著者
尾崎 由佳
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PA-004, 2021 (Released:2022-03-30)
被引用文献数
1

経験サンプリング法(ESM)とは,一日数回×数日間にわたって繰り返し自己報告を求めるという調査手法である。スマートフォンの普及にともないESMの実施が容易になったことから,近年,大きな注目を集めている。exkumaは,ESMのために開発されたソフトウェアである。通信アプリLINEを通じたシグナリング(回答タイミングの通知)と,Webブラウザで回答データ収集を行うという特徴を持つ。本研究では,exkumaを用いてESM調査を実施し,シグナリングの効果検証を行った。調査1には大学生306名が参加した。4回×5日間にわたるシグナリングに対して,有効回答は81 %と高い回答率が得られた。調査2には国内の20歳~69歳の成人145名が参加し,4回×7日間のシグナリングに対して90 %の有効回答が得られた。また,調査1・2に共通して,調査時間帯(9時~21時)内にシグナル送信時刻が均等に分布しており,従来の疑似ランダムによる方法よりも適切に無作為化されたシグナリングが行われていることを確認できた。これらの結果はいずれも,exkumaによるシグナリングの有効性を示唆している。
著者
横井 良典 中谷内 一也
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-022, 2021 (Released:2022-03-30)

近年,「人工知能(AI)が人間の仕事を奪う」,「AIが人間を打ち負かす」といったことが議論されている。人間がAIに競争で負けとき,その敗因をどう推察するのかという原因帰属が検討されなければならない。なぜなら,原因帰属は将来の取り組み,感情,自尊心といった多くの変数に影響するからである。AIに負けたときの原因帰属を検討するために,大学生74名を対象に実験室実験を行った。AIと戦うAI条件,人間と戦う人間条件を設けたが,条件に関わらず,参加者はAIと対戦した。人間条件の参加者は事前に「別の参加者と戦います」と教示された。競争課題として,棒取りゲームというオリジナルの課題を使った。このゲームでは,参加者は必ず負けるように仕組まれていた。ゲーム終了後,参加者が敗因をどこに帰属しているのかを測定した。また,同じ相手に再挑戦したいかどうかを行動反応として選択させた。分析の結果,AI条件,人間条件に関わらず,参加者は自身の能力が最も大きな敗因であると帰属していた。再挑戦の選択に関しては,AI条件,人間条件ともに,再挑戦したい参加者の割合は少なかった。
著者
阿部 晃気 日根 恭子 金塚 裕也 中内 茂樹
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PM-029, 2021 (Released:2022-03-30)

音楽聴取時の覚醒度は,音楽の選好と関連があり,選好の決定機序を明らかにするうえで重要な要素の一つである。これまで,覚醒度は音楽のテンポ(外部テンポ)により変化することが明らかとなっているが,歩行や指タッピングのような自発的な運動動作(内部テンポ)が覚醒度とどのように関連するのか直接的な検討はなされていない。本研究では,外部/内部テンポが音楽聴取時の覚醒度とどのように関連があるか調査した。実験参加者21名に対して,初めに指タッピングで内部テンポを計測した。その後,3種類(遅い,速い,中程度)のテンポで演奏されたクラシックピアノ音楽を各2曲,計6曲の聴取を求めた。実験中は,実験参加者に対して覚醒度の客観的指標となる皮膚電気活動の計測が行われ,各曲聴取後は,音楽によって誘発された覚醒度の主観的評価を求めた。結果として,主観的覚醒度は,外部テンポが遅いと下降,外部テンポが速いと上昇した。一方,客観的覚醒度は,内部テンポと外部テンポの差が小さい場合に上昇する傾向がみられた。この結果は,外部テンポと内部テンポの両方が音楽聴取時の覚醒度に影響を与えることを示唆している。