著者
若本 純子 増坪 玖美
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-080, 2021 (Released:2022-03-30)

若い世代のTwitter利用は自分の趣味や好きなものの情報交換のために活用されている(総務省,2017)。本研究では現実には会ったことのない相手とTwitterで交流する場面において,相手への好意や自己開示が何によって規定されるかを明らかにすることが目的である。現実場面における対人魅力の規定因である類似性と近接性を,推し対象の類似性,居住地の近接性として導入し,2(推し対象の類似性高・低)×2(居住地近接・遠方)を被験者間要因とするオンライン調査を実施した。2大学の学生と Twitter上で協力者を募集し,286名から同意を得た。2要因分散分析の結果,推し対象の類似性と居住地の近接性の主効果が有意であり,好意的なやりとりを前提としたTwitter交流は現実場面と類似すると推測された。さらにオタクジャンルをドルオタと二次元オタに分けて検討したところ,二次元オタのみで交互作用が有意であり,ドルオタは近くに住む相手と生活にかかわる開示をし推し活動に繋げると推測されたのに対し,二次元オタは推しが一致しない場合,現実にかかわる交流は低調であることが示唆された。
著者
伊藤 真利子 林 明明 金 吉晴
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PR-010, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

【背景・目的】カフェインは世界的にも好まれている飲料の一つであるが心理・生物学的影響について未解明の点も多い。カフェインの摂取により,安静状態での副交感神経系が優位になるとの報告がある一方で,パニック発作や不安症状が引き起こされるという報告もある。本研究では心身共に健康な成人を対象に,カフェイン関連の飲食物を制限した状態(制限期)と普段通りの量を摂取した状態(摂取期)とで,ストレス刺激への反応を観察した。【方法】20歳以上の男女23名が参加した。参加者には初回参加時にカフェイン関連の飲食物の漸減を求め,1週間後に実験室への来室を求めた。さらにその後1週間で再び元の摂取量までの漸増を求めて,合計3回の来室をもって参加終了とした。制限期と摂取期においてストレス刺激への反応を測定するため,安静時とホワイトノイズ提示後の不安(STAI),Visual Analog Scale,気分状態(POMS)の評定を求めた。【結果・考察】ノイズへの気分反応はカフェイン制限期・摂取期によらず概してネガティブであることを確認した。摂取期よりも制限期の方が不安,ストレスの程度が高く評定され,カフェインの摂取によるストレス反応の緩和が示唆された。
著者
新美 亮輔 設樂 希実
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PI-074, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

自身の能力について自己評価を行うと,多くの場合,平均以上に位置付ける。これは平均以上効果と呼ばれる。平均以上効果では,しばしば性差が見られる。一方,このような自己の能力の過大視は実際の能力が低い者ほど大きい傾向があり,ダニング・クルーガー効果と呼ばれる。ダニング・クルーガー効果に性差があるかはよくわかっていない。そこで本研究は,日本の大学生に英文法テストを解いてもらい,ダニング・クルーガー効果の再現実験を行い,加えて性差を検討した。実験の結果,平均以上効果は見られなかったが,ダニング・クルーガー効果は再現された。性差が見られ,女性参加者は男性参加者よりも自身の英文法能力やテスト成績を低く評価する傾向があった。ただし,この傾向は実際のテスト成績の高さとは関連がなかった。したがって,ダニング・クルーガー効果に性差があるとは言えず,全般的な自己高揚傾向の性差が見出されたと考えられた。このような性差の考えうる原因について議論した。
著者
石川 知夏 小林 哲生
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PI-005, 2021 (Released:2022-03-30)

言語音の印象に関する研究では,半濁音・清音・濁音の順に丸い印象を持つことが報告され,音象徴との関連から研究が進められている。しかし,日本語の濁音と半濁音はそれぞれに対応する記号(濁点と半濁点)が存在し,その形状が言語音の印象評定に影響を与える可能性がある。そこで本研究では,日本語話者と英語話者を対象として濁点と半濁点が仮名文字の丸さ-鋭さ評定に影響を与えるかを検討した。濁点・半濁点を付与可能な文字(は・ひ・ふ・へ・ほ;既存文字)と通常付与しない文字(れ・よ・レ・ヨ;新奇文字)に対して濁点と半濁点を付与したものとしないものを提示し,それぞれの文字の丸さ-鋭さを7段階で評定させた。その結果,既存・新奇いずれの文字でも日本語話者は半濁点を含む文字・清音を示す文字・濁点を含む文字の順で有意に丸いと評定し,半濁音・清音・濁音の順に丸い印象を持つという結果と一致していた。一方,英語話者は既存・新奇いずれの文字でも日本語話者と同様の結果は得られなかった。これらの結果から,母語話者にみられる濁点と半濁点の記号に関する知識が濁音と半濁音の印象評定に影響を与えている可能性が示唆された。
著者
小森 政嗣 城下 慧人 中村 航洋 小林 麻衣子 渡邊 克巳
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PH-002, 2021 (Released:2022-03-30)

ガウス過程選好学習(Gaussian process preference learning)と敵対的生成ネットワークの一種であるStyleGAN2を組み合わせた実験を行い,外集団構成員が有していると想定される顔特徴の可視化を試みた。日本の大学生116名が提供した顔画像を,Flickr-Faces-HQ(FFHQ)で学習したStyleGAN2の潜在表現に埋め込んだ。埋め込まれた潜在表現に対し主成分分析を行い8次元の顔部分空間を構築した。実験参加者に,この顔空間(±2SD)から生成された2つの画像をモニタに並べて提示し,「より巨人/阪神ファンらしい顔」を選択する課題をそれぞれ100試行行わせた。実験参加者は全て阪神ファンであった。選好結果をもとに顔特徴を巨人/阪神ファン顔らしさに変換する内的な効用関数の推定を行った。ガウス過程選好学習はガウス過程回帰にThurstoneモデルを組み込んだ手法である。すべての参加者の結果を平均した平均巨人/阪神ファン顔らしさ関数をそれぞれ算出し,これらの関数が最大値となった潜在表現から,阪神ファンが考える巨人・阪神ファンの顔を合成しその顔特徴と比較した。
著者
趙 丹寧 駒村 樹里 真崎 昌子 茶山 裕 山本 陽一
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PS-006, 2021 (Released:2022-03-30)

本研究は女性の改姓時の気持ちおよび有職者の特徴,さらに改姓時の気持ちが現在の夫婦別姓賛成態度への影響を検討する。2015年7月から8月まで,結婚時に改姓した女性を対象に質問紙調査を行い,325名の有効回答を得た。改姓時の気持ち,平等的な性役割態度,現在の夫婦別姓賛成態度を尋ねた。因子分析により,改姓時の気持ちは「旧姓への未練と喪失感」,「新姓の自分らしくない感覚」,「新姓の一体感と喜び」の3因子からなることが確認された。有職者は,「旧姓への未練と喪失感」では無職者と有意差がなかったが,「新姓の自分らしくない感」は高く,「新姓の一体感と喜び」は低く,改姓により大きい負担を受けたことが推察される。ロジスティク回帰分析の結果,「旧姓への未練と喪失感」は影響を及ぼしていなかったが,「新姓の自分らしくない感」は現在の夫婦別姓賛成態度を高めており,改姓時の戸惑いが夫婦同姓への否定的な態度を形成する可能性が考えられる。一方,新姓の一体感と喜びは現在の夫婦別姓賛成態度を低めており,改姓時の喜びは夫婦同姓への肯定的態度を形成する可能性が考えられ,改姓伝統の維持要因になり得ることも考えられる。