著者
添野 元秀 山下 義行 中田 育男
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第52回, no.ソフトウェア, pp.13-14, 1996-03-06

超並列計算機CP-PACSの各ノードプロセッサは、多数の浮動小数点レジスタとそのレジスタ群に対するスライドウィンドウ機構を付加したRISCプロセッサを採用している。当研究室では、スライドウィンドウを付加したプロセッサをターゲットマシンとするコンパイラの研究を行っている。コンパイラにおける最適化の重要課題の一つにループの最適化がある。RISCプロセッサにおけるループの最適化には、ソフトウェア・パイプライニングが有効である。スライドウィンドウを用いると、スライド命令によってレジスタ番号が変化するため、ソフトウェア・パイプライニングにおける複数のステージにまたがるレジスタの干渉が回避でき、命令スケジューリングの自由度が増すという利点がある。しかし、レジスタ番号が変化することは、レジスタ割り付けに新たな制約条件を加えることになり、レジスタ割り付けを難しくすると考えられてきた。本稿では、スライドウィンドウを考慮していないレジスタ割り付けのアルゴリズムを比較的容易にスライドウィンドウを考慮したレジスタ割り付けアルゴリズムに拡張できることを述べ、そのアルゴリズムの評価を行う。
著者
上之園 裕二 都築 佳生 犬塚 信博 世木 博久 伊藤 英則
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第54回, no.人工知能と認知科学, pp.267-268, 1997-03-12

名曲と言われるクラシックなど私たちが心地よいと思う音楽の多くは、1/fゆらぎを持っていることが知られている。また自然界においても風や星の瞬きの多くが1/fゆらぎを持っていると言われ、風が起因となる木の葉のゆれも、1/fゆらぎを持つことが推測される。本稿では、自然界の木の葉の軌跡が1/fゆらぎを持つことを確認し、その軌跡に基づいて心地よいゆらぎをもつ音楽を生成するシステムを提案する。
著者
神場 知成
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第44回, no.データ処理, pp.343-344, 1992-02-24

筆者らは,グラフィカルユーザインタフェース(GUI)よりもさらに直感的に理解しやすいユーザインタフェースをめざし,マルメチディアを利用したインタフェースであるリアリティユーザインタフェース(RUI)の開発を行っている.本稿では,RUIにおける入力手段としての音声(スピーチ)の利用,および出力手段としての音(サウンド)フィードバックの利用について述べる.
著者
高橋 博之 宮崎 正弘
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第49回, no.人工知能及び認知科学, pp.33-34, 1994-09-20

文字音韻変換処理は一般の単語については辞書を用いて行われる。しかし、数詞は表記が無数に生成できるため、全表記を辞書に収録することはできない。そのため、数詞は別処理で音韻付加する必要がある。日本語における数詞の表記は、算用数字表記、漢数字表記に加え両者の混ぜ書きも行われるなど多様である。本稿ではこれら多様な表記の数詞を処理するための可読性、拡張性に富むルールを提案し、その有効性を示す。
著者
伊賀 聡一郎 佐藤 宏之 安村 通晃
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第49回, no.システム, pp.259-260, 1994-09-20

ネットワークやビデオカメラの発達とともに、講演者と聴講者が物理的に離れたプレゼンテーションや、非同期に行なわれるプレゼンテーションが考えられるようになってきた。その際には本来のプレゼンテーションというタスクを妨げる問題点が起こり得る。本稿では、動画像認識によるビデオカメラの自動制御と、ネットワーク指向のDTPR(DeskTop PResentation)ツールによる遠隔プレゼンテーション支援システムPreViewの設計と実装について述べる。
著者
大島 輝洋 武部 達明 星 哲夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第33回, no.オペレーティングシステム, pp.313-314, 1986-10-01

筆者等は,HP1000 RTE-AリアルタイムOS上に日本語を包含する母国語支援環境(NLS, Native Language Support)を米国HP社と共同で開発したので報告する。NLSは,多国語支援環境とも換言出来,同時に最大7ヶ国語を支援する。現在支援可能な言語は,西欧系の言語13ケ国語と日本語である。従来HP3000上で,8ビット・コードで実現可能な西欧系言語の支援を行っていたが,HP1000では,さらに16ビット・コードを使用する日本語の支援を可能にした。NLS実現上の問題は1.メッセージ機能2.コード体系に関連した問題3.言語・習慣に依存した問題以上の3つに分類可能だが,以下にこの分類にしたがって実現手段を明らかにする。尚NLS化されたシステムは,一切ソース・コードを変更することなく他言語へ変換可能となる。
著者
仙石 浩明 吉原 郁夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.233-234, 1993-09-27
被引用文献数
5

前回報告した遺伝的アルゴリズム(GA)による、巡回セールスマン問題(TSP)の解法の評価を行う。評価は、局所最適解から脱出するアルゴリズムとして代表的なシミュレーティッドアニーリング(SA)法と、最適解への収束頻度で比較することにより行う。実験には、最適解が既知である四つの問題を用いる。そのうち二つは今回提案する問題である。一つは最適解が極めて多く存在する問題であり、他方は最適解がごくわずかしか存在しないものである。
著者
佐藤 秀人 亀田 昌志
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第70回, no.人工知能と認知科学, pp.519-520, 2008-03-13
著者
丹羽 建一 西野 順二 小高 知宏 小倉 久和
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第52回, no.人工知能と認知科学, pp.151-152, 1996-03-06

媒質を伝播する信号は、途中の様々な要因のために元の信号と比較すると一般に大きく変化する。この変化の要因は様々であるが、一般には非線形な効果を含んでいると考えられる。例えば人の循環器を伝播する脈波について考えると、大動脈における波形は動脈を伝播するに伴って変形し、上腕動脈より末梢に近い橈骨動脈で観測されるような波形に変化する。この場合、人の血管系を伝達していく過程を非線形伝達関数による変形ととらえることができる。このような信号の変化について、伝達関数を推測し、元の信号を同定することは医学的にも重要なことである。このような信号変化の推定は、信号の伝達してきた系を一つのフィルタとみれば、未知のフィルタによって変形した信号を元の信号に戻すような逆フィルタを構成することに相当する。本研究の目的は、この変化した信号から元の信号を導く逆フィルタをニューラルネットワークの汎化学習能力によって獲得し、その結果からネットワークのもつ学習効果について考察する。本研究ではコンピュータシミュレーションによる予備的な実験について報告する。
著者
雲 和雅 加藤 英二 金子 和恵 高木 常好 浅野 俊昭
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第38回, no.人工知能及び認知科学, pp.229-230, 1989-03-15

一口にレンズ設計といっても、カメラ用、複写機用、あるいは眼底カメラ用など多様な分野が存在する。また、このような多岐に亘った分野で、それぞれコンサルテーション、レンズデータの知的検索、一部の類型設計の完全自動など、コンピュータによる知的設計支援に対する具体的なニーズが増加してきている。現在我々が開発しているOPTEX(参考文献)は、このような多様なレンズ設計の分野において知識処理システムを構築する際のドメイン・シェルとでもいうべきものである。ところで、このようなドメイン・シェル構築に際しての最大の課題は、ユーザが設計知識を記述する際、自身が持っている知識とシェルを用いてコンピュータ上に表現される知識との間のギャップをいかに少なくするか、ということであろう。周知のように、レンズ設計の領域では古くからCADの開発が行なわれ、今日これは設計の必須の道具となっているが、CADに対するメッセージであるコマンドが極めてプリミティブな機能に細分化されているものが多く、設計者がレンズ系を脳裡で操作しているレベルとは大きくかけ離れているのが普通である。したがって、先に述べたドメイン・シェルに対する要求に応えるためには、このような既存のCADの制約を受けず(理想的には、どのようなレンズ設計CADを使用していようとも、上記の知識の記述には影響を与えない)、しかも設計者が脳裡で考えるレベルに近い知識表現法を用意する必要がある。OPTEXの開発にあたっては、このような要求に応えるものとして、レンズオブジェクトを考案した。本稿はその概要について報告するものである。
著者
藤田 広明
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第42回, no.応用, pp.277-278, 1991-02-25

1970年代前半にアメリカで起きたオフィス生産性向上の機運はOA(オフィス・オートメーション)の名で日本に上陸した。日本でOAの機運が盛んになったのは1980年代に入ってからのことである。この頃から半導体集積回路の生産が本格化したこと、石油ショックを契機にオフィスを含めて全ての事業活動分野について生産性の向上が模索されたこと、80年代後半に入ると情報の戦略的価値に焦点が当てられオフィスの重要性が見直されようになったこと、日本の経済力上昇と労働の売り手市場からオフィスの快適さが追究されるようになったことなどがOAを今日のように盛んにした原動力であったと思われる。これまでに各メーカー、ユーザー企業、各種の学会や協会などで色々な研究や試みがなされた。その間に技術の進歩によってOAの道具も変化したが、OAという概念についても変化が見られる。OAは10年の歴史を経て広く実用される段階に入ったと言えるが、21に世紀に向けて更に大きく変化する分野の一つと言うこともできる。これまでの実例を参照しながらOAの基本を整理すると共に、オフィスで働く者の一人として未来のOAについても展望してみたい。
著者
鈴木 千里
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第40回, no.基礎理論及び基礎技術, pp.82-83, 1990-03-14

非線形積分方程式であるHammerstein方程式(1.1)u(x)=∫^1_<-1>K(x,s)f(s,u(s))ds+h(x) (x∈I=[-1,1])に対してLobatto積分則を用いる古典的Nystrom法は(1.2)u_i=Σ^n__<j=1>K_<ij>W_jf_j+h_i(i=1,2,..,n)の離散近似方程式系を導く.ここでW_iはLobatto積分則の重み係数,x_jはその分点,u_iは方程式(1.1)の解u(x)のx_i上の近似値,K_<ij>=K(x_i,x_j),f_j=(x_j,u_j),h_i=h(x_i).しかし,積分核k(x,s)やf(s,z),h(x)が十分滑らかな場合,もう少し精密に離散化を図ると,つぎのような離散近似方程式系が得られる.(1.3)u_i=Σ^n__<j=1>K_<ij>w_jf_j+Σ^n__<j=1>Σ^n__<k=1>K_<ij>e_<jk>f_k+h_iここでe_<jk>は,p_<n-1>(x)をLegendre多項式とし,(1.4)e_<jk>=-2/((2n-1)n(n-1)p<n-1>(x_i)p_<n-1>(x_j))本予稿では,(1.3)の離散近似方程式系を導く近似スキムを提案し,古典的Nystrom法との精度的な比較を行う.また数値結果に基づく比較も行う.
著者
鈴木 拡 湊 真一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第72回, no.「情報爆発」時代に向けた新IT基盤技術, pp.245-246, 2010-03-08
著者
山田 昌寛 中村 克彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第48回, no.人工知能及び認知科学, pp.205-206, 1994-03-07

論理プログラミングにはSLD融合にもとづく後向き推論による方式のほかに, 単位融合にもとづく前向き推論による方式があることが知られている. 後向き推論の方式は代表的な論理言語であるProlog, PARLOG, GHCなどに採用され広く使われているが, 前向き推論のアプローチは一般的な論理プログラミングの方式としてこれまであまり発展していない. しかし, この方式には大量のデータに対するデータ駆動型の計算を効率よく行えるという特長がある. この考えにもとづいて, われわれはデータ駆動型の前向き推論によって, reactive open systemを実現するような計算方式を提案し, このための並列論理型言語Monologを開発している. 本報告では並列論理型言語Monologの概要と, 代表的な探索問題である8クイーン問題のMonologによる計算方法とPrologのコンパイル法について報告する.
著者
畠山 敦 川口 久光 加藤 寛次 藤澤 浩道
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.第39回, no.ソフトウェア, pp.1077, 1989-10-16

従来の文書データベースの検索システムでは、あらかじめ定められたキーワードや分類コードを用いて登録されたインデクスファイルに基づいて検索が行われてきた。しかしながら、データベースの普及に伴い、広く一般のユーザか検索システムを使用するようになるにしたがって、キーワードや分類コードのように統制された言葉ではない自由語(非統制語)を用いて、文書の登録、検索が行えるシステムが必要とされてきている。このような自由語検索では、登録者や検索者の意図により自由に検索語が指定されるために、同義語や表記のゆれ(異表記とよぶ)が検索もれの原因となる。本研究の目的は、上記の同義語や異表記を検索システムの内部で自動的に展開して、検索もれのない検索システムを実現することにある。
著者
天野 富夫
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.47, pp.145-146, 1993-09-27

文書画像の構造解析は既存印刷文書をコンピュータに自動入力するための重要な技術であるが、これらの処理においては黒画素の連結成分を追跡して得られた外接矩形の情報が多く用いられている。本稿では黒画素塊の上下境界線分に着目して黒画素塊に対応する矩形を検出する方式を提案する。従来はPC上で黒画素の追跡処理を実用的な速度で行うため、文書画像に閾値以下の短い白ランを黒で置き換えるぼかし処理を適用した後で追跡処理が行われていた。しかしこの手法では異なるカテゴリーに属する黒画素塊(例えば文字と表の枠)がぼかし処理によって連結され一つの外接矩形として検出されてしまうと、以後の解析処理に致命的な悪影響をあたえることが多かった。本方式では上下境界線分にはさまれた部分矩形を中間結果として連結性チェックの対象とすることにより、それらの高さや位置関係あるいは適当な候補領域に対して認識等を行った結果から過剰連結の影響を避けることが可能である。
著者
森嶋 厚行 北川 博之
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.197-198, 1997-03-12

近年, ネットワークの普及に従って異種分散情報資源が容易に利用可能となり, それらの統合利用が重要な課題となっている. 我々は, 構造化文書とリレーショナルデータベースを対象とした, 統合利用環境の研究開発を行なっている. この統合利用環境(図1)では, まず, ラッパーが各情報資源中のデータを統合データモデルであるNR/SD モデルに変換し, メディエータが NR/SD モデルに基づいた統合操作の機構を提供する. [figure] NR/SD モデルは, 入れ子型リレーショナルモデルに, 構造化文書を扱うための抽象データ型 "構造化文書型" (SD 型) を導入したものである. NR/SD モデルの最大の特徴は, 構造化文書と入れ子型リレーション構造を, 動的かつ部分的に相互変換するためのオペレータ "コンバータ" (converter) にある. NR/SD モデルを利用することにより, 次のような応用が可能になる. (1)入れ子型リレーショナル代数系を利用して, 構造化文書群の操作を行なう. (2)入れ子型リレーション構造を構造化文書に変換することにより, 型と独立した検索やメタデータを手がかりとした検索を行なう. さらに, 部分的に変換を行なうことにより, 構造の異なるデータを適当な抽象度で抽象化し統一的に操作することができるので,構造化文書とデータベースという表現の異種性に加え, データ構造の異種性にも対処可能である. これは, 構造化文書のような準構造化データの操作に特に有効であると考えられる. これらの他にも, WWW のような環境において, データベース検索の結果を構造化文書の形式で求めたり, 構造化文書に対するビューを定義する, といったことも可能である. しかし, 従来の NR/SD モデルは以下のような点で制限があった. (1) SD 型で許される文書構造の制約が厳しく, SGML 文書等に現れる例外構造や再帰構造等に直接対応していない. (2) SGML 文書等に現れる, 要素に付随する属性の操作を考慮していない. (3)コンバータによる変換の対象となる, 入れ子型リレーション構造と構造化文書の構造の関係に制約があり, 任意の変換を行なうためには, コンバータ以外の演算も含めた複数の演算を,データ構造に従って複雑に組み合わせ適用する必要がある. 本稿では, NR/SD モデルを改良しこれらの問題点を解決したモデルとその応用例を示す. 特に, 入れ子型リレーション構造と構造化文書を相互変換するコンバータの改良を中心に説明する.
著者
香川 修見 片山 薫 神谷 泰宏 今井 裕之 上林 弥彦
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.54, pp.5-6, 1997-03-12

遠隔教育システム VIEW Classroom は, ネットワークで接続したコンピュータを介し地域的かつ時間的に分散した教師と学生による教育・学習を効果的かつ円滑に支援する仮想教室システムである. 著者らは, 教師が文字・図形・動画で構成されたハイパーメディア教材を学生の画面ヘ提示して講義し, 学生がその上ヘアンダーライン・メモ・リンクを迫加して自分向きのテキスト(ノート)を作成しながら受講するシステムを開発中である. 専門教育では会話や討論が重要な役割を果している. ネットワークに接続したコンピュータがあれば参加できる遠隔教育では, 現実の教室より遥かに多数の学生が参加する可能性がある. 現在運用されている遠隔教育はビデオ技術を中心としたものが多く, 多数の学生から教師の方向への情報伝達手段が十分でないため同期型の会話が容易ではない. VIEW Classroom は多数の学生が参加する遠隔教育での会話をデータべース技術に基づいて支援するシステムであり次の特徴を持っている. (1)教育・学習環境を同期と非同期の会話が複合する「1対多」の会話モデルとしてとらえる. (2)互いに遠隔地にいる参加者のリアルタイムな会話による教育・学習を支援する. (3)多数の学生との同期会話環境を支援するため, 収集した学生の反応を抽象化し教師及び参加者にリアルタイムで提示する. 本稿では遠隔教育支援システムにおける同期・非同期モデルに基づく会話支援機構を説明する.
著者
曾我 有紀子 中島 久美 川田 亜矢子 市川 哲彦 佐藤 浩史 藤代 一成
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.48, pp.363-364, 1994-03-07

我々の身近に観測される逃げ水現象は、蜃気楼の一種で、温度勾配の激しい空気によって光が屈折し起こる現象である。従来のレイトレーシングは真空が前提であるが、M.Bergerらは、空気の層を、屈折率の違う何枚もの薄いガラスの層を重ね、ゆらぎやノイズを付加することで疑似的に表現し、蜃気楼らしい景観を創成することに成功している。しかし、彼らの方法では空気中の屈折率を固定しているので、より現実的な蜃気楼や陽炎を表現するためには、人為的な視覚効果を加えなければならない。そこで本研究では、空間をボクセルに分割し、空間各点での光の挙動を集積できるボリュームレイトレーシングを用い、与えるボリュームデータを時間依存させることによって、物理的原理に合致した逃げ水の表現と陽炎の生成を同時に試みる。本稿は以下のように構成されている。次節でまず逃げ水現象の物理的原理を述べた後、3節ではボリュームレイトレーシングを用いる理由、4節では具体的な画像生成の手続きを示す。最後に、結果の画像を考察し、今後の展望を述べて本稿を閉じることにする。