著者
張 偉 深井 誠一 五井 正憲
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.3, pp.347-351, 1998-05-15
被引用文献数
3 1

日本産野生ギク7種(キクタニギク, シマカンギク, リュウノウギク, サツマノギク, アシズリノジギク, イソギク, ナカガワノギク)について頭状花序の分化・発達過程を走査型電子顕微鏡で観察した.頭状花序の分化は, 未分化, ドーム形成, 総包形成前期・後期, 小花原基形成前期・後期, 花冠形成前期・中期・後期の9段階に区別できた.頭状花序の分化時期, 発達スピードおよび開花時期は種によって異なった.筒状花の発達過程において, 雄ずいの分化前に花筒が閉じる種と分化後に花筒が閉じる種が見られた.
著者
矢羽田 第二郎 野方 仁
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.987-992, 1999-09-15
被引用文献数
3 6

イチジク果実の糖含量と糖組成比について, 秋果および夏果の品種間差異, 果実の部位, 結果節位による相違を検討し, 以下の結果を得た.1. 供試した普通型10品種の秋果と, サンペドロ型3品種および普通型1品種の夏果のすべてで, 小果の全糖含量に占める果糖, ブドウ糖の合計値の割合が90∿95%以上に達し, ショ糖の割合は低かった.しかし, 糖組成比の品種間差異はショ糖で顕著に認められた.2. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 成熟期に小果, 果托の果糖, ブドウ糖含量が急増するとともに, 全糖含量に占めるブドウ糖の割合が低下して果糖の割合が高まった.収穫期における糖組成比は, 両品種とも小果, 果托の間に有意な差がなかった.3. 小果, 果托の重量は, 収穫前の約2週間で急激に増加し, その際, '桝井ドーフィン'は果托, '蓬莱柿'は小果の重量が大きくなった.小果, 果托の重量から換算した部位別の糖含量は成熟期に急増し, とくに小果の重量が大きくなった'蓬莱柿'では, 小果の各組成糖の含量が果托に比べて顕著に多くなった.4. '桝井ドーフィン'と'蓬莱柿'の秋果では, 結果節位が高い果実で, 小果の全糖に占めるショ糖の割合が高くなった.結果節位の上昇に伴う糖組成比の変化には, 秋季の気温低下が影響していると考えられた.
著者
田尾 龍太郎 羽生 剛 山根 久代 杉浦 明
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.595-600, 2002-09-15
被引用文献数
8 12

ウメ(Prunus mume Sieb. et Zucc.)の多くの栽培品種は, 他の多くのバラ科果樹類と同様にS-RNaseの関与する配偶体型の自家不和合性を示す.しかしながら, 中には自家和合性の品種も存在し, これらの品種はいくつかの点で自家不和合性品種に比べて優れている.我々は, 以前の研究で, ウメの自家和合性形質の分子マーカーとして利用可能なS-RNase遺伝子(S_f-RNase遺伝子)を見い出した.今回は, 自家和合性品種である'剣先(S_fS_f)'と自家不和合性品種の'南高(S_1S_7)'のS-RNaseを比較検討することでS_f-RNaseの性質を明確にしようとして, 以下の実験を行った.'剣先(S_fS_f)'と'南高(S_1S_7)'の花柱からcDNAライブラリーを構築し, S_f-, S_1-, およびS_7-RNaseをコードするcDNAをクローニングした.これらcDNAより推定されるS_f-, S_1-, およびS_7-RNaseのアミノ酸配列にはT2/S型RNase特有の2つの活性中心とバラ科植物のS-RNaseに共通してみられる5種類の保存領域が存在した.RNAブロット分析を行ったところ, ウメのS-RNase遺伝子は, 他のPrunus属のS-RNase遺伝子と同様に葉では転写されておらず, 花柱のみで転写されていることが明らかになった.また, '剣先'のS_f-RNase遺伝子と'南高'のS-RNase遺伝子の転写産物量に差異は見いだされなかった.花柱粗抽出液の2次元電気泳動を行ったところ, S_f-RNaseは他のS-RNaseと同様の分子量や等電点, そして免疫学的特性を持つことが示された.本研究の結果は, ウメのS_fハプロタイプの個体の示す自家和合性はS_f-RNase遺伝子に強く連鎖したpollen-S遺伝子の作用によって生じている可能性を示唆するものであろう.
著者
藤岡 唯志 藤田 政良 宮本 芳城
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.117-123, 1999-01-15
被引用文献数
4 8

エンドウの試験管内での世代促進技術を開発するため, 種子を無菌は種して培養し, 開花率, 結莢率が高くなる培養容器, 容器の栓, 温度, 照度, 照明時間, 培地成分などの培養条件を明らかにした.1. 試験管内の培養条件においても, エンドウは生育, 開花に関して, ガラス温室で栽培した時と同じ品種特性を示した.早生で短節間である'美笹'など絹さや品種では開花率, 結莢(結実)率がともに100%であったが, 晩生で節間の長い'きしゅううすい'などの品種では, 開花率, 結莢率が低かった.2. 開花率, 結莢率が最も高くなる培養容器と栓は, '美笹', 'きしゅううすい'ともに, φ30×200mm試験管と綿栓であった.3. 25℃で培養した場合, 20℃区に比べて, '美笹'では, 開花および結莢が早くなった.'美笹', 'きしゅううすい'ともに, 10, 000lxの照明は3, 000lxに比べて, 開花率, 結莢率が高く, 開花が早くなった.また, 'きしゅううすい'では24時間照明は16時間に比べて, 開花率が高く, 開花が早く, 結莢率が高くなった.4. 'きしゅううすい'の結莢率が最も高くなる培地組成は, MS培地の窒素濃度が標準, ショ糖濃度が3%, ホルモンはNAA0.5mg・liter^<-1>添加又は無添加であった.5. 'きしゅううすい'の培養において, 培地へわい化剤ウニコナゾール10mg・liter^<-1>やアンシミドール10mg・liter^<-1>を添加することにより, 無添加に比べ, 茎長と節間長が短く, 節数が少なくなった.また, ウニコナゾール添加区は, 開花率, 結莢率が高く, 開花および結莢が早くなった.
著者
土師 岳 八重垣 英明 山口 正己
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.97-104, 2004-03-15
被引用文献数
19

日待ち性が異なる生食用モモ品種について,果実の肥大,成熟および老化の過程を通して果実重,果皮の地色のa値,果肉硬度,糖度,滴定酸音量,エチレン生成量の推移を調査し,熱度の指標の相互関係すなわち成熟特性の差異とエチレン生成特性との関連を検討した.溶質品種の'あかつき','櫛形白桃'および'長沢自派'はいずれも満開後日数の経過とともに果実肥大,地色の抜け,桧皮の上昇,滴定酸音量の低下が進み,特定の日以降収穫によりエチレン生成と軟化が明瞭に促進されるようになった後,樹上でのエチレン生成が認められるようになった.しかしエチレン生成と熱度の指標の進行との間には大きな品種間差異が見出され,'櫛形白桃'は果実肥大の途中で地色が残り,精度が急速に増加する前であってもエチレンを多く生成し軟化が進んだのに対して,軟化が遅延する'長沢自派'では果実肥大と植皮の上昇を終え地色が抜けた後にエチレン生成が始まった.また硬肉品種の'有明'ではエチレン生成と収穫後の軟化が認められず,樹上での果肉硬度は4.0kg前後までしか低下しなかったものの,果実肥大,地色の抜け,糖度の上昇,滴定酸音量の低下は溶質品種と同様に進んでいた.以上の結果から,モモでは果実の軟化特性とともに成熟特性にも大きな品種間差異が認められ,その発現にはエチレン生成開始時期の遺伝的差異が重要な働きをしていると考えられた.
著者
小森 貞男 副島 淳一 工藤 和典 小松 宏光 京谷 英壽 伊藤 祐司 別所 英男 阿部 和幸 古藤田 信博
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.73-82, 1999-01-15
被引用文献数
2 3

前報までに品種との対応のつかなかった(S_Ja, S_Jc), (S_Ja, S_Je), (S_Ja, S_Jf), (S_Jb, S_Jc), (S_Jb, S_Jd), (S_Jb, S_Je), (S_Jb, S_Jf), (S_Jd, S_Je)の各S遺伝子型に対応する品種・系統を選抜するため, 'はつあき', 'レッドゴールド'および'金星'のS遺伝子型の解析, 'はつあき'戻し交雑実生群, 'いわかみ'と'ゴールデン・デリシャス'の交雑実生群, '国光'X'紅玉'の交雑実生群の解析を行った.その結果, 以下に示した15種類のS遺伝子型に対応する品種・系統が決定された.そのうち下線を施した品種・系統のS遺伝子型が本報告で新たに判明したものである.(S_Ja, S_Jb)'ゴールデン・デリシャス' (S_Ja, S_Jc) <(4)-424>___-, <(4)-425>___- (S_Ja, S_Jd) '東光' (S_Ja, S_Je) <'レッドゴールド'>___-, <'金星'>___-, <カロ不明>___-, <レロ18>___- (S_Ja, S_Jf) <(4)-4186>___-, <(4)-4195>___- (S_Jb, S_Jc) <'はつあき'>___-, <盛岡52号>___-, <(4)-511>___- (S_Jb, S_Jd) <(4)-300>___-, <(4)-330>___-, <(4)-725>___-, <(4)-4189>___-, <(4)-4190>___- (S_Jb, S_Je) <(4)-150>___-, <(4)-743>___- (S_Jb, S_Jf) <盛岡53号>___-, <(4)-1>___-, <(4)-6>___-, <(4)-15>___-, <(4)-516>___-, <(4)-4187>___-, <(4)-4270>___-, <(4)-4271>___- (S_Jc, S_Jd) '紅玉', 'ひめかみ' (S_Jc, S_Je)'デリシャス', <(4)-161>___-, <(4)-247>___-, <(4)-267>___- (S_Jc, S_Jf) 'ふじ', <'新光'>___-, <イ-661>___-, <(4)-69>___-, <(4)-104>___- (S_Jd, S_Je) <東北5号>___-, <イ-172>___- (S_Jd, S_Jf)'千秋', 'いわかみ', <イ-687>___- (S_Je, S_Jf) '国光'
著者
松本 省吾 小森 貞男 北原 健太郎 今津 里美 副島 淳一
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.236-241, 1999-03-15
被引用文献数
3 30

リンゴ(Malus x domestica Borkh.) 13品種と'恵'後代10個体のS遺伝子型を, S複対立遺伝子群に特異的なPCR-RFLP解析法により同定した.また, 本解析法により, 'ガラ', 'ふじ'のS遺伝子型を再確認した.'金星'および'きざし'のS遺伝子型は両親から予想されるいずれの遺伝子型とも一致しなかった.'金星', 'きざし'の作出には, それぞれ, S_9, S_3遺伝子をもつ花粉親が用いられた可能性が示唆された.'あかぎ', 'つがる', '陽光'は花粉親が不明であるが, それぞれ, S_7, S_7, S_9遺伝子をもつ花粉親が作出に用いられたと考えられた.自家和合品種'恵'のS遺伝子型はS_2S_9と同定され, 両S遺伝子上に変異は見られなかった.'恵'とS遺伝子型の異なる'千秋'(S_3S_9)の正逆交雑により種子形成が見られたことから, '恵'の雌ずい, 雄ずいともに正常であることが判明した.一方, '恵'と同じS遺伝子型である'レッドゴールド'または'金星'との正逆交雑では全く種子形成が見られなかったことから, これらは, S遺伝子型に基づく不和合性を示したと考えられた.これらの結果から, '恵'の自家和合性はS対立遺伝子群の変異によって獲得されたものではないことが示唆された.
著者
近泉 惣次郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.306-311, 2003-07-15
被引用文献数
4 3

'清見'果実のこはん症の発生に及ぼす原因を明らかにすると共にその防止対策を確立する目的で本研究を行った.'清見'の貯蔵中の果実に発生するこはん症は,果実が樹上で受けた日射並びに日照が原因の一つであることを初めて明らかにした.すなわち,収穫時には肉眼的にみて健全な果実であるが,果実が樹上で受けた果面の陽光部に,貯蔵中にこはん症が発生し,日射を受けていない日陰の果実ではその発生がほとんど認められなかった.陽光部の果面温度は同じ果実の日陰部のそれより10℃以上高かった.快晴の日における果実からの蒸数量は陽光却で日陰部の3倍,夜間でも25%も高かった.このことから陽光部の蒸散量とこはん症の発生は密接な関係があるものと思われた.果皮の陽光部と日陰部における無機成分含量には有為な差は認められなかったが,デンプン含量と全糖含量はわずかであるが陽光部のブラベドで高かった.果皮のa^*値およびカロチノイド組成については,こはん症の発生した陽光部でわずかながら高かった.観察の結果,陽光部の果皮表面は滑らかであるが日陰部の果面は油脂と油脂の聞か陥没した粗い果面であり,果面の滑らかな部分に主にこはん症が発生し,果面の粗い果実にはその発生が少なかった.
著者
荒川 修 塩崎 雄之輔 菊池 卓郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.297-301, 1999-03-15

リンゴ樹の樹冠内の光条件の測定方法について, 樹冠内の全天光に対する割合を, 照度(lx), 光合成有効光量子束(μmol・m^<-2>・s^<-1>)および日射量(W・m^<-2>)の測定から求め, その違いについて検討した.照度の測定による相対照度と光合成有効光量子束の測定による相対光合成有効光量子束との間には高い正の相関が認められた.しかしながら, 両者の値は明らかに異なり, 相対光合成有効光量子束は相対照度の値に比べて6.0%高かった.このことは, 1日の積算の光合成有効光量子から求めた相対光合成有効光量子と相対照度との関係にも認められ, その差は曇天日で6.7%, 晴れの日で6.8%だった.日射計による1日の積算日射量から求めた相対日射量と相対光合成有効光量子との間にも高い正の相関が認められたが, 相対日射量の値が相対光合成有効光量子の値に比べて11%高かった.
著者
久保田 尚浩 山根 康史 鳥生 幸司
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.467-472, 2002-07-15
被引用文献数
1 4

ブドウ'マスカット・オブ・アレキサンドリア'および'巨峰'の1芽に調整した挿し穂を用いて, 休眠打破に及ぼす数種アリウム属植物のペーストおよび揮発性物質の影響を調査した.5種のアリウム属植物(ニンニク, ニラ, ラッキョウ, タマネギ, ネギ)のペーストを挿し穂の切り口に塗布したところ, 発芽は促されなかった.しかし, 揮発性物質の気浴処理では発芽が促進され, その程度は黄ニラで最も大きく, 次いでニラ, ラッキョウ, ニンニクおよびタマネギの順であった.これら植物の揮発性物質の休眠打破効果は, ニンニク中の休眠打破有効成分である2硫化ジアリルや3硫化ジアリルよりも小さかった.ニンニク, 黄ニラおよびラッキョウを煮沸し, それらの揮発性物質で気浴処理したところ, 発芽は促進されなかった.挿し穂をニンニク, 黄ニラおよびラッキョウの揮発性物質で12時間あるいは24時間気浴処理したところ, 市販のガーリックオイルの揮発性物質と同程度に発芽が促進された.挿し穂をニンニクおよび黄ニラの揮発性物質で, 温度を変えて24時間気浴処理したところ, ニンニクでは高温条件で発芽が促されたが, 黄ニラでは温度の影響は認められなかった.以上のことから, ニラとラッキョウはブドウの芽の休眠打破に有効であること, 休眠打破に有効な物質はニンニクと同様に揮発性であることが明らかとなった.
著者
谷川 毅 高儀 雅俊 一井 眞比古
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.249-251, 2002-03-15
被引用文献数
3 19

タマネギ品種の品種識別並びに品種間の類似度を評価するために, タマネギ22品種を用いてRAPD分析を行った.RAPD分析に100種類のプライマーを供試したところ, 17種類で再現性のある多型バンドが得られた.17種類のプライマーで合計88本の増幅バンドが得られ, その内35本のバンドが多型を示した.数種類のプライマーから得られた多型バンドを組み合わせることにより22品種全てを識別することができた.類似度は, 0.836-0.979の範囲であり, 品種間の遺伝的距離が近いようであった.類似度に基づくデンドログラムでは, タマネギ22品種は大きく6群に分かれた.'スーパーハイゴールド'は他品種と遺伝的に離れていた.各群に含まれる品種の形態的および生態的特性並びに遺伝的背景には一定の傾向は見いだせなかった.一方, 培養細胞からの植物体再分化能が高い品種では欠失し, 低い品種では存在するRAPDマーカーOPD-03-850が得られた.
著者
樋口 幸男 北島 章好 荻原 勲 箱田 直紀 志村 勲
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.744-748, 2000-11-15
被引用文献数
2 1

異なる温度条件下におけるプリムラ・オブコニカのプリミン分泌状況を調査し, 幼苗期におけるプリミン検定の可能性について検討した.1. 'Crystal Apricot'では子葉展開期からプリミンの分泌が認められたが, フリー品種の'Libre Light Salmon'では認められなかった.2. 'Crystal Apricot'を低温(昼温20℃, 夜温13℃)および高温(昼温30℃, 夜温23℃)下で育苗し, 個体別および葉位別にプリミン分泌率を調査した.低温下で育苗した場合は, 第1葉展開期にはすべての個体がプリミンを分泌していた.さらに, 低温下では下位葉のプリミン分泌率も高く維持された.一方, 高温下で育苗したところ, プリミン分泌の開始が遅れ, 一度分泌したプリミンの消失も早かった.また, 育苗温度に関わらず最上位葉の一つ下位の葉においてプリミン分泌率が高かった.3. プリミンを保有している'Crystal'シリーズ4品種について葉位別のプリミン分泌率を調査した.プリミン分泌の早晩には, 品種間差異が認められたが, 各品種とも低温下では第1葉展開期の子葉において, また, 高温下では第5葉展開期の第4葉においてプリミン分泌率が100%であった.4. 幼苗期に毛じの形態からプリミン分泌の有無を判定するには, 低温下では第1葉展開期の子葉を, 高温下では第5葉展開期の第4葉を調査すればよいことが明らかとなった.
著者
大川 勝徳 北嶋 純也 西野 圭 大川 野理子
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.184-188, 1999-01-15
被引用文献数
2 1

本実験はクロユリ(Fritillaria camtschatcensis Ker-Gawl.)の小球状りん片由来の子球を25℃, 1, 500lxで8週間培養した.そしてNAA, カイネチンおよび24-Epibrassinolide(EB)による子球の肥大と子球からの発根および出葉に対する効果を検討した.各植物ホルモン実験の結果, 培養8週間後の子球の肥大と発根にはEB0.01ppmが, また子球からの出葉にはカイネチン0.1ppmが効果的であった.組み合わせた植物ホルモン実験の結果, 培養8週間後の子球の生育にはNAA 1.0ppm, カイネチン0.1ppmおよびEB0.01ppmの3者の組み合わせが最も効果的であった.
著者
細田 浩 大見 和枝 坂上 和之 田中 健治
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.5, pp.451-456, 2003-09-15
被引用文献数
1 10

タマネギオイルがカットレタスの褐変に及ぼす作用を調べ,褐変抑制作用を示す成分を検索した.タマネギオイルが褐変抑制作用を示すためにはオイルとカットレタスが接触する必要はなく,掲変抑制成分は揮発性成分であると判断した.GC-MS分析により,タマネギオイルの主成分はdipropyl trisulfide, dipropyl disulfide, methyl propyl trisulfide等であることが明らかとなった.HPLCでタマネギオイルを分画し,各画分の褐変抑制作用を調べた結果,活性はかなり分散していたが,dipropyl trisulfide画分は最も褐変抑制作用が強く,以下methyl propyl trisulfide画分, dipropyl disulfide画分, propyl propenyl disulfide画分の順であった.比較した成分の中では, dimethyl trisulfideの比活性が最も強かったが,この成分はタマネギオイル中の存在量が少なく,タマネギオイルの褐変抑制作用は上記主成分によるところが大きいと判断された.また,trisulfideがdisulfideより褐変抑副作用が強いと考えられた.
著者
楊 暁伶 北島 宣 長谷川 耕二郎
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.4, pp.538-543, 2002-07-15
被引用文献数
2 8

'土佐文旦'×'水晶文旦'の交雑実生二倍体, 三倍体および四倍体個体群について, CMA染色による染色体構成を明らかにし, 染色体対合様式や二倍体間の交雑で三倍体や四倍体が出現する機構を検討した.1. 交雑実生二倍体38個体ではCMA染色により13種類の異なる染色体構成が認められ, 交雑実生個体は極めて多様な染色体構成を示すことが明らかとなった.2. 交雑実生二倍体の染色体構成において, A型染色体は1&acd;3本, B型染色体は0&acd;1本, C型染色体は3&acd;5本, D型染色体は2&acd;4本, E型染色体は8&acd;10本の範囲で出現した.また, B型染色体をもつ個体ではA型染色体が1&acd;2本の範囲で出現した.これらのことから, '土佐文旦'染色体の対合様式は, AB+CC+CC+CD+DE+EE+EE+EE+EEまたはAB+CC+CC+DD+CE+EE+EE+EE+EEと推定された.3. 交雑実生三倍体では6個体で3種類の異なる染色体構成が出現した.これらの染色体構成は, 減数第I分裂または第II分裂の非還元による非還元雌性配偶子に起因しているか, 減数第II分裂の非還元による非還元雄性配偶子に起因している可能性が示唆された.4. 交雑実生四倍体では3個体で2種類の異なる染色体構成が出現した.これらはB型染色体を2本もち, いずれの染色体型も偶数存在することから, 雌性配偶子, 雄性配偶子ともに減数第II分裂の非還元に起因すると考えられた.これらのことから, '土佐文旦'×'水晶文旦'の二倍体間の交雑で三倍体が出現するのは, 非還元雌性配偶子に起因する場合と非還元雄性配偶子に起因する場合のどちらも存在すると考えられた.
著者
Kanayama Yoshinori
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.1203-1208, 1998-11-15
被引用文献数
1 4

In general, plants synthesize sucrose for translocation of photosynthate. However, some horticultural crops of Rosaceae family are known to translocate sorbitol. Both types of crops are important in horticultural science. Although sucrose metabolism in source and sink tissue is well-known, regulation of sugar composition has not been investigated yet. Fruit generally contains three major sugars i.e., sucrose, glucose and fructose. As the sweetness of these three sugars is quite different, the manipulation of sugar composition in fruit could be useful for improving fruit quality. Thus genes encoding fructokinase that might be related to the level of fructose in fruit were cloned and analyzed. In contrast to sucrose, there are fewer studies on sorbitol metabolism in source and sink tissue. Therefore cloning and expression analysis of the gene encoding sorbitol-6-phosphate dehydrogenase (S6PDH) that may play a key role in sorbitol biosynthesis are also reported here. Two fructokinase cDNAs, Frk1 and Frk2, were isolated from tomato and identified using transformed yeast with those genes. The response of both genes to sugar and their expression patterns shown by northern and in situ hybridization suggest that Frk1 responds to carbon availability and plays a primary role in fructose metabolism in plant cells while Frk2 is localized specifically in cells that import and store carbohydrate. On the other hand, S6PDH cDNA was cloned from apple seedlings. The levels of S6PDH activity and protein were high in source tissue such as cotyledons and leaves in apple seedlings. Besides the S6PDH transcripts were induced during germination corresponding to sorbitol synthesis. On peach trees, the levels of S6PDH transcripts were also higher in more developed leaves compared with folded young leaves. The results strongly suggest that the S6PDH gene is expressed for biosynthesis of sorbitol in source tissue. Now some groups are executing mapping and overexpression of S6PDH.
著者
三浦 泰昌 関島 和幸 平井 唯優 五十嵐 大造 井上 知昭 植松 斉 久保井 榮 松山 明彦 吉田 誠 鈴木 昭
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.497-504, 2000-07-15
被引用文献数
1 1

スプレーカーネーション'ライト・ピンク・バーバラ'に対する小売店の品質評価と形状, 体内水分および器官別糖含量ならびに花の品質保持期間の関係について調査した.1. 外見から最高級品(H), 中級品(M)および最下級品(L)に分類して, 切り花の長さ50cm, 1本当たりの小花数3輪に調整して, 試験開始時の器官別の含水率を比較したところ, いずれもHが最も高く, Mがこれに次いで高く, Lは顕著に低かった.また, 試験期間中の吸水量もこの順になり, Hの含水率が常時高く維持された.2. HとMでは試験開始後10日間で全て開花したが, 品質保持期間はHが15日と最も長く, Mは約10日と短く, Lでは開花に達することなく枯死した.3. 試験開始時のHとMの花弁のグルコースとフルクトース含量はほぼ11&acd;13mg/100mgDWであったが, Lでは4&acd;6mg/100mgDWと低かった.またHではこれら糖含量が5日後まで低下した後, 8mg/100mgDW前後のほぼ一定した値を示したのに対して, Mでは15日後まで直線的に低下した.Lでは10日後まで4&acd;6mg/100mgDWの低い値を維持した.4. 試験開始時におけるHのがくのスクロース, フルクトースおよびグルコース含量はほぼ4&acd;6mg/100mgDWで, 15日後までほぼ直線的に低下したが, Mのフルクトース, グルコース含量は試験開始5日後までに急激に低下した.Lではいずれも2&acd;3mg/100mgDWと低く, 15日後まで緩やかに低下した.5. Hの葉身のスクロース含量は試験中9&acd;12mg/100mgDW前後を保ち, Mは16mg/100mgDWから12mg/100mgDWと緩やかに低下した.フルクトースとグルコース含量は1mg/100mgDW以下と低く, 試験期間中ほぼこの値を維持した.一方, Lのスクロース含量は2mg/100mgDW前後, フルクトースとグルコースは1mg/100mgDW以下で推移した.6. 茎のスクロース含量はいずれも4&acd;6mg/100mgDW前後で推移したが, グルコースは試験開始時2mg/100mgDW前後から15日後までほぼ直線的に低下し, フルクトースは全期間を通じて1mg/100mgDW以下の低い値を示した.7. 3階級とも花弁から銀が検出されたことから, 全てSTS等の処理済みと考えられた.以上の結果, STS等処理後のカーネーション切り花の品質保持期間に対して, 切り花購入時の含水率と花弁のフルクトースおよびグルコース含量が大きく影響すると推測された.
著者
濱野 恵 三浦 周行 田部井 豊
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.559-561, 1998-07-15
被引用文献数
3 4

イチゴ'女峰'の果実生育の初期に発現する遺伝子をディファレンシャルディスプレイ法により解析した.開花後0, 2, 4, 7, 10, 13日の果実から抽出したRNAを基に合成したcDNAをPCR反応の鋳型に用いた.異なる遺伝子発現を示唆するPCR産物11本のうちSGR101, SGR701の2本をサブクローニングして塩基配列を決定した.ホモロジー検索の結果, SGR101はリボソームタンパクS6キナーゼのホモローグであるアラビドプシスのcDNAと, SGR701はインゲンマメのヒドロキシプロリンリッチ糖タンパクの遺伝子と高い相同性があった.SGR101およびSGR701はともに痩果の相対生長速度が最も高く果実が生理的に活発な時期に発現しており, それらが果実生育にかかわる機能について考察した.
著者
大久保 敬 Sugiharto Arifin Noor 三保 紀子
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.283-285, 1999-03-15
被引用文献数
1 3

シャロットおよびワケギの日長および温度に対する球根形成反応を調査した.供試したインドネシア産のシャロット2系統およびワケギ2系統ならびに日本産のワケギ2系統はいずれも16時間日長下で球根を形成した.両種は12時間日長下でも球根を形成し, ワケギは8時間日長下においても球根を形成した.球根形成は両種とも20℃&acd;30℃の範囲内では温度が低いほど促進された.
著者
馬 旭偉 下川 敬之
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.261-269, 1998-03-15
被引用文献数
6 5

本研究では, エチレン処理したバナナ果実(Musa sapientum L.)の果皮より調製した粗酵素液中に, クロロフィルaを分解する酵素が存在することを明らかにした.また, この酵素とその反応について次のことを明らかにした.1) H_2O_2と2, 4-DCPが必要なことからペルオキシダーゼであること, 2) Tiron, Mn^<2+>, hydroquinone, L-ascorbate sodium, n-propyl gallate, salicylhydroxamic acid, KCN, NaN_3で阻害されるため, この酵素反応にO^-_2とラジカルが関与していること, 3) 2, 2'-bipyridyl, Tironにより阻害されることは, この酵素反応にFe^<2+>あるいはFe^<3+>が関与していること, 4) NaN_3に対する阻害程度の違いからクロロフィル分解ペルオキシダーゼはグアヤコールペルオキシダーゼとは別のものであること, 5) pHのピークが5.2, 5.8と6.4にあることから, アイソザイムが存在すること, 6) タンパク質量に対する反応量は直線的であること, 7)基質のKm値は16.5μMであること, 8) H_2O_2のKm値が20.44μMで, この値は既知のペルオキシダーゼに比べ低い値である(高い親和性をもつ)こと, 9) これらの値と性質は, この酵素が生体内で作用している可能性があること.さらに, 反応液の可視部でのスペクトルの変化, 特に, 経時的な波長のシフトとソーレーバンドの消失と差スペクトルの結果から, クロロフィルaは開環したクロロフィル代謝産物(Ex 350nm, Em 465nm)に分解するものと考えられる.