著者
小崎 完 水野 忠彦 大橋 弘士
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

申請書の研究計画・方法に従い、購入機器のセットを行い、あわせてそれらを一括制御するためのコンピュータプログラムを作成し、電解研磨中の電流あるいは電位変動の連続的な測定記録を可能するシステムの構築を行った。つぎに、このシステムを用いて、放射性腐食生成物を模擬した酸化皮膜を形成した304ステンレス鋼を燐酸溶液中で定電位電解研磨した際の電流変動の観察を行った。この場合、燐酸濃度は28vol%とし、ステンレス鋼はあらかじめ電気炉において600℃で一定時間酸化させたものを用いた。電解研磨の際に観察された電流変動スペクトルを、最大エントロピー法(MEM)によって解析した結果、0.01Hz〜10Hzの周波数範囲で、比較的再現性のある周波数スペクトルが認められた。特に、0.1Hz〜10Hzの周波数範囲においては、両対数グラフ上で直線関係を示し、その傾きが-1から-4となった。この傾きは電解研磨開始直後には比較的高い値を示すが、研磨が進行するにつれて徐々に-3以下の低い値に落ち着く傾向のあることを見い出した。それらの傾きと測定電流値の平均あるいは分散値との相関については今後の課題である。以上の観点から、電解研磨除染時の電流変動を観察しその周波数スペクトルの傾きに着目することにより、除染進行状態をモニターできる可能性が認められた。ただし、現段階においては、ステンレス鋼試料上の酸化皮膜の厚さ、撹拌、温度、電解液濃度などのパラメーターについて十分に把握していないので、今後これらについてのデータを精力的に収集するとともに、従来用いられてきた除染条件の再評価及び最適除染条件の提案を行う。
著者
深見 公雄 山岡 耕作 西島 敏隆
出版者
高知大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

魚類の種苗生産における初期餌料として現在多用されているS型ワムシは、魚種によっては孵化後の摂餌開始時期の口径に比較して大きすぎるため仔魚は効率よく摂食することができず、その初期減耗の大きな原因になっている。このため本研究では、S型ワムシに代わるより小型でかつ安定大量培養が可能な餌料の開発を目的とし、原生動物(鞭毛虫・繊毛虫)の仔魚初期餌料としての可能性について検討した。また、天然海域に生息する仔魚の消化管内容物を調べ、原生動物プランクトンの消費者としての仔魚の役割について調べた。まず稚魚ネットにより土佐湾や伊予灘で採取された全長数mm程度の仔魚の消化管内容物を、微生物学的な手法を用いて詳細に観察した。その結果、大きさが10〜40μm程度の原生動物が仔魚によって捕食されているのが確認された。約47属319個体の仔魚について、その消化管内部を観察した結果、魚種によって、(1)観察した個体のほとんどすべてで原生動物が多量に観察されたもの、(2)観察されないかされても比較的少量であったもの、および(3)全く原生動物の捕食がみられなかったものの3群に分かれることが明らかとなった。(1)のグループにはカワハギ・アミメハギ・ヒメダラ等が、また(2)のグループにはシロギスやタチウオ等が、(3)のグループにはカタクチイワシ・マイワシ・クロサギ等が該当した。天然仔魚が原生動物を摂餌していることが明らかとなったため、種苗生産により得られた孵化後2〜3日の摂餌開始期にあたる仔魚を約24時間飢餓させたのち、海水中より分離した鞭毛虫および繊毛虫を与えた。その結果、孵化後3日齢のアユ仔魚や孵化後4日齢のヒラメ仔魚ではまったく繊毛虫を摂食していないことを示す結果しか得られなかった。またマダイにおいては、孵化後3日齢の仔魚はほとんど摂食しなかったものの6日齢仔魚ではわずかながら仔魚添加実験区での繊毛虫の密度が無添加対照区に比較して減少しており、マダイ仔魚による繊毛虫の摂餌が示唆された。また前記の魚種に比較してより口径の小さい2日齢のキジハタ仔魚では、繊毛虫を捕食していることを示唆する結果が得られた。以上の観察・実験結果から、魚種によっては孵化直後の初期餌料として繊毛虫等の原生動物プランクトンが有効であることが示唆された。
著者
丹治 愛
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

1.ガブラー版『ユリシーズ』の第4挿話(「カリュプソー」)から第6挿話(「ハーデス」)までを、河出書房版を参考にしながら実際に日本語になおし、かつ、それぞれの挿話についてこれまで独自に収集したデータのなかから、読解上とくに重要と思われるものを選び、それを注釈として添付した。2.第7挿話(「アイオロス」)および第9挿話(「スキュレーとカリュブディス」)については、各種の参考書を読みながら、そのつど日本語訳に役立つと思われる情報をデータベースのかたちで保存した。3.第11挿話(「セイレーン」)については、日本語訳の作業と注釈づけの作業を同時に進めているところである。いろいろな作業行程をこころみることによって、以後の作業にとっていちばん効率のよいかたちを模索したいと思う。4.たしかにガブラー版はそれまでのどの版よりもテクストとしての妥当性を主張しうる版であろう。しかしながら、ジョン・キッドの「ユリシーズのスキャンダル」という論文以後、その妥当性はかなり揺らいでいると見なければならない。たとえ反ガブラー派の批評家たちが問題にする箇所のほとんどーあえて97%以上と言っておこうーが、コンマかセミコロンか、あるいは大文字か小文字かといった、日本語になおした場合にはほとんど表面に浮かびあがってこない細部であるにしても、残る3%のなかにはわれわれにとってもひじょうに重要と思われる論点がふくまれている。そのようななかでわれわれにとって重要なのは、いずれの版も絶対化することとなく、テクストの妥当性を相対的に判断していく態度であろう。
著者
杉山 晋作
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究の目的は、古代日本において金めっき技法を用いる製品の国産化が開始された時期、考古学でいう古墳時代の新しい生産技術とその製品の実態を明らかにすることであった。そこで上総金鈴塚古墳出土の金銅製品を主たる研究対象とし、X線透視装置等の分析機器をも併用して製品と製作技術の詳細な観察および実測図・写真の作成を行い、以下の成果を得た。1.大刀 金鈴塚古墳出土の金銅装および銀装の大刀について検討を加えた結果、従来の発掘調査報告書と出土品修理報告書で認識されていた復元形態に誤りのあることが明らかとなった。また、環頭大刀の環頭の固定に多種の技法があったことを認めその相異が今後の大刀の編年研究の基準となり得ること、大刀外装具の製作に今まで解明されていなかった技法を認め他の類品を再検討する必要が生じることになったこと、大刀の鞘口構造に2種あることが判明し合口か呑口か問題となっていた課題に新しい知見を提起することになったこと、など多くの新事実を確認した。2.馬具 金鈴塚古墳出土の金銅装馬具については、鉄地に金銅板を固定する鋲留技法の相異によって3種の馬具の組合わせが識別できることとなり、また、付属品の1種に関する学界の従来の認識が誤っていることも判明した。今後、金銅製品の金属元素組成分析値を他の類品のそれと比較検討した結果をも合わせた研究成果を公表することによって、上総金鈴塚古墳出土品は従来に増して古墳時代編年研究の重要資料としての価値が大きくなる。ただし、研究成果の詳細な公表には大量の頁数の報告書を必要とするので3年後に別の刊行物を予定している。
著者
稲田 道彦
出版者
香川大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

この2年の研究期間に香川県西部の三豊郡詫間町・仁尾町・三野町・豊中町・高瀬町の一部・観音寺市の一部を調査地域に定め、全墓地を訪ねると共に特に両墓制墓地の崩壊過程を調査研究した。この地域で一般的であった土葬が火葬の導入により墓地制度の変更がうながされた。このことが墓地を含む人にとの生活空間にどのような影響を及ぼしたのかというのが、研究者の問題意識であった。両墓制は従前の習俗を維持するのが困難になっった。特に埋葬地の埋め墓は多様な形態を示している。このような墓地制度の変化は葬儀などの儀式に変化を及ぼし、ひいては人々の宗教的な考え方にまで変容のきっかけを与えていることがわかった。さらに人々の生活スタイルの近代化や合理的思考などという現代人のライフスタイルもこれら地域の墓地空間の変化に大きく影響を与えていることが聞き取り調査で明らかになった。これらの地域の墓地の変化と比較するために、京都市や名張市など各地の両墓制墓地の変化の状況を調査した。また都市的な墓地文化を知るため、各地の都市の墓地の変容過程も調査した。調査地域の墓地の変容は火葬の導入がきっかけであったが、死者の埋葬地、遺骨、石塔というモノにこだわる現代人の態度が根底にあった。死者供養も墓石を建てることや実際の墓参りという行動によって自己満足を得ている。死者供養が人々の心の問題であるとして片づけることはできなくなっている。もしそうなら多様な死者供養が有り得るのであるが、現在地方固有の文化が都市的な葬制墓制文化に統一されつつある。墓地利用も入り会い形式ではなく、個人に区画し管理することを望むなど個人主義の傾向が強くなっている。1991年12月に人文地理学会事務局で開かれた特別例会で『両墓制墓地の変容ー香川県西部に事例を中心にー』という発表をおこなった。この表発は今回の科学研究費による研究の成果の一つである。
著者
曽根 悟 笠井 啓一
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1960年代末以降民鉄各社は相次いで電力回生ブレーキを用いた車両を導入し、現在ではJRを含めて新造車のほとんどが回生車となっている。この変化に合わせて、饋電システムの設計・回生車の制御を見直したのが本研究で内容的に直流饋電システムと交流饋電システムとに分けて記述する。1.直流饋電システムの回生車運転線区向け設計・制御回生失効確率を減らすための有効な方策として、変電所無負荷送出電圧の低減または電車線許容最高電圧の増加、変電所の電圧変動率の低減または定電圧制御、饋電線抵抗の低減を明らかにした。回生余剰エネルギーの吸収設備として変電所等へのインバータ・抵抗・蓄積装置等の導入は、これらの設備が有効に活用できる条件が複雑で、必ずしも一般性がないことも明らかにした。2.回生車を導入する線区向けの交流饋電システムのあり方直流饋電システムは原則として全部並列饋電されるので停電はないが、交流では横流防止、保護上の観点から単独饋電となり、異電源セクションで停電することが多い。この場合回生車のセクション通過を可能とするために、多くの可能性の中から、以下の方式有望なものとして選定し、開発を進めた。セクション制御方式としては(1)微小並列切替え方式、(2)瞬時切替方式、(3)微小時間切替方式、(4)抵抗セクション方式、これらに対応する車両の制御としては、(5)、(1)〜(3)に対応する架線側PWM制御変換回路の主変圧器偏磁防止機能付制御、(6)(4)に対応する自励回生電圧位相制御3.PWM制御交流回生車のビート・トルクリプル抑制制御将来の交流回生車の主流となる標記の方式の実用上の最大の妨げである、複変換器間干渉を除去し、トルクリプルを低減する制御方式を開発した。
著者
後藤 幸弘 成田 憲一
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

新潟地区の日本海沿岸において、冬季雷の観測が、磁鋼片、ディジタル電流波形記録システム、フィールドミル、静止カメラやビデオ記録システムを用いて継続している。昭和62年度の冬より、新たに静電アンテナ(スローアンテナ)を試作し、互いに数百m離れた3地点に設置して、バイポーラ雷撃に伴う雷雲中の電荷領域の消滅の様相を測定するようにした。しかしながら、研究期間中には、一度もバイポーラ雷が発生せず、観測できなかったが、冬季雷特性の総合的な観測は継続して行われ、観測結果の解析、検討も引続いて行われた。磁鋼片の測定では、昭和51年10月より平成元年1月までの期間に65例のデータが得られた。その内8例は磁鋼片の測定範囲未満の小電流で残りの68%は負極性雷、32%が正極性雷であった。昭和57年冬より、ロゴスキコイルを電流センサにしたディジタル波形記録システムを導入し、これまで60例の波形を得た。このうち15%がバイポーラ雷であった。一方地上静電界変動と冬季雷発生の気象条件も検討された。冬季雷襲来時は、夏期と大きく異なり、非常に激しく正負に振れるものであった。また地表面附近の空間電荷の影響が大きいことが確認された。輪島の高層気象データと巻地点の観測鉄塔でのデータおよび日本海の海洋ブイステーションでのデータより、冬季雷の発生条件を求めることができた。ビデオカメラによる雷放電撮影も順調で、昭和59年より2方向、昭和61年より3方向の撮影となり、これまで115例のデータが得られた。ほぼ全てのチャンネルは上向き放電の様相を呈している。バイポーラ雷の波形は大きく2種類に分類された。特に正の電流に負の電流パルスが重量している例が観測されたが、その発生要因については、今後継続される予定の観測に依存している。特に今回の補助金で導入できた3地点スローアンテナによる雷界測定のデータがその原因解明の糸口となるであろう。。
著者
森村 道美 木内 望 高見沢 実
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

本研究では、「地区別計画」と「住宅マスタープラン」の策定状況に関して、東京都23区の担当者にアンケートとヒアリングを行った。「住宅マスタープラン」については、参加したコンサルタントにも行った。アンケートの内容は、(1)プラン策定のプロセス、(2)プランの自己評価、(3)より展開すべき視点、(4)プラン運用上の問題点、等である。23区は、計画に係わる諸条件がそれぞれ異なることから、同一の尺度で比較することは難しいが、結果から次のことが判った。(住宅マスタープランについて)-I・II章i)1区を除いた22区が、'93年末までに、極めて短期間で策定を終了している。ii)プランの策定作業の出発点、あるいは途中の段階で、すべての区で住宅に係わる専管組織(5〜10名)を発足させている。iii)策定されたプランについては、区もコンサルタントも一応の出来と自己評価しているものが多いが、住宅市街地像・地区別住宅像の明確化、用途地域などの都市計画との関係については、今後の課題としている指摘も多い。iv)プランの運用を評価するための委員会や審議会等の常置組織を持っている区は3区(予定を含めると6区)しかなく、プランの運用はひとえに担当部局の力量に掛かっている。(地区別計画について)-III・IV章v)研究を開始した'92年(平成4年)6月に都市計画法が改正され、都市計画マスタープランの一環として「地区別構想」の策定が義務づけられることとなった。vi)23区の殆どすべてが、法改正以前に、企画部がとりまとめる「総合計画」や、都市計画部がとりまとめる「まちづくり方針」等の中で「地区別計画」を検討していた。vii)「総合計画」と「まちづくり方針」との調整には、各区がさまざまな工夫を行っている。V・VIは、都市計画マスタープランに関して、(社)日本都市計画学会(市町村の都市計画マスタープラン研究小委員会、研究代表者が主査)でとりまとめたものである。
著者
植村 興
出版者
大阪府立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

1.ウエルシュ菌エンテロトキシンに対するモノクローナル抗体の調整 精製エンテロトキシンの免疫で4種類のハイブリドーマを得, マウス腹腔に戻し, 得られた腹水からDEAE-Affi-Gel-Blue(Bio-Rad)クロマトグラフィーでモノクローナル抗体を調整した.2.ウエルシュ菌エンテロトキシンの化学修飾剤による切断と毒素フラグメントの分取及び得たフラグメントの1, 2の物理化学的性状分析精製エンテロトキシンを0.2MDTT, 0.5M2-ニトロー54オシアノ安息香酸(NTCB)及び4Mグアニジンを含む0.05M Tris-HCl緩衝液(pH8.0)中で15分間室温に放置し, SH基をシアノ化した. pHを9.0に修正後, さらに6時間37°Cで反応させた. 切断反応は0.02M Tris-HCl緩衝液(pH8.0)に透析することにより停止させた. 切断毒素フラグメントの精製は, 0.02M Tris-HCl緩衝液(pH8.0)で平衡化させたDEAE-Sephacel(Pharmdcia)カラムに吸着させ, 0.05M塩化ナトリウム濃度勾配で溶出して得た. 精製フラグメントはSDS-PAGEで解析の結果分子量15,000(エトテロトキシン全分子は35,000)で, ショ糖密度勾配等電点電気泳動で分析の結果, 等電点5.58(同4.3)であった.3.フラグメントのエンテロトキシン作用における役割りの解析:^<125>I標識フラグメントを用いた分析の結果, フラグメントはエンテロトキシン作用の第一段階である細胞への結合性を保持していることが確認された. しかし第二段階である毒性は, Vero細胞から^<51>Cr及び^<86>Rb放出活性で調べた結果, フラグメントには, エンテロトキシンと異って, 認められなかった. 第二段階の毒性を有する分子は単離されておらず, 今後の課題として残されている.
著者
檜垣 恵 坂根 剛
出版者
聖マリアンナ医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

慢性関節リウマチ(RA)は関節滑膜を炎症の主座とし軟骨・骨破壊を来たす原因不明の慢性炎症疾患である。関節滑膜には、血管新生、リンパ球浸潤と共に滑膜表層細胞の重層化が認められパンヌスが形成される。このパンヌスはA型のマクロファージ様細胞及びB型の線維芽細胞様細胞からなるが、B型滑膜細胞はA型滑膜細胞の産生するインターロイキン(IL)-1や血小板由来増殖因子(PD-GF)などのモノカインに反応して増殖することも明らかにした。さらに活性化されたB型滑膜細胞は種々のサイトカインと共にコラゲナーゼ、ストロメライジンなどのプロテアーゼ及びプロスタグランジン(PGs)を産生して軟骨・骨破壊を引き起こす。そこで、RAに対する治療戦略としてはB型滑膜相棒の増殖・活性化を阻害することが重要と考えられる。そこでわれわれはビタミンD_3の滑膜細胞増殖抑制効果を検討した。活性型VD3は用量依存性に滑膜細胞の増殖を抑制した。コントロールとして用いたレチノイン酸やデキサメゾンにはこの作用は認められなかた。RA由来、OA由来の滑膜細胞でVD3に対する感受性の違いはなく、線維芽細胞株WI-38には作用しなかった。さらにIL-6及びコラゲナーゼ産生をデキサメサゾンと同様に抑制したが、TIMPの産生には影響しなかった。又、ゲラチンザイモグラフでもコエアゲナーゼ活性の低下を認めた。ゲルシフト法によりVD3添加でIL-1刺激時の滑膜細胞の核蛋白AP-1の抑制が認められた。細胞周期に与える影響ではDNAヒストグラムよりVD3添加によりG1期での阻害が認められ、ノザンプロットでサイクリンD1の発現低下が認められた。以上、活性型ビタンミンD3が滑膜細胞の増殖及び活性化を抑制することが明らかになった。ビタミンD_3のメディエーターと考えられているC18/C2セラミドおよびHerbimycinなどのチロシンキナーゼ阻害剤及びチロシンホスファターゼ阻害剤(Orthovanadate)の作用検索をしたが滑膜細胞に対しては抑制効果はなかった。サイトカイン産生などの活性化抑制に関しては転写因子AP-1の抑制によるものと考えられた。増殖抑制に関してはデキサンサゾンとは異なる活性である。c-mycの発現抑制はなかったが、サイクリンD1の発現抑制によりG1アレストが起きていると考えられた。このような免疫調節作用藻有する活性型ビタミンD3の作用はマン液関節リウマチの治療薬剤としての可能性を示唆した。
著者
柴田 純祐 川口 晃 江口 豊
出版者
滋賀医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

近年、癌の浸潤、移転に関する因子として、各種接着因子やプロテアーゼが注目されている。urokinase-type plasminogen activator(u-PA)はセリンプロテアーゼの一種で、plasminを介してpro-collagenaseを活性化し、細胞間基質を溶解することで癌の浸潤、転移に関与しているものと考えられている。本研究は、消化器癌手術切除標本を用いて、免疫組織化学染色法及びin situ hybridization法により、u-PAを中心とする線溶因子の発見と局在及びその臨床的意義について検討した。その結果、ヒト消化器癌において、u-PAは癌細胞自身が産生しており、その発現率は、食道癌で15例中1例(6.7%)と低く、胃癌では111例中44例(39.6%)、大腸癌で145例中48例(33/1%)であった。さらに、大腸癌u-PA陽性症例では有意にリンパ節転移率が高く、また、胃癌及び大腸癌のu-PA陽性症例で、5年生存率は各々有意にu-PA陰性症例と比し低かった(51.0% VS 77.5%:胃癌、60.2% VS 80.9%:大腸癌)。一方、u-PAの抑制因子である plasminogen activator inhibitor(PAI)の免疫組織化学的検討では、大腸癌において癌細胞周囲近傍の線維芽細胞に、PAI-2は胃癌、大腸癌において癌細胞自身に局在していた。さらに、PAI-1は大腸癌のリンパ節転移を抑制する傾向が、PAI-2に関しては、胃癌、大腸癌の5年生存率において、u-PA陽性PAI-2陰性例が最も予後が悪く、u-PA陰性PAI-2陽性例が最も良かったことより、PAI-1、PAI-2は、癌の浸潤、転移機構を抑制する可能性が示唆された。現在、消化器癌手術は、根治性とquaality of life (QOL)の立場より、拡大あるいは縮小手術の方向にあり、その指標として、真の悪性度、つまり生物学的悪性度が求められている。そこで、術前の組織生検、あるいは手術切除標本におけるu-PA、さらにPAI-1、PAI-2の発現を組み合わせて生物学的悪性度の一指標とし、術式、あるいは術後の化学療法を含めた集学的治療を行う臨床応用が期待される。
著者
小野 健吉 山梨 絵美子
出版者
奈良国立文化財研究所
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近代京都画壇で活躍した3人の日本画家の作庭について、それぞれ、以下のような成果を得た。(1)山元春挙:(1)春挙は、芦花浅水荘の庭園を機能的にも形態的にも琵琶湖と一体のものとしてデザインした。(2)庭園は建築と平行して施工された。(3)施工は、当初、京都の庭師・本井政五郎、その後、大津の庭師・木村清太郎が引き継ぐ。(2)橋本関雪:(1)関雪は、蟹紅鱸白荘にはじまり、白沙村荘,走井居、冬花庵と、生涯、建築や作庭に情熱を保ち続けた。(2)建築や作庭も、絵画と同様の創作と見なしていた。(3)白沙荘の施工は、青木集、本田安太郎などの庭師がおこなったが、細部にわたり、関雪の指示があった。(4)関雪の庭園には、中国の文人趣味に対する傾倒や歴史的教養主義がうかがえるが、明治大正時代に京都で主流をなした写実的風景式庭園のはんちゅうに入るものといえる。(3)竹内栖鳳:(1)霞中庵庭園の築造は、従来いわれていた大正元年ではなく、大正3年頃の可能性が大きい。(2)庭園のデザインは、建築同様、栖鳳の考案によるものである。施工にたずさわった庭師は本井政五郎である可能性がある。(3)霞中庵庭園は、芸生の広がり、カエデの樹林、流れ外部景観(嵐山)などで構成され、その平明さ、軽快さは、栖鳳の画風と一脈通じるものがある。上記の各画家の作庭を観察すると、関雪・栖鳳については、作庭と画風に共通性が見出せるが、春挙の芦花浅水荘は大和絵風の明るさ・のびやかさがあり、峻厳な画風とはやや趣を異にする。しかし、その春挙にしても、写真に熱中したという写実を重んじる基本的な態度が、その作庭の中に着取できる。
著者
松久 寛 西原 修 本田 善久 柴田 俊忍 佐藤 進
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

スキ-時の人体の上下運動に関してはひざをリンク機構、筋肉を収縮要素、それと直列につながる弾性要素、並列の減衰要素で模擬した。ひざは大きく曲げる程ばねが柔らかくなるリンク機構による幾何学的非線形性を持ち、筋肉はばねと減衰からなる受動的なダンパ-としての役割と収縮による能動的な運動を行う。動特性としてはひざを深く曲げる程緩衝効果は大きくなるが、筋肉にかかる荷重は大きくなる。能動的に立ち上がる場合は立ち上がりの前半に雪面への押し付け力が増加し、後半に減少する。この雪面押し付け力の増加減少をタイミングより利用することによって、雪面の凸凹による体の不安体を安定化することができる。またスキ-板をはりとして、足首で力とモ-メントが働くとして人体とスキ-板の連成振動の解析モデルを作成した。ここで、人体の動きとスキ-板の形状、剛性などとタ-ンの関係が明らかになった。テニスに関してはボ-ルを一つの質点と一つのばね、ラケットを弾性はり、ガット面を一つのばね、腕を回転とねじり方向各3自由度のばね・質点系でモデル化した。ここで、腕のモデル化においては、腕をインパルス加振したときの各部の回転角加速度を計測し、時系列デ-タの最小自乗法によって各係数を同定した。そして数値計算によって、ボ-ルの飛距離、腕にかかる衝撃力の関係を明らかにした。また、ラケットの特性、すなわち曲げ剛さや、ガットのはり具合の影響についても検討し、このモデルがほぼ妥当なものであることがわかった。また、ラケットの構造の変化、すなわち重心位置とボ-ルの飛距離や手にかかる衝撃力の関係についても検討した。これらの研究により、人体の力学モデルの作製法およびスポ-ツ用具の解析法が確立されたので、これらを組み合わせることにより、人体の運動時の動特性、特に関節にかかる応力等を求める手法が得られた。
著者
長舩 哲齊 長谷 榮二 角田 修次
出版者
東京医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

Euglena細胞は前培養条件を適切に選べば、葉緑体形成の初期暗過程が観察できることを見いだし暗所で起こる現象と、光照射によって初めて誘導される現象とを区別して追究することを可能にした。本報告はこの実験系を用いて、葉緑体形成の初期にみられる光合成酵素RuBisCOおよび光化学系IIのLHCP IIの細胞内局在性を連続切片疫電顕法で経時的に追跡したものである。暗所で継代培養したEuglenaを有機栄養培地中で静置培養すると細胞質内にパラミロンと共に脂質の蓄積がみられる。このような細胞を暗所で無機培地に移しCO_2を通気する。144時間後の細胞に、照度3ftーcの弱光又は強光150ftーcを照射した。弱光条件下で形成されたチラコイド膜は方向性を欠いたカ-リ-型になる。一方、強光条件下では48時間後にピレノイドが葉緑体の中央部に移動し、正常な葉緑体構造が完成された。免疫電顕法により、RuBisCOの細胞局在性を追跡するとRuBisCOは細胞核およびCOS構造、次いでプロピレノイド及びストロ-マに見られた。次に、弱光3ftーcを照射すると、従来の実験系においては弱光条件下では合成されないとされてきたLHCP IIの合成、照度3ftーcでも起こることが免疫電顕法により初めて確かめられた。すなわちLHCP IIは弱光照射2時間後、核およびCOS構造、その後ゴルジ体、次にプラスチドに観察された。その結果、細胞質で合成されたLHCP IIがゴルジ体を経由し、葉緑体に運ばれることを最初に見いだした。
著者
塩田 徹治 比嘉 達夫 佐藤 文廣 藤井 昭雄 木田 祐司 荒川 恒男
出版者
立教大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

1.従来の研究に引続き、代表者塩田は、主としてモ-デル・ヴェイユ格子に関連する研究をし、種々の応用を得た。整数論への応用として、有理数体の高次ガロア拡大において、比較的小さな素数でのフロベニウス置換を、チェボタレフ密度定理との関連で調べ、興味深い具体例を構成した(文献[1])。また代数幾何の有名な問題である3次曲面上の27本の直線について(モ-デル・ヴェイユ格子の理論に加え)ワイヤストラス変換の概念を導入して、決定的な結果を得た([2])。2.藤井は、ゼータ関数のゼロ点の分布について研究し、リーマン・ゼータの場合、シャンクスの予想についての以前の結果を改良した。また、エプスタイン・ゼータの場合も興味ある結果を導いた([3]、[4])。3.木田は整数論および代数幾何学における実際の計算と、その計算量について研究した。成果の一部は[5]で公表した。これらの研究において、当補助金により購入したパーソナル・コンピュータは大変役立ったことを特記しておく。
著者
伊藤 繁
出版者
岡崎国立共同研究機構
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

従来の分光法あるいは室温EPR法では測定が困難であった、緑色植物の光化学系2酸素発生反応に働くMn原子、及び特殊なキノン、Z、の反応中心内部での存在部位を極低温EPR法を用いて明らかにした。Z分子と外部溶液中に加えた常磁性イオンDysprosiumとの相互作用の強さが両者間の距離の-6乗に反比例し、後者の濃度に比例する事を利用して、Z分子が膜外側表面から約45オングストローム内側表面から約15オングストロームの距離に存在しており、内側表面には33Kd,24Kd,18Kdの3種のタンパク質が結合してDysprosiumがZ分子の近傍に結合するのを妨げている事を明らかにした。また同じ方法をチトクロームb-559に適用してこのチトクロームのヘムが膜表面からやはり15オングストローム程内側に存在する事を明らかにした。 光化学系2の電子受容体として働くキノン(Qa,Qb)と鉄原子の相互作用をやはり極低温EPRで測定、解析した。これらのキノンが共に鉄原子と相互作用している事、Qbは電子伝達阻害剤オルトフェナントロリンやDCMUの結合により鉄原子との相互作用を失い、これらの阻害剤と鉄原子の相互作用が新たに出現するので、これらの阻害剤がQbの結合部位にはいり反応を阻害している事を光化学系2粒子、及び光化学系2反応中心コア複合体を用いてあきらかにした。またpH,酸化還元電位依存性の測定により、この鉄原子の存在環境の特性をあきらかにした。光化学系1反応中心においては、反応中心クロロフィルP700の近傍のクロロフィルの配列状態、光化学系1に存在するがその機能が明確にされていなかったヴィタミンK1が電子受容体として働き、逆反応を妨げ効率のよい光化学反応を行わせていることを明らかにした。
著者
森下 満
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

研究目的:開港場として諸外国の文化導入の窓口となったわが国近代の歴史的地区において、社会的、文化的に形成された地域固有の色を明らかにし、そのことを通じて町並み色彩の意味や計画の考え方の再定立をめざす。研究方法:函館市西部地区と神戸市北野・山本地区の2地区をとりあげ、戦前期洋風木造建物の外壁下見板などに塗り重ねられ、層をなすペンキ色彩のこすり出しによるサンプル採集・分析、CGシミュレーションによる復元的分析等にもとづき、町並み色彩の変容過程を比較考察する。成果:1.こすり出しによって様々の色からなる同心円状のペンキ層を発掘した。これを「時層色環」という新しい概念で提示し、地層のように各層が示すそれぞれの時代、環境、個人の様相を意味するものとして定義した。2.ペンキによる町並み色彩は時代によって変化する。現状に比べて過去の色彩は多様であり、意外性をもち、全く異なる色の世界が形成されていた。3.色彩変化の背景には、戦争などの大きな時代の流れと、建物所有者の変化などの地域コミュニティレベルの色彩形成のしくみの変化の2つの力が働いている。4.従来の町並み色彩計画の考え方として、周囲となるべく目だたず無難な色を基本とし、基準を設けて統一的な色彩に規制するのをよしとする傾向がある。そのモデルに近世の伝統的な町並みがある。しかし、近代のペンキによる町並み色彩では、多様、変化という全く異なる方法で魅力的な町並みを形成することが可能なことを示唆している。5.豊かな、魅力ある町並み色彩を形成するには、地域コミュニティレベルで創造的な色彩形成のソフトなしくみを環境-時代-人-色の応答関係の中でどうつくるかが課題である。6.町並み色彩とは「環境と時代における個人の自己表現と集団の共有の価値の表現」を示すものであり、住民が主体的に町並みづくりに係わることのできる重要な役割をになう可能性をもっている。
著者
五郎丸 毅
出版者
福山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

重水素標識薬物のキャピラリーGCによる同位体分離法について検討した。分離条件を検討するためイソプロピルアンチピリン(IPA)の重水素標識体、1-phenyl-d_5、2-methyl-d_3、3-methyl-d_3、4-isopropyl-d_6、2-methyl-3-methyl-d_6、1-phenyl-3-methyl-d_8および3-methyl-4-isopropyl-d_9体を合成した。IPAと各重水素標識体のキャピラリーGCにおける分離は、標識重水素数及びカラムの絶対温度の逆数に比例して向上することが確認された。この現象はプロポホール(PF)、フェンタニル(FT)やアミノピリン(AM)等の薬物とその重水素標識体においても同様に認められ、一般に比較的低いカラム温度で測定が実施できる多重重水素標識体では、同位体分離法が適用できると予想される。また本分離法を同位体希釈分析に応用したところ、各薬物ともに標識体と非標識体との濃度比に比例するピーク面積比が得られ、直線性ならびに再現性に優れていることが認められ、高感度検出器を用いた場合にはpg-ngレベルでの定量性を示した。さらに各薬物投与後の血中濃度の測定を重水素標識体を内部標準として添加する方法で実施したところ、きわめて容易に再現性よく0.1ng/mlでの定量、あるいは抽出液を直接注入による定量が可能であることを認めた。さらにAMについては本方法によるクリアランスを指標とした肝機能の評価への応用を実施した。またFTについては手術時にFTの投与を受けた患者における血清濃度の測定を実施し、臨床条件におけるFTの動態を解析するのに必要な高感度測定が可能であることが認められた。
著者
藤吉 康志
出版者
名古屋大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

雪片を灯油中で融かすことにより、個々の雪片が融解する際に、どのような粒径分布の水滴を形成するかを測定した。その結果、平均的には、雪片の質量が増大するにつれて、ほぼ直線的に生成される水滴の個数が増大することが明らかとなった。これは、本研究によって世界で初めて明らかとなった事実である。雪片の質量の増加によって、急激に分裂する水滴の個数がふえるため、生成される水滴の平均粒径は、雪片の質量が増えるにつれて逆に減少することも明らかとなった。また、生成される水滴の粒径分布を調べると、質量の大きな雪片ほど相対的に小さい粒径の水滴を作りやすいことが示された。雪片の最大粒径、雪片の断面積、雪片の凹凸度、雪片のモーメントと生成された水滴の個数との関係をしらべると、数多くの水滴を生成する雪片は、最大粒径、断面積、凹凸度及び質量が大きいが、しかし、これらの値が大きいからといって必ずしも数多くの水滴が生成されるとは限らない(必要ではあるが十分条件ではない)ことが明らかとなった。各特徴量との間の相関を調べると、凹凸度と断面積、及びモーメントと質量との間にはほとんど相関が無いことが分かる。即ち、雪片がどの程度複雑な形をとり得るかは、雪片の大きさによらないということが分かる。言い換えれば、雪片が大きかろうと小さかろうと、その形は等しく複雑であると言える。また、重い雪片(あるいは大きな雪片)であるからと言って、中心部に質量が集中しているとは限らず、逆に、軽に雪片(あるいは小さな雪片)であるからと言って質量が一様に分散しているとは限らないことを意味している。モーメントも凹凸度も、何れも空中での雪粒子の併合様式に関係した値である。従って、雪粒子の併合様式は、その大きさや重さによらないランダムな現象であることが示唆された。
著者
南谷 和利 笠原 嘉介 ITOH Mamoru
出版者
順天堂大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

近年、高齢者のスポ-ツ愛好家が増加する中、マラソンのような激しいスポ-ツ活動に参加する高齢者が目立つようになってきた。しかしながら、同時にスポ-ツ中に突然死する事故も急増している。その原因として、循環器系の器質的障害が報告されているが、未だ解明されていない点が多い。また、習慣的にトレ-ニングを継続してきた者にも運動中の急死が起こることがある。本研究では、運動中における急死の発生機序を検討するための基礎的資料を得ることを目的として、市民マラソンに参加した経験をもつ高齢者マラソンランナ-を対象に、循環器系機能を中心とした体力測定、および血液生化学検査を実施した。平成2年度は、被験者14名(平均年齢61.2歳)を対象に安静時の心電図記録、体力測定、血液生化学検査などを実施し、被験者らのトレ-ニング状況を調査した。平成3年度では、被験者らのトレ-ニング状況などを引き続き調査し、被験者7名(平均年齢68.2歳)を対象にマラソンレ-ス前後の血液生化学検査所見の検討を行った。被験者らの体力レベルは個々に異なり、バラツキはみられたものの、一般の高齢者と比較した結果、一部を除き全体的に優れていたと思われる。心電図の記録では、数名の被験者に異常所見が認められたが、現状の運動継続には支障のないものと判断された。血液生化学検査所見においては、加齢や運動による影響と考えられる異常値が認められた。現在、変化の認められた血液生化学検査結果について運動の影響を検討している。本研究結果から、突然死に対する科学的対処法を導き出すことはできない。今後、本研究結果を基礎にして、さらに同様な知見を積み重ねていくとともに、高齢者が安全に運動を行うためのメディカルチェックを検討していく予定である。