著者
坂原 茂
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究では,従来の意味論の枠内で処理することが困難なコピュラ文をメンタル・スペース理論の枠組みで研究し,コピュラ文に反映される人間の知識使用の柔軟性についての基礎的研究も行った.コピュラ文「AはBだ」は,通常,同一性と集合論的包含関係を表すと考えられている.本研究では,コピュラ文をさらに詳しく見た場合,変数的に使われた非指示的名詞句に値の割り当てを表現する同定文(「源氏物語の作者は,紫式部だ」).すでに同定された対象に付加的属性を付与する記述文(「紫式部は,源氏物語の作者だ」).異なる情報領域で互いに独立に同定された2つの対象の同一性を表わす同一性文(「シェークスピアはベーコンだ」),対象同定のパラメータと値が直接結合された多少アクロバット的な知識使用を含むウナギ文(「私はウナギだ」),メタ言語的な定義文(「ピラミッドは古代エジプト王の墓だ」)などのさまざまな用法があることを明らかにし,それらの用法の相互関連について考えた.この研究は,シカゴ大学出版から刊行されるメンタル・スペース理論関係の論文集に掲載予定である.さらに.コピュラ文の特殊例としてトートロジーについても考察を広げ,それを東京大学教養学部紀要に発表した.その後,コピュラ文の意味論から考えた場合,トートロジーは4つの基本的用法があり,それ以外の用法はすべてこの4つからの派生として説明されるべきであるという暫定的結論に達し,その主旨の口頭発表を筑波大学で行った.この結論が,広くデータを収集した場合も成立するかどうかは確かめていないが,トートロジーの多様な用法に対する包括的理論を構成できるという見通しを得ることができた.この点に関する本格的研究は,将来の研究課題である.また,知識使用との関連で,条件文の語用論的解釈についての研究も行った.
著者
石村 哲代
出版者
四条畷学園女子短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

将来の家庭内エネルギ-源として、とりわけ高齢者世帯や高層住宅などでは、安全性やハイカロリ-といった面から、200V電圧の電気エネルギ-の利用が急速に進むことが予測される。既に一般家庭を対象に200V電圧の調理用加熱機器(以下200V機器と略)が市販され始めたが、その実用性についてのデ-タは未だ十分とはいい難い。そこでこれらの新しい電化調理機器について基礎的研究を進め、従来100V電圧の調理機器(以下100V機器と略)や都市ガスコンロ(以下ガスコンロと略)などと比較した場合の有効性や問題点を明らかにすることは極めて重要との考えから本研究を行った。本年度までに明らかになった点は次の通りである。1.ハロゲンヒ-タ-、シ-ズヒ-タ-、電磁調理器などの200V機器の調理機能は従来の100V機器に比べて明らかに有効といえ、中でも電磁調理器は、熱効率、水温上昇速度、食品投入後の水温回復時間などからみて、ガスコンロに匹敵する高温調理機能を備えた極めて有効な調理機器であることが判明した。ハロゲンヒ-タ-、およびシ-ズヒ-タ-については熱効率、水温上昇速度などからみて、経済性、実用性の両面で未だガスコンロの調理機能との開きが大きく、さらに改良の余地があると考える。2.各種200V機器を用いて、従来の100V機器では困難とされていた高温短時間を不可欠とする調理を行い、その加熱調理食品について化学的・物理的成分変化を測定した結果、「青菜を茹でる」など水を熱媒体とする調理では電磁調理器が「炊め物」や「焼肉」などの鉄板焼き調理ではハロゲンヒ-タ-が、ガスコンロに匹敵する有効性を示した。3.省エネルギ-の見地から、200V機器の特性である保温性能を利用した粥炊きを行い、通常の標準的な方法による粥と比較した結果、嗜好的に有意差のない粥が得られ、保温性能の調理への有効利用の可能性を見出すことができた。
著者
簑田 昇一 久場 健司
出版者
佐賀医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

ウシ蛙の交感神経節細胞を用いて節前線維の頻回刺激後に生じるシナプス電位(fastEPSP)の長期促進現象(pre-l.t.p.)を調べ次の事を明らかにした。pre.-l.t.p.は伝達物質Achの放出量が長期間増大して発生する。pre.-l.t.p.の発現中ではpair pulseで発生した短期促進は減少し、自発性微小シナプス電位の発現頻度は増大する。CaイオノフォアであるAー23187によりpre.-l.t.p.は増大し、Ca^<2+>緩衝剤quin-2/AMによってその発現は抑制される。これらの結果は、pre.-l.t.p.の発現にCa^<2+>が必要であり、その発現中には神経終末内の基準Ca^<2+>濃度の持続的な増大が生じている事を強く示唆している。pre.-l.t.p.の発生に第2メッセンジャー(プロティンキナーゼ系)が関与しているか否かを検討した。Cキナーゼの活性剤であるフォーボールエステルとジアシルグリセロールのアナログであるOAGはシナプス伝達の効率を増大する。しかしpre.-l.t.p.はこれらの薬物下でも発生しocclusionは生じない。Cキナーゼ阻害剤Hー7を長時間投与してもpre.-l.t.p.は発生する。更にCキナーゼの他にcAMP依存性又cGMP依存性プロティンキナーゼやミオシン軽鎖キナーゼに対しても高い阻害作用をもつstaurosporine存在下においてもpre.-l.t.p.は発生する。それ故上記のプロティンキナーゼ類はpre.-l.t.p.の発生機序には無関係と思われる。一方、カルモジュリン(CaM)阻害剤であるtrifluo-perazineを投与すると、pre.-l.t.p.の発生は抑制される。このことはpre.-l.t.p.の発現にCa/CaM依存性キナーゼが関係している可能性を示唆している。よって別の阻害剤であるWー7やCa/CaM依存性キナーゼ活性剤などのpre.-l.t.p.に対する作用、又これら薬物の膜に対する直接作用例えばCa電流に対する作用などを詳細に検討する必要がある。現在この点に注目して研究を進めているところである。
著者
遠藤 克彦
出版者
山口大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

キタテハ・アゲハチョウ・ベニシジミの3種の蝶では、その成虫に季節型がある。その夏型成虫の発現に、蛹期に脳から分泌される夏型ホルモンが関与していることが知られている。今回、これらの蝶の前蛹または蛹から脳を集め、2%Naclの抽出液をつくり、キタテハの短日蛹(秋型成虫を生ずる蛹)に注射したところ、短日蛹から夏型成虫をつくる夏型ホルモン活性が、これらの抽出液に存在していることがわかった。更に、カイコ蛾の脳を集め、その抽出液をつくり、夏型ホルモン活性を調べたところ、このカイコの脳の2%Nacl抽出液にも、夏型ホルモン活性が存在していることがわかった。上記の3種の蝶とカイコの脳に存在する夏型ホルモン活性物質は、acetoneや、80%ethanolでは抽出されず、硫安によって沈澱(50-60%飽和で、2%Nacl抽出液中の夏型ホルモン活性の50%が沈澱する。)させられることがわかった。また、キタテハの夏型ホルモンについて、その性質を調べたところ、熱にはかなり安定(95℃,5分)であるが、trypsin処理でその活性が失われることがわかった。ついで、キタテハとカイコの2%Nacl脳抽出液をSephcclexG-50および高速液休クロマトグラフィーにかけて調べたところ、いずれの夏型ホルモン活性物質も分子量が3,500から6,000の間であり、逆層クロマトグラフィーの溶出時間もほぼ同じであった。得られた夏型ホルモンの分子量、逆層クロマトグラフィーの溶出時間から、これらの夏型ホルモンは、先に報告されているカイコの前脳腺刺激ホルモンと分子量(4,400)逆層クロマトグラフィーの溶出時間ともほぼ同じであることがわかった。また、SephcclexG-50と逆層クロマトグラフィーの各フラクションをアゲハチョウの休眠蛹に注射し、前脳腺刺激ホルモン活性を調べたところ、夏型ホルモン活性が存在するフラクションと、前脳腺刺激ホルモンが存在するフラクションとがほぼ同じであることがわかった。
著者
小川 賢治
出版者
滋賀文化短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

この研究において以下の点が明らかにされた。1.叙勲授与は天皇の神聖な意思によるものであり、その証明書である勲記は天皇の権威と切り離せない。それは、勲記における天皇自身の署名、「天祐ヲ保有シ万世一系ノ帝祚ヲ践タル」という修飾語の使用などに現れている。しかし他面、国家そのものが勲章の権威の源泉でもあり、こう解釈する場合には天皇の存在は不要となる。2.勲章制度の本質とも言える差別性は、勲記の様式にも現れている。上位の勲章の勲記には天皇の署名と璽があるのに対し、下位の勲記からはそれは省略されている。また、勲章授与の方式も、天皇親授・太政大臣伝達・賞勲事務局長官伝達、に区別され、参列者・式次第などに明確な格差が設けられている。3.明治時代を例に取れば、叙勲の一般的傾向としては、ア.多くが軍人に与えられている。イ.残りもほとんど官吏であり、民間人の叙勲者は極めて少ない。ウ.金鵄勲章受章の条件とされる「武功抜群」とは、現実には「戦死」を意味する場合が多い。4.軍人の叙勲を見れば、勲等は、爵位の有無・種類、階級の高低、軍における地位の上下、また、金鵄勲章の等級、などに、対応している。5.勲章の授与権者である天皇は、自らに仕える皇室関係者に手厚く勲章を与える。その対象は、皇太子等の教育掛に始まり、侍医、侍従、女官、天皇紀編纂者、宮殿設計者などに亙る。
著者
河原 康雄 岡崎 悦明 土屋 卓也 宮野 悟 藤井 一幸
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

研究課題名「計算科学への圏論の応用」で行われた本研究は, 情報化社会を支える基礎理論である情報科学, 計算科学, ソフトウェア科学への数学的基盤を与えるために計画された研究であった. 以下, 本科学研究費補助金によって実施された研究実績を報告する. 1.研究代表者:河原康雄は, 初等トポスにおけるpushout-complementの存在定理証明し, 有限オートマトンによって受理される言語の基礎的性質をカテゴリー論的に整理すると共に, Arbib-Manes等のプログラム意味論を初等トポスにおいて考察した. これらの成果は従来から研究を蓄積してきた関係計算(relational calculus)を駆使して得られたものであり, 西ドイツのEnrigを中心としたグラフ文法等についての研究に新しい視点を与えるものであり, この分野の基礎を与えるものと期待される. 2.分担者:宮野悟は, 計算量の理論においてP≠NPの仮定のもとで効率よく並列化できると思われる, 即ち, NCアルゴリズムをもつ問題として, 辞書式順序で最初の極大部分グラフを計算する問題について考察した. 3.分担者:藤井一幸は, 古典的によく知られている4次元のCursey modelを任意次元の時空間上に拡大し, そのinstaton(meron-)like configurationsを具体的に構成した. さらに, 従来からの研究で構成していた高次元Skyrme modelsに付随したWess-Zumino termsを高次元hedgehog ansatsを使用して具体的に計算した. 4.分担者:岡崎悦朗は, 位相線形空間上の確率測度の研究を中心に研究を遂行し, 昭和62年8月よりCNRSの招きによりフランス・Paris V大学において研究を継続中である. 5.分担者:土屋卓也は, 境界要素法よって極小曲面を計算機を利用して計算し, 線形常微分方程式の特異点に関する山本範夫の定理を線形代数の範躊において一般化した. 現在, 土屋は米国・Maryiand大学において研究を発展させている.
著者
松岡 譲
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

消費エネルギー(最終エネルギー)の需要量積み上げモデル構築のために先進国、途上国の民生、産業、交通各部門のエネルギー消費関連パラメーターの収集とそのデータベース化を行った。わが国、中国及びインドネシアを中心とする東・南アジア諸国を中心として、詳細なエネルギー消費機器に関する技術及び経済パラメーターを収集した。さらに、エネルギーが行うサービスの今後の推移に関するシナリオ策定を行った。一方、シナリオで外生的に与えられた各エネルギーサービスを満たすべく、エネルギー消費機器の選択を、固定費用、エネルギー費用及び税補助金交付下において費用最小化基準て行うとの仮定のもとで、機器選択モデルを構築した。機器選択及び補助金額の算定は、機器選択の最適化については、線形計画問題となり、補助金投下量はその最適空間内にて、二酸化炭素抑制量最大となる点を求めるという多段階最適化問題となっている。このモデルでは、前者に関してはシンプレックス法を用い後者に関しては、前者の問題の感度解析を拡張した逐次的線形計画法によって求解を行っている。国内でのエネルギーの部門分けは民生に関しては、家庭、業務の二部門、産業においては、鉄鋼、製紙、パルプ、セメント、化学工業などの部門、及び交通部門である。これらの各部門に関して、それぞれ5〜20のサービス量が発生していると設定されている。わが国での計算結果を例にとれば、産業各部門においては、現在市場化されている省エネルギー機器はほぼ完全に導入されるのに比べ、民生二部門においては、初期費用(機器費用)が高いために、省エネルギーあるいは二酸化炭素排出量が少ない機器の選択がなされないことがしばしば発生している。
著者
外池 昇
出版者
調布学園女子短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

陵墓が社会の中にどのように位置づけられるかという問題は、知識人や政治家にとってでなく、陵墓に指定された古墳の周辺に生活する人々にとってこそ重要な問題であった。この研究では、このような視点から陵墓について考えた。つまり、民衆と古墳との繋がりについて考察したのである。江戸時代が終わって、天皇が国家の頂点に立つ明治時代になると、天皇の祖先の墳墓である陵墓が俄然脚光を浴びるようになた。中央政府も、また地方行政府も、それぞれの立場から、さまざまな古墳を陵墓として指定しようとした。そして、中央政府と地方行政府との思惑は、必ずしも一致してばかりではなかったのである。そのような一致しなかった例の一つが、群馬県にある総社二子山古墳と前二子山古墳の事例である。これらの古墳は、当時の県知事楫取素彦によって、崇神天皇の皇子である豊城入彦命の墓として指定されるように中央政府に強力に推薦されたのである。県知事楫取素彦は、恐らくは自らの信ずる歴史観に従って、自分が統治する群馬県の中に、一つくらいは陵墓がほしかったのであろう。ところが、総社二子山古墳の場合はその指定が長く続かず、前二子山古墳の場合は指定を受けることすら失敗したのである。いずれの古墳の場合をとってみても、古墳の周辺に生活する民衆によって、古墳は生活の糧を得るために利用されていたのである。陵墓という概念は、そのような民衆と古墳との繋がりを断ち切るものであったのである。明治時代においては、民衆が表立って地方行政府の指導に抗うことは大変困難であった。その中でどのように民衆が行動したかという問題は、歴史学が、陵墓が社会の中にどのように位置づけられたかということを取り扱うに際して、大変重要な課題なのである。
著者
半田 純雄 北本 哲之 毛利 資郎 立石 潤
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1.昨年度の研究実績の概要で,それまでのラジオアイソトープを用いたドットハイブリダイゼーションから安全迅速な制限酵素の切断長による方法を開発し,マウスのプリオン蛋白遺伝子変異の診断技術が向上したこと,同時に,個体について診断に基づき実施した戻し交配が6世代まで進んだ後,繁殖が困難になったので4世代まで元に戻って行なったことを報告した。ところが,うまく繁殖できたものの,その中にPrn-P^aとPrn-P^bとのヘテロが生まれず,次の世代につなぐことができなかった。したがって,F1世代から交配をやり直しており,もう少し時間がかかりそうである。2.その代わり,プリオン接種後の潜伏期間,病理などの感受性がプリオン蛋白遺伝子変異以外の要素で変わることをSCIDマウスで発見した。そして,それがコンジェニックマウスと同様にプリオン病のモデル動物として重要であることがわかったのでその概要を報告する。(1)SCIDマウスではクロイッツフェルトヤコブ病病原体を脳内接種後,プリオン蛋白遺伝子型がPrn-P^aのマウスと同様に150日程度の潜伏期間で発症するが,脳内接種では600日経っても発症しなかった。(2)この原因として,SCIDマウスでは,脾臓やリンパ節の濾胞樹伏細胞に異常プリオン蛋白が沈着しないという特異的な反応があり,それが示唆された。(3)このことから,SCIDマウスは,プリオン病の発病のメカニズムを解析するうえでも重要なモデル動物となることが判明した。(4)今後も,プリオン蛋白遺伝子のコンジェニックとSCIDマウスを組み合わせて,プリオン病解明のモデル動物開発を推し進めていきたい。
著者
篠原 温
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1.セルリ-、ス-プセルリ-を用い、土耕区、水耕区を比較した。水耕区は園試処方培養液標準濃度の0.2,1.0,2.0倍の濃度区を設定した。生育量と植物体の緑化程度と香気成分の含有量には相関がみられ、葉色が濃くなるにつれて、また生育が抑制されるにつれて、香気成分含有量は増加する傾向が明らかであった。2.ディル・スイ-トバジル・チャイブス・ペパ-ミントを供試し、培養液中のリン濃度の影響を調べた。リン濃度が高くなるにつれて生育は促進されたが、高濃度では頭打ちとなった。精油含量については、処理濃度の影響が小さかったため、培養液中のリンの適濃度は4〜8me/lであると考えられた。3.スイ-トバジルを供試し、培養液濃度(1/2,1,2,4単位)・光条件(0,45,70%遮光)の影響、カリウムとマグネシウムの濃度・比率などが生育および香気成分含量に及ぼす影響を調べた。生育は、遮光70%で顕著に劣り、培養液濃度1単位で優れた。また、カリウム・マグネシウム濃度については、対照区であるK:4.8,Mg:2.4me/lおよびK:9.6,Mg:2.4me/l、すなわちK:Mgが2:1および3:1の時に生育、精油成分濃度ともに優れた。この結果をもとに、スイ-トバジルに好適な培養液組成を決定した。4.遺伝的にばらつきの大きいスイ-トバジルの繁殖方法を検討し、光の強さと培養液濃度の影響を調べた。生育は培養液濃度1単位が優れ、光条件も高光度で促進された。また、挿し木による栄養繁殖では、挿し穂に8枚の葉をつけ、照射10時間は以下とするのが適することを明らかにした。5.スイ-トバジルの栽培における一斉収穫と随時摘みとり収穫する管理方法を比較したところ、終了は随時収穫で優れ、精油成分濃度は若令で比較的小さな葉中に高かった。収量および品質からみて、随時収穫による栽培が優れていた。
著者
軍司 祥雄 斎藤 隆 磯野 可一 松原 久裕
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

消化器癌に対する集学的治療のなかで免疫療法の比重は未だ低い。これは免疫療法の理論的構築が動物実験ではなされているものの実際に臨床の場では顕著な効果を得られないことによる。この免疫応答不全の原因を究明することは癌の治療に大きな寄与をすると考えられる。担癌マウスの免疫応答不全の原因として脾細胞ではそのT細胞リセプター/CD3複合体(TCR/CD3 complex)のうちζ鎖が欠損し、IgEの高親和性リセプターであるFcεRIγ鎖がζ鎖に置き代わってTCR/CD3 complexを形成していることを示唆する実験結果が報告されている。我々はこのことが癌患者の免疫応答不全の原因となっていると考え癌患者の末梢血リンパ球のT細胞および腫瘍浸潤リンパ球を用いて検索した。担癌患者の末梢血リンパ球および手術時に摘出した癌部より0.5% collagenase処理により分離したリンパ球を0.5%digitoninでlysisしmonoclonal anti-CD3εAbで免疫沈降する。さらに2次元SDS-PAGEでTCR/CD3complexの構造を解析した。結果1.担癌患者の末梢血リンパ球105症例136回の分析ではζ鎖の発現が減弱したもの41回、完全に消失したもの47回であり約1/3の検索で完全消失を示した。大腸癌、胃癌、食道癌、肝癌、膵癌、乳癌などの症例において検索したが、特に癌の種類によるζ鎖の発現変異は認めなかった。TNM classificationによる癌の進行状況との関係をみるとstageが進行するのに従いζ鎖の発現の減弱、および消失する頻度が増強した。特に再発症例では47症例の検索中、発現の減弱は17例、消失は21例に見られた。2.癌患者の手術時摘出標本より分離した腫瘍浸潤リンパ球34症例(胃癌21例、大腸癌13例)の検討ではTCR/CD3 complexの構造異常が見られる症例は24例に見られ、そのうちζ鎖の消失が認められたものは18症例(52.9%)と高率であった。大腸癌、胃癌の両者においてこの現象は認められ、さらに末梢血Tリンパ球での構造変化が見られない症例でも腫瘍浸潤リンパ球では変化が見られ、癌局所のリンパ球から先に構造変化がくると事を示唆した。さらにζ鎖の発現の推移をみた症例では癌の進行が進むにつれて発現の減弱、消失が認められ、また治療に反応して発現が回復した症例も経験しζ鎖の発現消失は可逆的である可能性が示唆された。癌抗原がT細胞上に提示されたとしてもζ鎖の構造異常がその後のT細胞内のシグナル伝達を阻んでいる可能性があり、担癌患者の免疫応答不全の原因となっている可能性が示唆された。この原因の解明をさらに進めている。
著者
軍司 祥雄 斎藤 隆 磯野 可一
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

担癌マウスの脾細胞ではそのT細胞リセプター/CD3複合体(TCR/CD3 complex)のうちζ鎖が欠損し、IgEの高親和性リセプターであるFcεRIγ鎖がζ鎖に置き代わってTCR/CD3 complexを形成していることを示唆する実験結果が報告され、我々はこのとこが癌患者の末梢血リンパ球のT細胞でおきているのかを検索した。担癌患者の末梢血リンパ球を0.5% digitoninでlysisしmonoclonal anti-CD3ε Abで免疫沈降する。さらに2次元SDS-PAGEでTCR/CD3 complexの構造を解析した。1.これら55症例68回の分析では正常人と同じ構造を示したもの24回、ζ鎖の発現が減弱したもの21回、完全に消失したもの24回であり約1/3の検索で完全に消失を示した。この時、特に癌の種類によるζ鎖の発現変異は認めなかった。TNM classificationによる癌の進行状況との関係をみるとstageが進行するに従いζ鎖の発現の減弱、および消失する頻度が増強した。特に再発症例では17症例の検査中、発現の減弱は6例、消失は10例に見られた。癌患者のTCR/CD3 complexの構造をグループにわけてみると(1)正常なタイプ、(2)抗CD3ε抗体でζ鎖の発現が見られないが抗ζ鎖抗体での免疫沈降でζ鎖の発現がみられるタイプ(3)抗CD3ε抗体、抗ζ鎖抗体でもまったく発現の認められないタイプ、(4)またマウスの結果と同様にζ鎖の発現がみられずFcεRIγ鎖がζ鎖に置き代わっていると思われるようなタイプに分類できた。さらにζ鎖の発現の推移をみた症例では癌の進行が進むにつれて発現の減弱、消失が認められ、また治療に反応して発現が回復した症例も経験しζ鎖の発現消失は可逆的である可能性が示唆された。癌抗原が担癌患者のT細胞上に提示されたとしてもTCR/CD3 complexの構造異常がその後のT細胞内のシグナル伝達を阻んでいる可能性があり、担癌患者の免疫応答不全の原因となっている可能性が示唆された。この原因の解明をさらに進めている。
著者
牧野 亮哉 高橋 哲郎 野嶋 栄一郎 柳本 成一 梅澤 章男
出版者
福井大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

複数のモダリティからなる情報が同時的、あるいは継時的に提示される時、学習者はどの情報モダリティで与えられる情報を取捨選択するのかという問題、すなわち学習者の認知的な情報処理過程については、これまで組織的な研究がなされてこなかったテ-マである。本研究によって得られた主な成果を以下に記す。1.映像教材の情報処理過程、特に映像と音声の交互作用過程を調べるための方法論的検討を行った。映像教材が学習者に取込まれていくプロセスを、その入力段階において測定するためにアイカメラを利用することを試みた結果、アイカメラで測定される映像の見方が学習者の理解を反映することを示唆するものであった。2.映像と音声の時間的タイミングを実験的に操作して、音声が映像に先行する教材と後行する教材及び同時に提示される教材を作成した。先行と後行のどちらが理解を阻害するかを調べた結果、音声の後行がより理解を阻害するという知見が得られた。映像情報の理解が音声情報に大きく依存していることを示唆する結果である。3.比較的授業に近い場面におけるアプロ-チとして、LL教室のレスポンスアナライザを用いた測定システムを開発した。教材を提示しながら学習者に質問を行い、それに対する回答をアナライザとそれに接続したマイコンにより測定、収集、蓄積するシステムで、これにより時々刻々の学習者の変化を追跡することが可能になった。4.マイコンのグラフィックス機能を利用して、図学授業における説明図を板書図やOHP図に代わる形で提示することを目的として、そのCAI教材化を試みた。開発した教材内容は次のものである。(1)角錐・円錐・角柱・正多面体、線織面等の立体の投像及び直線と各種立体の交点、多面体同士の相貫、曲面体同士の相貫。(2)三角錐・円錐・傾斜三角柱・傾斜円柱・球・ねじれ面・傾斜六角柱等の各種立体の展開図及び測地線の作図。
著者
野口 俊之 郷 通子
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

タンパク球状ドメインは、10-40残基ほどの長さのフラグメントがつくるコンパクトなサブ構造=モジュールの組み合わせにより構成されている。モジュールの境界と遺伝子上のイントロン位置の対応から、モジュールが固有な構造を持つビルディングブロックとして組合わさることによりタンパク質は進化してきたと考えられている。モジュールがビルディング・ブロックとして固有な構造を持ち得るためには、モジュール内の相互作用がバランスしていること、すなわち、その構造は力学的に安定であることが必要である。本研究では次の問題:1)モジュールの構造の力学的な安定性は多くのタンパク質でも成り立つのか? 2)モジュールの構造の力学的安定性の要因は何か? を明らかにするために、つぎの2段階の計算機実験を行った。1)4つの折りたたみの型:α型、β型、α/β型、α+β型のタンパク質の代表として、ミオヘムエリスリン、免疫グロブリン、フラボドキシン、リゾチームおよびバルナーゼのモジュールの力学的安定性の分子動力学計算。2)原子間相互作用である静電相互作用、水素結合を仮想的に除いた計算機シミュレーションにより、モジュールの力学安定性への各相互作用の寄与を調べた。その結果、上記のタンパク質のモジュールの7割は1ナノ秒の間ネイティブ構造に近い構造を保持した。このことから、モジュールの力学的な安定性は一般的に成立すると考えてよいことが判った。次に、力学的に安定なモジュールの酸性、塩基性アミノ酸の電荷を中和し、さらに、水素結合も除いた、仮想定な状態においても、それらのモジュールの約7割は、安定であった。このことは、一つ一つは弱いファンデルワールス相互作用によって、モジュールの力学的安定性の大半が担われていることを示している。モジュールはコンパクトな構造単位として定義されたが、コンパクトであることは、それが、タンパク質進化の単位としてのビルディングブロックであるための物理化学的要請であったことを、この結果は示している。
著者
坂本 亘 上野 正博
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

魚類の遊泳行動に見られる日周活動リズムの持つ役割を、魚群形成過程の面から検討した。カタクチイワシは活動機能が低下すると浮上し、機能が活発になると沈降し深い層に移動する。この傾向は比較的初期の仔魚期からあらわれることを確かめた。さらにこの浮上・沈降の日周性と流れの鉛直シア-とを組み合せると種ごとに移動して行く方向に差が生じ、次第に魚種ごとの群となって行くことを確かめるため、海洋において実験を行なった。鉛直シア-、つまり表層から次第に深い層に行くにつれ流向が変る傾向は若狭湾西部において明確にあらわれていることを確かめた。特に表層と10mとで比較すると、表層では沖合へ、10m層ではそれと全く逆の湾奥方向へ流れていることを実測により見出した。また、この流れの測定と同時に表層と10m層のカタクチイワシ仔魚の分布密度を比較したところ、表層に分布する仔魚は流れの収束・発散の影響を受けて、集中分布をする傾向が強いことがわかった。仔魚は微細なため、長時間連続的に遊泳行動を記録するための特殊な自動記録装置を開発した。これは発光ダイオ-ドと光トランジスタを230個組合せて作られており、仔魚が発光部を通過すると、その位置・時刻が自動的にマイクロコンピュ-タの中に記録として取り込まれるようになっている。測器の開発及びプログラムに1年半を要したために、カタクチイワシの仔魚発生時期(6月から8月)の研究の間に合わなかったが、カワムツを用いた実験では日周活動リズムを記録することに成功した。これらのカタクチイワシによる日周活動リズムの解析と並行して、実際に海洋を回遊しているアカウミガメの日周活動リズムの解析にも成功し、この活動リズムが大規模な回遊をする際の定位と深いかかわりのあることを確かめた。この部分はすでに学会誌に報告した。
著者
宗政 五十緒 寺谷 隆
出版者
龍谷大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1・円光寺(京都市左京区一乗寺)の現存する木製活字の調査・研究を行なった。その結果は『円光寺の文化財ー伏見版木製活字などー』(円光寺.1991年5月刊)の「円光寺木製活字とその付属品」(『円光寺所蔵 伏見版木活字関係歴史資料調査報告書』[京都府教育委員会.1991年3月発行]の再録)の論文として発表した。これに引つづいて、本年度は円光寺現存木製活字(以下、円光寺活字と略称する)と、伏見版以外の活字版との関係について,研究を進め,これにより,円光寺活字のもつ近世初期の文化史上の意義が解明できることになった。円光寺活字と最も関係の深いものは徳川家康が駿河で出版を行なった駿河版(金属製活字を使用した活字版)との関係である。この金属製活字は鋳造活字であるので、鋳造するための字母を必要としたはずである。この字母は木製で、円光寺活字を彫造した慈眼・台林・半右衛門らによって製作されたものあると、私は推定する。2・諸種の古活字版を調査するに、東福寺版に円光寺活字を使用したのではないかと推測されるものが存する(例えば,『十九史略通考』)。また、片仮名活字はこれまで、伏見版に使用された例が発見されていないが、円光寺現存の片仮名活字は確かに使用されたと推測できることから、伏見版以外の活字版を製作した際に貸出されて使用されたことが考えられることになった。片仮名交りの『東鑑』などと考えあわせて、今後、更に調査・研究が行なわれねばならない。3・本研究によって、古活字版の出版者が、軍一の形態の活字のみならず、複数の形態の活字を所有していて、注文主に応じて,所在活字をさまざまに利用して、出版物を製作していたことが明瞭に把握できることになった。その一例は、円光寺活字の彫字工台林の出版活動である。彼が刊行した『課抄』はその具体的なものである。