著者
澤田 辰徳 建木 健 藤田 さより 小川 真寛
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.167-178, 2011-04-15

要旨:本研究は,「作業療法」と「リハビリテーション」に対する一般市民の認知度を調査することを目的とした.2つの言葉に対する街頭アンケートを4都道府県で行った結果,542人からのデータが得られた.得られたデータはテキストマイニング手法により分析し,クラスター解析を行った.2つの言葉は各11のカテゴリーに分類された.「リハビリテーション」の構成要素は機能回復に関連しているものが多かった.「作業療法」は抽象的な内容やわからないというものが混在していた.これらのことから,一般市民にリハビリテーションという言葉は認識されつつあるが,作業療法という言葉そのものや,作業療法の内容に関する認識は低いことが示唆された.
著者
竹田 里江 山下 聖子 宮田 友樹 竹田 和良 池田 望 松山 清治 船橋 新太郎
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.384-393, 2016-08-15

要旨:日常生活場面を取り入れ,個人の興味・関心に配慮したワーキングメモリ課題を開発し,保続性の反応を呈する統合失調症患者に実施した.その結果,保続性の反応が改善し,BACS-Jのワーキングメモリ,運動機能,遂行機能の改善を認めた.また,意欲や活力,心の健康の改善が得られた.これらの結果は2回目介入時に再現性を認めた.本課題は,実生活の一場面をモデルに,思考・計画・判断・意思決定をするという特徴をもち,個人の興味・関心や遂行能力にテーラーメイドできる.興味・関心に配慮することは,課題に対する注意集中,記憶,思考,選択のしやすさに繋がり,潜在能力を喚起し,認知機能や意欲の改善に寄与することが示唆された.
著者
竹田 里江 竹田 和良 池田 望 松山 清治 石合 純夫 船橋 新太郎
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.452-462, 2012-10-15

要旨:ワーキングメモリ機能,目的志向的行動の計画や実行など前頭連合野機能を基盤にし,個人の興味・関心や遂行能力にテーラーメイド可能な訓練を開発した.今回,アルツハイマー型認知症の1症例に施行したところ,語の流暢性,抑制コントロール,記憶機能に向上を認めた.また,日常生活面での記憶,見当識,会話に改善が得られ,うつ状態評価尺度や症例の感想から情動面の改善も示唆された.本訓練は実生活に密着した内容で,対象に合わせて課題の難易度や題材を設定できる.単なる反復的な記憶訓練ではなく過去の記憶やアイディアの創出を刺激することを意図している.こうした特徴が症例の認知・情動の両側面の機能改善に寄与したと考えられた.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 松井 克明 堀内 博志 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.222-229, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
18

中等度の上肢麻痺を呈した脳卒中患者に対し,急性期よりCI療法(量的練習,課題指向型練習,介入で獲得した機能を生活に転移するための戦略)と,電気刺激療法を併用した複合的な上肢集中練習を実施した.さらに,退院後,長期的効果を調査するため1年後の経過を追った.その結果,介入直後および介入から1年後に,麻痺側上肢機能と,実生活における麻痺手の使用の頻度および質の改善を認めた.したがって,我々はCI療法を急性期より実践することで,長期的にも好影響を及ぼす可能性を示唆した.ただし,今回の結果は一症例の経過に過ぎない.今後,多数の症例で同様の疑問を明らかにする必要がある.
著者
鈴木 渉 籔脇 健司 中本 久之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.450-459, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
22

身体障害領域および高齢者領域に勤務する臨床経験が1〜3年目までの作業療法士を対象とし,作業療法士の職業的アイデンティティ自己評価尺度(以下,PI尺度)の項目反応理論を用いた項目分析を行い,構造的妥当性を検討した.PI尺度は,中本らが回復期病棟に勤務する作業療法士用に改変したものに,加筆・修正を加えて使用した.結果として,PI尺度は,作業療法士に独自性があると思う程度が平均的な回答者に対する測定精度が高く,4因子29項目の2次因子モデルで適合していたことから,身体障害領域および高齢者領域の作業療法士を対象として,広く使用できる尺度であることが明らかとなった.
著者
櫻井 利康 山崎 宏 小林 勇矢 奥原 健史 三村 祐太
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.507-514, 2016-10-15

要旨:手の浮腫・腫脹の測定法であるリングゲージ法と掌囲(中手骨頭レベルでの手の周径)法の信頼性と妥当性を明らかにした.健常成人40例80手を対象に,2人の検者がリングゲージ法,掌囲法,Figure of Eight法を2回測定した.信頼性は級内相関係数,妥当性はFigure of Eight法との相関係数を用いた.検者内信頼性のICC(1,1)はリングゲージ法が0.99,掌囲法が0.99,検者間信頼性のICC(2,1)はリングゲージ法が0.98,掌囲法が0.98〜0.99であった.Figure of Eight法との相関係数はリングゲージ法がr=0.76〜0.84,掌囲法がr=0.91〜0.94だった.リングゲージ法と掌囲法は信頼性と妥当性が高く手の周径法として使用可能な方法と考えた.
著者
中嶋 克行 坂上 真理 坂上 哲可 仙石 泰仁
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.266-276, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
23

本研究は,地域に住む要支援高齢男性が価値を置く作業の特徴を,当事者の視点から理解することを目的に,質的研究法を用いて調査した.北海道内の通所系サービスを利用する男性10名を対象に,1人60分程度の半構造化面接を実施した.分析はグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.その結果,価値を置く作業は,【見える達成を実感できる作業】,【社会的に意味あることが確認できる作業】の2つの特徴が確認できた.さらに,作業に価値を見出す背景には,【作業選択を動機付ける自己資源】,【現状の生活に対する認識】があった.作業療法支援では,当事者による価値を置く作業の捉え方とその背後の状況の理解が,有効である可能性が示唆された.
著者
田島 明子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.340-348, 2005-08-15

要旨:社会に内在する価値に無自覚であることで,支援という名目において,かえって障害を有する人たちの否定的価値を助長してしまうことがある.本稿の目的は,そうしたパラドキシカルな現況を明らかにすることにある. 本稿の構成は次のとおり.①作業療法に内在する価値について整理した.②障害者就労の形態について,「能力主義」と「障害価値」を分析軸として3つの位相があることを述べ,そうした分析視点から「リハビリテーションの位置」を明確化した.③それらの結果から,作業療法に内在する価値について,「ひとの価値」という観点から検討を加えた.
著者
荻原 牧子 川原 靖弘
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.171-177, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
26

高齢者の生活時間におけるテレビ視聴の割合は余暇活動の大半を占め,長時間の視聴が健康に与える悪影響もわかっている.しかし,視聴時間帯と健康との関連についての検討はなされていない.本研究では,383名の在宅高齢者に対して基本チェックリストとテレビ視聴アンケートを実施し,フレイルの有無による2群と視聴時間および視聴時間帯との関連をみた.結果は,両者に視聴時間の差はみられなかった.しかし,総合基準と,運動分野およびうつ分野のフレイルの者は,健常者に比べて16:00〜18:00の視聴が多かった.
著者
中島 そのみ 仙石 泰仁 中村 裕二 加藤 静恵 岸 玲子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.309-316, 2010-06-15

要旨:ベイリー乳幼児発達検査一第2版(以下,BSID-Ⅱ)は乳幼児期の発達状況を評価できる,国際的にも用いられることの多い検査の一つである.しかし,日本では標準化されておらず使用報告が少ない現状にある.本研究では,生後6ヵ月児192名にBSID-Ⅱを実施し,日本版デンバー式発達スクリーニング検査(以下,JDDST)から見たBSID-Ⅱの有用性を検討した.BSID-ⅡのMentalとMotorの平均得点は米国の標準値よりも約10低い値であった.また,BSID-ⅡのMental,MotorはともにJDDSTの関連領域との間で感度・特異度が高く有用性が認められた.しかし,本邦においてはBSID-ⅡのMotorは過剰に遅れと判定する可能性があった.
著者
能登 真一 毛利 史子 網本 和 杉本 諭 二木 淑子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.126-133, 1999-04-15

要旨:半側空間無視症例に対し,右手使用の木琴を用いた訓練を考察し,訓練効果をシングルケースデザインで検討した.木琴療法は180度回転させて設置した木琴を演奏するものである.ABAB法を用いて訓練効果を検討した結果,べース期と介入期,除去期と再介入期の間に半側空間無視の成績の有為な改善を認めた.半側空間無視の改善は,左方向への音階の探索により左方向への運動意図が高まったことと,音楽の利用により右半球が活性化されたためと考えられた.
著者
和田 佐和子 鷲田 孝保 山﨑 郁子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.32-43, 2007-02-15

要旨:単一事例研究法条件交代デザイン(ATD)はべ一スラインと交代操作介入期をもち,複数の介入の効果を比較することができる.しかし,本研究では倫理的配慮からべ一スラインを設定できなかった.そこで,べ一スラインを設定しないオリジナルデザイン「ATD-W介入型」を提案した.デイケアに通所する重度認知症高齢者のSさん(89歳女性)を対象に,当デイケア活動における従来の介入(レクリエーション)と新しい介入(音楽活動)に対する身体活動や表情の変化について比較したところ,Sさんの場合は音楽活動の方が身体活動を引き出すことができた.2つの介入の効果を比較し,「ATD-W介入型」の臨床的有用性について考察する.
著者
駒井 由起子 比留間 ちづ子 宮永 和夫
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.163-173, 2005-04-15

要旨:若年認知症は興奮,暴力,俳徊を主な精神症状とし,発症時のライフサイクルは社会的役割の大きい時期であり老年期認知症とは様相が異なる.社会的認知は低く利用可能なサービスは少ないと同時に,患者は現状のサービス適応が困難である.そのため家族の介護負担は計り知れず,患者を取り巻く状況が複雑に影響し合う特異的な障害構造を呈する.若年認知症家族会「彩星の会」はサービスを補う社会資源として存在し,家族とサポーターが協働で抱える課題に取組んでいる.若年認知症の現状,経過,障害構造についてまとめ,家族会の社会的意義および作業療法士の役割について活動を通して紹介し,専門的支援の必要性と進捗状況,課題について整理する.