著者
元吉 忠寛
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第84回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PC-153, 2020-09-08 (Released:2021-12-08)

福島県内では不安感は低減してきているが,県外の地域ではまだ十分に不安は低くなっていない(元吉,2019)。県外の人々は,福島の放射線リスクに関する情報を得た場合には,むしろネガティブな効果を生んでしまう可能性はないだろうか。本研究では,福島に関するネガティブ情報とポジティブ情報をプライミングした場合の福島に対する不安の低減効果についてWEB実験によって検討した。首都圏在住の男女1500名を対象に,プライム刺激として,ポジティブ条件では福島県の観光地に関する情報を,ネガティブ条件では福島県の放射線に関する情報を,統制条件では2019年の流行語について,それぞれ10個の認知度を4件法でたずねた。その後,福島第一原発事故の影響を考えた場合に,福島県の農作物を食べること,水揚げされた魚介類を食べること,旅行に行くこと,住むことにどの程度不安を感じるかを6件法で回答を求めた。その結果,福島県に旅行に行くことに対する不安は,ポジティブ情報を与えた場合に低くなるが,ネガティブ情報を与えた場合には高くなることが明らかになった。観光戦略によって不安を払拭していくことが有効である可能性が示唆された。
著者
入口 真夕子
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
日本心理学会大会発表論文集 日本心理学会第85回大会 (ISSN:24337609)
巻号頁・発行日
pp.PO-038, 2021 (Released:2022-03-30)

自閉スペクトラム症(ASD)には,感覚過敏,表情の読み取りの困難などの特性が知られる。一方で,色の知覚認知特性については未だ分からないことも多い。本研究では,ASD児童の色の知覚認知特性を明らかにするため,ASD児童はどの色を好むのかについて検証することを目的とした。ASDの診断のある児童8名(男児:4名,女児:4名)が本研究に参加した。調査は質問紙を児童の保護者へ郵送し,自宅で回答する形で実施した。質問紙には,5色(赤,黄,緑,青,茶)のカラーチップが添付され,児童は1色ずつその色を見て,どのくらい好きかを5段階のうち1つを選択することで回答した。その結果,ASD児童のうち70 %以上は青を最も好み,続いて約60 %の児童が緑を好むことが分かった。半数近くの児童は赤,黄,茶の好みを「ふつう」と評価したが,茶のスコアは全体的に最も低くなった。この結果から,ASD児童は青や緑などの寒色系の色をより好むことが示唆される。本研究は参加人数が限られているため,今後より多くのASD児童を対象に調査を継続し,定型発達児童と比較することでASDの色の知覚認知特性を明らかにしたい。 抄録訂正(誤)85 %(正)70 % (誤)70 %(正)約60 % (誤)赤と黄は約60 %,茶は50 %の児童が好んだが,半数近くの児童はあまりこれらの色を好まないことが示された。(正)半数近くの児童は赤,黄,茶の好みを「ふつう」と評価したが,茶のスコアは全体的に最も低くなった。