件を示した.参加者間で価値の発見が連鎖することにより,後から重要なものを見落とさないだけでなく,イベント自体を創発的な場に変化させる効果を持つ.Recent open conferences sometimes use Twitter to establish supplemental communication channel identified by hashtags. Still, many posts may cause a heavy cognitive load to track them for both speakers and participants because each post has the even priority and is listed in chronological order. We designed a real-time ranking system, TokenCast, which allows participants to post and vote their interests in short words as hashtag. Through experimental operation in some lectures, the trends of topics were aggregated even if spams exist. In addition, the system helps participants to extract their hidden interests by taking longer time than their straight interests. We found that 22% of top 55 topics were brought by this effect, which we name as social resonance, and discuss the requirement to bring the effect. The chain of discoveries by some participants helps others to find important topics and will help the conference to increase innovative interaction.
著者
佐々木 勇和 原 隆浩 西尾 章治郎
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.175-186, 2011-01-15

アドホックネットワークでは,膨大なデータの中から必要なデータのみを効率的に取得するため,端末が何らかの値(スコア)によって順序付けられたデータの上位k個のものを検索するTop-k検索を用いることが有効である.本論文では,アドホックネットワークにおいて,トラヒックの削減と検索結果の取得精度の低下を抑止を目的とするTop-k検索手法を提案する.提案手法では,各端末がヒストグラムを作成し,ネットワーク全体のk番目のスコアを推定する.次に,推定したk番目のスコア以上のスコアを持つデータを返信することで,できる限り検索結果に入るデータのみを返信する.また,返信先の端末とのリンク切断を検出した端末は,他の隣接端末にクエリ応答を返信することで,検索結果の取得精度の低下を抑止する.In mobile ad hoc networks , to acquire only necessary data items, it is effective that each mobile node retrieves data items using a top-k query, in which data items are ordered by the score of a particular attribute and the query-issuing mobile node acquires data items with the k highest scores. In this paper, we propose a query processing method for top-k query for reducing traffic and also keeping high accuracy of the query result. In this method, each node constructs a histogram and estimates the k-th score in the entire network. When transmitting a reply, each mobile node sends back only data items whose scores are larger than the estimated k-th score to reduce traffic as much as possible. Moreover, when a mobile node detects the disconnection of a radio link, it sends the reply to another neighboring node to keep high accuracy of the query result.
著者
平井 佑樹 井上 智雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.72-80, 2012-01-15

プログラミング教育では,プログラム言語の文法やプログラム書法を理解する能力とアルゴリズムを組み立てる能力が要求される.プログラム言語の文法や簡単な例題を理解することができても,実際にプログラムを作成するときにはいくつかのつまずきが発生する.プログラミングを行う方法の1つとして,2人1組になって行うペアプログラミングがある.ペアプログラミングによるプログラミングは協調作業であるが,これはプログラミング学習の方法としても用いられている.本研究では,プログラミング学習時のペアプログラミングの成功事例と失敗事例を比較分析した.分析では作業中の会話に着目し,失敗事例の方が発話が長いこと,説明の繰返しが多いこと,一方的な発話が多いことが分かった.この知見は,ペアプログラミングにおいて協調作業がうまく進んでいるかどうかを判断する手がかりを提供し,協調作業の状態推定に有効であると考えられる.
著者
伊藤裕一朗 山田 雅之 宮崎 剛 世木 博久 伊藤 英則
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.249-258, 1996-02-15
被引用文献数
6

本論文では 編物の紐状態を3次元紐図形としてとらえ これを表現し 紐図形の模様表示を支援するためのシステムについて述べる. このシステムは編み手順を表す記号列から編物のできあがり模様の3次元イメージを計算機を用いて生成し これを表示する. この紐図形生成の過程では ライデマイスター移動処理と力学的移動処理に基づく変形処理を逐次的に紐の交差点に対して施す. また 複数の交差点移動を効率的に行うために適応型移動係数を提案し その効率を評価した. さらに いくつかの例を通してこのシステムで提案した方法の有用性 および生成される図形の妥当性を示す.In this paper, string states of knitting patterns are represented by three-dimensional string diagrams, and a system for supporting knitting pattern displaying is described. This system generates and displays a three-dimensional knitting pattern from a table of notations which represents a knitting process. To generate a string diagram, this system repeatedly performs a transformation processing based on both Reidemeister movements and a string-tension movement, to crossing points of the string diagram. Also, an adaptive move coefficient is presented to execute the string-tension movement efficiently, and its effect is evaluated. The usefulness of the proposed methods and the validity of generated diagrams are verified by some examples.
著者
三嶋 仁 田中 敏光 佐川 雄二
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.4080-4087, 2008-12-15

本論文では,グラフィックスハードウェアを使って,メタボールを直接リアルタイム表示する方法を提案する.提案手法は,レイキャストと同様に,視線上を等間隔に区切ったサンプル点でポテンシャルを計算する.ただし,ポテンシャルが存在しない場所で無駄な計算を行うことを避けるために,各粒子の最大影響範囲を表面とする球を包含する立方体を作成し,その視点側の半分を計算候補領域に選ぶ.そして,計算候補領域が不連続の場合には,Zバッファによる前後判定を使って次の計算候補領域にサンプル点を移動することで,効率的なサンプリングを実現する.また,選ばれたサンプル点のポテンシャルを,それぞれの粒子によるポテンシャルを画像に加算合成する方法で計算する.閾値を超えたサンプル点を物体の中にあると判定し,直前のサンプル点との間を補間して,物体の表面を推定する.さらに,視線方向に並んだ4点を同時に計算することで.処理コストを減らす.このような,GPUの特性を活用した実装により,メタボールの実時間表示を実現した.実験では,4 096個の粒子を使って表現した物体を,256×256画素のサイズで,30 fps前後で表示することができた.This paper presents a real time rendering method for metaballs. The method computes potential at equal interval sampling points like ray-casting. However, in order to remove unnecessary sampling points, a bounding cube is created for each particle then its front-half is selected as the sampling area. At each pixel, the initial sampling point is selected on the front surface of the nearest are. The sampling point shifts at same interval step by step. However, if the sampling areas are not continuous on the ray, the sampling point is made to jump to the next area by using modified Z-buffer algorithm. For each particle, potential at the sampling points is added to the accumulation buffer, which is the same size of the image. Then potential at each pixel is evaluated. If the value is over the threshold, surface of the object is estimated by interpolating between the sampling point and the proximate point. In addition, the cost is reduced by computing 4 sampling points along the ray together. By considering feature of GPU, real-time rendering is realized. The experimental result confirmed that 256×256 images including 4096 metaballs are created in 30 fps.
著者
桂田 浩一 中村 有作 山田 真 山田 博文 小林 聡 新田 恒雄
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2681-2689, 2003-11-15
被引用文献数
17

本論文ではマルチモーダルインタラクション(MMI)記述言語XISLを提案する.XISLの目標は,(1) MMIで必要とされるモダリティの利用方法・対話の制御を記述可能にすること,(2)モダリティの拡張性を高めることである.これらを実現するために,XISLでは,(1) VoiceXML,SMILといった従来言語を参考に,モダリティの利用方法および対話制御の諸概念や命令を導入し,(2)入出力モダリティに関する記述に自由度を持たせている.本論文ではXISLの概略を説明するとともに,PC上に実装したXISLの実行システム,およびプロトタイプとして試作したオンラインショッピングアプリケーションについて述べる.またXISLを他の言語と比較することにより,XISLのMMI記述言語としての特徴を明らかにする.This paper provides a multimodal interaction (MMI) description languageXISL. XISL aims to be a language satisfying the following conditions: (1) it has enough power to describe MMI scenarios, (2) it has extensibility of input/output modalities. For this purpose, (1) XISL prepares a lot of commands and structures used in previous languages such as VoiceXMLand SMIL,and (2) XISL has flexibility of describing input/output modalities. In this paper, we outline the specification of XISL, and show its interpreter and an application implemented on PC. Moreover, we clarify advantages of XISL by comparing it with other MMI description languages.
著者
塩塚 大 鵜林尚靖 亀井 靖高
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.631-643, 2012-02-15

プログラマはデバッグに多くの時間を費やす傾向がある.プログラマはエラーの現象をチェックしたり,様々なコード上の箇所を行き来したり,あるいはバグ修正履歴を探索したりして,コードを修正する.このような一連のデバッグ作業を自動化することができれば,他の生産的な作業に時間を割くことができる.本論文では,この問題に対処する方法として,デバッグ支援のための関心事指向推薦システムdcNavi(Debug Concern Navigator)を提案する.dcNaviでは,リポジトリに含まれるプログラム情報やテスト結果,および修正履歴を活用することで,デバッグの関心事に応じた適切なヒントを提供する.本論文では,Eclipseプラグインプロジェクトに関する9つのオープンソースリポジトリを対象に,再利用性の観点からバグ修正履歴に基づいた推薦の有効性についても評価する.Programmers tend to spend a lot of time debugging code. They check the erroneous phenomena, navigate the code, search the past bug fixes, and modify the code. If a sequence of these debug activities can be automated, programmers can use their time for more creative tasks. To deal with this problem, we propose dcNavi (Debug Concern Navigator), a concern-oriented recommendation system for debugging. The dcNavi provides appropriate hints to programmers according to their debug concerns by mining a repository containing not only program information but also test results and program modification history. In this paper, we evaluate the effectiveness of our approach in terms of the reusability of past bug fixes by using nine open source repositories created in the Eclipse plug-in projects.
著者
福島 拓 吉野 孝 重野 亜久里
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.256-265, 2013-01-15

現在,在日外国人数は年々増加しており,多言語によるコミュニケーションの機会は増加している.医療の分野では医療機関を訪れる外国人患者とのコミュニケーションのために多言語問診票が使用されている.しかし,多言語対応の紙の問診票は種類が少ないため各医療機関の要求を満たすことができていない.また,日本人医療従事者が外国人患者の母語で書かれた紙の問診票を理解することは困難である.そこで我々は,用例対訳や機械翻訳を利用して診察に必要な基本情報である症状の伝達を支援する,多言語問診票作成システムの開発を行い,問診票入力機能についての評価を行った.本研究の貢献は次の2つである.(1)日本人医療従事者と外国人患者との間のコミュニケーションを支援する,多言語問診票作成システムの提案を行い,実現した.(2)用例対訳と機械翻訳を併用することで,病名や症状を含む文の正確性と,状況説明などの付与情報を含む文の網羅性を確保した多言語問診票の記入の可能性を示した.
著者
深田 敦史 鍛 忠司 東野 輝夫 谷口 健一 森 将豪
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.39, no.8, pp.2519-2527, 1998-08-15

本論文では,入力を奪い合いながら並行に動作するDFSM群(DFSMsの直積マシン)としてモデル化される通信プロトコルのあるサブクラスに対して,DFSM群の状態と遷移の数の和に比例する程度のコストで効率良く適合性試験を行うための1つの手法を提案する.提案する方法では,まず,Wp法を用いて単独に各DFSMの試験を行う場合に用いる特性集合の和集合をシステム全体(DFSM群)の試験を行うための特性集合とする.入力を奪いあう場合,与えられた各特性系列に対して正しく反応を返す可能性のある状態対は複数存在する可能性がある.このため,各DFSMの1つの状態sの存在を確認するために,まず一定の条件を満たすW集合を構成する.次にその状態sを含む適切な状態組を1つ選び,その状態組に対する特性系列の反応をチェックすることにより状態sの存在を確認する.In this paper,we propose an effective conformance testing method for a subclass of protocols modeled as a set of DFSMs.The cost in the proposed testing method is only proportional to the sum of the numbers of states and transitions in a given set of DFSMs.In our method,we find a characterization set for each DFSM,which is used to test the DFSM alone in Wpmethod,and the union of the characterization sets is used as a characterization set for the total system.For a set of DFSMs with common inputs,there may exist two or more tuples of states that have correct responses against a given characterization set.So,in order to identify each state s in a DFSM,we find a characterization set with some specific properties.Then,we select a suitable tuple of states containing the state s,and identify the state s by checking their response to the characterization set.
著者
宗森 純 五郎丸 秀樹 長澤 庸二
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.36, no.6, pp.1350-1358, 1995-06-15
被引用文献数
20

本論文では、3台もしくは4台の計算機上で発想支援グノレープウェア郡元を用いて分散協調型KJ法を同]室内と分散した環境(同一階の異なる部屋および異なる階)で行い、意見の数、所要時間、文章の文字数、雑談の数などをパラメータとし、分散した環境が発想支援グループウェアの実施に及ぽす影響を検討した。分散協調型KJ法は複数の計算機上で意見をだし、似ている意見をまとめ、そこから結論を得る発想法の一つである。郡元はテキストベースの雑談機能(チャット)で参加者間のコミュニケーションをとることに特徴がある。実験の結果、異なる階にまたがって分散携調型KJ法を実施すると雑談の数のみが他の場合と比較して増加し、分散した環境(同一階および異なる階)では同一室内と比較すると相手に返事を求める雑談の割合が増加することがわかった。しかし、同一室内でも分敵した環境でも意見の数や文章の文字数、所要時剛こ大差はなかったため、空間的に分散した環境でもテキストベースでコミュニケーションが十分とれることがわかった。
著者
宗森 純 木村 鷹 伊藤 淳子
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.176-188, 2017-01-15

温度知覚インタフェース「サーモアクター」を持ち表情アイコンを使用する感情伝達システム「Ther:com」を提案する.本システムは対戦ゲーム場面における利用者間の感情表現を豊かに伝えることをめざし,通信相手に対して「温度刺激」と「表情アイコン」を伝達することができる.また,参加者が同時に表情アイコンを送信したときに発生する共鳴に特徴がある.Ther:comの評価を検証するため温度刺激がある場合とない場合で比較実験を実施した.実験にはパズルゲームの一種の「ぷよぷよ」を使用して感情や存在感の伝達,ゲームの臨場感や面白さに関して検討を行った.実験の結果,温度刺激を付加したことにより以下のことが分かった.(1)温度刺激のある嬉しさの強い感情を示すアイコンが有意差が出るほど多く伝達された.(2)「相手の存在を身近に感じた」「表情アイコンは感情共有に役立った」「共鳴機能は感情共有に役立った」の評価が有意差が出るほど向上した.(3)面白さに関する「盛り上がり」と「またやってみたい」の評価が有意差が出るほど向上した.
著者
石田 繁巳 三村 晃平 劉 嵩 田頭 茂明 福田 晃
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.89-98, 2017-01-15

ITS(Intelligent Transportation Systems:高度道路交通システム)において,道路を走行する車両をカウントすることは重要なタスクの1つである.車両の通過をリアルタイムに検出するために車両カウントシステムの導入が進められているが,導入・運用コストが高いことから導入は一部の道路に限られている.本論文では,歩道上に設置したマイクロフォンを用いた低コスト車両カウントシステムを示す.本システムでは2台のマイクロフォンを歩道に設置し,車両が発する音を各マイクロフォンが受信した時刻の差を示す「サウンドマップ」を描くことで通過車両をカウントする.環境ノイズなどの影響により実環境ではサウンドマップに多くのノイズが含まれるため,本論文ではシンプルな画像処理手法を開発し,ノイズの影響を軽減したうえで自動カウントアルゴリズムを適用する.片側1車線の道路で提案システムの実証評価を行い,F値0.92という高い精度で通過車両の台数をカウントできることを確認した.
著者
橋本 礼児 服部 数幸 佐藤 幸男
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.34, no.10, pp.2193-2201, 1993-10-15
被引用文献数
5

本諭文は距離画像を多数の視方向から観測できる条件のもとで適当な視方向を能動的に選択して多面体を認識するアルゴリズムについて述ぺている。モデルは3次元的な面関係グラフによって記述される。距離画像は観測視方向が変化しても対象物の絶対的な位置や大きさを計測できることから、入力対象を同様に面関係グラフとして記述し、モデルのグラフとの間で部分グラフマッチングを図って認識を行っている。その結果、認識対象モデルが一意に決定できない場合は候補モデル間で特徴の差を呈する方向を検索し、そこに視点を移動して再び認識を試みている。論文では多面体認識のためのモデルの記述方法およびマッチング手法について述べ、さらに視方向選択のための姿勢変換法と視方向決定アルゴリズムについて述べている。これbの方法は計算機シミュレーションによる実験によって動作が確認された。
著者
鈴木 雅大 佐藤 晴彦 小山 聡 栗原 正仁 松尾 豊
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.5, pp.1499-1513, 2016-05-15

ゼロショット学習は,1度も学習したことのないカテゴリの画像を,補助情報を頼りに分類する手法である.ゼロショット学習を実現する様々な手法の中でも,補助情報に属性を用いた属性ベースゼロショット学習が最もよく知られている.しかし既存研究では,各属性の画像特徴量への現れやすさを考慮していなかった.本稿ではこのような度合いを属性ごとの観測確率と呼び,観測確率を含めた新たなモデルを提案した.そして提案したモデルの妥当性の検証および既存研究との比較実験によって,提案手法が既存手法と比較して有効性の高いモデルであることを示す.