著者
仲座 栄三 入部 綱清 徳久 氏琉 宮里 直扇 稲垣 賢人 SAVOU Rusila
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_515-I_520, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
13
被引用文献数
1

東北大震災の後,日本列島各地において,過去数千年間にも遡って大規模津波の発生やその実態を明らかにすることが津波防災上の重要な課題となっている.琉球諸島における大規模津波としては,約240年前に発生したとされる明和津波が有名である.しかし,これまでの古津波に関する研究成果からは,明和津波と同規模かそれ以上の大きさと推定される大津波が過去に数回発生した可能性が高いと推定されている.本研究は,ボーリングや手堀による調査,そして考古学的発掘調査結果などから,過去に発生した大津波の発生年とその実態を明らかにしている.その結果は,これまでの研究成果で過去数回発生したとされる明和津波以前の津波痕跡やその発生可能性を示す事実が見出されないことを示し,明和津波が過去唯一で最大の津波である可能性を示唆している.
著者
宇多 高明 大木 康弘 三波 俊郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_103-I_108, 2016 (Released:2016-08-30)
参考文献数
2

日立市河原子海岸では近年侵食が著しく進み,砂浜が消失して海水浴ができなくなった.本研究では,まず北部の会瀬漁港から河原子港間の長さ約4kmの海岸線を対象に空中写真による汀線変化解析を行った.次に,2015年12月26日には河原子港周辺海岸で侵食状況の踏査を行い,さらに河原子港周辺について1982~2013年に取得された深浅測量データを基にした地形変化解析を行った.侵食原因には,北部の会瀬漁港での離岸堤背後の遮蔽域へと砂が運び去られたこと,また2011年の大地震に伴う地盤沈下が係わると推定された.
著者
大塚 文和 中本 壮祐 吉田 誠裕 川西 利昌 増田 光一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_917-I_922, 2017
被引用文献数
1

本研究は,東京湾における代表的な親水海浜であるふなばし三番瀬海浜公園の干潟域に最も大きく影響すると考えられる真間川河口前面海域の放射性物質の存在実態を,柱状採泥結果を基に3次元的に把握した.また,先の干潟域における放射線量の経年的な計測結果を通して放射線量の実態の概要を把握した.これらの結果を基に,東京湾における代表的な親水海浜であるふなばし三番瀬海浜公園の干潟域における放射線量の変動の可能性についても検討した.
著者
金田 孝之 近藤 健雄 桜井 慎一 宇於崎 泰寛
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_133-I_138, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
21
被引用文献数
1

市街地と隣接し,港湾と都市の空間・機能の再生を目的とし,面整備を伴う港湾再開発においては,商業・業務機能集積が重要な課題であり,そのためには,民間開発者の事業参入が不可欠である.本研究における事例分析により,民間開発者の参入のためには,「基盤整備,土地利用転換及び一団の街区開発による街の形成」に関わる不確定性が公的主体によって大きく低減されることが不可欠であることが明らかになった.また,公的主体のこの不可欠な役割は,「開発者の負担と責任で行われる宅地開発や工場跡地開発の場合」より大きいものであるが,行政機関や利害関係者などが参加し策定された港湾再開発の基本構想や基本計画で重要な役割としてオーソライズされていることが,明らかになった.
著者
渡辺 雅子 大塚 弘之 上月 康則 大田 直友 河井 崇 萬宮 竜典 岡田 直也 中野 晋
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1233-I_1237, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
10
被引用文献数
5

希少種ルイスハンミョウの生息環境を代償する目的で,徳島県沖洲に人工海浜が造成された.ルイスハンミョウは海浜生態系の高次捕食者であるため,生息場所の物理的環境条件の模倣だけでなく,餌生物を含む海浜の食物連鎖の再現も目標とされた.人工海浜の概成後,2007-2010年におけるルイスハンミョウ出現数は年々増加しており,本ミチゲーション事業はその目的を達成したといえる.一方,希少種の保全と海浜の利活用を両立するためには,その主体となる地域住民とともに利活用のあり方を検討する必要がある.そこで,多様なステークホルダーによるワークショップが開催され,規制ルールが検討された.その結果,幼虫の生息環境保全のために人を対象とした侵入防止柵が設置され,また,環境維持におけるその有効性が検証された.このことから,協働による海浜の維持管理体制の構築の重要性が示唆された.
著者
永井 紀彦 川口 浩二 吉村 豊 鷲尾 朝昭 谷川 亮一 青木 功
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_905-I_910, 2012

海洋構造物への外力条件として重要となる洋上風の乱れについて,大水深沖合観測点で波浪と洋上風の同時観測を実施しているGPS波浪計による観測データをとりまとめ,洋上風の乱れ強度の出現特性を検討した.すなわち,青森東岸沖、三重尾鷲沖、和歌山南西沖および高知西部沖の各GPS波浪計による観測データに関して,2008年における20分間単位の年間上位500観測の有義波高を記録した高波浪時を抽出し,洋上風の平均風速・乱れ強度および有義波高・周期との関係を整理した.各種波浪パラメータと洋上風の乱れ強度との相関性は必ずしも高くなかったが,強風時に乱れ強度が比較的大きな値を示す出現頻度は,北方向のフェッチが大きい観測点ほど,大きくなる傾向が見られた.
著者
間瀬 肇 安田 誠宏 池本 藍 Tracey H. A. TOM 森 信人
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.I_1204-I_1208, 2012 (Released:2012-09-18)
参考文献数
3

洋上風力発電施設のオペレーション,タンカーの港への入港判断,フェリーの運航判断,マリンレジャーの計画等に利用可能な風と波浪の予測情報の予測・表示システムを開発した.予測情報は,リードタイム,予測期間,利用目的によって予測値の利用価値が決まる.洋上風力発電施設のオペレーション・アンド・メンテナンスの工程計画には1週間先,ケーソン据付等の港湾・海洋工事に対しては3~4日先,海水浴,サーフィン,ヨット等の海浜・海域利用では2~3日先の情報が必要であるので,それらに応じた予測情報を得られるようにしたシステム開発を行った.
著者
岡本 健太郎 山本 潤 福田 光男 林田 健志 峰 寛明 大橋 正臣 田畑 真一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.I_388-I_393, 2011 (Released:2011-12-08)
参考文献数
6

著者らは,廃棄物を利用することで“ホタテ貝殻の人工礁”を開発した。貝殻礁は,貝殻の空隙に有機堆積物の捕食生物のための生息空間を作り,港内の有機汚染物質を除去するのに有効である.小型試験礁を用いて試した結果,設置後3年が経過しても浄化効果が持続することが確認された.そして,その過程は生態系モデルによって再現された.より大きな効果を得るため,大型ホタテ貝殻礁の設置を行った.蝟集生物量は減少していくが,それは貝殻礁中心部の海水交換不足のためと考えられた.そこで,通水孔を設けた“実用的ホタテ貝殻礁”を開発した.その結果,生物は中心部に集まり,その効果は証明された.
著者
北井 芳典 泉宮 尊司 石橋 邦彦
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_389-I_394, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

微気圧変化による津波の発生および規模の検知の可能性を探るために,まず平常時の微気圧変動観測を新潟大学の建物屋上で行った.観測は,微気圧変化,風向・風速および雨量の同時観測を行った.観測の結果,微気圧変動は降雨や寒冷気流の降下等によって発生していることが分った.津波発生・伝搬に伴う微気圧変動の3次元数値解析では,津波の初期水位の上昇領域では正の微気圧波が,水位の下降領域では負の微気圧変動が発生することが分った.また,微気圧変動が津波よりも速い速度で広範囲に伝搬する様子が再現された.さらに,地殻変動時間が短いほど強い微気圧波が発生する結果が得られた.このことにより,微気圧変動の観測により津波の発生の有無および規模を推定できることが分った.
著者
高木 泰士 Md Rezuanul ISLAM Le Tuan ANH 高橋 篤平 杉生 高行 古川 郁貴
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.76, no.1, pp.12-21, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
20
被引用文献数
3 5

2019年9月9日に東京湾を直撃した台風15号の調査結果を速報する.神奈川では相模湾側で大きな高波被害は生じていなかったが,東京湾では直立護岸を乗り越える越波で被害が生じていた.千葉では九十九里浜ビーチ内の施設が被害を受けていた以外,目立った高波被害はなかった.一方,強風被害は激甚で,屋根の飛散や電柱の折損など各地で被害が生じていた.茨城でも高波被害は見かけなかったが,防波堤が堅固であることや,震災後の堤防改修が強靭化に寄与している.波浪追算の結果,ピーク波高は横浜で3.4m,東京や千葉で2.6mと推算された.湾内で急速に発達した高波が1m以下の高潮と相まって局地的な被害をもたらした.関東に上陸した過去の台風との比較では,今次台風はゆっくりと進んだ小型で強い台風と特徴づけられた.
著者
大平 幸一郎 高畠 知行 三上 貴仁 柴山 知也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.56-66, 2017 (Released:2017-09-20)
参考文献数
21

東北地方太平洋沖地震の直後,震源から遠く離れた山梨県の湖やノルウェーの湾など複数の場所で津波の様な異常な水位変動が目撃された.同様の水面変動はこれまでに稀に報告されてきた.しかしながら,具体的な波の発生機構や評価手法は確立されておらず,本現象そのものに対する認識や防災意識は低い.本研究では,定量的な影響評価手法の選定と本現象による水害リスクの把握を目的に,現地調査や目撃情報等の収集・整理により発生要因を実地形でのスロッシング現象と推定し,三次元解析での再現を試みた.実験結果との比較により解析手法の妥当性の検証を行った上で過去の事例の再現と将来予測を行った.その結果,本解析手法により異常な水面変動を再現できること,津波とは別の地震直後の内陸部の湖や湾奥部の運河における水害リスクを明らかにした.
著者
大谷 壮介 田畑 直樹 東 和之
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_480-I_485, 2019 (Released:2019-10-09)
参考文献数
14

本研究では,カキ殻付着生物に着目して有機物の分解機能の定量化を行った.調査は2016年7月から2017年3月まで2か月ごとに大阪府貝塚市二色浜近傍において水質調査を行い,採集したカキ殻は実験室において酸素消費速度の計測を行った.殻上付着生物は付着動物(840μm以上)と付着有機物(840μm未満)の2つに分けて,付着動物には多毛類,藻類,ホヤ,二枚貝等が確認できた.また,殻上付着生物量は水深が深くになるに伴って大きくなり,付着動物の重量は付着有機物よりも大きかった.カキ殻上の付着生物による酸素消費速度は75.2±74.2(4.59-239)mgO2/m2/hourであり,そのうち80.5±14.0(47-97)%は付着有機物によるものであった.また,付着有機物による酸素消費速度は付着動物の酸素消費速度の5.63倍であった.以上のことから,カキ殻は付着生物に生息場を提供して有機物の分解機能を促進していることがわかった.
著者
後藤 浩 石野 和男 玉井 信行 竹澤 三雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.I_695-I_700, 2015 (Released:2015-09-04)
参考文献数
17
被引用文献数
1 1

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震津波では,津波によって甚大な人的損失を生じた.今後,津波の規模によっては,海岸保全施設による防護だけでなく,住民の積極的な避難行動により減災を促進させようという提案が散見される. 本研究では,地域に密着した存在である寺院に注目し,その寺院の避難場所としての機能について,東北地方太平洋沖地震津波の浸水域およびその近傍に存在する寺院を中心にアンケート調査を行い,津波時の状況を調査した.また,この調査を踏まえて,今後,南海トラフ巨大地震に伴う津波の想定浸水域に存在する寺院へアンケート調査を行い,寺院の避難場所としての機能について二,三の考察を行った.
著者
嶋田 陽一
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_798-I_803, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
9

大阪湾における神戸市沿岸から泉大津・泉佐野沿岸へドラム缶が漂流した事例を参考にして,風圧流を考慮したドラム缶サイズの漂流物挙動シミュレーションを実行した.12時間後の空ドラム缶のいくつかは泉大津から泉佐野沿岸周辺に漂着する.24時間後,すべての漂流物が漂着する.空ドラム缶の軌跡は出発点から概ね南東向きを示す.風圧流がない漂流物の多くは,48時間後もほとんど大阪湾沿岸に漂着しない.空ドラム缶の実験はドラム缶漂流事例と同じ沿岸周辺に漂着する傾向を示すことから,風圧流の効果により12時間程度でドラム缶が大阪湾を横断した可能性が高いことを示した.それゆえ,漂流物に大きさによってそれらを回収するための迅速な対応の必要性が示唆される.
著者
長山 昭夫 井﨑 丈
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_865-I_870, 2022 (Released:2022-10-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1

2021年8月の東京都小笠原諸島の大規模噴火起因の軽石群が約1,400km離れた沖縄・奄美地方の沿岸域に漂着し,観光業や漁業に甚大な被害を与えた.しかしながら,多量の軽石群が沿岸域に漂着した後の港湾施設内の滞留過程について検討した例はほとんどない.そのため本報では港湾施設内での軽石の埋没現象を解明するために,風洞水槽内に狭窄部を設け狭窄部内での軽石群の移動特性につい検討した.その結果,狭窄部内での軽石の移動速度は風速が支配的であり,軽石の通過流量については狭窄部幅が影響し,これらの軽石群の堆積と流下過程が異なることがわかった.また風による軽石に作用するせん断力を推算し,その推算値から軽石の移動速度が推算可能であることがわかった.
著者
高橋 紘一朗 宇多 高明 野志 保仁 中田 祐希
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_727-I_732, 2022 (Released:2022-10-18)
参考文献数
4
被引用文献数
1

2021年8月13日,小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火し,この噴火により発生した大量の軽石が2021年10月17日頃から沖縄本島北部を中心に漂着した.沖縄本島北西部に位置する大宜味海岸でも大量の軽石が漂着し,サンゴ礁起源の白い砂浜を埋めた.そこで2021年10月28日に緊急調査を行い,UAVを用いて軽石の漂流・漂着状況を観測した.また,軽石の漂着した前浜で掘削調査を行った.これによれば,軽石は最大厚66cmをなして前浜に厚く堆積していた.この海岸の南部では突堤が設置されていたために,漂着した軽石は突堤の北側で一度トラップされた後,突堤先端で剥離した沿岸流に乗り突堤から離れた下手海岸へと運ばれたことが分かった.
著者
中田 祐希 宇多 高明 高橋 紘一朗 野志 保仁
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_733-I_738, 2022 (Released:2022-10-18)
参考文献数
5
被引用文献数
1

2021年8月13日,小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」が噴火し,この噴火により発生した大量の軽石が10月17日頃から沖縄本島北部を中心に漂着した.沖縄本島北西部に位置する大宜味海岸でも大量の軽石が漂着し,サンゴ礁起源の白い砂浜を埋めた.そこで2021年10月28日,UAVを用いて軽石の漂流・漂着状況を観測した.また軽石の漂着した前浜で掘削調査を行った.これによれば,軽石は厚さ約40cmをなして厚く堆積していた.大宜味海岸では離岸堤が設置されていたために,離岸堤間で浮遊軽石の集積が起きていた.
著者
白木 喜章 片山 理恵 凌 千恵 小野 信幸
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.78, no.2, pp.I_871-I_876, 2022 (Released:2022-10-18)
参考文献数
9

2021年10月以降,奄美・沖縄地方に大量の軽石が漂着し,漁業や観光業等が深刻なダメージを受けた.この軽石は,小笠原諸島南部に位置する海底火山「福徳岡ノ場」の噴火に伴い発生したものであり,海洋の流れや風により漂流してきたとされている.火山地帯に位置する我が国では,今後も大規模な軽石災害が起こり得ることから,漂流経路や漂流時期を予測できる手段の整備が課題となる.本研究は,沖縄沿岸域を対象として軽石漂流を想定した粒子追跡シミュレーションを実施し,とくに大浦湾における軽石の接岸・離岸の再現性を検証した.また,潮汐・海流による流動シミュレーションを事前に実施しておき,予報する際に風圧流を考慮した粒子追跡シミュレーションのみを実行することで実用的な予報ツールになることを提示した.
著者
兵頭 武志 北里 新一郎 本城 勇介 大竹 雄
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_191-I_196, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

港湾構造物は厳しい海洋環境にあることから,塩害が劣化の主要因とされる.特に桟橋上部工コンクリートの下面側は塩害による劣化進行が速く,維持管理上,重視すべき主要な構造部材である.上部工下面側については,通常の点検では,海上から小型船舶を使ってアクセスし,外観目視調査により概略の健全性評価を行う.さらに詳細に調査する場合は,コア採取による塩化物イオン量測定を実施することになるが,荷役作業など施設の利用中は調査が行えないことやコア採取時の足場の確保など,効率的に行うには制約や課題が多い. 本研究では,離散的な位置での情報から対象域全体の情報を推定する場合によく用いられる空間統計学(クリギング)を適用し,桟橋上部工におけるいくつかの塩化物イオン量の離散的なデータから対象全体の劣化状況分布を推定するとともに,目視点検結果と塩化物イオン量の分布の関連性を比較分析し,効率的な維持管理方法を提案する.
著者
佐藤 徹 加藤 絵万 川端 雄一郎 岡﨑 慎一郎
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.I_552-I_557, 2014 (Released:2014-10-01)
参考文献数
3
被引用文献数
2 9

港湾施設の点検診断については,施設の設置環境等から目視に頼らざるを得ない部分が多く,港湾利用の制約を伴う機器を使用した点検調査については,あまり実施されてこなかった.しかしながら,高齢化した社会資本の安全性確保や,的確な点検実施など維持管理の重要性の高まりなどを背景として,昨年,老朽化した港湾施設を主対象に,全国的な点検調査が実施された.この調査においては,はじめて全国規模で地中レーダを用いた係留施設の空洞化調査が実施された.本報告では,係留施設を対象に実施された空洞化調査の結果について整理し,空洞化と目視により判定されたエプロン舗装等の劣化度の関係等についてとりまとめた.また,これらの分析を踏まえて,係留施設に発生する空洞化に対して今後対応すべき事項等について考察した.