著者
平田 煕 杉山 民二
出版者
東京農工大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

1)りん吸着力の強い黒ボク心土に,CaーP__ーを3濃度段階添加してVA菌根菌共生の有無下でダイズを生育させたところ,感染の抑制される高P__ー施用下であっても,ダイス子実生産とタンパク蓄績を高めることを実証した。2)本学農場の飼料畑(多腐植質黒ボク土)に生息するVA菌根菌の90%以上は,Glomus属およびAcaulospora属であるが,その中の優先種(未同定,黄色壁,Gl etunicatumに酷似、以下gYと略),本圃場には存在の確認されていないGlomus E_3(ヨ-ロッパでは顕著な植物生育促進効果が認められている種)に対するササゲ,キマメ,ラッカセイの生育反応を,γ線殺菌した黒ボク土(Bray IIーP__ー:26.1ppm)を培地として追った。ササゲ,キマメは,gYの共生なしには,その生活史を全うし得ず,子実着生は全くみられなかった。ラッカセイでは,子実着生はみられたものの,稔実は極めて貧弱であった。gE_3は,これらマメ科作物の生育前半には殆んど菌根形成を起さず,終段階でのササゲ,キマメに感染をもたらしたものの,それらの生育へのプラス効果は全くみられなかった。3)りん肥沃度の極めて高い条件下でのgY共生の有無によるダイズ栽培を行なった前年度のサンプルについて,導管出液及び発芽77日目の稔実終期の茎葉部からサイトカイニン画分をメタノ-ル抽出し,高速液体クロマトグラフィによって精製ののち,重水素標識サイトカイニンを内部標準とするガスクロマトグラフィ/マススペトロメトリ-(GC/MS)により,内生サイトカイニンの同定,定量を行なった。その結果,gY共生の有無で,イソペンテニルアデノシン(〔9R〕iP__ー)含量では,導管出液,茎葉部とも差がなかったが,gY共生区のリボシルゼアチン(〔9R〕Z)およびデヒドロゼアチンリボシト(diH〔9R〕Z)のそれは,対照区(非gY共生区)の2倍近い値を得(導管出液20nM/l,茎葉部4〜6pmol/g新鮮重),前年度のバイオアッセイ法による総サイトカイニン定量結果を,物質的に同定,定量することができた。
著者
藤原 奈佳子
出版者
名古屋市立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究の目的は、(1)ライフスタイルや運動機能、高次脳機能などの加齢変化の把握 (2)脳機能の異常を早期段階でスクリーニングする簡便法としての指標を検討することである。対象者は本研究目的に同意を得た者で日常生活に支障ない60歳以上の在宅高齢者で男性が71名(73.0±6.5歳)、女性が231名(70.1±6.0歳)である。調査項目は問診(ライフスタイルなど)52項目、身体特性5項目、運動機能5項目、PGCモラールスケール、Zung鬱スケール、高次脳機能検査5項目(MMS,三宅式記銘力PAL,仮名ひろい,Raven,Rey複雑図形)である。対象者のMMS得点平均値は男性が26.1±3.5、女性が26.9で±2.5で、臨床的には痴呆症状のない者である。対象者のうち111名(男性35、女性76)は脳MRI検査も実施した。加齢とともに、熟睡ができず(男)、睡眠時間が長くなる(女)、咀嚼困難、飲酒量低下(男)、陽気(男)小心(女)、新聞を読むのが面倒になる、肥満指数BMIが低くなる(女)、拡張機血圧低下(女)、握力低下、大腿四頭筋筋力低下、動作が遅くなる、平衡能低下、高次脳機能検査得点の低下、鬱傾向(女性)となる傾向にあった。脳MRI検査成績は、梗塞性所見は、65-69歳では男性が71.4%で女性が66.7%であったが、70歳以上では、男女ともに90%以上の者に所見を認めた。脳萎縮所見を有した者は男性では65-69歳の28.6%から75-79歳の45.5%へと加齢とともに増加傾向にあったが、女性では65-69歳で26.7%、75-79歳で26.3%と加齢による増加は認められなかった。MRI検査で梗塞性所見または脳萎縮性所見(臨床的に問題とならない程度のものも含む)が認められた者の特徴(年齢補正)は、睡眠時間が長い、MMS得点が低い(男)、三宅式記名検査得点が低い(男)、仮名拾いテスト拾い忘れが多い(女)、Raven得点が低い、Rey得点が低い(男)、動作が遅い(男)、平衡保持時間が短い(女)などであった。今後、対象者を追跡し本成績と記銘力体または痴呆症との関連を把握する予定である。
著者
大下 市子 山本 友江 足立 蓉子
出版者
山口女子大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

調理済み・半調理済み商品の利用について、1984,1990,1994年に、大阪・広島・山口で学生の家族の調理担当者にアンケート調査を実施した。その結果、調査した30品目を利用の変化から5つのグループに分類し、その特徴を明らかにした。第1のグループは、1984年から1994年の10年間で利用に変化のない食品で、持ち帰り食品のすし、冷凍食品のハンバーグ、インスタント食品のス-プの3種であった。第2のグループは、1984、1990、1994年と利用が増加している食品で、持ち帰り弁当、そう菜のだしまき卵、そう菜の酢の物・あえ物の3種であった。第3のグループは、年次で増減が認められるもので、9種中6種はそう菜であった。第4のグループは1984年から1990年にかけて増加が認められる食品で、8種中レトルト食品3種、持ち帰り2種で、その食品はハンバーグ、カレ-・フライドチキン、ス-プ・シチューと洋風の食品が多く見受けられた。第5のグループは、1990年から1994年にかけて利用が増加している食品で、7種中4種がそう菜、3種が冷凍で、今まで家庭で作るとされていたきんぴら、にしめ、焼き魚等和食の食品が多く見受けられた。現在、これらの食品の利用におよぼす生活概況・食生活概況等の因子について、また、食品のイメージと利用の関連についても解析中である。
著者
神保 敏弥 浅井 照明 菊池 徹平 河上 哲 南 春男
出版者
奈良教育大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

C^nのコンパクト部分集合KからC^nへの写像f=(f_1,・・・,f_m)によるグラフG={(z,f(z)):z∈K}の多項式凸性については、n=m=1のときの結果が多く見られるので、これらの拡張として、主にn=m>1のときにKを超球や多重円板の場合に取り、研究計画に従い、いくつかの例を構成することができた。これらを総合し、本質的な部分が解明されつつあるので、定理の形としまとめられるよう、現在鋭意検討中である。また、m=1,n>1,Ref,1mfが多重調和の時は、グラフGが多項式凸集合であるとのAlexanderの結果の関数環的な別証明を得たので、さらにこの拡張も考慮中である。超球Bで正則、Bで連続な関数族A(B)の2つの関数f,gによる零集合がBの境界に含まれるならば、A(B)の峯集合であるとの、Stoutの予想は、fに少し条件を付ければ、正しいことを示せた。以上の経過については、関数環研究集会で話した。得られた結果は次のとおりである。作用素環分野では、単純C^*-環の最小指数の乗法性の簡易な証明を与えた。これは、フォンノイマン因子環の最小指数の乗法性の証明としても有効である。後者の乗法性は、煩雑な手続きのもとで、その成立は確認されていたが、C^*-環の指数理論を適用することで、それが初等的に証明できることを示した。K-理論分野では、フレイムド多様体としての射影シムプレクティック群のコボルディズム類の非自明性を調べるため、そのフレイミングを考察する観点からその位相的実K群の環構造を決定した。
著者
伊藤 秀三 山本 進一 中西 こずえ
出版者
長崎大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

龍良山の照葉樹林は海抜120mから山頂(海抜560m)に及び、面積は約100haである。海抜350m以下はスダジイ/イスノキ林、上方はアカガシ林である。調査項目は次の通り。1)スダジイ/イスノキ林に面積4haの永久方形区を設定し、胸高直径5cm以上の木本の生育位置、種別、胸高直径の測定、2)頂上に達する全長940m、幅10mのベルトトランセクトを設定し上記と同様の測定、3)低地から山頂まで、林冠木から林床までの林冠ギャップを除いた群落組成の調査、4)林冠ギャップ部位の群落組成の調査、5)林冠ギャップ部位のコケ植物の調査、6)ギャップ部位における樹木実生の生長の測定。下記の結果を得た。1)林冠ギャップは低地のスダジイ/イスノキ林に集中し、ギャップの大きさは5〜20mで、5m四方のメッシュ総数1600個のうちギャップは274個で森林面積の17.1%に達した。2)胸高直径分布では、二山型(スダジイ)、逆J型(イスノキ、サカキ、ヤブツバキ等)、正規型(ウラジロガシ)があり、全生存木では逆J型であった。3)低地〜山頂の植生傾度において、高木、低木、草本個体直群すべてにおいて海抜350ー400mで急激な組成の交替があり、種類密度は不変化、種多様度は低下した。4)ギャップ部位と非ギャップ部位の林床植生の比較により、次のギャップ指標植物(木本)が明らかとなった(出現頻度の高い順に)。イイギリ、アカメガシワ、サルナシ、カラスザンショウ、ハゼノキ、カジノキ、オオクマヤナギ。またギャップ部位で実生密度が高くなる照葉樹林要素はスダジイとカクレミノである。5)ギャップ指標のコケ植物の上位5種は、ホソバオキナゴケ、カタシロゴケ、トサヒラゴケ、エダウロコゴケモドキ、ツクシナギモドキ。6)ギャップ部位における実生の直径と高さの相対生長関係では、生長係数が高い上位5種は次の通り。ウラギンツルグミ、オガタマノキ、カラスザンションウ、カジノキ、クロキ。
著者
石井 彰三 福田 昌宏 堀田 栄喜
出版者
東京工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

ピンチ形式のプラズマ発生法において、大強度軟X線源、軟X線レーザーへの応用のうえで優れた特徴のある炭素薄膜ライナー圧縮方式を提案し、その原理を実証した。まず、雪かきモデルに類似したシミュレーション法により薄膜の圧縮過程を定量的に検討し、理論的にも本方式は問題が無いことを明らかにした。次に、成膜法の最適化について高周波放電、交流あるいは直流アーク、グロー放電、パルス放電等の各種形式について試み、細い炭素棒をジュール加熱して行う真空蒸着を用いれば、一様でかつ電気抵抗の低い薄膜ができることを示した。しかし現段階では炭素薄膜の場合、成膜に時間がかかり過ぎること、プラズマの圧縮過程が一様でないことなど問題点も多く存在する。そこで炭素にこだわることなく、導電性物質を薄膜とする概念に拡張して研究を発展させた。電気抵抗を低くするには金属薄膜が優れていることから、膜形成が容易なアルミニウムに着目し、その薄膜ライナーと圧縮を検討した。成膜はタングステン・ヒータを用いたアルミ真空蒸着法が確実であり、しかも一様にできること、および蒸着源の部分を工夫すれば真空を破らずに連続運転も可能であることを示した。内径7cmのアクリル製放電容器の内壁へ電極間に幅4cmでつけた膜の厚さは、10〜数10オングストロームであった。これを容量4.4μFのコンデンサ電源で放電電流70KAで駆動した実験により、原理通りの圧縮を実現し、本研究の提案が正しいことを示した。プラズマの振る舞いは、軟X線計測、高速度カメラによる観測だけでなく、これまでライナー圧縮実験では行われたことのない磁気プローブによる磁界測定を実施した。実験で得た軟X線出力を検討するため、平均イオンモデルならびに混成原子モデルによりアルミニウムプラズマからの軟X線放射スペクトルを理論計算から求め、現段階では、内殻電子からの放射強度が強くないことを示した。
著者
深尾 正之 斉藤 愿治 小村 浩夫 神藤 正士
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

この研究は、通常の雪かきモデルの成立するピンチプラズマと異なり、高速電子成分を含む非平衡プラズマを生成することが目的である。その方法として、放電電圧印加後にガスを導入して点孤させる爆燃放電を採用した。通常のガスパフZピンチプラズマ型の構造を持つ放電電極を用い、電極間に並列に接続したインダクタンスに電流を流して、予め電極に電圧を印加した後に、ガスを導入することにより、爆燃モ-ドとした。これにより、通常のガスパフZピンチ放電との比較を行なうことができた。電源には、3.75μFの低インダクタンス高速キャパシタ-及びギャップスイッチを用い、20kVまで印加した。非平衡プラズマでは、数keVの電子を多数生成する必要があり、印加電圧を低く抑えた。X線発生量の時間依存計測は、表面障壁型ダイオ-ド(SBD)とアルミニウム・フィルタ-を組み合わせて行った。X線放出量が多く、SBD出力が飽和するのを避けるために、直径1mmのピンホ-ルで絞り、かつプラズマから80cmの距離をおいて測定した。これまで、X線収量の放電電圧依存性を測定してきた。従来型Zピンチプラズマでは、電圧の上昇とともに、X線量が急上昇するのに対し、爆燃放電では、X線発生量が充電電圧に余り依存しないという特徴のある依存性が明らかになったが、X線収量の絶対値は、同程度ないし、後者の方が少ないという結果しか得られていない。X線放出の空間分布は、ポラロイドフィルムを用いたピンホ-ルカメラで測定した。放電条件により、プラズマ及び電極から放出されることが判った。並行して、X線スペクトルの測定を目的とする、プロポ-ショナルガスカウンタを試作してきた。これまでに、^<55>Feからの5keV X線にたいしてFWHM15%程度の性能を得ているが、信頼度・再現性の改善がなお必要である。
著者
佐藤 修 大木 靖衛
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

1、新潟県下の降水の酸性物質の状況:新潟大学積雪地域災害研究センターで行った降水の化学分析結果、新潟県衛生公害研究所の発表した資料を整理し、酸性物質の降下状況を把握した。新潟県の山間部には3〜5g/m^2の硫酸イオンと1〜2gの硝酸イオンが降下している。硫酸イオンは冬の降雪期に多い特徴がある。雪の中の酸性物質は積雪期の温暖な日に流出する。2、沢水・湧水・河川水の変化:沢水・湧水の調査は花崗岩地帯で過去に分析結果のある丹沢湖の周辺で行った。現段階では、沢水・湧水に酸性降下物の影響は見られなかった。新潟県下の沢水の連続観測の機器は現在雪の下で、データ解析は今後のこととなる。河川の水の分析結果を、小林純が行った20年以上前の河川の分析データと比較した。分析誤差範囲内で両者は一致し、新潟県下の河川の流域では平均的な意味では、酸性降下物の影響で化学風化が活発になったとは見えない。3、土壌の酸性化調査:花崗岩地帯の土壌のpHは5〜6の範囲で普通の酸性の褐色森林土壌よりpHが高い。花崗岩地帯の崩壊地の土壌のpHが過去に測定された例は見あたらない。比較の対象がないので、酸性化したかどうかは今回の調査からは結論を出すことができなかった。4、まとめ:チェコ、ポーランド、ドイツでは酸性雨の影響で土壌が荒廃し、崩壊が起こっていると報告されているが、わが国では今回の調査ではその証拠はつかめなかった。おそらくわが国では影響が見られないのは、降水量が多いこと、地形が急峻で水が長時間とどまらないこと等が影響している。
著者
澤田 紘次
出版者
八戸工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、結露に関するアンケート調査、結露被害の実地調査、室内の温湿度の測定調査からなっている。第1章では、アンケート調査結果について報告した。公営集合住宅約1000戸を対象とし、回収率は61%である。調査した住棟は建設年次により、平面タイプ、断熱仕様が異なり、6種類に分類される。アンケート調査結果によると、押入に被害の多い平面タイプと壁に被害の多い断熱仕様の住棟があった。アンケート項目で、結露に関係が深いのは、建物の種別、住戸位置、家族数などである。使用暖房器具と結露との関係は明確ではなかった。結露で困っていることの内容の記述では、73%もの住戸が切々と訴えている。窓が凍って開かない、窓からの流下水で畳が濡れる(33%)、押入の湿気・カビ(15%)、壁のカビ(17%)などが多い。第2章では結露被害の実地調査結果について撮影した写真を中心にして報告した。被害を訴えている住戸では、いずれも黒いカビが発生しており、生活に支障をきたすものであった。調査した住戸に共通していることは、換気に対する意識の低さである。第3章では、室内の温湿度の測定結果について報告した。昭和63年1月から2月にかけて、6戸について各一週間測定した。6戸を通じて、室内が常識を越えた高湿度になっている例は無かった。窓上の壁・梁型部分が断熱されていないタイプの住戸の中で、結露・カビが発生している住戸と発生していない住戸があった。前者は、開放型ストーブを使っていた。室内の露点温度は他の住戸に比較して高くないが、室温が居間でも7〜15℃と低く、このことが結露の要因である。後者では、北和室の窓前にFF式ストーブを置き、襖・扉を全て開放して、北側の室温度を高く保ち、非暖房室となる場所を無くしていた。全体の調査を通じて、同種の住棟でも、住まい方により結露発生に差があることが分った。住まい方と結露との関係について分析を続けたい。
著者
小川 侃
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

今年度においては,前年度の成果を踏まえて,さらに諸科学のなかで機能している構造や機能の概念を探究した。1)諸科学に分化している構造理論を全体として可能にしている構造概念がどのような哲学的・存在論的意味をもつかを検討した。とくに構造主義的な方向の今世紀最大の言語学者,ロマン・ヤコブソンや,構造人類学者レヴィ・ストロースなどの言語学・民族学の領域での構造概念を取り上げ,さらにル-マンなどの新しい構造論的社会科学理論のうちの構造概念を批判的に洗いなおし,存在論的に構築しなおすことを試みた。とりわけ記号や構造の概念のもつ存在論的な基本的な意味を吟味した。これは,アリストテレス的な「質量と形式からの構成」という存在の見方が構造理論のなかでどこまで維持されえ,また解体されるべきかという問いにかかわったのである。2)次いで,構造の存在論にかかわる本研究は,さらに,政治体制一般についての研究に具体化の道を見出し,その手始めとして幕末における「後期水戸学」の大義名分論が構造論的な思想に近いことを発見した。3)最後に,初年度および2年度の研究の成果にもとづいて,構造論的存在論としての現象学の体系化を企てている。さしあたり部分と全体や,接近と遠隔,対峙性と背馳性などの構造論的な諸概念をそれらを可能にする「基底づけ」の概念とともに再構成している。
著者
原武 哲
出版者
福岡女学院短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

野田宇太郎文学資料館に所蔵されている野田宇太郎宛の諸家の書簡は二千通以上に及んでいるが、その写真撮影と複写の作業は終了し、目下その解読と注解を作業しているところである。野田宇太郎が「文芸」「芸林間歩」「文学散歩」などの高踏的な雑誌編集にたずさわっていたので、文学者からの雑誌の原稿執筆に対する応答、著書贈呈に対する返事、出版社紹介の依頼、文学碑建立の打ち合わせ、文学散歩に関するものなど、当時の出版事情や作品制作の過程が知られて、大層興味深い。特に今年度は昭和23年8月5日付から37年9月2日付までの9通の注解作業を終了し、「福岡女学院短期大学紀要」第30号に発表したところである。森茉莉は鴎外の長女として、文豪から溺愛を受け、童女のまま大人になった天衣無縫さを持っていた。野田宛の九通の茉莉書簡は彼女が文壇で注目を浴びる以前の鴎外の遺子としてのみ存在が認められていた頃のもので茉莉の素顔が垣間見られて面白い。「芸林間歩」に原稿執筆を依頼され、鴎外の回想を執筆した時の経緯が綴られている。弟類が「世界」(岩波書店)昭和28年2月号に「森家の兄弟」を発表したために、茉莉・杏奴と絶交状態になったことも伺われる。茉莉が処女出版「父の帽子」(筑紫書房、昭和32年2月)を刊行した時の事情なども伺える書簡もある。「父の死と母、その周囲」(「父の帽子」所収)を書いた時、「父の死にます時のようすや、母と祖母や伯父達との間のことを公平に」書いたと述べつつ、「どうしても母の方に同情が深くはなりますが」と心の揺れを見せている。「兄弟に友に」では弟の類と不律とのことを書いたと言いながら、雑誌「日本」創刊号の「兄弟に友に」には二人の弟のことは全く触れていない。類との不和を公表することへのためらいが感じられる。第二随筆集「靴の音」の「凱旋」の題のことや「文芸」に掲載された「或殺人」のことなど、茉莉の小説制作にかかわる裏面が表わされている。野田宇太郎宛書簡の解読作業はまだ一部しか進んでいないので逐次、解読・注解・解説をほどこし、野田と当時の文壇との関係や大きく昭和文学史の潮流を見きわめたい。今後も書簡の調査を続けていくつもりである。
著者
綾田 雅子
出版者
共立女子短期大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

ニット地の衣服について、設計の段階で素材の物性的要因を考慮したパターンを得ることを目的とし平成3年度に引き続きニット地の物性と着用シルエットとの関係を検討した。平成4年度は特に平編布の糸の太さと編目密度がニット地の物性に及ぼす影響について詳細に検討した。試料作製に用いた糸は、手編みおよび機械編み用として市販されている中からできるだけ一般的な糸を選択し、羊毛糸2種と木綿糸2種、さらに太さの異なる計8種の糸で家庭用編み機シルバーam・amSK581型を用いて編目密度4段階に変化させた20cm×20cmの正方形試料を編製した。これら29種の試料についてKES-FB計測システムのニット条件に従い、引っ張り、曲げ、せん断、圧縮特性および単位面積当たりの重量の14項目について力学量の測定し、糸の太さ、ループ長および編目密度との関係を検討した。さらに編布の基本力学特性を記述するための式を得るため重回帰分析を行った。得られた結果は次の通りである。1.本実験に用いた編み機では、糸の太さにかかわらず、編目ダイヤルの設定によってほぼ一定の編目密度が得られることがわかった。2.平編地は編目密度が小さくなるほど、また細い糸ほど伸び易く、せん断しやすく、曲げ軟らかくなり、せん断、曲げ特性共にヒステリシス幅は小さくなった。3.本実験に用いた試料の範囲内で糸の太さ、ループ長およwaleとcourseの編目密度をパラメータとしてかなりの精度で平編布の力学量を予測できることが示された。これまでの研究からニット地衣服の設計には風合いが大きな要因として関わっていることが分かってきた。今後は表面特性の計測を加え、川端、丹羽による風合いの変換式を用いて基本風合い値を求め、官能検査による主観評価値との関係を検討していく予定である。
著者
松下 恭之 水田 有彦
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

当科でおこなった骨結合型インプラントと天然歯との連結症例で破折したものを走査電顕にて観察を行ない、いずれも金属疲労が主因であることが明らかとなった。そこで未使用のインプラント体について繰り返し疲労試験を行ない、単体使用では疲労はおきない程度の強度を有していると考えられた。しかしながら天然歯と連結した場合には、天然歯への荷重がインプラントネック部での最大引張応力値の増加に関与していることが示唆された。またことにその支台となる天然歯の周囲骨レベルが減少することがインプラントネック部で引張応力の集中をまねき、破折することが示唆された。次に三次元有限要素法解析により、1-インプラントシステム(天然支台歯1本とインプラント1本からなる3ユニットブリッジ)では、天然歯とインプラントとはリジッドな連結をするのが最も骨内応力を緩和できることが示唆された。半固定性の連結ではアタッチメントの位置が近心でも遠心でも、またメール・フィメールの位置関係が変化しても、骨内応力に大きな違いはみられなかった。さらに2-インプラントシステム(天然支台歯2本とインプラント2本のブリッジ)ではインプラント同志を連結して、天然歯とはつながない、フリースタンディングの状態とすることが骨内応力の緩和、上部構造の長期安定にもっとも効果のあることが示唆された。
著者
新井 宏朋 中村 洋一 生地 新
出版者
山形大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

従来の成人病検診における眼底検査は働き盛りの脳卒中予知を主たる目的としていたが、高齢化社会においてはこれに加えて脳卒中による寝たきりや動脈硬化によるぼけ老人の予知が重要な課題となる。本研究では、まず最初に山形県F町における70〜75歳の在宅高齢者の眼底所見の有病率を検討した。Keith,Wagener分類O群は男39.3%、女39.8%、I群は男39.3%、女42.0%、IIa群は男18.9%、女12.7%、さらにK、WIIb群に相当する典型的な動脈硬化性網膜症が男2.5%、女5.5%に見られた。同時に実施したBenton視覚記銘検査との関連性を検討した結果、Keith,Wagener分類とBenton検査の正確数の間には統計的に有意の関連性は認められなかった。次に眼底所見を中心に血圧、心電図の循環器検査所見及びBenton検査の正確数、誤謬数等との関連について林の数量化III類を用いて検討した。第1軸は循環器所見の有無と解釈できたが、第2軸については解釈できなかった。また眼底所見はBenton検査の正確数、誤謬数と近接した関係は見られなかった。次いで、Y町で65〜74歳の在宅高齢者を対象に循環器検診5年後の日常生活動作、ぼけに関する症状等19項目の質問調査を実施した。Keith,Wagener分類と日常生活動作との関連では、全体的な傾向としてKeith、Wagener分類O,I群がIIa以上群に比較して良好な比率が高く複数の項目で有意差が認められた。ぼけに関する症状等については、各項目とも有意差は認められなかった。次に、この調査から精神科医のスクリーニングで痴呆の可能性が疑われた者(症例群と略)と対照群に柄沢式及び長谷川式簡易知能評価スケールを実施した。柄沢式では「ぼけあり)が症例群4.8%対照群0.01%であったが、長谷川式では症例群(平均26.3点、標準偏差6.4点)と対照群(28.0点、4.1点)に有意差は認めなかった。また両群の眼底K、WIIa以上出現率にも有意差を認めなかった。
著者
丸山 富雄 市毛 哲夫 日下 裕弘 ICHIGE Tetsuo
出版者
仙台大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

本研究は、わが国ではこれまで本格的な研究がなされてこなかった「スポーツと社会階層」の問題をとり上げ、統計的調査によって、一般成人の直接的・間接的なスポーツ参与と社会階層との関係を明らかにしようとしたものである。調査データは人口規模及び産業構造を参考に、東北地方を代表すると思われる宮城県内4市の選挙人名簿より郵送法によって得られた881(回収率35.4%)のサンプルを用いた。職業威信、学歴、所得、及び生活様式の社会的地位変数をクラスター分析した結果、調査対象者は上層及び下層と4つの様々なパターンをもつ中層の階層クラスターに分類できた。1.多様な運動やスポーツ活動のなかで、男性の手軽な体操や球技、ならびに女性のダンス系の運動では階層的な相違はあまりみられなかった。2.しかし、その他の運動やスポーツ、特に施設を利用する運動や野外スポーツ、競技的なスポーツの場合、階層による参与の違いは明らかであった。社会の上層及び将来上層に達するとみられる人々の参与率は高く、下層の成員は極端に低いという結果が得られた。3.また、間接的なスポーツ参与に関しては、一般的なスポーツ・ニュースやプロ野球では社会的な地位や社会階層による差はあまりなく、これらのスポーツ施設に関してはスポーツの大衆化を指摘しうると思われる。4.しかし、大相撲やゴルフ、プロレスのテレビ視聴では、一般に大相撲は高齢者、ゴルフは上層、プロレスは下層の人々がよくそのテレビを見るという傾向がみられ、これら種目の間接的参与と年齢や社会階層との関連性を指摘できた。
著者
稲垣 良典
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

さきに提出した研究実施計画にもとづいて次の通り研究課題に関して研究を行った。(1)哲学史における最も精密な形而上学的・神の存在論証であるといわれる『第一原理について』を大学院の演習において取りあげ、スコトゥスが認識の確実性、概念の明晰さ、言語の一義的な明確さに留意しつつ、形而上学的議論を進めていることを確認した。(2)同じく大学院の演習においてトマスの『有と本質について』を取り上げ、トマスにおいては事態そのものの知解をめざすことに重点がおかれ、確実性、明晰さ、一義性への留意はむしろ背後に退く傾向があることを確認した。このことはスコトゥスにおいて形而上学の学(scientia)的性格が確立されたことと関係がある。そしてスアレスを経て、近代のウォルフへと受けつがれる学としての形而上学の伝統はスコトゥスにおいて確立されたものであることが確認された。(3)最近刊行が開始されたヘンリクス・デ・ガンダヴォの批判版を入手して、スコトゥスが専らそれとの対決において自らの形而上学を構築したヘンリクスの基本思想の理解につとめた。またMediaeral Studies(1987ー88)に収載された14世紀の存在概念の一義性に関するテクストにもとづいて、スコトゥスが存在の一義性の立場を形成するに至る経緯をあきらかにしょうと試みた。しかし、この点に関する研究はまだ発表の段階に達してはいない。これらの研究を通じて、認識理論においてはオッカムにおいて決定的な転回がなされるのにたいして、形而上学においては決定的な転回はスコトゥスにおいて行われているとの見通しが確認されたと思う。
著者
山本 正治 渡辺 厳一 中平 浩人 遠藤 和男
出版者
新潟大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

胆道癌死亡率の高い下越地域の新潟市と死亡率の低い上越地域の上越市で採取した水道水の突然変異原性の差を年間を通して比較検討を行った。水道水の採取は両市の各1給水栓にて行い、夜7時に勢い良く約10秒間排水した後、1日10lずつ採取し、各1サンプルとした。採水日は毎月第4週の水、木、金曜日の3日間とし、これを1年間実施した。更に溶出溶液を濃縮乾固後、DMSOに溶解して突然変異原性試験に供した。突然変異原性試験はAmes法(TA100,TA98)のプレ・インキュベ-ト法を用い、代謝活性化は実施しなかった。これまでに、3〜7月の試料と8〜10月の試料について分析を行った。その結果、フレ-ムシフト型のTA98株に対する突然変異原活性はほとんど試料で確認されなかった。一方、塩基対置換型のTA100株に対しては、新潟市の全試料が1l当たりの復帰コロニ-数が自然復帰コロニ-数の2倍を越えたのに対し、上越市では3月を除くほとんどの試料で2倍に達しなかった。新潟市と上越市の水道水1l当たりの復帰コロニ-数の平均は3月がそれぞれ392【plus-minus】75、253【plus-minus】91、7月が253【plus-minus】50、71【plus-minus】29といずれも新潟市の方が高い結果が得られた。また、その差は3月より7月の方が若干大きくなった。ただし、7月の上越市の試料は自然復帰コロニ-数の2倍に達しなかった。また、すべての月で突然変異原活性が確認された新潟市の水道水の変異原活性の大きさは3月から7月まで暖かくなるにつれて除々に低下していく胆道癌の死亡が多い新潟市の水道水の突然変異原性が、死亡の少ない上越市の突然変異原性より強かった。そこで、原因物質の同定など、胆道癌発生との関わりを、より分析的方法で進める必要がある。
著者
樋渡 保秋 高須 昌子
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1.ガラス転移点近傍のダイナミックスの異常性 液体の密度の揺らぎの緩和時間はガラス転移点に近づくにつれて非常に長くなる。このような緩和時間の異常性(dynamical slowing down)にともなって、転移点近傍で動的な物性に異常が現れる。我々は簡単な二元合金モデルを用いて長時間分子動力学シミュレ-ションを行う事から過冷液体のslow dynamicsや動的構造およびガラス転移のミクロな機構について考察した。主な結果は、(1)高過冷液体では密度緩和(自己相関関数)がいわゆる引き延ばされた指数関数となる。(2)原子の自己拡散は主としてジャンプ運動による。これらは主に、単原子のジャンプ運動によるものではなく数個ないしは数十個の近傍の原子が連なって協力的に起こる。(3)ノンガウシアンパラメ-タの極大値が通常の液体のそれに比して異常に大きく大きくなる。このことからも原子拡散が単純なブラン運動から予測されるものと大きく異なることが分かる。(4)ノンガウシアンパラメ-タの極大値とその時の時間の値の積とからガラス転移点を見積もる事が出来る。この方法の最大の長所は転移点が中間時間領域の情報から求められることにある。従って、従来の拡散係数などの温度依存性から求める方法では避けられない困難な問題(拡散係数を求めるには長時間の情報を必要とする)が回避できる。(5)(1)で述べた指数の値は温度(密度)の値によって単調に変化する。従って、これはモ-ド結合理論の結果と異なる。2.ガラス転移点近傍のslow dynamicsの理論 トラッピング拡散モデルを用いて過冷液体中の原子拡散の理論的考察を行った。3.過冷液体の2体分布関数の理論 2体分布関数の積分方程式の近似精度をあげることから、液体はもとより過冷液体、ガラス状態の熱力学的諸性質が従来の近似理供よりもはるかに高い精度での計算が可能となった。これを用いて近距離相互作用(斥力)の型と二成分系の相分離傾向の関係について興味ある結果を得た。
著者
西沢 理 菅谷 公男 能登 宏光
出版者
秋田大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

脊髄損傷群での膀胱重量と体重の変動についてみると,24頭の対象として,生後10週に胸腰椎移行部での脊髄損傷を作成し,その後1週毎に,4週間の生後14週までの11,12,13,14週で,各々,5,6,9,4頭において測定した膀胱重量と体重は,それぞれ153.7±51.7,241.2±112.7,176.6±136.6,544.0±213.3mgと133.3±7.5,140.0±8.2,158.9±16.6,125.0±16.6gであり,膀胱重量の増加は著明であった。コントロ-ル群での膀胱重量と体重の変動についてみると,50頭を対象として,10週から,1週毎に,4週間の14週まで各10頭において測定した膀胱重量と体重はそれぞれ,60.6±5.6,43.9±6.2,42.2±6.0,41.5±6.5,40.5±5.9mgと160.0±4.5,162.0±7.5,166.0±8.0,161.0±9.4,171.0±7.0gであり,膀胱重量には変化がなかった。膀胱NGFの変動についてみると,コントロ-ル群では生後11,12,13,14週で,それぞれ,326.9,478.5,85.5,65.7ng/g組織重量であり,脊髄損傷群では脊髄損傷作成後1,2,3,4週で,それぞれ,292.5,392.4,280.3,708.2ng/g組織重量であった。脊損後には脊髄ショックに続発した尿閉となるが,排尿が自立する1週間後以降から膀胱からのNGFが増加することを予期したが,コントロ-ル群と比較して,脊損群のNGF値に変化が生じたと断定することはできなかった。膀胱重量は尿道閉塞ラットと同様に脊損後に増加したが,膀胱NGFには変化がないことから,脊損と尿道閉塞とでは異なる機序で,膀胱重量の増加が起こるものと思われた。脊損時には,損傷部位のレベルにより,仙髄排尿反射中枢の活動が亢進する場合と低下する場合があり,胸腰椎移行部での脊髄横断では仙髄排尿中枢自体が損傷を受け,その活動性が低下していた可能性も高い。
著者
祖父江 元 満間 照典 木全 弘治 寺尾 心一 熊澤 和彦
出版者
愛知医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

平成2,3年度に引き続き末梢神経障害の変性再生過程における神経栄養因子およびその関連分子の発現動態を検討した。本研究により以下のような知見が明らかとなった。1)培養シュワン細胞にCAMPを作用させるとNGFmRNAは増加、LNGFRmRNA,BDNFmRNAは減少の方向に変化した。さらにlaminin B_1、B_2mRNAは増加に、typeI,IIIcollagenmRNAは減少する方向に変動した。これらはシュワン細胞のこれらの分子の産生調節にCAMPが重要であることを示している。2)ヒトの剖検例についてLNGFR,trk,trkBの末梢神経系における発現分布を検討したところ、LNGFRmRNAは広範な発現がみられたがtrkは交感神経、感覚神経細胞体に限局して発現されていた。trkBについては脊髄、末梢神経にも発現がみられた。3)ヒトおよびラットの末梢神経についてLNGERとtrKの発現の加齢変化を検討したが、高齢に至ってもこれらの発現はよく維持されていた。4)培養交感神経感覚神経に対するNGPの作用を検討したがこの両者でneuriteの分岐に対する反応性およびその加齢変化が異なることが明らかとなった。以上の所見は末梢神経障害におけるこれらの分子の発現動態を明らかにするものと考えられるが、今後更にこれらの分子の発現調節に係わる因子の解明や実際のヒト末梢神経障害における役割などについて明らかにして行く必要があると考える。