著者
池知 良昭 井上 桂子 小野 健一 金山 祐里
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.87-98, 2021-02-15 (Released:2021-02-15)
参考文献数
16

要旨:終末期がん患者に関わる作業療法士は,自らの役割が不明瞭であり自信がない.本研究の目的は,当該領域の作業療法士の役割を明確にし,実践自己評価尺度の内容的妥当性を検討することである.文献検索と専門家会議にて項目を抽出し,当該領域の作業療法士にアンケートを実施した.その後,天井効果・フロア効果,最頻値,度数分布,非該当数を検討した.結果,グリーフケアの設問にフロア効果を認め,復職・セクシャリティは非該当が多かった.予後未告知の患者と,死に関して話さないとの意見があった.最終的に77項目が採用され,本尺度の内容的妥当性が確保されたが,今後さらに,項目相関係数やCronbach α係数等の内容的妥当性の検討が必要である.
著者
三原 孝太 丹野 拓史 坂上 真理
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.527-534, 2021-08-15 (Released:2021-08-15)
参考文献数
10

要旨:本報告の目的は,現状に絶望しベッドの中に塞ぎ込み,行いたい作業を聞き取れる状態にない高齢者が,自ら人との関係を大切にして過ごすまでに至った介入経過を振り返り,彼女に変化をもたらした要因を検討して報告することである.介入では,作業歴の面接で彼女が「人との関係」を重視することを捉え,過去と類似する経験ができるように相手の選択と共作業や日常生活場面の相互作用を促す環境設定を行い,彼女が重視する関係を段階的に作る支援をした.その結果,彼女の関係は重要他者との2者関係から,他の入院患者達との関係へと広がった.行いたい作業を聞き取れない場合でも,対象者にとって大切な経験を探り,作業に焦点を当てた支援が重要である.
著者
横井 安芸 石井 良和
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.190-201, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
33

本研究では「高齢者の生活期リハビリテーションに携わる作業療法士のコンピテンシー項目(案)」の自己評価尺度を開発する目的で信頼性・妥当性を検討した.調査対象は,生活期リハビリテーションに従事する作業療法士とし,得られた363名の有効回答について,回答の偏りを確認後,探索的因子分析を行った.その結果,本尺度は30項目5因子構造であることが推察された.この予測をもとに共分散構造分析を実施したところ,適合度指標CFI=.921,RMSEA=.055で良好な構成概念妥当性を有していることが確認された.また,信頼性はCronbach’s α=.79〜.95で内的整合性が保たれていることが明らかとなり,本尺度は十分な信頼性・妥当性を有していることが示された.
著者
小林 竜 小林 法一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.430-439, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
26

本研究の目的は,回復期リハビリテーション病棟退院後の在宅脳卒中者における家事再開の予測因子を明らかにすることである.退院後の家事再開状況は,改訂版Frenchay Activities Index自己評価表を使用し,食事の用意,食事の後片付け,洗濯,掃除や整頓,力仕事,買い物の6項目について調査し,退院時の機能・能力,本人を取り巻く社会的環境などとの関連を調べた.分析対象者は128名であった.ロジスティック回帰分析の結果,10m最大歩行速度や性別,家族形態などの予測因子が複数選択された.回復期リハビリテーション病棟入院中の脳卒中者に対して家事再開へ向けた支援を行う際には,これらの因子を考慮した多角的な支援の重要性が示唆された.
著者
松本 健太郎 佐野 伸之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.329-335, 2021-06-15 (Released:2021-06-15)
参考文献数
12

作業療法では,対象者の生活行為がやり遂げられるように,意欲を引き出す支援が重要となる.今回,人工股関節全置換術後患者に対して,自己評定法に加えて半構造的面接法を併用することで,対象者の目標に対する意欲や生活行為への参加を高められた介入手順について報告する.リハビリテーションに関する達成動機尺度の得点から達成動機の状態を把握し,面接法により事例の作業参加につながる目標,行動計画,周囲のサポートについて合意形成した.その内容を視覚的に意識づけし適宜修正することで,事例の達成動機の向上や積極的な行動変容が窺えた.達成動機の観点から面接法を併用することで,サポート内容を明確化することが期待できる.
著者
今井 忠則
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.304-313, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
24

意味のある作業への従事(作業参加)は,健康・well-beingにとって重要だが,その疫学的根拠は乏しい.本研究では,作業参加が健康関連QOL(SF-36v2で測定)に及ぼす1年間の影響を明らかにすることを目的とし,地域中高年者460名を対象に1年間の追跡調査を実施した.各自の作業参加の変化量により「維持・向上群」と「低下群」を設定し,SF-36v2の各尺度の群間差と群ごとの継時的変化を検討した結果,維持・向上群の方がSF-36v2の全尺度で良好であった(p<.05).さらに肯定的影響は早期に発現しその後維持される傾向が,否定的影響は半年以上の期間を経て発現する傾向が見出された.本結果は,健康増進・予防的作業療法の疫学的根拠の一つとなる.
著者
東 泰弘 高畑 進一 兼田 敏克 中岡 和代 石原 充
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.2, pp.214-224, 2021-04-15 (Released:2021-04-15)
参考文献数
26

日本版ADL-focused Occupation-based Neurobehavioral Evaluation(A-ONE)の信頼性と妥当性を古典的テスト理論に基づいて検討した.日本版A-ONEは,5領域22項目の日常生活活動(ADL)観察を通して,ADLを妨げている神経行動学的障害を同定する評価法である.20名の脳血管障害(CVA)患者に対して,評価者内信頼性および評価者間信頼性を検討し高いkappa係数を認めた.36名のCVA患者に日本版A-ONEと既存のADL評価および各種神経心理学的検査を実施し,併存的妥当性を検討し両者間に中等度以上の相関を認めた.これらにより,日本版A-ONEの信頼性と妥当性が確認できたと考える.今後は,CVA患者以外の対象者も含め検討していく.
著者
藤本 侑大 島崎 寛将 納冨 敦子 谷口 小百合 髙島 千敬
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.585-592, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
30

わが国では,2008年度に作業療法士による呼吸器リハビリテーション料の算定が認められた.それから10年間における呼吸器疾患患者に対する作業療法の現状について,システマティック・レビューを行った.MEDLINEや医学中央雑誌など8つのデータベースとハンドサーチから,呼吸器疾患患者に対し実施されている作業療法についての論文を抽出した.その結果,日本語5論文を採用した.論文の対象はCOPDや間質性肺炎が中心で,主な実践内容・研究目的は,高次脳機能障害の検討(2件),ADL・IADLトレーニングの検討(2件),社会生活状況調査(1件)であった.今後は,わが国における呼吸器疾患患者への作業療法報告数の増加や有用性の検証が課題である.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.630-636, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
10

要旨:今回,幻覚妄想状態で警察官に暴力を振るい,当院の精神科急性期病棟に措置入院となった統合失調症と自閉スペクトラム症を併せ持つ対象者に,筆者は多職種チームの一員として関わった.本介入において,筆者は個別作業療法を通して対象者と関係性を構築し,暴力の制止を試みた.その上で,集団作業療法と統合失調症の心理教育を実施し,自宅退院に繋げた.本介入から,措置入院者への多職種チーム医療に作業療法士が参加することによって,対象者と同等な立場で関わることで関係性を構築し,対象者の特性や大切にする思いといった情報を多職種チームに提供することで,より対象者らしい生活の再開に向けた支援が可能になると考える.
著者
能登 真一 毛利 史子 網本 和 杉本 諭 二木 淑子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.126-133, 1999-04

半側空間無視症例に対し,右手使用の木琴を用いた訓練を考察し,訓練効果をシングルケースデザインで検討した.木琴療法は180度回転させて設置した木琴を演奏するものである.ABAB法を用いて訓練効果を検討した結果,ベース期と介入期,除去期と再介入期の間に半側空間無視の成績の有為な改善を認めた.半側空間無視の改善は,左方向への音階の探索により左方向への運動意図が高まったことと,音楽の利用により右半球が活性化されたためと考えられた.
著者
清水 賢二 酒井 浩 木村 匡男 田後 裕之 髙橋 守正
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.495-502, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
13

要旨:聴覚失認とは,聴覚による言語や環境音の認知が困難になる状態であり,横側頭回や聴放線の損傷によって生じるとされている.今回,聴覚失認を呈した60歳代の症例を経験した.もともと社交的な本症例であったが,聞き取りの困難さから周囲との交流を避けるようになっていった.作業療法において読話を用いた視覚的代償戦略を用いることで,聴覚失認の症状自体は変化を得られないなかでもコミュニケーションの困難さを克服しだし,周囲との交流を取り戻し始めた.コミュニケーションの障害を言語機能障害ととらえず,生活障害としてとらえて,作業療法士も積極的に介入していく必要がある.
著者
牧 利恵 小林 隆司
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.765-768, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
7

要旨:就労支援領域で使用できる患者立脚型アウトカムが,本邦で求められている.そこで今回,Work Rehabilitation Questionnaire(以下,WORQ)の翻訳と言語的妥当性の検討を研究目的とした.方法は,Beatonによる尺度の異文化適応の順番に準拠した.まず,原著者に許可を得た後,2名が別々に翻訳をし,訳語をすり合わせた.次に逆翻訳を行い,原著者に確認をとり修正した.それから,専門委員会を開催して訳語を修正し,ドラフト版を作成した.その後,27名の対象者に予備テストを行い,答えやすさについての個別インタビューを実施し,さらに文言を修正した.最後に,最終版を原著者に報告し,日本語版がWORQのホームページで公開された.
著者
田邉 浩文 生田 宗博 三川 年正 近藤 昭彦
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.505-510, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
23

音楽家にみられるフォーカルジストニアは,演奏中に現れる不随意運動であり,音楽家としてのキャリアを終了させることもある.フォーカルジストニアの病態生理に関する先行研究から,フォーカルジストニアの症状出現は,筋緊張異常や軟部組織の短縮に起因する異常な感覚入力により,大脳皮質の抑制系の活動減少を来すことが主因と仮説を立てた.本報告では,1名のフォーカルジストニア患者に対して6ヵ月間,外来で定期的に異常な軟部組織に対する治療介入と,セルフメンテナンスの実践に関するモニタリングを面接で行った結果,フォーカルジストニアの症状が改善するとともに筋緊張異常が減弱し,演奏に大きな支障を来さないまでに回復する結果が得られた.
著者
渡部 誠一 杉原 素子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.314-324, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
29

我が国の調査では,長期入院統合失調症患者のうち20〜50%は退院意向を示さないとされ,厚生労働省は,「退院に向けた意欲の喚起」を強調している.本研究では,長期入院統合失調症患者の退院意向に関連する個人因子を明らかにする目的で,精神科病院に1年以上入院している統合失調症患者50名を対象に,退院意向質問紙,将来への否定的自己評価であるDefeatist Beliefsおよび陰性症状を横断的に評価した.その結果,Defeatist Beliefsは退院を示さない群において有意に重度で(p=0.001),交絡因子を含めても有意な関連が認められた(p=0.01).本結果により,退院意向を示さない統合失調症患者の退院への意欲喚起には,心理社会的介入の重要性が示唆された.
著者
櫻井 友実 橋本 健志 四本 かやの
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.273-281, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
38

本稿の目的は,我が国における精神障害(者)に対する偏見について,偏見が弱い人の属性や偏見を低減する効果的な介入を検討するために現段階で信頼性の高い一定の知見を得ることである.医中誌WebとCitation Information by NII(CiNii),J-Dream Ⅲで文献検索し,検索範囲は2002年1月1日から2017年10月13日とした.検索の結果,1,906編中13編が分析対象となり,その結果,偏見が弱い人の属性は,精神障害者との接触があることと知識があることの2点である可能性が示唆された.精神障害者に対する偏見を低減するための効果的な介入は,精神障害者と『共に作業』することと,普及啓発活動だと考えられる.
著者
中村 泰久 島田 慧人 穴水 幸子 三村 將
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.365-371, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
18

統合失調症の認知機能障害に対しCognitive Remediation Therapy(CRT)の効果が報告されている.さらに介入効果を社会生活能力へ般化する上で発散的思考の影響が注目されている.今回,CRTのVCAT-Jを実施したところ,認知機能の改善に伴い発散的思考の質が高まり,日常生活での行動変容を認めた事例を経験した.介入初期はゲーム課題への取り組みだけであったが,中期以降はゲーム課題から自身の記憶の苦手さを自覚し,工夫する様子が見られ,ブリッジングのグループワークで意見交換が多くなった.介入経過と介入前後の評価尺度スコア変化などから,CRTの介入効果として,認知機能の改善,発散的思考,日常生活の行動変容を認める可能性が示唆された.
著者
石垣 賢和 竹林 崇 前田 尚賜 久保木 康人 高橋 佑弥
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.575-584, 2019-10-15 (Released:2019-10-15)
参考文献数
18

回復期の脳卒中後上肢片麻痺者に対し,15日間のロボット療法の効果検証を行った.対象は,2015年6月から2018年8月の期間に当院に入院した,初発の脳卒中後上肢片麻痺者のうち,15日間のロボット療法を実施した群(介入群)と,1ヵ月間の通常訓練を実施した群(対照群)とした.方法は,介入群と対照群で傾向スコアマッチングを実施し,Fugl-Meyer Assessment(以下,FMA)肩・肘・前腕の変化量を比較した.結果は,介入群36名,対照群62名で,22ペアがマッチングされた.FMA肩・肘・前腕の変化量は,介入群が対照群に比べ有意に改善を示した.ロボット療法を用いた介入は,効率的に回復期の脳卒中患者の上肢機能を改善させる可能性がある.
著者
林 良太 黒田 健治 田中 宏明 稲富 宏之
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.231-238, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
14

本報告の目的は,自傷行為を繰り返すうつ病患者に対して,多職種協働の中でストレス対処行動獲得のために実施された作業療法の効果を検討することである.症例はうつ病患者で,自傷行為がストレス対処行動として用いられていると考えた.多職種協働の介入目標を「自傷行為の減少」として,作業療法では,新しいストレス対処行動の獲得,ストレス要因の改善,ストレス要因に対する症例のとらえ方に介入した.その結果,自傷行為は減少し,新しいストレス対処行動の獲得を認めた.多職種協働の中で,ストレス対処行動の形成化,ストレス要因の改善,認知的柔軟性を獲得し,日常的に実践可能となるような介入により自傷行為の減少に繋がる可能性が示唆された.
著者
村上 元 森元 隆文 三浦 由佳 池田 望
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.248-254, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
11

今回,地方都市において,“誰でも参加できるSST”を当事者と協働で実施する経験を得た.経過の中で,医療・福祉の枠外で立場に関係なく誰でも参加できるという場の構造の不安定さと,それ故に起こったトラブルやその前兆への対処など様々な課題はあったものの,その場に継続的に,かつ主体的に参加して新しい仲間づくりを行う者も多く存在した.このことから,医療・福祉の枠を超えて作業療法士が地域において実践を試みることで,当事者・家族を含む地域住民の健康やつながりの構築に寄与する可能性が示唆された.一方で,その実践には,運営スタッフとプログラムが開催される地域の支援者とのつながり,当事者との協働が必要と考えられた.
著者
小野 健一 藤原 大輔 川上 孝行 金山 祐里
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.210-216, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
18

認知症の人とその家族介護者への支援は,両者の在宅生活を維持するために重要である.今回,訪問作業療法場面で,認知症高齢者と家族介護者2組に対し,共作業支援尺度を用いた共作業支援プログラムを実施した.共作業支援尺度から提案された改善したい共作業への作業療法介入を行った結果,認知症高齢者のBehavioral and Psychological Symptoms of Dementia(以下,BPSD)の重症度と,家族介護者のBPSDから生じる介護負担感,共作業継続意志得点の改善が,2組共に見られた.両者の行う共作業への介入により,家族介護者の共作業の遂行能力が改善し,結果として両者にとって,より満足のいく在宅生活につなげられる可能性が示唆された.