著者
豊田 さくら 石川 健介
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PD-030, 2021 (Released:2022-03-30)

本研究の目的は,猫動画・画像を視聴することによるストレス緩和効果,気分状態改善効果について検討することであった。「猫動画の視聴(動画群)」,「猫画像の視聴(画像群)」,「安静状態の保持(統制群)」の3つの視聴条件を設定した。動画群では猫の動画が提示され,画像群では猫の画像が提示された。統制群では,猫動画も猫動画も提示をしなかった。3(群)×2(測定段階)の分散分析を行った。測定段階の主効果は,全て群において「緊張」と「怒り」と「疲労」の得点で有意であった。群の主効果および群と測定段階の交互作用は,全ての項目で有意でなかった。以上より,全ての視聴条件によって「緊張」「怒り」「疲労」の気分の状態が変化したことがわかる。しかし,猫動画・画像を視聴することによって得られる特別な効果は示されなかったといえる。
著者
伊覇 龍信
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PH-014, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

アニメPSYCHO-PASS内での完全で完璧に統制された法システムであるというシビュラシステムが一般の人々に受け入れられる可能性を手続き的公正という観点から進化心理学的な解釈を交え研究した。シビュラシステムによる即時・即決・即罰的な法システムは人間が行う裁判より分配的公正という点では圧倒的に優位に立つが,今までに研究されてきた手続き的公正の概念では人々の理解を簡単には得られない可能性が高い。先行研究では分配的公正を達成する為に手続き的公正が利用されると主張する道具モデルや手続き的公正そのものが価値を持つと主張する集団価値モデルなどが提唱されてきたが,本研究では手続き的公正は分配的公正の代わりに用いられると仮定し,さらには進化的適応環境に培われた認知容量を超えると人々は分配的公正と手続き的公正のどちらも重視しなくなると予測する。オンラインアンケートを用いて人々が異なるシチュエーションにおいて分配的公正と手続き的公正のどちらをより重視するか調査した結果,想定される集団サイズが増加するにつれて分配的公正と手続き的公正のどちらにも無関心になることが確認された。
著者
田崎 美弥子 渡邊 光理 高野 隆司 良峯 徳和 加藤 康広 山口 哲生
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.SS-043, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

ニューロフィードバック(NF)は,欧米ではすでに40年以上,てんかん,うつ,自閉症や,発達障害,脳梗塞などの,幅広い疾患に適用されている。NFは,対象者の望ましい脳波を視覚と聴覚刺激をフィードバックにより,望ましい周波帯域に対するオペラント条件付けを図る脳波のバイオフィードバックである。副作用が殆ど報告されず,欧米では保険適用の心理療法となっている。昨今,精神疾患は脳のニューロン回路の不調によるというコネクトーム説に対する最適な療法と再認識されている。日本においても少しずつ認知されるようになってはきたが,いまだに症例報告や研究報告が限定されている。本シンポジウムでは,日本において,ADHDや双極性障害,うつ,外傷性てんかん,睡眠障害といった様々な疾患をもつ対象者に適用し,かつ改善が見られた臨症例や研究を紹介し,NFの方法論や適用,効果や限界について論じ,NFに対する正しい理解を促進することを目的とする。
著者
藤木 大介 田中 瑠音
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PL-007, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

近年,小中学校の教科書などにも見られる文章形式として,複数の人物の会話の様子を記したものがある。学生向けの概論書等ではそれを読み進めることで新たな知識が得られるようになっているものもある。こういった対話型のテキストに関し,これまでにも少ないながらもその有用性が検討されてきたが,必ずしもポジティブな結果は得られていない。そこで本研究では,読解を促進する方略の使用を促す発話を多く含んだ対話型テキストを作成し,その有効性を検討した。その結果,通常の形式の説明的文章を読んだ群と比較して,これまでの研究で用いられてきたのと同等の方法で作成された対話型テキストを読んだ群の読解成績が劣ったが,方略を多く含んだ対話型テキストは劣らない成績となり,かつこれらの2つの対話型テキストは通常の文章と比較して読みやすさ等の主観的評定に優れるという結果であった。従来の対話型テキストの成績が劣るのは,対話という親しみやすい表現により結束性等の過大評価が起こり,それに伴って能動的な推論の低下が起こったことが考えられるが,読解方略を多く含めることでこれも抑えられ,主観的にも受け入れやすい文章となることが示唆された。