著者
向殿 政男
出版者
明治大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

“あいまい"なデ-タは、実社会では避けることができない,しかも人間にとって極めて本質的であり重要なものである。本研究では,あいまい(ファジィ)デ-タを処理するための研究に関して,次のような幾つかの研究成果を挙げることができた。(1)ファジィProloキ“PROFIL"によるオンライン文字認識システムの製作本研究で開発したファジィPrologのシステムであるPROFILを,オンライン文字認識システムの記述に用い,本システムがあいまいさの多い文字(手書き)に対しても,有動に認識できることを示した。(2)フィジィ・インタ-バル論理の提案あいまい情報の処理のための基礎理論であるフィジィ論理の一つとして,従来の無限多値論理と、L.A Fadehの提案しているファジィ論理との中間に位置するファジィ・インタ-バル論理を提案し,その基本的性質を明らかにした。この新しい論理は本質的には,真,偽,未知,矛盾の4値論理に等しいことを明らかにした。(3)修正原理に基づくファジィ推論法の提案あいまいな前提からとも,もっともらしい結論を導しファジィ推論法には、これまで多くの考え方が提案それている。本研究では、修正原理に基づく新しいファジィ推論法を提案し、従来の方法の欠点を補なうことを可能にしていることを示している。この新しいファジィ推論法により、あいまいなデ-タ及び、あいまいな要求に対しても文献検索ができる『ファジィ検索』法の基本が構成できると期待されている。
著者
小佐古 敏荘 四方 隆史 志田 孝二
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本研究は100MeV以上の電子、陽子、重イオンの高エネルギ-加速器からの放射線遮蔽をリ-ス項、遮蔽特性の観点から、数値計算及び実験の双方から系統的に研究を進めようとするものである。研究は以下の3項目に関して進められ検討された。(1)高エネルギ-放射線種々の物質の遮蔽特性の数値計算による検討遮蔽に用いられる各種物質の基本的な遮蔽減衰特性を求めるために、1次元S_N輸送計算コ-ドANISNを用いて解析計算をおこなった。使用した中性子断面積はDLCー87/HILOで、中性子エネルギ-は400MeVからThermalまでである。散乱ルジャンドル展開項はP_3まで、S_Nの角度分点はS_<16>である。入射中性子は単エネルギ-のものを考え、3m厚の無限平板体系に垂直入射の条件で入射させた。鉛、鉄、重コンクリ-ト、コンクリ-ト、大理石、パラフィン、水などについての計算を行い、線量当量の空間分布図の形で結果を得た。(2)大型加速器施設(理化学研究所リングサイクロトロン)における実験重イオンビ-ムによる放射線の発生測定のためには、ガンマ線用に電離箱を、中性子用に放射化箔(C、Al、Au、Ag、Ni、In等)および減速材型中性子検出器を用い、生成量及び角度分布測定を試みた。タ-ゲット条件としては、Nイオンビ-ムを核子当り135HeVに加速したものを鉄の厚いタ-ゲットに入射したものを設定した。遮蔽デ-タとしては、主として減速材型検出器を用いて、コンクリ-ト壁の透過デ-タ、迷路部のストリ-ミングデ-タを中心に測定した。(3)高エネルギ-放射線の発生項の評価上記条件下での高エネルギ-粒子発生についてはモンテカルロ計算コ-ドNMTCにより評価し、総合的な形で、実験値との差異、計算上の問題点を検討した。
著者
小笠原 道雄 国安 愛子 関谷 融
出版者
広島大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1988

本研究は、フレーベルの晩年の主著でもあり、極めて独創性の強い家庭育児書でもある『母の歌と愛撫の歌』(1844年)の曲、つまり、ローベルト・コール(Robert Kohl,1813〜81)作曲によるオリジナル(原曲)版「遊戯の歌」50曲の成立を考察し、それとの関係でa)フランス版(1861)b)イギリス版(1895)c)アメリカ版(1906)d)日本版(1934,1981)の比較考察をおこない、本書の特色を明らかにすることにある。その際、作曲者の略歴をみる必要がある。作曲者ローベルト・コールは当時カイルハウ学園の教師としてフレーベルの協力 者であった。彼はアルテンブルクの聖歌隊指揮者の息子として生まれ、1834年神学を学ぶためライプチヒ大学に入学、そのかたわら熱心に音楽を研究した。その後1838年牧師となる試験に合格の後、1839年から45年までカイルハウ学園で宗教教授および音楽の教師として活動し、学園の生徒たちの人望をえた。この略歴からもうかがえるように、コールは専門の作曲家ではなく、『母の歌と愛撫の歌』を「きわめて道楽趣味的(dilettantische)に作曲した」ようである。(参照F・Seidel編『母の歌と愛撫の歌』1883年、5版、S.208)。絵画家のウンゲルと共に学園の教師達が共に協力して本書を作成した点は、高く評価されるが、「曲」そのものについての評価については問題なしとはしない。フレーベルの希望でもあったが、メロディーは子ども達が「歌うための歌」としての性格を堅持している。従って、本書が各国版として普及する際、自由に編曲され(むしろその国独自に、子供の活動をうながすものとして)、コールの原曲とは全く無関係に改編されることになった。換言すれば、コールが専門の作曲家でなかったが故に、本書は各国版において、とりわけ1860〜80年代にかけて、各国の「子どものうた」(Kinderlied)の影響を受け、編曲されることになった。
著者
山本 里見 僧理 栄司
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

セルローズファイバーの壁への適正挿入法の検討(通気層確保の必要性)について検討した.同一寸法の実験棟2棟(床面積2坪)をセルローズファイバーで断熱施工し,一方に壁内通気層を設け,他方に通気層を設けない構造とした.室内は7時から22時まで室温22℃,相対湿度80%とした.その結果次の点が明らかになった.1)壁面内の断熱材の温度特性は,両棟でほとんど違いが見られず,断熱特性については通気層の影響は少ないことがわかった.2)通気層の影響は湿度特性に表れ,通気層がないと壁体内の絶対湿度は,屋外側と室内側で絶対湿度に大きな差が生じ,屋外側では結露に結びつく可能性のある状態になりうることがわかった.それに対して通気層を設けると,壁体内の湿度は適正に外部に放出され,断熱材の室内側も屋外側もほぼ同じ状態となることが分かった.3)断熱材の水分含水率を測定すると通気層がないほうが約2割ほど高くなった.4)通気層は小屋裏の温湿度特性の改善にも効果的であることがわかった.また,セルローズファイバーの透湿特性を調査するための室内実験を実施した.断熱材によって仕切られた実験箱の一方に乾燥空気を,他方に水蒸気圧一定の湿潤空気を流すことによって,境界壁に置かれた断熱材料の透湿係数を測定した.断熱材料には,グラスウ-ル(GW)とセルローズファイバー(CF)を用いて比較した.検討の結果,CFの透過水蒸気量は水蒸気圧差に比例し,得られた透湿係数は1.7〜1.9となり木繊維板などの値に近い.一方,GWではCFと異なる挙動が見られた.壁内での断熱材両側の水蒸気圧差を推定し,そこでの透過水蒸気量を比較するとCFがGWより大きいのと判断できた.また,CWは実験前後で材料自体に重量変化はなかったのに対し,CFは3%〜6%の重量増加が見られ,CFの吸湿性の確認ができた.
著者
小川 陽一
出版者
東北大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

日本国内に現存する日用類書の調査を行ない、当該研究に役立ちそうな日用類書を中心に、写真版等による収集を行った。それらの収集資料によって、日用類書そのものの内容・性格の調査・分析を行った。その結果、これらの明代日用類書が、明代社会における広範な皆層の人びとの日常生活の具体的な面を、即物的に反映しているものであるが知られた。これらをふまえて、明清小説-『金瓶梅』『酲世姻縁伝』『紅桜夢』などに描かれた日常生活の場面の現解や解釈を深めることができた。その結果、これらの小説が深く広く明清の人々の日常生活に立脚して成立していることが窺われるに至った。このようにとらえると、明清小説が日常生活を反映した今日的小説のイメ-ジを与えるが、実際には、因果応報や輪廻転生の物語構造や占メの充満が見られて、かなり特異である。小説のこのような状況もまた日用類書に具体的かつ濃厚に見られるもので、その点でも両者は共通した性格を示す。このことによって、明代・清初の人々の生活内容、現実の質が推測され、今日とはかなり異質であったことが知られる。明清小説はそのような社会に密着したという意味では「日常的」「現実的」なのだが、今日的小説とはかなり異質であると把握すべきであろう-という見通しをもつに至った。
著者
大塚 浩司 後藤 幸正
出版者
東北学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

X線造影撮影法を用いて、コンクリートのフラクチャープロセスゾーンを検出し、その性状を明らかにすることを目的とする研究を行った結果、研究の期間(平成4年度〜平成5年度まで)に得られた成果の概要は次の通りである。(1)本研究によって得られた、X線造影撮影法はコンクリート中に発生する微細なひび割れ群からなるフラクチャープロセスゾーンを非破壊的に検出するのに有効な手法であることが明らかとなった。(2)CT試験(コンパクトテンション試験)供試体を用い、供試体の寸法を同一とし、コンクリートの粗骨材の最大寸法を4種類に変えた場合のフラクチャープロセスゾーンの検出結果を比較したところ、微細ひび割れ群からなるそのフラクチャープロセスゾーンの性状は粗骨材の最大寸法に極めて大きく関係しており、特にその幅(破壊進行領域と直角方向)は粗骨材の最大寸法が増大するほど大きくなる傾向があることが明らかとなった。その最大幅は、粗骨材最大寸法が5mmの場合はその2.5倍程度であり、微細ひび割れの周辺の雲状の部分も含めると4.3倍程度であった。(3)荷重-開口変位曲線下の面積から求められる、破壊に使用されたエネルギーを破壊領域の面積で除した、破壊エネルギーGFは粗骨材の最大寸法が増大するにつれて大きくなる傾向がみられた。一方、破壊に使用されたエネルギーを破壊領域の体積で除した、破壊エネルギーGWは粗骨材の最大寸法に関わらずほぼ同様な値となる傾向が見られた。(4)粗骨材として河川砂利を用いたコンクリートの場合のフラクチャープロセスゾーンの幅は砕石を用いた場合のそれよりもやや広くなる傾向が見られた。
著者
小塩 トシ子
出版者
フエリス女学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

1)これまで数年にわたって本研究者は、エリザベス朝英国の一般文化に照らして、バラッドとくに"broadside ballad"とシエイクスピア劇の関係をみてきたが、昭和61年度は、"traditional ballad"がシエイクスピアの悲劇、なかでも『リア王』にどのように取り上げられたかを調べ、劇構成の中での位置づけと意味づけを行なった(昨年度末添付の紀要論文参照)。2)昭和61年4月西独ベルリンにおける第三回世界シエイクスピア会議(World Shakespeare Congress)に、発題者として参加、シエイクスピアの日本的受容の現況につき、『リア王』を中心に論文を提出した(昨年度報告書に添付ずみ)。そこでとり上げた黒沢明監督の映画『乱』と『リア王』をめぐって、原作の翻案と解釈の問題が、トロント大学ホーニガー教授、リバプール大アン・トムプソン女史、ケニス・ミユア教授らによって、受けとめられ、討論も実りの多いものであった。3)もうひとつ当初の研究目標であったシエイクスピアの「詩作品」におけるネオプラトニズムの要素と音楽的秩序観については、詩作品「不死鳥と,雉子鳩をとり上げて論じた(フエリス女学院大学紀要22号、添付論文参照)。この作品の音楽的構成と内容に加えて、じっさいに作曲された音楽(1984年発表、ジョン・ジュベール作曲の室内楽)についても言及・紹介した。
著者
岸 義樹
出版者
茨城大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

人工物の概念形成においては,現実に生ずる種々の要求に応ずるために,単一のタイプによった物・事象の処理の視点ではなく,多様なタイプの視点が必要とされている.本研究では,視点を表現するための方法論について考察し,(1)人手によって属性を数え上げることで構築される知識を主体とした記号視点構成法を示した.この方法と構文解析ツールによって,自然言語で表現した文章からWWW上の知識ベースを構築し,異なった視点で記述された知識の広範囲な利用可能性を示した.更に,非記号的な状態で視点を表す方法として,(2)1/0のシーケンスに遺伝的アルゴリズムとの解釈文法を適用して,述語やプログラムを獲得するbit視点構成法,(3)NNによって多くの事例から暗黙的にネットワークの重みと連結状態を構築し,自己収束的な問題解決を図る状態視点構成法の基本手法を明らかにした.前者は状態を解釈する文法や規則を与えることができるが,後者はネットワークの状態から明示的な意味を解釈することは困難である.この結果,各々の視点は,マクロ的処理,ミクロ的処理,直観的処理に適していることも明らかになった.単一視点型システムにおけるシステムの完全性確保には,周到な準備と膨大なデバッグ作業が必要となるため,用意された,あるいは獲得された具体的な視点間において,メッセージ交換や交渉などを介し,協調的な視点管理による概念形成が有効である.この協調的な視点管理手法をエージェントに基づいて考察し,対象に関する部分的に不確定性を有する知識・データベースに関して,エージェント間の交渉によって不確定性を除去して,知識・データベースに基づいた正当な協調動作を実現するエージェントシステムを構築し,2次元機構図面の理解と動作シミュレーションでシステムの機能を例証した.
著者
秋田谷 英次 白岩 孝行 成瀬 廉二
出版者
北海道大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

平成6、7の2年間で札幌市内の雪氷路面の調査を実施し、目視による新たな路面雪氷分類を作成した。これはスタッドレスタイヤと凍結防止剤の普及に伴って頻繁に発生する様になった路面状態に対応した分類である(つるつる路面に主眼)。路面状態は積雪量・気温の気象要素と交通量、及び道路の維持管理作業によって常に変化する。2冬期の観測結果から路面状況を定量化し気象要因と比較した。その結果、車の走行にとって問題となる「光る(すべる)路面」と「こぶ氷」の発生動態が解明された。この結果は、最悪な雪氷路面が発生する前に的確な維持管理作業を開始する指針となるものである。表層雪崩の原因である弱層の調査を本州の多雪山岳域まで広げた。放射冷却に起因する「表層しもざらめ雪」と「表面霜」からなる弱層は北海道以外でも表層雪崩の大きな原因となることが明らかとなった。雪崩災害を防ぐためには登山者・スキーヤへの啓蒙が重要である。普及活動として例えば、平成8年度全国山岳遭難対策協議会(文部省、岐阜県、警察庁等の主催)に招かれ講演した。平成7年は12月末から北海道では近年にない豪雪となり、やがて本州も豪雪に見舞われた。札幌圏ではこれまでの道路管理システムでは対応できず、あらゆる交通網は大混乱を引き起こした。大都市では、これまでのハード中心の対策には限界があり、新たな交通規制、きめ細かな情報公開、住民、ユーザーと行政との責任分担などソフト面での対応が不可欠な事が明らかとなった。10年以上にわたり豪雪がなかったため、住民、行政、マスコミとあらゆる機関の自然に対する危機意識が低下したこと、地方、国などの横の連携が不十分な事も災害要因となった。
著者
八木 厚志 都田 艶子 長渕 裕 毛利 政行 斉藤 誠慈 大中 幸三郎
出版者
大阪大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

準線形放物型編微分方程式の安定性を調べる問題を,適当な関数空間における時間変数についての準線形常微分方程式の安定性を調べる問題と定式化し,次にこの常微分方程式に定常解が存在したとしてそのまわりで方程式を線形化してそれに放物型抽象方程式の理論を適用することにより定常解の漸近安定性結果を示した.すなわち,関数空間において解析半群の生成作用素A(u)を係数作用素とし,u=u(t)を未知関数とする準線形常微分方程式du/dt+Au(u)u=f(u),0<t<∞,を考え,それの一つの定常解A(u_0)u_0=f(u_0)を考えた.次に,方程式をu_0のまわりで線形化dv/dt+A(u_0)v+A(u_0)(v,u_0)-f_u(u_0)v=g(t),0<t<∞,し,このときに現れる線形化作用素A_0=A(u_0)+A_u(u_0)(・,u_0)-f_u(u_0)に着目してこの作用素がスペクトル条件{λ∈C;Reλ【greater than or equal】8}⊃σ(A_0),δ>0,をみたせば線形化方程式の基本解V(t,s),0【less than or equal】s【less than or equal】t<∞,は指数関数を用いて評価できることを示した.さらに,公式v(t)=V(t,0)v_0+∫_0^tV(t,s)g(s)dsを用いてu_0の近傍からでる解はすべて時間t→∞と共にu_0に漸近することを示した,併せてその差は時間と共に指数関数的に減衰することも示した.本研究の以上の成果により,準線形放物型方程式に対する定常解の安定性問題はその定常解の線形化作用素がスペクトル条件をみたすかどうかを調べる問題に帰着されることが一般的な枠組みの中で示されたことになる.本研究結果の応用に際しては,具体的な方程式に対してスペクトル条件がいつ成り立つかを調べる問題が生ずる.これを確かめるための一般的な判定条件は,本研究では得ることができなかった.そこで,いくつかの例について数値的にこれを確かめる試みを行い計算データを集めた.このデータから,便利な判定条件を探すのが今後の課題である.
著者
赤坂 信
出版者
千葉大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

初年度は高垣(クネ)に関する一般的知見を得るために、北海道、山形県、長野県、島根県の事例を中心に現地踏査と文献収集をおこなった。次年度は関東地方、とくに千葉県北西部に位置する江戸川低地に分布するクネについて調査を実施した。松戸市北西部から流山市南部につづく江戸川低地には、農地(畑と水田)がひろがり、微高地に立地する農家が点在している。ほぼ矩形の農家の敷地のまわりに巡らされたクネと呼ばれる刈込まれた高い生垣(高さ4.5〜6m)がみられる。今回対象地とした南北2km東西1kmの範囲では約60か所(クネの跡が認められるものも含めて)のクネが分布していることがわかった。クネを構成している樹種は、江戸川に近い方と遠い方で異なることや南向きと北向きで異なる傾向がみられた。モチノキは至る所で用いられているが、ツバキも多用されている。イヌマキは寒さと乾燥に弱いため、北部や江戸川に近い方にはみられない。全方位ともすべてツバキというクネもあるが、方位によって樹種をかえているものがほとんどである。南側にモチノキ、北側にツバキあるいはケヤキ、そして枯れあがった部分の下にイヌマキを用いているものがみられる。農家は戦後に入植したところもあるが、古いところで150年から500年前からの入植という。クネの手入れは自分でやるところと植木職に委託するところがある。年1回の手入れ(刈込み)で植木職10人手間(1万6千円1人)というコストである。高い位置での作業なので、職人も若いもののなり手がいないということである。後継者の不足は同じような理由で島根県出雲地方でも同様であった。
著者
丸山 茂徳
出版者
富山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

最終年度である本年度はこの2年間の研究成果をまとめ公表することを目的とした。高圧型変成相系列の標準となるフランシスカン層群の研究はJournal of Petrologyに印刷された。フランシスカン層群のテクトニクスはTectonophysics誌に、研究のまとめは月刊地球にそれぞれ印刷された。この2年間続けてきたカナダバンクーバー島の低圧型変成相系列の研究と中圧型変成相系列をまとめて、低温の変成作用一般を論じ、"Low-Temperature Metamorphism and Related Tectonics"と題してケンブリッジ大学出版会からB5判約450ページの専門書を出版する契約を結び、アメリカ人研究者2名と共同して第1稿の約2/3を仕上げたところである。
著者
上田 直行 高木 俊明 津田 英照 無敵 剛介
出版者
久留米大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1986

術中電気メスが使用されると, 心電計や脳波形は強力な電磁障害を受けて使用できなくなる. このように現在一般に不可能とされている電気メス使用中の心電図や脳波測定を実現するため, すでに基本開発されている光多重生体計測システムの実用化と, これにより得られた生体情報をコンピューター室まで伝送し, 処理するために光ファイバーを用いた手術室内光伝送システムの実用化を目的として試作・検討を行った.光多重生体計測システムは電池駆動のトランスミッターにより心電図, 脳波2チャンネル, 血圧の電気信号を多重化して光信号に変換した後, 光ファイバーを通して伝送し, 受信機(モニター本体)で信号再生するものである. スペクトラムアナライザーを用いた電気メスノイズの解析の結果, 電磁波ノイズは減衰が大きいが伝導ノイズは減衰が小さく数Hz〜数百Hzのスペクトルを持つことが確認され, システム全体の耐ノイズ性を向上する上で問題となるのは手術室内に設置される光多重生体計測システムの受信部と光伝送システムの入出力インターフェース部の伝導ノイズであることなどが分った. 以上の結果を考慮して伝送距離50m/時分割方式4チャンネル(心電図・脳波2チャンネル・血圧)の光伝送システムを試作し検討した.以上の研究により従来不可能とされていた電気メス使用中の術中心電図や脳波を測定し, 伝送, 処理することが可能になった. さらに光伝送方式では患者に接続されるトランスミッターとモニター本体(受信部), モニター本体とコンピューター間が光ファイバーで完全に電気的に絶縁されるため最も重要なミクロショックや熱傷事故に対する安全性の点でも理想的であり, 耐ノイズ性と同時に高い安全性を実現できる点が本研究の特長である.
著者
羽倉 弘人 小泉 俊雄
出版者
千葉工業大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

1. 簡易空中写真測量法をを利用した風の観測システムの開発現地に於て地上付近の風の流れを3次元的に捉えるシステムとして簡易的な空中写真測量を用いて測定するシステムを開発した。このシステムは、トレ-サ-として放流した風船を2個の35ミリカメラによりステレオ撮影し、その流跡線を解析するものである。撮影装置を搭載するプラットホ-ムとして、カイト気球を用いて空中より写真撮影する方法と鉄塔を用いて斜め空中写真を撮影する方法の二つの方法を開発した。2. 風の流れの流跡線測定と解析上記の観測システムを用いて、JR京葉線新習志野駅前の千葉工業大学芝園キャンパスに於て、建物周辺気流の観測と平地における気流の観測を行った。その結果、建物付近の剥離流の存在などの気流の様子を自然風観測のデ-タとして確認した。3. 風の鉛直分布特性と地表面粗度との関係について。海岸都市部に位置するJR京葉線新習志野駅前の千葉工業大学芝園校地に於て、カイト気球を用いて高さ約400mまでの風の観測を行った。今回の観測では予定していた各方位の風向の風や、強風時の風を観測することが出来なかった事、また地表粗度の抽出に時間がかかりすぎ十分解析する事ができなかったが、粗度の効果は風速の違いによりその効果が異なるなどの結果が得られ、今後の問題点として残された。4. 山地の風の観測と解析富津市明鐘周辺に観測点を27点選定し、地上の風向、風速の現地観測を行った。そしてそのデ-タを用いて風に及ぼす地形の影響の様子を解析した。また、2次元の三角形地形模型を用いた風洞実験を行い、風に影響を及ぼすと考えられる主要な地形因子についてその効果を検討した。
著者
河野 徹
出版者
法政大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1990

第一論文「中・近世英文学にみるユダヤ人像(1066-1600)」(『法大教養部紀要』第81号)では、まず序章で反ユダヤ主義の神学的基盤に探りを入れました。初期教会の教父らがパウロの思想をどう恣意的に変形し、その変形された教義の不可欠な一部として、反ユダヤ主義がどう中世イギリス社会に浸透したか、その過程を宗教史的、経済史的に辿りました。当時の宗教劇、とりわけコーパス・クリスティ祝祭劇に接して、その放埒なユダヤ人憎悪に衝撃を受けました、チョーサー作『カンタベリー物語』中の「女子修道院長の話」の解釈をめぐって、内外の学者たちにユダヤ史への配慮が欠けていることを確認しました。シェイクスピア作『ヴェニスの商人』の解釈に関しても同様です。しかしシェイクスピアが描いた半悪魔的シャイロック像と、現代イギリスのユダヤ系劇作家アーノルド・ウェスカーが描いた自由人的シャイロック像を比べるとき、ウェスカーは、主人公の半悪魔性を剥落させることで、情動のダイナミズムひいては劇的効果をも低下させてしまいました。両極端でないユダヤ人の実像に迫り得た作品はあるのだろうか--この問いに答えようとする試みが『法大教養部紀要』第85号に掲載された第二論文「近世英文学にみるユダヤ人像」です。ユダヤ人のイギリス再入植がその緒についた1655年以降の歴史を辿った後、スコット作『アイヴァンホウ』中のレベッカとアイザック、ディケンズ作『オリヴァー・トウィスト』中のフェイギン、ジョージ・エリオット作『ダニエル・デロンダ』中の主人公はじめ他のユダヤ人群像を分析しました。結論は、やはりどの登場人物も「神話」か「反神話」に属するということです。未完の第三論文では、現代英文学を対象に同様のリサーチを行い、さらに「アメリカ文学におけるユダヤ人像」の研究を続行する所存です。
著者
金古 喜代治 大山 龍一郎
出版者
九州東海大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

平成5年と平成6年度の2ヶ年間において,6.6kV級の高圧CVケーブルの絶縁劣化診断エキスパートシステムの構築とシステムの実用化に関して研究を行った。本システムは,メインプログラムがC言語で記述され,推論部分はAI用のコンパイラ言語OPS83の後ろ向き推論を採用し,絶縁特性値による推論過程にはファジィ推論を用いている。当初は停電試験による絶縁特性値を用いて絶縁診断を実行するプロトタイプのエキスパートシステムを構築して,専門家による絶縁診断結果に対してかなり良好な診断が可能であった。しかしながら,停電試験を実施するには長時間を要し,その間は系統を停止する必要があることと,絶縁特性値のみで劣化診断を行うということはトレンド管理の面から好ましいことではない。そこで,この欠点を補うために劣化状態の目視観察についての知識ベースを専門家からヒアリングを行って確立し,診断精度を向上させた。また,活線状態でシステムが応用できるように,活線絶縁抵抗値と活線シース絶縁抵抗値により絶縁診断を実行できるようにシステムのプログラムを変更した。ケーブルの製造形式や布設条件,布設年数によっても絶縁の劣化状態が異なるために,これらの劣化基準を考慮してシステムをこうちくした。その結果,本エキスパートシステムを用いて絶縁診断結果は,専門家により判定した診断に比較して84%の確度で一致するというシステム評価結果を得ることができた。さらに,測定値を入力してシステムを稼働させるのではなく,自動的に常時診断とトレンド管理を可能にするために,(株)フジクラの好意により同社製の活線絶縁診断装置にGP-IBケーブルを介してデータを自動入力できるように,エキスパートシステムを改良した。このように,実用化したシステムを実系統において確認するために,ある工場に布設されている6系統の稼働ケーブルを使用して実用化試験を実施して完成させた。
著者
井上 英夫
出版者
金沢大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

6年度は、政治参加の実態について、主として東京の参政権保障連絡会(準)のメンバーを中心に調査した。その結果は、参政権保障連絡会ニュースにまとめてきたが、7年6月に『私たちの参政権-障害をもつ人々の立場から』として発行した。障害をもつ人々の参政権保障の問題点と改善点が、障害をもつ人々自身の声で語られているところが貴重であり、2年間にわたる実態調査と議論の成果である。とくに、従来ほとんど取り上げられなかった精神障害をもつ人に関する参政権保障の実態を患者自らの訴えとして、さらに知的障害をもつ人の「せんきょ たのしい がんばるよ」という声を掲載できたことは、大きな意義をもつ。6年度は、政治改革とりわけ選挙制度改革が障害をもつ人々の参政権に与える影響を検討してきた。とくに、6年6月20日に発表された、政見放送研究会報告書を検討し、その意義と限界、問題点について全日本ろうあ連盟機関誌『月刊みみ』、および日本手話通訳士協会機関誌に発表した。さらに、参政権保障の意義と現状について高齢者にまで拡大して検討した。7年度に、以上の成果を、研究成果報告書『「障害者」の参政権保障に関する総合的調査研究』としてまとめた。今後、「障害をもつひと」の政治参加と参政権保障制度の実態、さらには福祉制度とのかかわりをふくめた総合的調査を課題としたい。
著者
谷口 義明
出版者
東京大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

本年度は昨年度に購入したイメ-ジ増倍管付きのCCDカメラを用いた高速星像検出システムによる観測を行いデ-タ解析を行った。このデ-タに基づき、木曽観測所における星像ダンスの性質を定量的に解析した。このような研究は国内では初めてのものである。1)観測:観測は東京大学理学部天文学教育研究センタ-木曽観測所の105cmシュミレット望遠鏡の主焦点部にカメラを取り付けて行った。観測期間は4月から12月で計10晩以上に及んだ。CCDカメラは約10分角の視野をビデオレ-トで撮像する事ができるので、その視野中に写る全ての星像を解析することができる。解析可能な星の限界等級は約16等である。2)デ-タ解析:観測デ-タはSVHSビデオに集録され、その後1画面ずつディジタル化して写野中に写っている星像の位置を30ミリ秒毎に測定し、その動きを調べた。デ-タ解析は東京大学木曽観測所現有のパ-ソナルコンピュ-タX68000と国立天文台のSpark Stationを用いてなされた。3)結果:写野内の複数の星像の動きの相関を調べることで、星像の動きはわずか10分角の視野の中でも複雑な動きを示すことがわかった。独立した動きをしている領域は1.5ー2分角である。既ち、1枚のtipーtilt鏡で星像ダンスの補償をできるのは木曽観測所の典型的な観測条件のもとでは2分角以内であることが分かった。また、ビデオレ-トのフィ-ドバックで補償する場合、星像サイズを約2割小さくできることがシミュレ-ションの結果判明した。
著者
牧野 勲
出版者
旭川医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1989

赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素系の役割とその特性について研究実施計画に沿って検討し、下記の成果を得た。1.赤血球内ケト胆汁酸還元酵素の部分精製と特性に関する検討。酵素の部分精製はBerseusの方法に従って実施し、現在も進行中である。本酵素系の特質については試験管内実験から、(1)至適温度は37〜40℃、(2)至適pHは7.0、(3)ケト胆汁酸の還元能はC3位のケト基にのみ限定される、(4)肝における3αーHSD酵素とは作用が類似するも同一でない、(5)70℃、2分間の加熱で失活することを明らかにした。2.赤血球還元機構を加えた胆汁酸代謝マップの作製。デヒドロコ-ル酸の経静脈負荷試験から検討を加えた。従来デヒドロコ-ル酸はその全てが肝で還元代謝を受け、胆汁中ヘモノハイドロキシ体20%、ダイハイドロキシ体70%、トリハイドロキシ体10%となってい排泄されると考えられて来た。したし本研究によりデヒドロコ-ル酸はその一部が大循環血中で赤血球によりC3位のケト基が還元され、モノハイドロキシ体となり、その後肝に摂取されて代謝を受ける副経路が存在することを明らかにした。その程度は負荷量の10ー20%に及ぶため、本副経路は生理的意義を有するものと判断された。この場合、上記成績はデヒドロコ-ル酸および代謝還元体の肝摂取速度を度外視したものであり、したがって20%以上のデヒドロコ-ル酸が本副経路を経由することが考えられ、現在詳細な検討を行っている。3.赤血球還元機構由来の血中胆汁酸の検討。これ迄施行した血中胆汁酸分析で、末梢血中に3ケト胆汁酸を認めなかった。本所見から腸管内で3ケト胆汁酸が生成され、それが循環血中に流入しても、赤血球局在ケト胆汁酸還元酵素により速やかに、3αハイドロキシ体に還元されることが推察された。