著者
細木 高志 浜田 守彦 神門 卓巳 森脇 良二 稲葉 久仁雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.395-403, 1991
被引用文献数
5 24

日本, 中国および米国•仏国のボタンの花弁色素組成を調べ, 各国の品種が花色の育種の面でどのように異なっているかを比較検討した.<BR>調査したすべての日本品種 (<I>P. suffruticosa</I>) の花色はCIE座標軸上の赤と青の範囲内に入った. 紅紫色品種は赤味•青味とも高い値を示した. 桃色と白色品種は赤味•青味とも低い値となった. 暗赤色と紅紫色の品種は花弁に多量のアントシアニンを含んでいたが,桃色と白色品種は逆に少なかった. したがって花弁の明度と花弁のアントシアニン含量には高い負の相関がみられた. すべての日本の暗赤色または紅紫色品種は,6種類のアントシアニン (peonidin 3,5-diglucoside/peonidin 3-glucoside, cyanidin 3, 5-diglucoside/cyanidin 3-glucoside, pelargonidin 3,5-diglucoside/pelargonidin 3-glucoside) を含んでいた. 鮮紅色の品種はCy3G5G/Cy3Gを欠いていたが, 大量のPg3G5G/Pg3Gを含んでいた. いくつかの桃色品種はCy3G5G/Cy3GおよびPn3GとPg3Gを欠いていた.<BR>中国品種 (<I>P. suffruticosa</I> と<I>P. suffruticosa</I> var. <I>spontanea</I>) は一般に6種類のアントシアニンのうちPg3Gを欠いており, このことが鮮紅色の品種の少ないことと関連しているようであった.<BR>米国•仏国の雑種品種 (<I>P. suffruticosa</I>×<I>P. lutea</I> or <I>P. delavayi</I>) は, 6種類のアントシアニンのうちPg3GとPg3G5Gを欠いており, このことが深紅色や緋色品種の出現に関連しているようであった. また鮮黄色のchalconeが<I>P. lutea</I>や<I>P. delavayi</I> から導入され, 花弁内でpeonidin や cyanidin と混合し, オレンジ色やクリ色等, ユニークな花色を発現させる要因となっていた.
著者
井上 宏
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.75-82, 1989
被引用文献数
3 10

カラタチ台ウンシュウミカン('興津早生'または'宮川早生') の1~3年生樹 (素焼鉢またはワグナーポット植え) を環境制御室の15,20,25及び30°C室に適宜,搬入し, 昼夜恒温の条件下で栽培し, 新梢上の花芽の分化と発達の温度条件を, 露地においた個体との比較で観察した.<br>1. 1年生樹を, 3月1日または4月1日から各温度室に搬入して, 地上部の生長周期を調査した. 露地区では春枝の伸長停止後, 30~50日して, 春枝上に夏枝が発生した. 温度処理区では高温区ほど春枝の発芽までの日数が短く, その伸長期間も短く, また夏枝発生までの伸長停止期間も短くなった. ただし, 15°C区では春枝上に夏枝は発生せず, 直花が多数に発生した. 20°C区でも夏枝の発生はごくわずかで, 有葉花を含む花蕾が多発した. 一方, 25°C区と30°C区では夏枝が盛んに伸長したが, 花蕾の発生は認められなかった.<br>2. 1年生樹を, 春枝が伸長停止し, 充実を開始した6月中旬より20°Cまたは15°C室におく期間を種々変え, その後25°C室に移して花蕾発生の有無を観察した.15°C室に2か月, 20°C室に2.5か月以上おいた個体で発蕾したが, 低温の室におくほど, また長期間おくほど発蕾数が多くなり, 直花の割合は高くなった. 20°Cまたは15°C室に開花までおいたものでは, 大きな偏平な子房を示したが, 25°C室に早く移した個体ほど腰高の子房となり, 小さかった.<br>3. 3年生樹を花芽の形態的分化期(3月20日) 及びその前後1か月に15, 20, 25°C室に搬入して, 花芽の分化と発達の状態を観察した. 形態的分化1か月前でさえも, 各温度室で極めて短期間 (25°C室で8日で発蕾) に花器が完成され, 開花に至ることを認めた. 開花期間も高温におかれるほど短くなった.<br>4. 2年生または3年生樹を9月下旬から各月に2回, 20°Cまたは25°C室に搬入して, 発蕾及び開花の状況を調査した. 25°C区では10月下旬搬入区から花蕾が発生して開花したが, 20°C区では11月上旬以前には花蕾が極端に少なく, 開花までに落下した.
著者
尾形 凡生 蓮川 博之 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次 岩垣 功 奥田 均
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.245-253, 1996-09-15
被引用文献数
3 10

トリアゾール系ジベレリン(GA)生合成阻害物質によるウンシュウミカンの着花促進効果を生理的に説明するため,栄養器官内のGA<SUB>1</SUB>,GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性の季節的消長ならびにパクロブトラゾール処理および収穫時期がウンシュウミカンの内生GA活性に及ほす影響について調査した.<BR>1,発育枝の葉中におけるGA<SUB>1</SUB>活性は,7月26日から9月26日にかけて高まり,翌年の1月28日にかけて減少した後,3月24日には再び高くなった.GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性は,これとはほぼ逆の変化を示し,9月26日に最も低く,GA<SUB>20</SUB>では11月29日にGA<SUB>19</SUB>様物質では1月28日に最も高くなった.腋芽中の各GAの動態は葉とほぼ一致した.<BR>2,2月1日にパクロブトラゾール1,000ppm溶液の葉面散布を行ったところ,着花数が増加するとともに,3,4月における葉中のGA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性が低下した.しかし,GA<SUB>1</SUB>活性には影響が認められなかった.<BR>3,ウンシュウミカン成木に対して,10月中旬に果実を全収穫する早採り区と,その2か月後に収穫する晩採り区を設けたところ,早採り区の方が晩採り区に比べて,翌春の着花量が多かった.処理樹の内生GA活性は,早採り区の11月末および1月末におけるGA<SUB>20</SUB>様活性が晩採り区に比べ低くなった.<BR>以上の結果より,パクロブトラゾール処理は,活性型GAではなくその前駆物質の含量を低下させるが,これは着花数の多い早期収穫樹の内生GAの反応と一致しており,パクロブトラゾールの着花促進効果を裏付けるものと考えられる.
著者
生山 厳 小林 省蔵
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.89-93, 1993
被引用文献数
3 32

単胚性二倍体のカンキツ,クレメンティン,'リー','清見'および'安芸津10号'('カラ'×ポンカン)を種子親とし,二倍体ナルト×四倍体フナドコより得た三倍体実生を花粉親として交配を行った.交配果は成熟時に収穫し,各果実より取り出した完全種子を試験に供した.<BR>完全種子より得た実生は大部分が二倍体で,その他異数体や一部三倍体および四倍体も認められたが,クレメンティンを種子親にしたものから2個体,'リー'を種子親にしたものから1個体の半数体が得られた.半数体の胚は,二倍体の胚と比較して大きさにほとんど差がなく,発根も正常に起こり,発根後の直根の伸びも順調であった.しかし,土に移植した後は成育は著しく劣った.これら半数体について核リボソームRNA遺伝子および葉緑体DNAの分析を行い,その起源を推定した.その結果,いずれの個体についても種子親に特異的なバンドが認められたが,花粉親に特異的なバンドは認められず,これらはいずれも種子親起源の半数体であると考えられた.
著者
竹田 義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.615-623, 1996-12-15
被引用文献数
1 3

主に切り花として利用される種子繁殖性ダイアンサスであるミカドナデシコ,ヒゲナデシコ,カワラナデシコ,およびハマナデシコの開花に対する低温と日長の影響を調べた.<BR>1.ミカドナデシコ'ミスビワコ'とヒゲナデシコ'黒川早生'は抽だい,開花に対して低温を必要とし,戸外の自然条件では12月中旬までの低温遭遇によって低温要求が満たされた.最低気温7°Cは花芽形成に有効な温度であったが,14°Cは低温として感応しにくい温度であった.長日は,低温遭遇した株の抽だいと開花を促進したが,低温を受けていない株に対しては栄養生長を促した.<BR>ミカドナデシコ'ミスビワコ'とヒゲナデシコ'黒川早生'は,吸水種子の段階では低温に反応せず,本葉が9~10節展開した苗齢に達した段階で低温に反応する緑植物春化であった.<BR>ヒゲナデシコの低温要求性には明確な品種間差異があり,5°Cの低温処理で,抽だい率が100%に達するための処理期間は0~9週間であった.<BR>2.カワラナデシコ'改良河原撫子赤色'とハマナデシコ慶紅撫子高性赤色'の開花には,低温要求性がなく,日長の影響も小さかった.両種の生育,開花を規定する主たる要因は温度であり,高温下では短期間に生殖生長に移行した.
著者
太田 弘一 森岡 公一 山本 幸男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.125-132, 1991
被引用文献数
5 35

ファレノプシスは近年生産の伸びが大きい花卉であり, その好適な栽培条件の設定のために研究が進められている. ファレノプシスの花序は低温条件によって誘導されることが知られており (17), 山上げ栽培や人工低温処理を行うことによって, 早期出荷が行われている. また, 温度処理の際の, 株の充実状態や光•変温条件などの環境要因も花序形成に影響することが知られている (3,8, 12,14, 17,18, 19).<BR>一方, ファレノプシスはCAM (Crassulacean acid metabolism) 植物として知られている (1,7). CAM植物は夜間に吸収したCO2を有機酸の形にして細胞の液胞中に蓄積し, 昼間にそれを分解して, 光エネルギーを利用してでんぷん合成を行うという特徴的な光合成を行う. この夜間と昼間を通した, CO2吸収からでんぷん合成に至る過程をCAM型光合成と呼ぶ (13, 14).典型的なCAM型光合成のCO2吸収の日周変動パターンは, 夜間の高い吸収 (phase I), それに続く光が当たった直後の高い吸収 (phase II) とその後の急激な減少およびCO2吸収がほとんど見られない期間 (phase III), そして, 夕方に再び低い吸収が見られる (phase IV), という四つの相に分けられる (13). そして, この過程を通して, 夜間に気孔を開き, 蒸散の多い昼間には気孔を閉じているために, CAM植物は強い乾燥耐性を獲得している (6).<BR>CAM植物には, 生育条件によってC3型光合成とCAM型光合成との間で変動が見られるfacultative-CAM plantと, 生育条件にかかわらずCAM型光合成を行うobligate-CAM plantがある (13). さらに,いずれのCAM植物も, 水分, 昼夜温, 光強度, 日長などの環境条件や葉齢, 窒素栄養条件によってCAM型光合成が影響を受けることが知られている (6, 11,13, 14).したがって, ファレノプシスのCAM型光合成も, これらの要因によって変動し, それが生育および花序形成になんらかの影響を及ぼすことが考えられる.<BR>本研究は, 上述の要因のうちで生育と密接に関連した外的要因の水分, 温度, 光の3条件および内的要因の葉齢と花序形成の有無に視点を当て, それらによってファレノプシスのCAM型光合成がどのような影響を受けるかを明らかにし, ファレノプシスの好適な栽培条件設定のための基礎的知見を得ることを目的として行った.
著者
文室 政彦 宇都宮 直樹
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.1146-1148, 1999-11-15
被引用文献数
4 4

加温ハウス内において根域制限ベッドに植栽した7年生カキ'刀根早生'を供試し, 地中加温が新梢生長と果実発育に及ぼす影響を検討した.1月12日から4月15日まで, 地中に埋設したパイプに温湯を循環させて地温を20℃に維持する区と無処理区を設けた.地中加温は発芽および開花期にはわずかな影響しか及ぼさなかったが, 新梢生長および果実の成熟を促進し, 可溶性固形物含量を増加させた.しかし, 果実の結実率と肥大生長は地中加温によって低下し, 減収した.
著者
近泉 惣次郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.13-18, 2002-01-15
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

'大谷'イヨの果皮障害の発生原因を明らかにすると共に, 防止対策についても二三の検討を加えた.'大谷'イヨの果皮障害は主に貯蔵中に発生するが, 樹上の果実にも認められた.'大谷'イヨの果皮障害には3種類あることが明らかになった.一つは, 果実が受ける高温並びに日射が主因となった障害である.この障害は樹上の果実に発生する.そこで, この障害に対して"日焼け症"と呼称した.二つめは収穫時には肉眼的には健全な果実でも, 貯蔵中に果実が樹上で受けた果面の陽光部に多数の小さな斑点が発生するものである.この障害に対しては"コハン症"と呼称した.他の一つは貯蔵中に発生するが, この原因は貯蔵中の低温が主因であり, -2℃の貯蔵によって発生した.この障害は果面が赤くただれた火膨れ症状を呈するため"ヤケ症"と呼称した."日焼け症"は高温や日射を軽減する袋かけにより防止できた.20℃の予措処理とポリエチレンフィルムによる個包装を組み合わせることにより, 貯蔵中に発生する"コハン症"や"ヤケ症"の発生を抑制することができた.しかし, 個包装を開封することによってこれらの障害が発生した.
著者
山下 謙一郎 若生 忠幸 小原 隆由 塚崎 光 小島 昭夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.444-450, 2005-11-15
参考文献数
27

ネギのさび病抵抗性を改良するため, '聖冬一本', '岩井2号', '長寿', 'せなみ', '冬扇一本', '豊川太'の6品種を育種素材(C_0)として循環選抜を行った.循環選抜の1サイクルは2段階からなり, 最初の年に自殖および自殖系統選抜を行い, 2年目に相互交配および母系系統選抜を行った.2サイクルの循環選抜により, 10母系系統からなる改良集団(C_2)を得た.さらに, 2世代の自殖と自殖系統選抜を行い, 13のC_2S_2系統を得た.実施した循環選抜の効果を評価するために, 2回の接種検定により上記の選抜で得られた全世代のさび病抵抗性の程度を比較した.春季および秋季の接種検定において, 発病程度の指標であるarea under the disease progress curve (AUDPC)の値は循環選抜が進むにともない明らかに減少し, 抵抗性の向上が認められた.C_1からC_2世代にかけて抵抗性の変化は小さかったものの, C_2S_2世代では大幅な向上が認められ, C_2S_2系統のAUDPCは素材品種の約38%となった.以上の結果, ネギのさび病抵抗性の改良に循環選抜は有効であることが実証された.
著者
浅尾 俊樹 北澤 裕明 伴 琢也 Pramanik M. H. R. 松井 佳久 細木 高志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.3, pp.247-249, 2004-05-15
参考文献数
9
被引用文献数
1 21

8種の葉菜類の自家中毒物質を探索するために水耕葉菜類に用いた活性炭に吸着された物質をGC-MS法で分析した.その物質は乳酸,安息香酸,m-ヒドロキシ安息香酸,p-ヒドロキシ安息香酸,バニリン酸,アジピン酸およびコハク酸であった.同定された物質の中で,顕著に生育抑制を引き起こす物質を探るため各葉菜類の苗を使ったバイオアッセイを行った.その結果,パセリではアジピン酸,セロリでは乳酸,ミツバでは安息香酸. p-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸,レタスではバニリン酸,葉ゴボウではコハク酸,シュンギクでは安息香酸,m-ヒドロキシ安息香酸およびコハク酸,チンゲンサイでは安息香酸およびp-ヒドロキシ安息香酸,ケールでは安息香酸,p-ヒドロキシ安息香酸およびアジピン酸が生育抑制を顕著に引き起こす物質として認められた.
著者
加藤 松三 清水 弘子 久松 完 小野崎 隆 谷川 奈津 池田 廣 市村 一雄
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.385-387, 2002-05-15
被引用文献数
2 19

カンパニュラメジウム切り花の受粉花と未受粉花の老化とエチレンとの関係を調べた.カンパニュラの小花の老化はエチレン処理により促進された.受粉により花弁の老化は著しく促進されたが, 柱頭の圧砕ならびに柱頭を含む花柱の除去は老化を促進しなかった.未受粉花では小花全体, 花弁および雌ずいのエチレン生成量は非常に低い値で推移したが, 受粉によりこれらの器官からのエチレン生成量は著しく増大した.エチレン作用阻害剤であるチオ硫酸銀錯塩処理は未受粉花の老化を著しく抑制した.以上の結果より, カンパニュラメジウムの花はエチレンに対する感受性が高く, 受粉はエチレン生成を増加させ, 花弁の老化を促進するが, 未受粉花では老化に対するエチレンの関与は少ないと考えられた.
著者
寺岸 明彦 神原 嘉男 小野 浩
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.5, pp.715-720, 1998-09-15
参考文献数
12
被引用文献数
4 1

イチジク(品種'桝井ドーフィン')の穂木を12月1日に挿し木し, 加温したガラス室内またはファイトトロン内で異なる光強度下において45日間育苗した.1月15日に底面吸液と潅水チューブによる給液を併用した非循環閉鎖型養液栽培システムに定植した.挿し木1年目から果実生産を行う方法を検討するため, 苗質が着果, 生長ならびに果実品質におよぼす影響を調査した.育苗期間中にファイトトロン内で8.5klxの照明による14時間日長処理を行うことにより, 定植時における葉のクロロフィル含量が増加し葉色値が高くなった.定植時において第3葉の葉色値が25以上の株では5節目までにおける着果数が増加した.しかし, 17klxの照明による処理を行っても葉色値および着果数は8.5klx照明区と差はなかった.ガラス室内で日没後に0.2klxの照明による14時間日長処理を行っても葉色値および着果数は無処理区と同程度であった.収穫は5月27日から始まり, 7月10日までに全着果数の約85%の果実が収穫できた.ファイトトロン内で育苗した区はガラス室内で育苗した区に比較して定植後の栄養生長が促進され, 6月上旬までは果実肥大も促進されたが糖度はやや低かった.両区とも6月中&acd;下旬の梅雨期間中は光合成速度が低下した.しかし, 蒸散速度と吸液量は低下せず, 果実肥大にも影響はなく, 糖度は著しく低下した.7月には, フアイトトロン内で育苗した区の光合成速度はガラス室内で育苗した区よりも高かったが, 糖度は逆に低かった.
著者
黒田 治之 千葉 和彦
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.91-99, 2006-01-15
被引用文献数
3

無剪定状態で管理した樹齢11〜13年生のわい性および半わい性台木を利用したリンゴ'スターキング・デリシャス'樹を用いて, 根の成長に及ぼす栽植密度の影響について検討した.330樹/ha区の根系は太い側根と下垂根で構成されていたが, 3178樹/ha区では主に側根であった.根系幅は栽植密度の増加に伴って減少したが, 隣接樹の根系における交差深度は増加した.3178樹/ha区では隣接樹の根系間で根組織の癒着現象が観察された.根系幅/樹冠幅比は栽植密度の増加に伴って減少し, 根系幅の方が樹冠幅より密度効果を受けやすいことが示された.根重の垂直分布比率は栽植密度による影響が認められなかったが, 1樹当たり根重は各層とも栽植密度の増加に伴って減少し, その減少は0〜30cm層の大根で著しかった.1樹当たり根重(R)は各台木樹とも, 栽植密度(ρ)の増加に伴って減少した.Rとρの関係は, 次の逆数式によって表された.1/R=A_<Rρ>+B_R (1)ただし, A_RとB_Rは樹齢や台木によって変化する係数.幹断面積(θ)と1樹当たり根重(R)の関係は各台木樹とも, h>1である次の相対成長式で表された.R=Hθ^h (3)ただし, Hは台木によって変化する係数.1 ha当たり根重は1樹当たり根重と異なり, 各層とも栽植密度の増加に伴って増加し, その増加は小・細根で顕著であった.1 ha当たり根重(R^^-)は各台木樹とも, 栽植密度(ρ)の増加に伴って増加した.R^^-とρの関係は, 式(3)のR=Hθ^h, 式(4)の1/θ=Aρ+Bおよび式(5)のR^^-=Rρから導かれる式(6)によく当てはまった.R^^-を最大にする栽植密度(ρR^^-_<pk>)は式(7)で与えられる.R^^-=Hρ/(Aρ+B)^h (6)ρR^^-_<pk>=B/A(h-1) (7)ただし, AとBは樹齢や台木によって変化する係数.以上の結果から, 1 ha当たり根重は栽植密度の増加に伴って増加するが, ρR^^-_<pk>において減少に転じることが示された.
著者
片岡 郁雄 杉山 明正 別府 賢治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-6, 2003-01-15
被引用文献数
1 57

光感受性の高いブドウ品種'グローコールマン'果実のアントシアニン蓄積における紫外線の関与について,成熟開始期の果実切片を用いて調査した.果実切片を太陽散乱光のもとで各種の資材;ガラス板,ポリオレフォンフィルム,ポリ塩化ビニール,紫外線除去塩化ビニールフィルム,エチレンテトラフルオロエチレンフィルム,ポリカーボネート樹脂板,ガラス繊維強化アクリル板で被覆して,72時間培養した.果皮のアントシアニン含量は,紫外線透過率の低い資材で被覆した場合,大きく減少した.人工的な紫外線照射(ピーク波長352nm)はアントシアニン蓄積を著しく促進させた.UV-A領域(320-400nm)での0.4W・m^<-2>までの紫外線照射によりアントシアニン含量は急増し,2.3W・m^<-2>まで高いレベルで平衡状態を保った.一方,白色光も8.5W・m^<-2>までの照射はアントシアニン含量を緩やかに増加させた.紫外線に4.1W・m^<-2>の白色光を組み合わせて照射した場合,アントシアニン含量はさらに増加した.以上の結果から,ブドウブローコールマン'果実のアントシアニン蓄積には紫外線成分が関わっており,施設の被覆資材の選択には,紫外線透過特性を考慮する必要があることが示された.
著者
市村 一雄 上山 茂文 後藤 理恵
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.534-539, 1999-05-15
被引用文献数
5 6

バラ切り花における可溶性炭水化物, 特にミオイノシトール, メチルグルコシドおよびキシロースの役割を調べるため, 30g・liter^<-1>スクロースと200mg・liter^<-1>8-ヒドロキシキノリン硫酸塩(HQS)の連続処理によるバラ切り花の器官別の炭水化物含量の変動を調べた.この処理により, 品質保持期間は延長し, 切り花全体の新鮮重は高く維持された.これは花弁の新鮮重の増加によっていた.花弁では, 収穫時にはフルクトース, グルコースおよびスクロースが主要な構成炭水化物であった.キシロース濃度は収穫時には低かったが, 収穫後3日目には著しく増加した.処理の有無によりそれぞれの炭水化物濃度に著しい差はなかった.花弁を除いた花器では, グルコース, フルクトースおよびスクロースが主要な炭水化物であったが, 処理により著しく変動することはなかった.茎ではスクロース, フルクトース, メチルグルコシドが主要な炭水化物であった.これらの炭水化物濃度は時間の経過にともない減少したが, スクロース処理はこの減少を抑制した.葉ではスクロースが最も多く, ミオイノシトールがこれに次いだ.スクロース濃度は収穫後著しく減少したが, 処理によりこの減少は抑制された.ミオイノシトールは処理の有無による変動はほとんどみられなかった.つぼみに各種炭水化物を処理したところ, メチルグルコシドとキシロースは開花を促進したが, ミオイノシトールは促進しなかった.以上の結果より, メチルグルコシドとキシロースはバラ切り花において代謝糖として機能していることが示唆された.
著者
矢野 隆 新開 志帆 井上 久雄 森口 一志
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.711-717, 2000-11-15
被引用文献数
4 3

ユスラウメ台木を用いたモモ栽培においては, '川中島白桃'では衰弱症状が発生しやすいが, 'あかつき'は衰弱症状の発生が少ない.そこでユスラウメ台木樹における衰弱症状発生に関わる要因を炭水化物栄養の面から明らかにするため, 普通台木とユスラウメ台木に接いだ両品種について, 細根, 1年生枝, 新梢, 葉のデンプンと可溶性糖類の季節的消長を比較した.休眠期のデンプン, 可溶性糖類の消長は, 同じ台木では, 品種による明らかな差はみられなかった.ただし, 両品種ともにユスラウメ台木樹では開花前の細根のデンプン含量が普通台木樹の半分程度であった.果実生育期のユスラウメ台木の'川中島白桃'における細根, 新梢のデンプン含量は果実生育期間を通じて普通台木のものより低かった.これに対して, 'あかつき'の細根, 新梢のデンプン含量は両台木間で顕著な差はみられなかった.これと同様な傾向は細根の総糖およびソルビトール含量についてもみられた.なお, 新梢の糖含量や1年生枝, 葉のデンプン, 糖含量等については, 両品種間で樹勢衰弱につながる顕著な差は認められなかった.これらの結果から, ユスラウメ台木の'川中島白桃'で衰弱症状が発生しやすい一つの原因は, 果実生育期における細根のデンプンおよびソルビトールや, 新梢におけるデンプンの欠乏によるものと考えられる.
著者
文室 政彦 上田 和幸 沖嶋 秀史
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.364-372, 1999-03-15
被引用文献数
4 6

1995年に, 被覆条件下の根域制限ベッド(培地量160 liter/樹)に植栽した5年生ニホンナシ'幸水'と'豊水'を供試し, 乾物生産および分配の季節的変化を検討した.11月初旬の1樹当たり全樹体新鮮重は, '幸水'が約18 kg(82t/ha), '豊水'が約21 kg(96 t/ha)であった.収量は'豊水'が'幸水'より多かった.2品種とも生育が進むにつれて, 器官別乾物増加量が有意に増加し, 1年間の1樹当たり乾物生産量は, '幸水'が約3.37 kg(15 t/ha), '豊水'が約3.75 kg(17 t/ha)であった.単位葉乾物重当たりおよび単位葉面積当たり乾物生産量は, 生育が進むにつれて有意に増加した.1年間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は, '幸水'が約6.33 kg・kg^<-1>, '豊水'が約6.59 kg・kg^<-1>, 1年間の単位葉面積当たり乾物生産量は, '幸水'が0.54 kg・m^<-2>, '豊水'が0.53 kg・m^<-2>で, いずれも品種間差異はなかった.2品種とも生育初期には, 新梢, 葉および細根への分配率が高く, 果実肥大期には果実への分配率が高かった.収穫後は旧枝への分配率が増加した.1年間の乾物分配率については, 品種間差異はなく, 果実に31%前後, 新梢に18%前後, 旧枝に16%程度, 葉に15%程度, 台木部に19%前後であった.2品種とも1日間の単位葉乾物重当たり乾物生産量は生育初期から9月初旬まで高く, その後は徐々に低下した.1日間の単位葉面積当たり乾物生産量も7月初旬から8月初旬まで最も高く, その後は徐々に低下した.'幸水'では1年間の乾物生産量が7月初旬までに42%, 9月初旬までに79%, '豊水'ではそれぞれ44%, 85%が生産された.
著者
大川 克哉 小原 均 栗田 由紀 福田 達也 Khan Zaheer Ulla 松井 弘之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.129-134, 2006-03-15
被引用文献数
1

ジャスモン酸誘導体であるn-propyl dihydrojasmonate (PDJ)のニホンナシ'豊水'に対する摘果効果とその作用機構について調査した.1996年には,満開17日前,12日前,満開日および満開7日後の4時期に500,1000および2000ppm PDJを,1998年には満開18日および14日前の2時期に500および750ppm PDJを花そうに散布処理した.PDJ処理は落果を誘起し,摘果効果を示した.その摘果効果は処理時期が早いほど,また処理濃度が高いほど高く,500〜750ppmの濃度で満開17〜18日前に処理すると適度な摘果効果が得られた.これらのPDJを処理した果そうでは,果そうあたりの着果数が0〜2果の果そうの割合が約64%となり,無処理果そうの16%と比べて著しく高くなった.さらに,落下した果実の花序軸上の位置についてみると,PDJを処理した果そうでは,基部から1〜3番目の果実が落下しやすい傾向があり,特に1および2番目の果実では約90%の果そうで落下が認められた.果重,果肉硬度,糖度および酸含量には処理間で大きな差は認められなかった.花柱内での花粉管伸長はPDJ処理花と無処理花とで差は認められなかったものの,満開時における胚珠の発育状態について観察したところ,PDJ処理花では胚のうが萎縮した異常な胚珠が多く認められた.これらのことから,PDJはニホンナシ'豊水'に対して開花前に処理すると高い摘果効果を示すことが明らかとなり,摘果剤として実際栽培で利用できる可能性が示唆された.また,PDJが落果を誘起する原因は,胚珠の正常な発育を阻害することによる受精阻害に起因するものと考えられた.
著者
菊地 郁 金山 喜則 若本 由加里 金浜 耕基
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.446-448, 2000-07-15
被引用文献数
3 7

デルフィニウムの抽だいと花序の品質に及ぼす苗齢の影響を調べるため, 展開葉数2&acd;3, 4&acd;5, 6&acd;7枚の苗を, 8および24時間日長下で栽培した.抽だいまでの日数は長日下で短くなったが, 苗齢による一定の傾向はみられなかった.小花数は, 長日下では展開葉数2&acd;3枚の苗を用いた場合, 20花程度と少なかった.一方, 短日下での小花数は苗齢にかかわらず40あるいはそれ以上となった.次に, 抽だいおよび花序の品質に及ぼす温度と日長の組み合わせ処理の影響を調べた.温度・日長処理は昼温/夜温が24/19および17/12℃に設定されたファイトトロン内で, 8&acd;24時間日長下において18週間行った.抽だいと開花までの期間, 抽だい時の葉数はいずれの温度区においても短日下で増加したが, 日長の影響は24/19℃に比べて17/12℃において著しかった.24/19℃では16時間以上の日長下で抽だい率が100%に達した.一方, 17/12℃では16時間日長による抽だい率は50%にとどまったが, 20時間以上の長日下では100%に達した.16&acd;20時間の日長下で, 小花数においては日長の影響は小さかったが, いずれの日長でも24/19℃に比べて17/12℃で多かった.
著者
上田 悦範 池田 英男 今堀 義洋
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.446-452, 1998-05-15
被引用文献数
5 1

夏季および冬季に養液栽培(Nutrient Film Technique : NFT)されたホウレンソウの品質および貯蔵性を調べた.1. 温暖地の高温期においてもホウレンソウの高温条件に適応する品種を選ぶことと, 培養液温度を冷却すること等により十分な生長が期待できた.2. 夏・冬季栽培ホウレンソウの収穫時のアスコルビン酸含量, クロロフィル含量とも差異はなかった.3. 貯蔵中(8℃)の外観よりみた鮮度の低下は夏季と冬季に栽培したものの間に差異はなく, 貯蔵12日程度で商品性の限界に達した.貯蔵中のアスコルビン酸含量は冬季で栽培されたものでは鮮度低下や, クロロフィルの損失に伴って徐々に低下するが, 夏季のものの貯蔵中のアスコルビン酸含量は鮮度低下よりも速く, 短期間(5日以内)に低含量になった.