著者
森本 幸子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-162, 2021 (Released:2022-03-30)

近年,SNS上での誹謗中傷が社会問題となっている。ここ数年,過激化する誹謗中傷に耐えかねて命を落とす事件も発生しており,その対策が待たれるところである。本研究では,SNS上での攻撃行動を促進する要因を明らかにするためにオンラインでの縦断調査を実施した。第1回調査は2020年12月に実施し,第2回調査は2021年1月に実施した。調査内容は,SNS利用歴,過去1週間当たりのSNSの利用状況,過去1か月間の他者からの受容経験と拒絶経験,SNS利用に関する規範意識,SNS上での攻撃行動であった。SNS上での攻撃行動とその他の変数との因果関係を検討するために,交差遅れ効果モデルを用いて男女ごとに分析を行ったところ,男女ともに過去1か月に他者から受け入れられた経験による影響を低く見積もる人ほど,2回目の調査時のSNS上での攻撃行動が多いことが分かった。また,1回目の調査時点における規範意識が低い男性ほど2回目の調査時のSNS上での攻撃行動が多いことが分かった。これらの結果より,現実場面での他者からの排除や規範意識の低さが,SNS上での攻撃行動を促進させる可能性が示唆された。
著者
柴田 侑秀
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PE-003, 2021 (Released:2022-03-30)

従来の被害者非難研究には,どのような行為をもって被害者非難とみなすかが一貫していないという問題があった。また,先行研究で利用されている被害者非難尺度の多くは研究者が恣意的に考案したものであり,被害者非難の実態を反映しているとは言い難い。そこで本研究は,特定の性犯罪事件を報じるWeb上のニュース記事に付与されたコメントを対象としてテキスト分析を行い,被害者非難の実態を明らかにすることを目的とした。対象とした記事はとある自治体の女性議員が被害を訴えたもので,2019年11月と2020年12月に報道された。付与されたコメントは合計で約2500件だった。共起ネットワークを検討した結果,被害者の言動がコメントをした者にとって「普通」ではないとみなされると被害の訴えが疑われやすくなることが分かった。また,コーディングルールを用いた分析の結果,被害者の性的魅力に言及した非難や,被害者と精神疾患の関連をほのめかす非難が多く見られることも明らかになった。一方で,事件特有の文脈に依存するコメントも多く見られ,特定の事件の報道に対する反応から一般的な被害者非難の特徴を検討することの難しさも明らかになった。
著者
針原 素子 青田 萌花
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-173, 2021 (Released:2022-03-30)

ぬいぐるみを主役に写真を撮り,SNS上でそれを投稿する「ぬい撮り」について,投稿内容の分析から文化比較をおこなった。具体的には「日本人は欧米人に比べて,ぬいぐるみを物体ではなく,生きている存在として扱うのではないか」「日本人は欧米人に比べて,ぬい撮りのぬいぐるみを自分の分身として用いるのではないか」という予測を立て,インスタグラムの投稿内容を比較した。調査1では,日本語アカウントと外国語アカウントのインスタグラムに投稿された写真を分析し(ぬいぐるみで検索した493枚,plushで検索した473枚),日本語アカウントの写真のほうが,生きている存在として扱われる割合が高いことが分かった。調査2では,“ぬい撮り”,“plushielife”などで検索した「ぬい撮り」を意図して投稿しているインスタグラムのアカウントについて分析した。その結果,外国語アカウントでは,ぬいぐるみは持ち主とは別の人格として描かれることが多いこと,日本語アカウントでは,ぬいぐるみを自分の代わりの主体として,自分語りをする「ぬい撮り」が行われることが多いことが分かった。