著者
小郷 克敏 井本 岳秋 野見山 俊一 澤田 芳男
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.73-80, 1978-06

運動性タンパク尿の発生要因を追究するため,大学陸上競技部に所属する,19歳から21歳までの4名の選手の10マイルロードレース前後における尿中諸物質の排出変動ならびに尿中タンパクの組成を酵素(LAPおよびγ_-GTP)活性の変動としてとらえ,つぎのような結論を得た。1)運動中および回復初期では尿中Creat,尿酸,尿素窒素の排出は減少し,この時期で腎のクリアランスの低下がみられる。ゴール後60分以上経過するとこれらの物質の排出は走前レベルに回復している。2)尿pH値は走直後尿から上昇し走後30〜60分尿では全員pH7を越えpH8以下のアルカリ性を呈し,老後の90〜120分尿以後でようやく走前レベルに回復している。3)上記1)に示した各物質の排出の減少している時期でタンパクは非常に多量排出され,60〜90分尿以後では漸減するが走前レベルよりはるかに高い排出量を示している。4)尿中タンパクのA/G比は安静時では低いが,回復初期では1以上の高値を示し,回復後期では低下している。5)LAPおよびγ_-GTP活性もタンパク排出の多い時期で高活性を示し,回復時間が進むにつれ漸減している。LAPは走後120〜150分尿では,走前レベルに近くなっているが,γ_-GTPはかなり高活性のまま推移し,運動性尿タンパクに組成の違いがあらわれている。6)運動性尿タンパクには腎の透過性増大による血漿成分の漏出による部分だけではなく,腎組織由来のものも存在するようである。
著者
石田 良恵 金久 博昭 福永 哲夫 西山 一行
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.18-24, 1987-02-01
被引用文献数
2 2

本研究では,身体組成,皮下脂肪厚および体肢組成における女子長距離ランナーの特徴について検討し,次のような結果を得た. 1. ランナーは一般女子より有意に少ない%Fat及び体脂肪量を示した. しかしBMには,ランナーと一般女子との間に有意な差が認められなかった. さらに競技成績のすぐれているランナーほど,%Fatは低くなる傾向がみられた. 2. 皮下脂肪厚は,上腕背部,背部,腹部中央,側腹部、大腿背部において,ランナーが一般女子より有意に薄い値を示した. 皮下脂肪厚におけるランナーと一般人の差は,体肢より体幹において大きく,その差が最も顕著にあらわれたのは側腹部であった. 3. 体肢の皮下脂肪断面積は,前腕,上腕,下腿,大腿のいずれの部位においても,ランナーが一般女子より有意に小さな値を示した. これに対し,筋断面積は下腿のみランナーが一般女子より有意に小さな値を示した. 4. 以上のように,女子長距離ランナーは一般女子に比較して、筋はほとんど発達していないものの,体脂肪が著しく少ない. これは主に有酸素性トレーニングの影響を反映したものであると結論した.
著者
駒澤 純 山田 茂
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.367-384, 2006-08-01

This review explores novel possibilities of skeletal muscle hypertrophy mechanism based on previous studies. Hypertrophy and/or regeneration of skeletal muscles are caused by activation of satellite cells, induced by mechanisms such as growth factors and cytokines. Many unsolved problems, however, yet remain concerning signaling pathways, activated by such substances, and regulation of transcriptional factors and cell cycles. In recent years, possible involvement of not only satellite cells but also tissue-specific stem cells in skeletal muscle hypertrophy has been reported from studies made on stem cell transplantation in muscle regeneration. It has been elucidated that differentiation plasticity of tissue-specific stem cells contributes to hypertrophy and/or regeneration of skeletal muscles. Moreover, satellite cells have come to be regarded as one kind of tissue-specific stem cells, since they have been known to exhibit diversity, by their differentiating into not only skeletal muscle cells but also other tissue cells, as well as self renewal capacity. This review also summarizes findings on signaling pathways based on ligand receptor characterization. Among the various signaling pathways, focus was especially placed on the possibilities of Wnt signaling pathway and Notch signaling pathway on skeletal muscle hypertrophy, indicating that Wnt expression in adult muscle stem cells leads to regulation of skeletal muscle hypertrophy. It has also become evident that Notch signaling pathway is associated with the activation of satellites cells, and that functional decline of such signaling pathway causes a decline in the activation of satellite cells. Such functional decline of Notch signaling pathway has also been revealed as the reason for the decline of regenerative capacity of skeletal muscles due to advancing age. Further discussion on the involvement of Notch signaling pathway in skeletal muscle hypertrophy is made based on these results. As indicated above, the roles of ligands and/or receptors of canonical growth factors, signaling pathways, and transcriptional factors contributing to skeletal muscle hypertrophy were reexamined in this review, after which the contribution of tissue-specific cells to skeletal muscle hypertrophy was discussed based on the results of muscle regeneration studies. Furthermore, focus was centered on Wnt and Notch signaling pathways, both of which are attracting renewed attention, and study was made on the possibility of the involvement of these pathways in skeletal muscle hypertrophy process.
著者
沢井 史穂 実松 寛之 金久 博昭 角田 直也 福永 哲夫
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.93-105, 2004-02-01
被引用文献数
8 20

若年男女12名を対象として,携帯型表面筋電計を用い,日常生活の基本動作である姿勢保持・姿勢変換・体重移動動作計27種類について身体8部位から筋電図を導出し,各動作における筋ごとの活動水準を明らかにした.筋活動水準は,各動作で導出された筋電図の時間当たりの平均積分値(mEMG)を各筋の等尺性筋活動によるMVC発揮時の筋電図積分値で正規化して評価した.その結果,以下の知見が得られた.1.対象動作における時間当たりの平均活動水準は,ビラメ筋において一部40%MVCを越える動作があったものの,総じて低く,20〜30%MVC程度だった.2.動作間で各筋の活動水準を比較すると,速い速度での'階段昇り・降り'及び'坂の上り・下り'と'ジョギング'が総じてどの筋でも相対的に高い活動水準を示し,坂や階段を急いで上る(昇る)と,下肢の筋には自然歩行時の2〜3倍の負担がかかることが判明した.3.体幹の筋でぱ立ち座り',脊柱起立筋と大腿直筋でぱ中腰'と'立ちしゃがみ'の活動水準も相対的に高かった.また,腹直筋と大腿直筋は,階段と坂の上り下り動作において昇り(上り)より降り(下り)動作の方が筋の活動水準が高いという特徴が認められた.4.以上の結果は男女に共通するものであったが,筋活動水準の平均値は多くの動作で女性の方が有意に高く,同じ動作を行ったときの筋への負荷は女性の方が相対的に大きいと考えられた.5.本研究の結果から,日京生活の中での速い体重移動動作,特に勾配のある路面での移動動作は,下肢筋群の筋機能の維持・向上に有効な運動刺激となり得るのではないかと推察された.
著者
高野 敏雄
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.101-117, 1971-06-01
被引用文献数
1

冬期スポーツの1種であるリュージュ及びボブスレーは、わが国では歴史が浅く、また非常な危険を伴う競技であるに拘らず、スポーツ医学的検討が行なわれていない。特に氷壁で囲まれた急カーブのコースを高速で滑降する際に生ずる遠心力が競技者に及ぼす影響は極めて重大な問題である。著者は今回両競技の選手あわせて48名(うち女子4名)につき、遠心力負荷実験、体格・体力などの測定を実施して、安全確保のための検討を加えた。おもな研究成果は次のとおりである。1)人体用遠心力発生装置を用いてgrayoutを指標とした+Gz耐性閾値を決定した。リュージュ選手は+5.67Gz(Range=4.0〜6.1、SD=0.56)、ボブスレー選手は+5.80Gz(Range=4.7〜6.1、SD=0.43)であって、+Gz負荷に伴なう血圧、心拍数上昇も適正な生理的反応を示した。2)自転車エルゴメータによる最大仕事量および最大心拍数は、運動鍛錬者として適正な値を示した。3)軽い+Gz負荷中のCoriolis刺激によって、約30%の被検者に操縦桿操作performanceの低下を示すものが認められた。4)両競技の安全を確保するためには、各選手は適正なG耐性とG負荷に対する生理的な適応反応を示すことが必要であり、また競技中のCoriols刺激による異常空間